長編2-6

未完成の長編を投下します
未完成のため各所で拙い点がありますがご了承ください


今北産業(前章までのあらすじ)

後輩の直哉に好意を抱く一樹は事故に遭い死に至るが、幼馴染の沙耶歌に憑依し蘇った
女として生活することにした一樹だが、沙耶歌は学校でいじめられていた
さらに、うっかり自分の正体を直哉達にバラしてしまう……


 部室へ戻ると、待ちわびたとばかりに本を閉じ、今回の仕掛け人が薄ら笑いを浮かべていきさつを聞いてきた。
 逆恨みであるとわかっていても、その何もかもを見透かしたような笑顔にイライラしてしまう。自己嫌悪で忙しい俺の気持ちも察しているに違いないくせに、どうしてそう無神経な質問と表情を突きつけるのだろう。
「ふむ、不機嫌ロード爆走中。といったところか」
「そーっすね」
 どうせ盗聴器なり隠しカメラなりで大方の顛末は把握しているはずだ。
 それなのに、あえて俺の口から話を聞くつもりなのがまた底意地の悪い部長らしい。
「どうなったかなんて、全部わかっているんでしょ? 勝手に想像しててくれませんか」
「そうか。爆発しろ」
「なんでっ!」
「森実三原則というのがある。一つ、私を傷つけないこと。二つ、私の命令には絶対服従。三つ、上記に違反しない範疇で自己を遵守すること。あとリア充は爆発すること」
「三つじゃないしっ!」
 しかも何だ最後の。
 一瞬でどんな想像に行き着いたんだ。
「わざわざ私が熱演までして追い詰めた事件だ。一部始終を聞く権利ぐらいあると思うが?」
 気を取り直すようにそう主張し、無回答を却下する。
 また拒否してもよりいっそうわけのわからない話題が繰り広げられるだけだと悟り、俺は結果だけを伝えることにした。
「とりあえず、もういじめないって約束させました」
「ほう? そんな口約束で解放したのか」
「別に、心の底から沙耶歌を憎んでいるってわけじゃなさそうだったんで」
 ユウは、ただ単に利用されただけだ。
 沙耶歌に確固とした攻撃意志を抱く、誰かに。
「やはり黒幕がいたか。まぁ想定の範囲内だな」
「ああもう、ホント部長は、なんでもお見通しですね」
 これなら、黒幕退治も楽勝だろう。
 しかしそんな人任せにする思いを責めるように、彼女は厳しい双眸で俺を睨んだ。
「買いかぶるな、と言ったはずだぞ森実。私は神ではない」
「は?」
「この件に黒幕がいることは、君ですら想像していたことだ。しかしその正体を承知し泳がせているほど、私は慧眼策士ではない」
「……はは、まさか。冗談ですよね」
「もう一度言わんとわからんか? 私は神ではない。普遍的な、どこにでもいる女学生だ」
 一般的な女学生は声帯模写なんてしないし、幽霊にデコピンをかましたりもしません。とは、突っ込める雰囲気ではなかった。
 俺を眺める部長の瞳は冷たく、いつも浮かべているはずの人をからかう笑顔は、まるで突き放すようなものになっている。
「私に甘えるな、森実。この問題は自分で解決すると、お前は自分でそう言ったんだ」
「それは、そうですけど」
「日立優生と会ったことで、気力を使い果たしたか? そんなことは知らん。自分の言動には責任を持て」
 部長の言葉に、俺は何も返せなかった。
 確かに俺は、この問題は自分で片をつけると、そう言った。なのに、自分が最低野郎だと思い知り落ち込んでいるからといって、バトンタッチしてもらうなんて虫が良すぎる。
 けじめは、自らの手でつけなければいけない。
「……すいませんでした」
 正論すぎる部長の言葉に、俺は頭を垂れて謝った。
「ふむ。わかればいい」
 返事に満足したのか、部長はようやくいつも通りの、やっぱりなんだか腹の立つ微笑を浮かべる。
「げ、元気出せよ、カズキ。俺は協力するぞ?」
「直哉……うん。サンキュ」
「おい待て、私だって協力するよ。私に全て任せようという腹積もりが見えたから、叱っただけであってな」
「はは、わかっていますよ」
 味方が傍にいる。
 自分は、一人ではない。
 そのことが、俺の心を穏やかにしてくれた。
「ふにゃ~、ただいま戻りましたですー」
 ガラリと教室のドアを開け、わざとらしい疲れ声をあげながら最後の味方が現れる。
 てっきり帰ったかと思っていたのだが、どうやら彼女もユウの撃退を終えるまで待っていてくれたらしい。
「あ、先輩。お疲れ様でしたー」
 丸まった一枚の紙を抱きしめて、雛菊は笑顔のまま俺たちにトコトコと近付く。
 ……なんだ、あれ?
「お帰り福山。用事とやらは済んだのかな?」
「はいです」
「用事?」
「なぁ。それはなんだ?」
 後生大事に抱えているポスターのようなものを指差し、直哉が雛菊を除いたここにいる全員の疑問を代弁した。
「えへへ~、これはですねぇ」
 もともと笑顔だったフヌケ面をさらに緩やかにして、巻物の両端をつまみその紙面をひらきのべる。
「な…………」
 まず始めに、ことの発端となった壁新聞によく似たレイアウトが目に飛び込んできた。
「にへへ~」
 清書されていないのか、荒く手書きで描かれた枠の中には、これまた例の新聞を彷彿とさせる見出し文字がある。
「ぬぅ……これは」
 見出しの情報を視覚的に捉えるためか、貼り付けられた写真は話題の人物を被写体に据えていた。
「ねーわ……」
 いまどき珍しいおかっぱ頭の少女が、『書記』という腕章を装備し、冷然とした眼差しをカメラレンズにまっすぐ向けている。
 そして、その隣で躍る文字にはこうあった。
 【下克上? 副会長の座を狙い、暗躍する書記!】
「ヒナ……ちゃ、これ……」
「この人がぁ、日立先輩に指示を出していた黒幕さんですー」
 まるで百点を取った子供が母親に自慢するように、ニコニコと言う。
「ふふっ。先輩をいじめていたんですから、同じことしてやらないと不公平ですよねぇ」
 手柄を褒めてくれといわんばかりに、相変わらずの間延びした声で雛菊は無邪気に微笑んだ。
「これ、報道部が?」
「はい。ヒナ、報道部にお友達がいますから~」
「でも、一人じゃ新聞なんて」
 一つの新聞を、一人で作れるはずがない。
 他ならぬ報道部員が言っていたことなのだが。
「一人じゃないですよ? ヒナのお友達が他の報道部員さんたちにお願いしたら、みんな協力してくれました」
「…………」
「人望のある人って凄い。ヒナはそう思いました」
 それは、つまり、まさか。
「友達って、報道部の部長……とか?」
「わぁ、先輩よくわかりましたね。さすがですー」
「は、ははは……」
 おかしくもないのに、なぜか俺の口からは乾いた笑い声が出てきた。
 人は、想像を絶する相手を目の前にすると笑ってしまうらしい。
 震えるだけが恐怖ではない、ということである。
 この女こそ、まさにソレだ。
「…………くっ、くっくっく」
 理解を全力で拒否したくなる少女を前にして、ただひとり、部長だけが心底楽しそうに肩を震わせていた。
「森実よ。残念だがお前は自分の責任を果たせないようだ」
 心に決めたばかりの意気込みが到達できないものになってしまったことを、口元をゆがめ意地悪く宣告される。
「良いんですか、こんなの」
「良いも悪いもあるか。納得できないなら、自分なりにけじめを付ける方法を見つけるのだな」
「はぁ」
「いやぁ、感謝するぞ福山。この私が予想外を浴びるなど久々だ! はっはっはっは!」
 悪役っぽく笑い転げる部長と、いまだ記事を凝視したまま固まる直哉と。
「これでもう、先輩に意地悪する人はいませんです。よかったですね、せーんぱいっ」
 懐いていると錯覚してしまいそうな作り笑いを浮かべる雛菊に。
 俺はただただ無言で、やるせない気持ちの着地点を探るのだった。




減速します

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