ある日の俺と彼女 7/7

自分の彼氏を、あらゆる理由付けでTSさせる彼女
そんなバカップルのゆるい会話シリーズです

ある日の俺と彼女 7/7

「彦星と織姫ってさ、一回爆発していいと思わない?」
「宇宙の法則が乱れるだろ。天文学的に考えて」
 すっかりお馴染みとなってしまった意味不明台詞にツッコミながら、俺は彼女と夜店の並ぶ参道を歩いていた。

 今日は七夕。いつものように難癖つけて俺を女にするのかとずっとハラハラしていた一日だったが、意外なことに普通にデートに誘われた。
「だってさぁ、あの二人、恋人に会えるからって嬉しさのあまり見ず知らずの人の願いまで叶えようとするカップルなのよ? 幸せそうじゃない」
「いいことじゃないか」
「爆発しろって気分にならない?」
「なるのかお前」
 どうでもいいが、夜店歩きながら浴衣姿の恋人とする会話じゃないよな、これ。
 ムードの欠片もない。……だがまぁ、これが俺たちのスタイルだ。
「お前の言い分だと、俺たちも爆発対象になるぞ」
「…………私といて、幸せなの?」
「もちろん」
 何をいまさら過ぎることを。
「ぁぅ…………ふんっ、最近デレデレだよね。デレのバーゲンセールでもしているわけ?」
 言いながら、俺から顔を背ける。だが、夜店の明かりで赤くなった顔は見逃さなかった。
 こっちから言わせてもらえば、そういう反応をする彼女の方がデレに満ち満ちている。
「な、何ニヤニヤしてんのよ。男がニヤニヤしていいのは、これから美少女の体を乗っ取る直前の瞬間だけなんだからねっ」
「なにその鬼畜シチュエーション」
「ゾクゾクワクワクドキドキハアハアするでしょ?」
「女としてどうなんだ、その感覚」
「女にだって、鬼畜TS萌えのアンテナはあるから」
「限りなく少数派のような気がしないでもない」
 とまあ、こんな風に騒ぎながら、俺たちは祭りの中心地、境内へと続く石段を上っていった。
 この神社の境内には大きな笹があり、この時期になると地元の人間たちはそこに短冊をつるす。
 伝統行事というほど大げさなものではないが、実際に願いがかなったという話もあり、イベントに参加する人間は少なくはない。
 俺たちもまた、その参加者の一人だ。
「あなたは何にしたの? お願い事」
「秘密だ」
 『彼女の妙な能力がなくなりますように』とは、ちょっと口に出すのはためらわれる。
 幾分か女になるのも慣れてきたが、やっぱり俺は男だし、彼女の能力にはそろそろご退場願いたいのだ。
「ケチー。じゃあ、私も教えない」
「ん、いいんじゃないか?」
 願い事なんて、やたら人に言うものでもないし。
「……ふぅん」
 俺がそういうと、彼女はなぜかつまらなそうな顔をして空を見上げた。
 つられるように、俺も彼女の視線を追う。
 満天の星空、とまでは行かないが、よく晴れてすっきりとした夜空だった。
「ねえ」
「うん?」
「もし、もしもだよ? 織姫彦星みたいに、私と離れ離れになっちゃったら、どうする?」
 いつもの軽口か、と思い、彼女の横顔を見る。
 常に浮かべている猫口さえ引っ込ませ、足を止めじっと夜空を仰ぐ彼女の真意は、残念ながら察せそうになかった。
「……俺は、そうなっても、お前との関係を続けていきたい」
「一年に一回しかあえなくても?」
「ああ」
「遠距離って、つらいらしいよ?」
「らしいな」
「心変わりするんじゃないかなー? あなたは、変な能力のない可愛い女の子と出会って、私は、TSに理解のある男の人に出会って、さ」
「つまんらんたとえ話だな」
「……ん。そだね」
 気のせいかもしれないが、空から視線を外して俺に合わせたその顔は、どこか、寂しげに微笑んでいた。
「はぁ……一度しか言わないからな」
「うん?」
「お前と一緒にいるときぐらい楽しい時間は、世界中のどこにもない」
 ……くそっ。すっげぇ恥ずかしい。
 しかしそれなりに効果はあったのか、彼女は目を丸くして俺を見ている。
「……ガチキュンした」
「何語だ、それ」
「さあ?」
 いたずらめいた、さっきまでのどこか緊張した空気を綻ばせるような微笑みを浮かべ、彼女は石段を軽快に駆け上がっていった。
「やれやれ……」
 いきなりシリアスっぽく遠距離恋愛の話をしたと思ったら、もう上機嫌になっている。結局なんだったんだ。
「ん?」
 ふと、さっきまで彼女の立っていた場所を見ると、紙切れが落ちていた。
 綺麗な長方形に切り取ってある。たぶん、彼女の短冊だろう。
 『彼氏と一生、入れ替わり続けられるような関係を』
 ……たぶん、じゃなかった。
「おーい、短冊落としているぞ」
「ん? いいよいいよ。お願い事、別のものにするし」
 数段上にいる恋人はご機嫌な調子で振り返り、言葉を続ける。
「どうせなら、二人で一緒に書こうか?」
 境内の薄明かりと夜空を背中にして、手をさし伸ばしてきた。
「……そうだな」
 自分と彼女の短冊を握りつぶし、俺は石段を上る。
「願い事は?」
「決まってるじゃない。『二人で、幸せになれますように』」
 そういって笑う彼女に、俺もまた微笑み返し。差し伸ばされた小さな手を、そっと握るのだった。
「わっ…」
「は?」
 手と手を取り合ったその瞬間、いきなり、彼女が身体をよろめかせた。
 そう思ったのも束の間、俺へ飛びかかるように、全体重がのしかかる。
 不意打ちのような展開に身体はまったく動かず、結果、俺も石段の上でバランスを崩し――。
「……手、離さないでね」
「ん、わかってる」
 そのまま、二人もろともに階段から転げ落ちるのだった。

 まあ、後は想像に任せる。
 ……浴衣って意外と暑いのな。腰回りもきっついし。





このカップル爆発しろ
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
管理者の詳細

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
FC2投票
無料アクセス解析
応援バナー
ちぇ~んじ!~あの娘になってクンクンペロペロ~
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR