ネコス25

とある喫茶店での人間模様をゆるゆる描く短編SSです
特に後先は考えずのらりくらりと更新しています。

ネコス25

 みなさまこんにちは。
 暑い夏でも笑顔で接客中の変身喫茶「ネコス」の美人マスターです。
 美人の汗は商品価値があるような気がしますがどうでしょう。


 汗といってもやはり美人の体液ですし、需要はないことはないと思います。
 ちょっと手を加えて『美人マスターの姿になれるドリンク』としてメニューに載せるのもありではないでしょうか。
「……くだらねーこと考えている顔だな、マスター」
「私、ビジネスチャンスは無駄にしない主義なのですよ。ユカリちゃん」
 なんにせよ、最近は暑くて仕方ありません。まだ夏は始まったばかりだというのになんなのでしょう、この熱気は。
「海にでも行きたいですねー、二泊三日で」
「その旅行計画、当然のように俺が組み込まれている気がするんだが気のせいか?」
「もちろん、アオちゃんも一緒ですよ。せっかくですから、青葉ちゃんも誘いましょうかー」
 といっても、あの子たちは学生ですので、夏休みに入るまで海旅行はお預けです。
 ああ……白い太陽。輝く砂浜。そして美女と美少女の水着姿!
 暑いのは苦手ですが、夏はこれだから嫌いになれません。
「ずいぶん余裕じゃないか、野良猫」
 八月の楽園ビジョンに思いをはせていると、その気分をぶち壊す茶々が入りました。
 白けてしまいます。妄想タイムを邪魔しないでくださいみかん小娘。
「よう、オウカ。いらっしゃい」
「別に、食事をしにきたわけじゃない。セキナの付き合いだ」
 金髪少女は相変わらずのとげとげしい態度で、くい、と店の入り口をアゴでさします。
 一瞬遅れて、来客鈴がカランと鳴りました。
「あ、ど、どうも。お邪魔します」
 赤髪の青年が、妙に腰の低い態度でお店に入ってきます。
 オウカちゃんが中にいるときはキリッとした鬼畜系のお顔なのですが、本物のセキナさんはどうにも頼りない、へタレ系を思わせる好青年な顔つきです。
 中身が違うと顔つきまで違うという入れ替わり特有の事象を前にして、私はこっそりほくそ笑みます。ギャップ萌えです。
「でも、二人してウチにきて、店はいいのか?」
「今日は定休日だ、パープル」
「ぱ、パープル……」
「こら黄花。えーと……まず、先日と、それからこの前のお詫びをしにきました。申し訳ありません」
 ぺこりと、苦笑いではありますが紳士的な態度で頭を下げられます。
 この前、というのは私の裸を見たことでしょうか。……思い出したら顔が熱くなってきました。
「……し、紳士的に振る舞えば許されると思ったら大間違いですよ」
「ええ、ごもっともです。でも、私としてはお向かいで同じ飲食店という縁を大切にしたいと思っています。そこで」
 と、わざとらしくセキナさんは一拍おいて、
「お詫びと仲直りの意味を込めて、私どもの海の家で出張営業をしませんか」
「出張、ですか?」
「ええ。こちらで用意した海の家に、「ネコス」と「オレンジ」が共同で店を構えるのです。悪い話ではないと思いますが?」
 セキナさんの言うとおり、海の家を今から個人的に用意するには労力とお金がかかります。
 タダで海の家を構えられるのでしたら、出張というのも悪くありません。夏の稼ぎはやはり海辺に限ります。
 しかし……。
「野良猫が海に近づいて大丈夫なわけないでしょう、セキナ」
 このみかん小娘が一緒というのは、ちょっと気に食わないです。
 ……いいえ。小娘の一人や二人にモテモテにならず、どうして美人マスターが名乗れましょうか!
 オウカちゃんは気に入りませんが、外見は可愛いロリ娘です。いずれ、お姉様…とか言わせるぐらい、仲良くなるのです。
「わかりました。でも、それは八月からでお願いします」
 じゃないと、あの二人を連れて行けませんからねー。
「ええ。商売的に考えても、学生の夏休みにあわせて営業するのは当然です」
 にっこりと、人のよさそうな笑顔を見せます。
 私の周りの男はウザかったりマッドだったりとろくな人種がいなかったおかげで、セキナさんはかなりまともな男に見えます。
「おい野良猫」
「なんですか、みかん娘」
 くい、と私のエプロンのすそを引っ張る姿は大変可愛いのですが、その口調は相変わらずケンカを売ってやがります。
 なんでここまで嫌われているのでしょう。私、まだ何もしていませんよ?
「セキナが決めたことだから仕方ないが……セキナに手を出してみろ」
 本来ならロリロリで可愛いはずであろうソプラノボイスを限界まで低くして、金髪少女がドスをきかせます。
「満潮が迫るか迫らないかのぎりっぎりの砂浜に、顔だけ出して埋めてやる」
 えげつねぇです。やはり、オウカちゃんは私の知る誰よりも危険です。
「というか、もしかしてあなた、セキナさんのことが?」
「……くくっ、その程度で私の弱味を握ったと思うなよ? 野良猫」
「いえー思ってはいませんけど」
 でも、なんだか安心しました。
 口調はすさまじく残念ですが、オウカちゃんは恋する乙女だったのですね。
 恋する乙女は、無条件で可愛く思えてきます。好感度があがりました。
「まぁそもそも、私とセキナは婚約しているから弱味ですらないがな」
「( ゚д゚ )」
「こ、こら黄花。そういうのは、あまり人に言うことじゃないだろ」
「いいえセキナ。こういう野良猫には一度はっきりと、セキナは私のものだと宣言してやらなければいけません」
「も、ものって…………ああもう帰るぞ、黄花!」
「わかりました。じゃあな野良猫、パープル」
「で、では、詳しいことはまた!」
 セキナさんは顔を赤くさせながら、オウカちゃんを抱きかかえるようにして、お店から去っていきました。
「はー……あれが、本当の恋人達かぁ。…………うん、俺も頑張ろう」
 なにやら憧れを抱くように感心しているユカリちゃんの台詞も、私の耳には入りません。
 いえ、別に、本当にセキナさんやオウカちゃんを寝取りたかったとか、そういうワケじゃないんですけど。
 なんか、こう、何かに負けてしまった気分です。

「こうなったらユカリちゃん! 私達も夫婦になるしか!」
「何でそうなるんだよ! ウエイトレスに求婚するなバカマスター!」
「ユカリちゃんは今、ファミレスが舞台のエロゲを敵に回しましたですー!」
 身近な人間の結婚フラグを聞き、
 なぜかテンパリ、ウエイトレスに八つ当たり気味になってしまった、
 そんな美人マスター2×歳の夏が、始まりますです。


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