ある日の俺と彼女 3/3 '12

自分の彼氏を、あらゆる理由付けでTSさせる彼女
そんなバカップルのゆるいSSシリーズです
TS的萌えは皆無です

ある日の俺と彼女 3/3 '12

 今日は三月三日の雛祭り。いわゆる、女の子の日だ。
 俺をあらゆる手段で女にしようと日々画策しているマイ彼女が、果たしてこんな据え膳のようなイベントデーを見過ごすだろうか?

 「……しかし、これは予想外」
 朝起きたら、俺は男だった。
 というか、男が俺だけだった。
 正確に言うと、俺以外に男という存在が消えていた。
「なぁ、友よ。お前は、男だったよな?」
「オトコ? なにそれ」
 ……こんな調子である。
 この世界は、俺を除き、オトコという概念がきれいさっぱり消えているわけだ。
 女だけの世界に男がただ一人……という、ラノベでもありがちなハーレムモノの世界ではあるが、生憎とまったく嬉しくない。
 ちゃんとした彼女がいるとかそれ以前に、同性が一人もいないこの孤独感は半端でなく辛かった。
 俺だけが女じゃない。そのことが、酷く頼りなく思える。
 こんなおかしな世界を作る事も、あのチート能力者にはたやすいことだ。彼女と直接会い、元の世界に戻してもらえれば、それで今回の事件も終了である。
 しかし。
「あー……くそっ。どこにいるんだよ」
 マイ彼女とは、朝から連絡がつかない。というか、三日ぐらい前から会っていない。
 最近、バイトで忙しかったこともあり、会う機会はめっきり減った。
 今回のトラブルにはそういった事情も含んでいるような気がする。あえない寂しさから世界を改変するなんて、相変わらずスケールの大きいハニーだ。
 心の中ではこんな調子でお気楽を装っているが、実のところ俺は結構焦っていた。
「……家にもいない、大学にもいない、俺のアパートにもいない…………」
 彼女が、かくれんぼしている。
 以前も俺を一方的に女体化し姿を消したことがあるマイ彼女だが、今回は世界を丸ごと変えた上に居場所はノーヒントだ。
 制限時間は告げられていないが、世界を一日このままにしておくとやばいような気がしてならない。
 とりあえず、一刻も早く俺は彼女を見つけ出したかった。
「うん?」
「あーーーーもーーーーー!!!!」
 町外れまで来たところで、覚えのある女の叫び声が聞こえた。
「無駄さ。君がどんな能力を使おうとも、それがTS由来の力なら僕は全てキャンセルできる!」
「くそ……こんなところにアンタみたいのが居たなんてね! TSキャンセラー!」
「ふっ、ここから先は僕らの世界だよ。ゲストは自分の地区に帰るんだ」
「歯とか輝かせないでよ、うっざいなぁ! 自分は絶対に女体化しないって確信しているような男、私、大っきらい!」
「気が合うね。僕も君のような粗製濫造の性転換者を生み出す女は嫌いさ」
 やたら気取った男の声とヒステリックに会話をするこの声は……。
「おや、どうやら君の暴走を止める鍵のお出ましか……。僕は失礼させてもらうよ」
「待ちなさい! まだ決着は…………!」
「……おーい、マイ彼女」
 声の発信源にたどり着くと、そこには愛しの恋人が片ヒザをつき、こじんまりとした喫茶店の入り口を睨みつけていた。
 相当イライラしているようだ。珍しい。
「何よ。私に構わないで」
「いや、そういうわけにも」
「うるさいなぁ! あなただって、本当は私のこと嫌いなんでしょ!? さっきのTSキャンセラーみたいに!」
 ますますいみがわからん。というかその中二病ッぽい能力者称号を繰り返し使うな。
「落ち着け」
「何よ! 私の誕生日にお祝いにも来なかったくせに……!」
「は?」
 …………誕生日?
「2月29日は、私の誕生日! ずっと、ずっとうちに来てくれるの待ってたのに! なんで来なかったのよ!」
「いや、初めて知ったよ! というか、なんでそんな日に限って受身なの!?」
「誕生日の日ぐらい、あなたからのアプローチが欲しかったからに決まっているじゃない! それなのに……それなのに……!」
「いや、マジ初耳だしその情報。っていうか四年に一度なのか」
「そうよ! おかげで次の誕生日は四年後! あなたと私が恋人同士でいるうちに、お祝いできる、貴重な日だったのに!」
 叫びながら、ついにはボロボロと涙を流してしまった。
「腹いせに、今日は女の子の日だから全世界を女の子に変えてやろうとしたら、ウザイ男に邪魔されるし……ひっく」
 腹いせに世界改変か。本当にパネェな、マイ彼女。
「あー……その、なんだ。ちゃんと聞いとかなかった俺も悪かった。すまん」
「うるさい……あなたなんか。女の子しかいない世界で女の子になって女の子に犯されればいい」
「拗ね方が歪んでいる……あーその、なんだ。じゃあ……ついでみたいでいやだけど、これ」
「? 何これ。カタログ?」
「好きなもの選んで欲しい」
「何よ。モノで懐柔しようってつも…………」
 涙でくしゃくしゃになった顔で俺が手渡したカタログに視線を落とした瞬間、彼女の言葉がとまった。
「ゆび……わ?」
「本当は金たまってから、ホワイトデーにでも現物見てもらって贈りたかったんだけど……」
「……え、エイプリルフールは、まだ早いよ?」
「と、とりあえず右手な? 右手の薬指につけててくれ」
「……あとで、やっぱり冗談だったとか、言ったら、私の全能力で今度こそ世界を変えるわよ? 本気出したら、キャンセラーだって倒せるんだから」
「こんなこと、冗談じゃいえない」
「私、世界を壊すって言っているような女だよ? ……どこまで本気?」
「たぶん、どこまでも」
「たぶん?」
「絶対って確信している男は嫌いなんだろ?」
「…………バカダーリン」
「悪いか、チートハニー」

 三月三日の雛祭り。
 俺は、人生の伴侶を予約した。


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・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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