TSアパート4 ~超能力者

それぞれの事情からTS中なアパートの住人との日常会話的な短編です
ある日の俺と彼女7/7 の続き的なものにもなっていますが、未読でも特に問題はありません

TSアパート・201号室

 このアパートの201号室に住む青年には、超能力者の彼女がいる。

「こんばんはー大家さん」
 それは七夕の日の夜。ベランダで星空を見上げながらひとりで晩酌をしていると、201号室の青年とその彼女がデートから帰ってきた。
 いつも、どこかヒネた雰囲気を漂わせている201号室の主が、妙に明るいテンションと満面の笑みで俺に挨拶をしてくる。
 逆に、いつも妙に明るいテンションと満面の笑みを絶やさない彼女さんは、今はどこかヒネた雰囲気を漂わせていた。
「やあ、また入れ替わってるのかな?」
「あはー、大当たりです。でも今日は事故なんですけどねー」
「階段から落ちたら入れ替わるなんて事故は聞いたことがないんだが」
「なーに言ってんのよダーリン。『神社の石段で二人の男女が転がり落ちる』ってことは、入れ替わりが起きて当然じゃない」
「ってか、そもそもなんで急によろめくんだよ!」
「んー、すれ違いざま誰かに『爆発しろ』って言われて背中を小突かれた覚えしかないなー」
「この街怖ぇぇぇぇ!」
 彼女さん……ではなく中身は201号室の青年は、身体を抱きしめてがたがた震えだす。
 すれ違いざまに人を突き落とせるような悪意を持った人間が、何食わぬ顔をしてこの街にいる――近代社会の暗黒面の片鱗が見え隠れした瞬間だった。
「ま、運が悪かったわな。通り魔にでも遭ったと思って、早く忘れておけ」 
「それ最悪死んでますよねっ、大家さん!」
「例えだよ、例え」
「んー、でも実際通り魔だったし、例えになってませんよね、それ」
 言われてみりゃその通りだ。鋭いな彼女さん。
「やっぱこの街こええええええええ!」
「大丈夫っ、前も言ったけど、あなたは死なない、私が守るから!」
 深い愛が感じられるなかなかいい台詞だが、言っているのが女の方だというのだから情けない。
 まあ、何かあったときに頼れる存在なのは間違いないだろう。
 なんといっても、201号室に住む青年の彼女さんは超能力者だ。
 『何らかの理由に基づき相手を女にできる』という制約があるものの、そのバリエーションは無限に存在する。
 相手の意識を別の人間に転移させることも、肉体を変化させることも、それこそ今日のように身体を入れ替えることだってできるのだとかいう話だ。
 はっきり言って、こんな狭い街でくすぶっているような人間じゃないと思う。
「はぁー……今日はまともにデートして終われると思っていたのに」
「まあまあ、明日になれば元に戻ってるから」
「だといいけど…………ちょっと、悪い」
「? どこいくの、ダーリン」
「部屋。いや、ついてくんな。頼むから」
 言いながら、浴衣姿の彼女ボディの青年は、腰をそわそわさせている。
「はっはーん、トイレね?」
「男なんだろ? ぐずぐずしてないでスパッと行って来い」
「お前らには恥じらいってもんがないのかよチクショーッ!」
 よくわからんことを叫びながら、青年は下駄をカラコロと鳴らしながら階段を駆け上がっていった。
「あははー、もう可愛いんだからー」
 彼の後姿を見送った彼女さんは、自画自賛ともちょっと違う台詞を言いながら、くだけた笑顔を浮かべている。
「もう何度も入れ替わってるし、いまさらトイレぐらいで恥ずかしがる必要もないと思うんですけどねー」
「俺に話を振られても」
「あ、今日って異世界の大家さんいます? いるなら、お話していきたいんですけど」
「あー、今日はいないな」
 201号室の彼女と、うちの異世界人は仲がいい。
 異世界の俺の(中二病的な)話を真剣に聞いて、楽しみ、時には自分も違う世界へ旅立ちたい、などという話題で盛り上がったこともある。
 綺麗どころの女性二人がきゃいきゃいとイタイ話で盛り上がるのはなかなかシュールな光景ではあるが、それもまた、俺の安らぎの一部分だった。
「そっか、残念です。あ、じゃあ彼女が来たら、私からの伝言お願いできます?」
「ああ、いいよ」
「ではでは……『異世界へのお誘いありがとうございます。でも私は、やっぱりこの世界が一番好きです』」
「……そっか」
 彼女さんは、異世界の俺から一緒に違う世界へ行かないかと誘われたこともある。
 どの世界でも超能力者は一目置かれる存在らしく、そんな人間が自分のパートナーになってくれれば心強いのだとかいう話だ。
 実際、彼女さんはその話を聞いてかなり心を惹かれていた。でも結局は、今いるこの世界が一番だと言ってくれる。
「理由は、聞くまでもないかな?」
「はい」
 彼女さんと一緒に、201号室を見上げる。
 ……ホント、あの男が羨ましいよ。
「お、おーい……」
「あ、出てきた」
 201号室のドアが開き、浴衣彼女の姿をした男が現れる。
「ってキミ、帯は?」
「あ、あの、これは……」
「誘惑!? 誘惑するのねマイダーリン!」
 確かに彼女さんの言うとおり、青年の姿は誘っているといっても過言ではなかった。
 脚と胸辺りの浴衣のすそを、両手を交差させてきゅっと引っ張っている。そのせいでボディラインが強調され、本人もそれがわかっているのか夜でもはっきりわかるぐらい顔を赤くさせていた。
「いや、しかし独り身の俺に自分の恋人のそんな姿を見せるとは……」
「いやいや大家さん。ウチの彼氏、実は露出羞恥萌えなんですよっ」
「なるほど納得っ」
「納得するなぁ! 帯の締め方わかんねーんだよっ!」
「あーそっか。よしよし、今後のためにしっかり着付けを教えてあげよーね」
「今後って!?」
 ぎゃいぎゃい言いながら、それでも楽しそうな顔で、彼女さんは二階へと上がっていく。
「それじゃ、大家さん。よろしくです」
「おー」

「あ、海の日のために、毛の処理の仕方も教えよーか」
「それは俺を水着女にするという予告かッ!?」
 201号室の彼氏と超能力者の彼女は、いつも騒がしい。
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