長編2-2

少し死んでいました。季節の変わり目はアレがアレなので(謎)
龍角散飴つよい


未完成の長編を投下します
未完成のため各所で拙い点がありますがご了承ください



今北産業(前章までのあらすじ)

後輩の直哉に好意を抱く一樹は事故に遭い死に至るが、幼馴染の沙耶歌に憑依し蘇った
女として生活することにした一樹だが、沙耶歌は学校でいじめられていた
さらに、うっかり自分の正体を直哉達にバラしてしまう……

 【生徒会副会長の知られざる裏の顔! 放課後はケダモノ?】
「ゴシップ記事かよ」
 直哉の協力を得たその翌日。いまどき三流雑誌でもお目にかかれない見出しの記事が、学校新聞の一面を飾っていた。
 道理で、朝から生徒達の視線が痛いわけだ。
 マスコミにネタにされる芸能人の気分というのはまさにこんな感じなんだろうなぁ、などと人ごとのように考えながら内容に目を通す。
 いつの間に撮られたのか、先日の濡れネズミ状態になった沙耶歌の姿が記事の添え物としてでかでかと載せられている。
 書いてあることを要約すると、高瀬沙耶歌は変態女で、わざとびしょ濡れになり直哉を誘惑したらしい。
 写真に目を凝らせば、なるほどなかなか際どいアングルでびしょ濡れワイシャツの透けブラが確認できる。
 検閲っつーか教師達がまったく機能していないことを窺わせる、そんな新聞だった。
「先輩……」
「ん?」
 体調不良を疑わせる暗い声に振り向くと、怪獣の名を冠するヘアスタイルの後輩がうろんな目つきで俺を見ていた。
「ああ、ヒナちゃん。おはよう」
「おはようじゃありませんっ。さーちゃん先輩がエロ魔人って、どういうことですか!」
「誰のことだよそれっ!」
 そんな称号は記事のどこにも書かれていない。
 っていうか後輩。こんな新聞を鵜呑みにするんじゃありません。
「どうしてこんなこと書かれているのか、こっちの方こそ知りたいよ」
「え? じゃ、じゃあ、全部ウソなんですか?」
「……いや、写真は本物だけど」
「やっぱり先輩はビッチ化しちゃったんですねっ! サヤカズキビッチですか!」
「人をロシア人みたいに呼ぶんじゃない!」
 フェミニストのつもりだったけど、このアマになら手を挙げてもいいと思う。
 いまの俺は女だし、ちょっとぐらい叩いてもノーカンだよな?
「あわわ、そ、そんな怖い顔しないでくださいよぉ。冗談ですから。ヒナ、最初から先輩のこと信じていましたよー」
「……」
 その台詞の真偽はさておき。
 コイツ、うぜぇ。
「でも写真が本物なら、どうしてこんなずぶ濡れに……?」
 雛菊は壁紙新聞を見上げながら、アゴに人差し指を添えて小さく首を傾げる。
 これ以上彼女の所作を眺めているのは不健康と判断し、俺は目を逸らしつっけんどんに応えた。
「関係ないだろ。ほっとけ」
「ヒナ、報道部にお友達いますよ?」
 こちらの態度にめげることなく、この新聞を作った部活動の情報を口にする。
 恐ろしいことに、視界から追い出したはずの顔が頭の中でニコニコしていた。
「この記事を誰が書いたのか、聞いてきてあげてもいいんですけど」
 つまり、俺の知っていること洗いざらいさらけ出して自分に協力を頼めと言っているわけだ。
 直哉といい、強引なお節介屋ばかりか俺の周りは。
「いや。俺が直接聞く」
「会うだけ無駄ですよぉ。記事に書かれている本人が、これは誰が書いたのかって聞いても普通は答えてくれませんから」
「ぐっ……」
 そんなことはわかっている。
 だがそれでも、雛菊に頼み事をするというのはシャクだし、何より貸しを作ってしまうのが恐ろしかった。
 どんな形で返すことになるのか、まったく想像つかない。
「せーんぱい? どうしましたかー」
 甘えるような声色で、笑顔の腹黒娘が廊下の景色に割り込んでくる。
 ただの思い過ごしならいいが、その笑みは事情を話すまで逃がさないとでも言いたげだ。
「どけ」
 俺と雛菊の間に走っていた奇妙な緊張感を打ち破ったのは、そんな不機嫌な言葉だった。
「直哉」
「ふん」
 露骨に苛立った声を上げ、普段よりずっと凶悪そうなしかめ面の後輩が壁にかかった新聞をつかむ。
 何をするつもりなのかという一瞬の間に、紙が勢いよく引き裂かれる音が廊下に響いた。
「いつまで貼っとく気だ、こんなムナクソ悪いモン」
 破り取ったばかりの新聞の残骸を握り、鋭い目つきが俺たちを睨む。
 いきなり記事を破るという行為を目の当たりにしたせいもあってか、少しだけ怯みそうになっ――。
「おはようございます、ナオくん」
「よぉ」
 ったのは、俺だけだったらしい。
 雛菊の度胸が据わっているのか、自分がビビリすぎなのか。なんとなく後者のような気もするが、それはとりあえず棚の上にでも置いておく。
「にしても、なんでこんな新聞が出回っているんだよ。昨日の今日だぞ?」
「……鋭いな、お前」
 言われてみればその通りだ。
 俺が水害を被ったのは下校時刻間近の放課後だった。それなのに、次の日にはもう新聞の一面を飾る記事が出来ている。
 プロならいざ知らず、学生の部活動にしては行動と情報が早すぎだ。
「こうは考えられないか? つまり」
「ナオくんナオくん。どうして先輩はびしょ濡れだったんですか?」
 まるで無垢な少女が老婆に質問をするかのような調子で、腹黒娘が推理パートに入ろうとした空気をぶち壊してくれた。
 ……わざとか、貴様。
 雛菊は相変わらずニコニコするばかりで、その真意は読み取れない。
「記事の内容が本当なら、ナオくんは事情を知っているはずですよね」
「さぁな。知らねぇ」
「!」
 直哉が、雛菊に嘘をついた?
 好きになった女のためならどんなことでも喜んでやりそうな、あの直哉が?
「ふーん。二人だけの秘密ってワケですね。ヒナは仲間はずれですか」
 望ましい回答を得られなかったのが不満なのか、いつもの人懐こい眼差しに心持ち冷たさを宿らせる。
 笑顔を常時貼り付けている彼女にしては、かなり珍しい変化だ。
「じゃあ、寂しいヒナはバイバイします。おふたかたも、早く教室に入ったほうがいいですよー」
 そういって小さく頭を下げると、雛菊は小走りに階段を昇っていった。
「……よかったのか?」
 二人きりに戻り、横目で直哉の機嫌を窺う。
 さっき思い浮かんだ推理パートをリトライするよりも、この男がどういうつもりであんなことを言ったのかが気になった。
「仕方ねぇだろ」
 仏頂面のまま固定されていた顔が、その台詞を皮切りにして融解していく。
「下手に話して福山まで巻き込んじまったら、今度はアイツがやられそうだろ」
「あ……」
 確かに、一理あった。
 いじめをする側は、時にいじめから救おうとする人間さえも攻撃対象にする。
 特に雛菊はいろいろと恨みを買っていそうだ。というのはさすがに自分の主観が強すぎるが、なんとなくいじめられやすそうなタイプには見える。そんな少女がいじめの渦中に飛び込んできて巻き添えを食らわない保障は、さすがに出来なかった。
「優しいんだな、直哉」
「べ、別に福山のことが心配だからとかじゃねぇしっ。いじめがこれ以上増えるのがヤだっただけだしっ」
「はいはい、ツンデレツンデレ」
「部長みたいなこと言ってんじゃねぇっ!」
「……え、マジ?」
 地味にショックだ。
 やっぱ、あの人の影響受けているのかな。
「ったく、緊張感の無い野郎だ」
 呆れたようなため息を吐き出す。
 とにかく、これからの指針は決まった。
 破り取ったばかりの新聞を強く握り、その意気込みを表明する。
 即ち、報道部への突撃だ。
 雛菊は会うだけ無駄だと言ったが、それでも手をこまねいて頭を悩ませているよりはずっとマシだろう。
 行動しなければ、何も始まらないのだから。


 白い目。蔑みの眼差し。同情的な瞳。憐憫を含んだ眼。
 お世辞にも好意的とはいえないそういった視線が、直哉と別れてから昼休みに至るまでずっと向けられていた。
 例の新聞による不名誉な宣伝効果は、早くも学校中へ行き届いたらしい。
「きっつぅ……」
 連中が信じているような後ろ暗いことは何もないのに、ギスギスした空気を浴びているうちになぜだか追い詰められている気になってしまう。
 それは学食でも同じで、いくら俺でも周囲の注目を浴びながら優雅にランチタイムを過ごせる自信はなかった。
 人目を避けていじめられっ娘の定番、便所飯――といきたいが、やはり女子トイレに入るのはいまだに抵抗感を覚えるため、校舎の裏庭に設けられた石垣を椅子代わりにして購買の戦利品を広げる。
 コッペパン一個を頬張りながら、今朝掲示板に張り出されていた新聞の縮小版に再度目を通す。
 朝は雛菊に中断されてしまったが、考えをまとめるためにももう一度コレには目を通す必要があった。
「むぐ……」
 マーガリンとイチゴジャムの香りで口の中を満たし、限りなく真実に近い捏造記事を読む。
 普通、放課後に起こった事件を一朝一夕で新聞に纏め上げられる生徒がいるとは考えにくい。だが、記事があらかじめ用意されていたとしたらどうだろう。
 すでに完成した原稿に現場で撮った写真を貼り付けるだけならば、一晩で出来る。
 自分がこれからやることに捏造をくわえて記事を作り、実際に書いた内容を行動に移せばあっという間にこの新聞は本物として扱われるわけだ。
 つまり。
「犯人は、報道部の中にいる!」
 某探偵っぽくスタイリッシュに言ってみる。
 関係ないが、漫画などの探偵はどうしてあれだけ自信満々に内部犯の仕業だと言ってのけるんだろう。通り魔が跋扈するこの世の中、外部犯の場合が内部よりもずっと多いのにな。
 もし俺の状況が探偵漫画だったなら、きっと報道部はフェイクで真の犯人はやはり内部の人間というパターンかもしれない。
「……」
 演劇部の面々の顔を思い浮かべる。
 直哉は協力者だし、雛菊もウザイ笑顔で俺の手助けをしようとしてくれた。部長は性格が捻じ曲がってるものの、こうして裏から手を回すような陰湿なやり方はしない人だ。
 結論。俺の内部は、全員シロ。
「――――おめでたい人ですね」
「やかましい」
 ドライな沙耶歌らしい台詞を紡ぐ自分の口に、パンを突っ込んで黙らせる。
 無意識の表れなのかなんだか知らないが、俺が沙耶歌として口にする言葉はいちいちシビアだった。
「ここにいたか、高瀬」
「ふぉいひょふ?」
 威圧感を相手に与えるような声に顔を上げると、生徒会長と書記のセットに食事の中断を強制された。
 まさかこんな場所で、しかも会長の方から話しかけてくるとは思いもよらず、もともとの苦手意識とも相まって惜しげもなく怪訝な顔を浮かべる。
「ふぉむ」
「なんだ高瀬、その態度は。物を口に入れながら喋るんじゃない」
 ……そっちかよ。
 意外と寛大だ。
「ふん。しかしその様子ならば大して気に病んでいるわけではない、ということか」
「はい?」
「取り越し苦労だったようだな。行くぞ書記」
 自分の世界が他人にも共通認識されていると信じて疑わない生徒会長は、勝手に何かを納得して背中を向ける。
 ……結局、何をしに来たんだ? なんて、考えるだけ無駄なのでただその後姿をぼぉっと見送った。
「その、逆境に遭っても平静を乱さない心は実に好ましい」
「はあ」
 わざわざ首だけ振り向いて不敵な笑みを見せ付けられる。
 よくわからんが、褒められたようだ。
「君の復帰を、僕は昨日の僕以上に期待して待っているぞ」
 相変わらずわかりづらい言い回しで芝居じみた台詞を残し、会長は今度こそ歩き去っていった。
 やれやれとため息をつきたい気分だが、まだその時ではないことぐらい、わかる。
「…………」
 なぜなら書記の女の子が、物っ凄い冷たい目で俺を睨んでいるからだ。
「えっと。なん、ですか?」
「…………」
 俺から声をかけても、書記はじっと相手を凍えさせるような瞳を向けてくるだけで何も語ってこない。
「あの、会長、行っちゃうけど?」
「……会長は」
「うん?」
「会長は、好ましいと言いましたが」
 確かに、言われた。ちっとも理解できなかったけど。
「スカートのまま脚を組んで座る女性は、どんな人間だろうと好ましく思えません」
「え…………ぬわっ」
 無意識に太ももを重ね合わせていたことにいまさら気付き、慌てて脚を閉じる。
 これか。冷たい目を向けられていたのはこれが原因か。
 というか、なんかすっげぇ恥ずかしい。丈の長さが長さだからどれだけ屈もうとも下着を拝める確率はゼロに等しいが、この顔の熱さはもうそんな問題とはまったく別のところにあった。
 書記や生徒会長に、脚を組んでいる姿を見られてしまった。そのこと自体が、とんでもない後悔と赤面を引き連れてくる。
 何もそこまで恥じ入る必要はないだろうと心の片隅では首をかしげているが、そういった気持ちを冷静に分析できるほど俺は落ち着いていない。
「気をつけなさい。ただでさえ、副会長はふしだらだというウワサが広まっているのですから」
「あ、ああ……うん。ありがとう。平気」
「まあ会長の言うとおり、余計な心配でしたが。副会長があんなウワサ程度で傷つくはずがありませんよね」
「心配、してくれたんだ」
「――――」
 書記の女の子は眉一つ動かさないまま、冷たい視線をやっと逸らしてくれた。
「では、また」
 身体を翻し、遠くなった会長の背中を追う。
 その足取りはまるで、列から少しはぐれてしまったひな鳥が親鳥の傍に行こうとしているような、そんな微笑ましさを想像させてくれた。
「……悪い奴らじゃ、ないんだよな」
 少しだけ。ほんの少しだけだが。
 生徒会への評価を変えることのできた、有意義な昼休みだった。





……遅筆!!(#゚д゚ )
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Author:巫

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・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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