青運命3

「ネコス」シリーズの番外編を投下します。
ネコスシリーズを知らなくても問題なく読めるよう配慮はしているつもりです

前半部分は、本編にある青葉さんの憂鬱編をご覧になっていただければより理解し易いかと思います

言い回しが多少エロ向きなのでご注意ください

【ネコス・ブルーディスティニー】 その3

 私の恋人と名乗ることが許された『彼』は、満足そうだった。
 ただそれも一時期だけのことで、時が経つと青田は不相応にも私との親密な関係を求めてくる。
 彼の要求とは、身体を重ね合わせるときに自分を女体化せず、男と女で愛し合おうというものだった。


 つまり男のままで私を抱きたいと、そういうわけだ。
「わかりました。別れましょう、青田君」
 私の純潔を求める男に用はない。
「ど、どうして……」
 私の心へ土足で踏み込む人間に用はない。
「あなたには、女体であること以外に価値はありません」
 極寒のような瞳で青田を一瞥し、そのまま背を向ける。
 やはり、私には。
 兄さんしか、いないようだ。


 そうして私と青田のただれた肉体関係は終わった。終わった、はずなのに。
「なんで、ストーカー化しているんでしょう」
 彼に言わせると、私はある日の晩、猫耳をつけて彼に関係のやり直しを求めたらしい。
 猫を心の底から嫌悪するこの私が、猫耳? ハッ、冗談もたいがいにしてほしい。
 確かに私は最近、記憶を失うことが多い。だが、そんな行動を取るほど疲れてはいないはずだ。
 ……記憶を失った日の翌日は、決まって腰が痛く子宮の中が妙な充足感に溢れている。だが処女膜は破れていないし、生理だっていつもどおりだ。
 よって、青田の『私が猫耳をつけてエロ行為を迫ってきた』という供述は妄想であると断言できる。
 妄想で私をどう犯そうと構わないが、それを現実と混同するのはどうかと思う。はっきりいって、犯罪者以外の何者でもない。
 いいから話し合え、と兄のお店のバイト美女、紫さんはそういった。
 そのとき、私はうかつにも自分が兄萌えだと口を滑らせてしまい、その後日、青田は自ら進んで女の子になり兄さんらしさを勉強し始めた。
 口に出すのはシャクだから絶対に本人には悟らせないが、私は今でも兄のことが好きだ。
 私の兄さん好きは揺るがない。青田のしていることは無駄な努力だ。
 だから、というわけではないが、私は再び青田(♀)の肉体を貪り始めた。
 女の青田をいじるのは、やはり面白い。

 ***

「夏の海といえば、人気のない岩場の陰でのセックスです」
 水着姿の青田を岩盤に押し倒し、私は彼女の薄い布に隠された部分を布越しに撫で回す。
 海へ旅行に来ても、今日も彼はいつもどおりなすがままにされていた。
「んっ、んん……」
 私よりも張りのある乳房をこねくり回すたびに、びくびくと身体を震えさせ息を荒くさせる。
 男は単純だ。
 兄さんっぽくなる、などともっともらしい決意をしておきながら、彼はこんなにも簡単に女の快楽に落ちる。
 兄ならば、きっと受けには回らない。快楽を悦ぶことはあっても、快楽に振り回されることはないはずだ。
 ……ためしてみたい感情をぐっと抑え、私は今日も兄の代用品として彼女を抱く。
 海辺における夏の情事は、そうして終わるはずだった。
「青葉、さん……」
「どうしました? 揉むだけでは物足りませんか?」
「……僕は、いまから君にひどいことをします」
「?」
 私に押し倒され、おっぱいを揉まれている分際で、青田は不敵にもそんな宣言をし、羽織っていたパーカーのポケットに手を突っ込む。
 取り出したのは、憎たらしい顔をした猫の絵柄が描かれた缶詰だった。
 彼はソレを空高く放り投げると────。
「来ーーーーーいッ!」
「にゃーーーーーッ!」
 高らかな叫び声で、私の天敵を召還した。
「ひっ!?」
 突然現れた猫は青田の投げつけた缶詰を空中でキャッチし、岩場にも関わらず華麗に着地する。
「にゃー……」
 憎たらしい鳴き声を上げ、猫が睨みつけてくる。
 私は慌てて武器になりそうなものを探すが、投げつけられる手頃な石はどこにもない。
「な、なんでこんなところに猫が……」
「僕が、連れてきた」
「青田君っ、あなた……!」
 私が猫嫌いなのを知っておきながら、連れて来た? 猫をちらつかせ、私を恐怖で縛るつもりなの?
「……くっ」
 下等で、クズで、虚栄心と性欲しかない男の本性が出てきたわけだ。
 やはり兄さん以外の男はくだらない。
 見た目が美少女でも、男は男。私の嫌悪ランキングは、猫ではなく男を一位に変動させなければならないようだ。
「青葉さんは、なんでそんなに猫が怖いの?」
「答える義務はありません。くだらない会話などやめて、さっさと男に戻り私を精液まみれにするがいいです、この腐れ外道」
「えぇっ? な、なんか勘違い……」
「うるさい。猫を脅しに使うなんて、まさに外道の所業じゃないですか」
「にゃー」
「ひぅっ」
 じりりと、猫が、私に近づく。
 怖い。今すぐ背を向けて逃げ出したい。
 だが背を向けた瞬間、青田は私へ襲い掛かるよう猫に命じるだろう。
 接近戦で、猫に勝てるはずがない。ましてや私は素手なのだから、間違いなく負けてしまう。
「僕が、治すから」
「……え?」
 猫を傍に控えたまま、青田はそんなことを言い出した。
「僕が、青葉さんの猫嫌い、治してみせるよ」
 彼が手を振ると、猫は私を一瞥し、どこかへ去っていった。
 強張っていた身体から、恐怖と緊張がゆっくりと抜けていく。
 だが、その油断が命取りだったのかもしれない。気がつくと、私は青田の胸に顔を押し付けられていた。
 女体化しているので、さほど嫌悪感は沸かない。ただ、頬に当たる感触が少し苛立つ。
 ……そんなことを考えられるぐらいには、私の心は落ち着いていた。
「僕は、青葉さんのお兄さんみたいになれれば、きっと君は振り向いてくれるって思っていた。けど、やっぱり僕は僕だから」
「ええ。兄さんこそが、私の運命の相手です」
 兄妹という、誰にも操作の出来ない強い絆で結ばれた私達こそ、運命の二人だ。
 兄さんの猿真似をしたところで、それはただただ滑稽にしかならない。
「だから、僕は僕なりのやり方で青葉さんの運命の相手になる」
「……それが、猫の克服ですか?」
「うん」
 それしきのことで、彼は私の運命の相手になれると信じているのか。
 浅い。浅すぎる。
 運命とは、人間が作り出せるものではないはずだ。
 それなのに。
 なんで、目に涙が滲むのでしょう。
「あ、青葉さん?」
「……帰ります」
 青田に背を向け、私は歩き出す。
 後ろから、彼がついてくるのがわかった。
「……いいことを、教えてあげましょう」
「いいこと?」
 背を向けたまま、彼の心意気に勲章を贈る。
「あなたが男だと主張したいのであれば、女の子でいることに恥じらいを持たないでください」
 元男というギャップ萌えを引き出すのは、やはり恥じらいだ。
 それが楽しいから、私は青田と付き合うことにした。
 だが兄にギャップ萌えを感じたことはない。兄さんは女でも兄さんだった。
「それこそ兄さんみたいに、女でいることを受け入れ、楽しんでください」
 兄のように恥じらいをなくさなければ、きっと彼はいつまでたっても女体化した男――私の暇つぶし相手どまりだろう。
「……う、うん。頑張ってみる」
「ええ」

 ――――成長した私は、もう兄さんに守ってもらわずとも、猫を退治できる。
 でも私が猫を退治すると、なぜか友達は離れ、教師は怒り、両親は泣いた。
 人間の大多数がゴキブリを殺すことに躊躇していない。その対象が猫になっただけで、なぜこんなに責められるのか私にはわからなかった。
 唯一、兄さんだけが私を許してくれた。でもそれだけだった。
 兄は何も聞かない。それが魅力の一つとはいえ、寂しさを感じていたのも事実だ。
 私の理解者は、絶対に現れないだろうと思っていた。
 ましてや、猫嫌いを治してあげようなんて思い上がった馬鹿が出てくるなんて完全に予想外です。

 なら、そんな馬鹿に期待を抱いてしまう私は。
 底知れない大馬鹿者なのかも、知れません。






全国の猫好きを敵に回す青葉ストーリーでした
なんだか不完全燃焼ですいません

今回で青運命は終了します
二人の決着は本編でいずれ

ここまでおつきあい、ありがとうございました
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