長編1-5

未完成の長編を投下します
未完成のため各所で拙い点がありますがご了承ください


今北産業(あらすじ)

ツンデレヤンキー直哉に好意を抱く一樹(♂)は事故で死んだ
が、なぜか幼馴染で生徒会副会長の沙耶歌に憑依してしまう
とりあえず沙耶歌として生活することにした一樹だった

ココロノカタチ(仮)

4.部活動

 朝起きたときまでは一番頭を悩ませていたのになぁ。と、俺は演劇部部室の前でまた小さなため息をついた。
 直哉に、女として出会える。その喜びを抑え切れるかどうかが最大の心配事だったはずだ。ところがいざ学校に来てみれば、後輩の女の子は二重人格の勢いで本性をさらけ出すわ、クラスメイトからはいじめを受けているわ、頼りにするつもりの生徒会長は性根の腐った変態だわで問題が山積みだった。
 ただでさえ女の身体になって戸惑っている上にここまで面倒ごとが重なってくると、もはや恋する気持ちの一つや二つぐらい大した不安要素ではないんじゃないかとさえ思う。
「ハァ……」
 沙耶歌がどうしていつもアンニュイな空気を背負っているのか、なんとなくわかった気がした。
「こんにち……わ……」
「フッ、フッ、フッ、フッ!」
 重い気持ちのまま演劇部のドアを開けると、上半身裸の男が物凄い勢いで腹筋をしている光景が飛び込んでくる。
「ほら、あと十秒以内に腹筋十回。でなければまた二十回追加だ」
 その傍らには、パイプイスに座り足を組んで読書をたしなむおさげ髪のエセ文学少女もいた。
 ……立て続けにショックを与えるの、やめてもらえないかな。
「何、してんです、か?」
「やぁ、高瀬か。佐川はしばらく続けていろ、あと百回追加」
「てっめぇ……フッ、フッ! いい加減に……フッ、フッ!」
 文句を言いながら、それでも腹筋をやめないのだから根が真面目な直哉らしい。彼女もそんな後輩の反応に満足しているのか、どこか楽しげに本をたたみ、イスから立ち上がった。
「引退前にもう少し可愛がってやればよかったかな。素直でいい後輩じゃないか」
「ですよねぇ、そこが直哉のいい所……って、そうじゃなくてここで何しているんですか、部長っ」
「大きな声を出すな。いつもの"高瀬〟らしくないぞ」
「うぐっ」
 部長の言うとおり、確かに沙耶歌の演技を忘れ、つい素のままつっこんでしまった。
 幸いにも直哉は腹筋に集中しているらしく、特に気にした様子はない。……それはそれで少しさびしいなぁ、くそ。
「ンンッ――――失礼、取り乱しました。しかしなぜ引退したはずの貴女がここに?」
 咳払いを一つし、この二日間で培った『高瀬沙耶歌』の役に入り込む。
 生徒会では戸惑ってばかりで発揮する機会がなかったが、我ながら会心の演技だ。それほど親しくない相手ならば、ほぼ確実に俺が沙耶歌本人だと信じさせられるだろう。
「なに、そこの佐川に頼まれてね。一時的にだが演劇部に戻ってきた」
「なお……佐川君が、ですか?」
「うん。信じられないのなら、彼の声色を使ってそのときのシーンを実演してやろうか?」
 腕組みなどを決め、さらりと冗談のようなことを余裕ぶって言ってくれる。声帯模写だろうがなんだろうが、この人ならあっさりやらかしてくれそうだから計り知れない。
 相変わらずわけのわからないハイスペック持ちだ。
「私の声色は七種類あるぞ」
「実は怪盗かなんかでしょう、アンタっ!」
「つーか、その話は内緒にしとけって言ったよな先輩よぉっ!」
 腹筋は終わったのか、それとも中止したのかツンデレヤンキーが慌てた様子でツッコミ側に入ってきた。
 どうやら直哉がわざわざ部長を呼んだのはウソじゃないらしい。
「内緒? ああ、そういえばそんな心にもない口約束をしたな」
「んなっ」
 まったく悪びれもせずに白状し、それどころかよりいっそう笑顔に怪しさが漂う。
 ……今度は何を企んでいるんだ。
「見た目とは違い、なかなかピュアじゃないか。とても私好みだ」
 言葉の端々に含み笑いを滲ませながら、部長は伸ばした腕の指先で直哉のアゴを撫でる。
「さ、さわんな」
「この程度で顔を赤くするか。ははっ、ますます好みだ」
 まるで年上の女性が背伸びをしている少年をからかうような構図だな、と俺はそんな光景を冷静な目で眺めていた。
 いたはず、だった。
「……えいっ」
「うん?」
「お?」
 ところが、気がついたときには部長を押しのけ、ぐぃっと二人の間に割り込んでいる自分がいた。
「高瀬?」
「な、直哉にちょっかい出さないでください」
 あまつさえ、そんな嫉妬丸出しの台詞を口にしていた。
 呆れるほどの鈍感野郎でもない限りは、どんな気持ちでソレを言ったのか容易に想像がつく。
 相手が部長ならば尚更だ。
「…………ははぁん」
「うっ」
 望まない期待通り、部長の目が思いっきり怪しく輝いた。
 面白いネタ見つけたと言わんばかりに、口元を三日月にしている。
「くっくっ、なるほどね。どうしてなかなか、愉快なことになっているじゃないか」
「あ……ぅ」
「愉快なって何がだよ。部長も副会長さんも、さっきから様子がおかしいぞ」
「……」
 諸君、呆れるほどの鈍感野郎がここにいましたよ。
 俺の好きな男でしたよ。
「佐川。私はいまからお前のことをギャルゲ主人公と呼ぶことにした」
「急にわけのわからねぇあだ名つけられたっ!」
「手始めにその個性的な髪型をやめて、前髪で顔を隠せ。むしろシルエットのみになれ」
「部長、少し黙りましょう」
「しかしだな、ピュアな乙女心にも気付かない唐変木は」
 乙女心言うな。
「いーから黙ってください」
「わかっていないな。私は君のためを思って」
「部長」
「元、だ」
「少し黙れ」
 俺のためというか、絶対アンタからかいたいだけだろ。
「そうイライラするな。アノ日か」
 一秒経たず喋り始めたっ!
「そのネタはもうやりましたからっ! あと少しは空気読んでください」
「ふぇ~、さ、さすがに校内一周は疲れますですぅ~」
 部長の相手だけで手一杯だというのに、今度は重力など完全に無視したふわっふわの台詞で最後の部活メンバーまで現れた。
 ふぇーってなんだ。ため息か。
 なんだか少し疲れているようにも見えるし、たぶんため息なんだろう。でも意図しなきゃ絶対に出てこないよな、ふぇー。
「あれれー? なんだか変な空気ですねー」
「ああ、福山聞けよ。こいつら、さっきからおかしいんだ」
「部長さんがおかしいのは前からですよー?」
 ……しれっと言うね。まったく同感だけどさ。
「それもそっか。やるな、福山」
「えへへー、褒められましたぁ」
 直哉も直哉であっさり演技女のペースに丸め込まれている。てゆーか騙されてる。
 離れろ直哉ー。そいつの本性は間違いなく腹黒だーっ。
「…………あぁ、可愛いなぁー」
 俺の訴えは届かず、それどころか小声で萌えていた。
 なんか、この女が直哉に好かれているんだなと考えるとムカムカとさえしてくる。
 生徒会長といい、なんで雛菊ばかりモテるんだ。魔性の女か。
「さ、さーちゃん先輩? なんでヒナを睨みますか?」
「え、あ、ああ、うん。なんでもない」
「えぅ……?」
 疑わしそうだった。
 まぁ、なんでもないって言う奴ほど何かあるものなのだから、当たり前といえば当たり前の反応だけど。
「じー……」
 擬音を口にしながらこっちを見るのはやめてくれ。いろいろウザイ。
「コホン――――それより、さっきから二人とも何をしていんですか?」
「あ? 腹筋」
「校内ランニングです」
「いやそうじゃなくて……っていうか校内ランニングって何?」
「説明しよう。校内ランニングとは、校舎内の端から端までを小走りで駆け抜ける鍛錬の一種である。教師に見つからぬよう細心の注意を払う必要があるため、必然と集中力も高められるまさに一石二鳥のトレーニングなのだっ!」
 水を得た魚のようにべらべらと部長が得意げに喋り始めた。
 つーか何、その各方面からクレームの来そうなトレーニング。
「……だ、そうです」
 興味のなさそうな相槌で雛菊が部長の言葉を締める。
「はぁ……でもなんで急にそんなトレーニングをやらせているんですか、部長」
「愚か者めが。良い舞台を仕上げるのに必要なのは台本でも演技力でもなく、体力だ。これがなければ話にならんぞ」
 言われてみれば、この人が現役だった頃はよく筋トレをさせられていた。
 大きな声や、激しい動きを淀みなくこなすには、それなりの体力が必要らしい。
「ところが森実はその重要性を理解してなかったのか、後輩二人のスタミナは役者にとって致命的なほど低下していた」
 それで、腹筋やら校内ランニングやらを二人にやらせていたってことか。
 マイクなど頼らずとも体育館中に響き渡るような声と、メリハリのはっきりした動きで、素晴らしい舞台に仕上げるために。
「でも……」
 言いたくはないはずなのに、口が勝手に言葉を続けてしまう。
「たった三人で、何が出来るんですか」
 ネガティブで場の空気を乱す、俺らしくもないシビアな台詞だった。
 きっと沙耶歌ならば、涼しい顔でさらっと同じことを言っただろう。
 バカバカしい会長命令に従って、そんなことより生徒会に入ったらどうだと雛菊に畳み掛けるはずだ。
「…………」
 だが俺は、やっぱり沙耶歌になりきることはできなかった。
 後輩二人の、どこか居心地の悪そうな視線を浴び、それ以上の言葉を詰まらせてしまう。たった三人という頭数自体が問題ではなく、たった三人になったと指摘してしまったこと自体が、嫌な沈黙を生んだ。
「――――カズキは、この部を潰したくないって言ってた」
「!?」
 沈黙を破ったのは、直哉の声だった。
 が、本人もなぜか驚いたような顔をして声のしたほうを見ている。
「────残された俺たちは、この思いに応えてやらなきゃならねぇ。だから……頼む!」
 直哉の視線を追い、同じように驚いている雛菊を一瞥し、ありえないほど完璧な男声をノドから出す女の姿を捉える。
「────少しの間でいい。俺たちに力を貸せっ!」
 腕組をして、眉一つ動かさず、直哉そっくりの声で熱演をする部長の姿が、そこにはあった。
「久々に心を動かされたよ。このような熱い台詞を台本もなしに言えるような男、そうはいない」
 あっけに取られている俺たちをしたり顔で見やり、いつもの部長ボイスが小さな笑い声を漏らす。
 ……マジで出来るんだ。声帯模写。
「そのお返しというわけでもないが、私も一つクサイ芝居を見せてあげよう」
 ゆっくりとした仕草で腕組をほどき、部長が直哉を指差す。
「森実の遺志は、彼に受け継がれている。ならば君らは三人でなく、以前と何も変わらない四人組のままだ」
「遺志……ですか」
 直哉と一緒にいたいだけの建前が、そんなご大層な言葉で飾られてしまった。
 しかし部長はさらに続ける。
「穴自体は私が埋めよう。だがそれは部員が四人いればこその話だ。……さて高瀬よ。君はまだこう言うか? たった三人で何が出来るのか、と」
「いえ……」
 部を潰したくなかった自分の本音はともかくとして、直哉は直哉なりにこの演劇部を立て直そうとしてくれている。
 ならば俺だってこれ以上失言を重ねるつもりはない。もとより口が勝手に動いて出た言葉だ。
「ありがとうございます。ご指導、よろしくお願いします」
「違う。そこは『別にあなたなんていなくても……でも、ありがとう』と言うところだ」
「そんな指導はよろしくしてませんっ!」
 感謝する気持ちを即効で踏みにじりやがった!
「しかし私だって、彼が動かなければ今ここにいなかったさ。なあ、佐川」
「うう……」
 直哉へ視線を移すと、当人は奇妙なうめき声を上げながら腕をボクシングの防御姿勢にしている。
「内緒にしておけって……言ったじゃねぇかよぉ……」
 恨めしげな唸りが腕の隙間から漏れ聞こえるものの、その語調はふやふやだ。
 愛らしい要素など一つもないはずの男子高校生が、人の胸を高鳴らせることが出来る瞬間を目撃した気分だった。
 あー、やっぱコイツ大好きだ。
「ありがとう、直哉」
「な、なんだよ。名前で呼ぶんじゃねぇよ副会長」
 ガードを解除し、真っ赤な顔が鋭い目つきをよこす。しかしこのタイミングでそんな真似をされてしまうと、怯むどころかむしろ愛らしさがいっそう募ってくるわけで。
 気がつけば、
「直哉」
「だから、名前っ……」
「俺は、一樹だ」
「……は?」
「……はぇ?」
「おやおや」
「……あ」
 とんでもないことを、口走っていた。

   *   *   *

「大馬鹿者が」
「うっ」
 演劇部に残っているのが俺と部長の二人だけになるや否や、自覚済みの非難が浴びせられる。
「意志薄弱め」
 返す言葉もない。いくら感極まったからといって、沙耶歌の振りをしようとした初っ端に自分から正体をバラすだなんて間抜けすぎだ。
「この淫乱」
「ちょっと待て」
 アンタそれ、言いたいだけだろ。
「ふっ……嘘をつけ森実。健康な男子学生が、可愛い少女の肉体になったんだぞ? 夜な夜なふしだらなことをしていて、なんの不自然もない。いやむしろそれが普通っ」
「あー、じゃあ俺はアウトローってことで」
 故意を持ってこの体をいじった事などない。正体の秘匿は無理だったが、そのぐらいのモラルは保てるはずだ。
 本人の承諾なしに体を借りている以上、そうでないと沙耶歌に申し訳が立たない。
「森実……残念だよ。本当に残念だ。君は憑依という最高の自由を許された境遇にいながら、その利点を自ら拒否するのか」
 心底がっかりとしたため息をつきながら、首を左右に振られる。
 俺に何をしろと。
 この人、もし自分が沙耶歌と同じ立場になってもそんなことを言うのだろうか。……言いそうだから困る。
「…………」
「な、なんですか。見てたって、俺は何もしませんよ」
「せいゃ」
「きゃっ!」
 部長の小さな掛け声に反応するより先に、胸にくすぐったさが走る。
 視線を下にずらすと、彼女の手は人並みに隆起している沙耶歌の胸に宛がわれていた。
「くっくっく、いい声で鳴くじゃないか」
「ぶ、ぶぶ、部ちょ……んっ」
 部長の指先に力が込められ、制服を押し上げる胸のラインが変形する。
 何で俺は、脈絡もなしに上級生から胸をまさぐられているんだ。
「くくっ、電気が走ったか? 濡れたか? 背徳感を抱く裏で更なる快楽への期待に胸を高鳴らせたか?」
「エロ漫画の読みすぎじゃないですかねぇっ! とっとと放して下さい!」
 悪党面してセクハラ行為をする部長の腕を叩き落すようにして乱暴に振り払い、二、三歩ほど離れる。
 この人の行動が読めないのは十分知っているつもりだったが、さらに警戒のレベルを上げたほうが良さそうだ。
「森実、考えてみろ。いまその肉体の主導権は君にある。つまりその身体は、いま君のものなんだ」
「それと、胸を揉むこととどう関係があるんですかっ」
「高瀬の意識がない今、君がその身体で何をしたところで誰にも咎められない。わかるか? 女の快楽を自由に貪ることを、『憑依』というシチュエーションは全面的に許してくれる。むしろエロ行為に及ぶのは憑依する側の義務だっ。いやさ摂理だっ!」
「そんなわけのわからんテーマでテンションあげないでくださいっ!」
「森実。私は百合もBLも、TSも全部好きだと言った。それがどういう意味か、考えたことはあるか?」
 じり、と部長が足を前に踏み出してくる。
 不穏な気配を感じ、俺の脚も一歩後ろに下がった。
「じょ、冗談、ですよね?」
「そう思うか?」
 また一歩、じり、と近付いてくる。
 同じように、俺も一歩下がる。
「女の快感は、男とは比べ物にならないらしいな」
 じり。
「あ、あはは、そうなんですか」
 じり。
「君も男だし、本当は知りたいだろう? 女の、快感を」
 じり。
「え、遠慮します」
 トン、とカカトが壁にぶつかる。
 もうこれ以上、後ろに下がることは出来なかった。
「安心しろ。優しくしてやる」
「ひっ」
 部長の手に両腕を捕らえられ、嗜虐的な表情が目の前に迫ってくる。
 ────唇を奪われる。そう思った瞬間、
「きゃああああああああああああああああああああああッ!!」
 ノドが張り裂けろとばかりに、耳をつんざく女の甲高い叫びを上げていた。
「……うるさいな。放課後とはいえ、残っている人間は少なくないぞ? 人が来たらどうする」
 悲鳴を上げさせた諸悪の根源はいつもの平坦な声でそんなことを言い、パッと俺の両腕から手を放す。
 それどころか何事もなかったかのように身を離し、演劇部の出入り口へと向かった。
「まぁ、これも想定内だ。ここが演劇部の部室で本当に良かったな、森実」
「ぶ、部長……?」
「うかつに正体を漏らすと、こういう展開もありえる。『本当は男』という境遇は、モブ男どもの性欲開放スペルだと覚えておけ」
 背中を向けたまま、淡々と部長は語る。
 ここでようやく、自分が騙されていたことに気付いた。
「え、演技だったんですか……」
 一気に足の力が抜け、へにゃあと床に座り込む。
 さすが演劇部部長だ。本気で襲われるかと思った。
 まったく、人が悪い。
「せっかく君に協力して正体を隠してやったのに、自分からばらすからだ。面白いネタを提供していなければ、本気で快楽漬けにしていたところさ」
「台詞はマジだったんですか!?」
「何度でも言ってやろう。私は、百合もBLもTSも、大好きだ」
「…………」
 改めて、思う。
 最重要危険人物だ、この人。
「とにかく君は、自分の立場を十分に理解しておけ。その上で佐川との恋を育むなり、彼の片思いを応援するなりするといい」
「う……や、やっぱり気付いていたんですね」
「森実も佐川もわかりやすいからな。あれで君たちの恋心に気付かないのは、よほどの鈍感か……」
 高いところから人を見下すような部長の喋りは、廊下から響くバタバタという足音と、幾人かの話し声によって遮られた。
「悲鳴はこの辺からか?」
「はい。女の子の声でした」
「くく、誰よりも早くここに駆けつけられるとは運がいい。その女子生徒を探すぞ、書記。うまくいけば僕の名声に繋がる」
「はい、会長」
 どうやらさっきの悲鳴を聞きつけて、生徒会の二人がやってきたらしい。
 というか正直すぎるぞ会長。なんでわざわざ言わなくていいことを言うんだ。
「ほぅ、生徒会長のおでましか。これはまた、随分と与しやすい相手が来たものだ」
 アレが取るに足りない相手だと!?
「どんだけ上位存在なんですか、部長」
「くくっ」
 俺が半ば呆れたような声を出しても、部長は背中を向けたまま、生徒会長とよく似た笑い声を上げて肩を揺らすだけだった。
 どうでもいいが、会長と部長の喋り方はよく似ている。この学校の上級生は、尊大な喋り方がデフォルトなのか?
「戸締りは任せたよ、森実。私は、少し遊んでくる」
 そう言って軽く手を振ると、悠然という言葉の似合う足取りで部長は演劇部のドアを開け、そのまま振り返ることなく廊下へ出て行った。
 背中でひらひら動くおさげ髪は、まるで犬の尻尾のように、どこか楽しそうに揺れていた。





地盤固め終了
部長しばらく退場

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プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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