ネコス38

TSした店主の喫茶店で巻き起こる人間関係をゆるゆる描く短編SSです
基本的に後先考えず気の向くまま適当に進行しています

ネコス38 白日編その1


 みなさまこんにちは。あなたの変身願望を叶える喫茶「ネコス」の美人マスターです。
 今日の私に触れると火傷します。
 ――カラン――
「フーーーーッ!!」
 お店の入り口に取り付けてある来客鈴が鳴った瞬間、私は全身の毛を逆立てたネコさんの気分で来訪者を威嚇しました。
「わわっ……い、いきなりなんですか、店長」
「シャーーー……あれ? アオちゃんじゃないですか」
 扉を開けて入ってきたのが従業員だったので、私はすぐにいつもどおりの美人マスターに戻ります。心臓の弱いチキンなウエイトレスさんは私の威嚇に驚き、二三歩後ろに下がりました。
「きょきょ、今日は、ご機嫌ナナメ……ですか?」
「あははー、こんな日に浮かれるわけがないじゃないですかー」
 今日は悪しき風習、ホワイトデーが行われます。
 ちょうど一ヶ月前、うかつにも女性からチョコレートの類を受け取った男性は、この日、受け取った品物に対して三倍の価値を付与して返礼をしなければならないという、まさに悪魔のようなこの風習をホワイトデーと呼びます。
 そして、この私もまた、男性からの三倍返しを待つ身ではあります。
 十円チョコ以下の気持ちすら込めていないチョコレート類の受け渡しでしたが、それを受け取ったあの男は、間違いなく自分の都合のいいように曲解し、妄想の翼を広げ、お店のココアを私の本命チョコと思い込んだはずです。
 想像するだけでウザイ思考回路です。ショートすればいいと思います。
 ――カラン――
「フーーーーッ!!」
 また来客鈴が鳴り、私は威嚇します。
「な、なんだよ、マスター」
「にゃー……ユカリちゃんでしたかー」
 扉を開けて入ってきたのは、またしても従業員でした。
 いつもなら、午前中に二人の勤務時間が重なることはありません。フリーターのユカリちゃんは午前と、たまに午後に出てもらっていますが、学生のアオちゃんは午後のみなのです。
 お昼からフルメンバーだなんて、特別な日でもない限りめったにない顔ぶれです。
 ではそんなシフト体制を、なぜ今日にあてたか、ですか?
 それはもちろん、今日の美人マスターは厨房から出ないことを誓うからです! カウンターにもホールにも、今日は絶対に顔を出しません!
 これで私は今日、最も会いたくない男と顔を合わせることはありません! 素晴らしい作戦です!
「というわけで、二人ともあとはよろしくですー」
「え、て、店長? 店長ーーー?」
「無駄だと思うけどな……」
 慌てるアオちゃんと、なぜかため息をつくユカリちゃんをお店のホールに残し、私は厨房に引きこもります。
 みなさまには申し訳ありませんが、今日だけ、美人マスターの尊顔を見るのは諦めてくださいませ。

***
 ――カラン――
「いらっしゃ……お、よ、よぉ、赤井」
「あ、ああ、うん。元気……へ? こ、これ、俺に?」
「~~~あ、ありがとう。義理でも嬉しい」
「あ、あなたはいつものお客様。ちょっとまってください、いま店長をお呼びしますね」
「え? いい? 呼ばなくて? 今日はもう帰る?」
「俺に、これを渡しに来ただけ……?」
「あ、ちょ、お客様ー?」
「赤井……?」
***

 ……みなさまこんばんは。営業時間が終わり、変な顔をしておうちに帰るアルバイト二人を見送った変身喫茶「ネコス」の美人マスターです。
 もう私に触っても火傷しませんが野郎は帰れです。可愛い女の子のみのおさわりタイムスタートです。……三秒でサービス期間は終了しました。
「どういうことでしょう?」
 例の男……ウザ客さんと、本当に一日、顔を合わせずに終わりました。
 あの人は常連とはいえ別に毎日うちに通っているわけではないので、一日二日来ない日だって、そりゃまぁありますけど……。
 今日という日は、何が何でも私に直接あって、おぞましくウザイ三倍返しを私に押し付けやがる……と思っていたのですが。
「なんだか、拍子抜けですねー」
 そういえば、帰り際にチラリと見ましたが、ユカリちゃんがいつのまにかクッキーを手に入れていました。
 「どうしたんですか、それは?」って聞きましたが、彼女は気まずさと嬉しさが混ざったような変な顔で苦笑いするだけで、何も答えてくれませんでした。
「ニャー」
「うん? ああ、いらっしゃいです黄吉」
「m9(^д^)ニャー」
「……はて?」
 なぜだかいま、急にネコさんにバカにされたような気がしましたが。
 とりあえず、ホワイトデーは私の望みどおり、拍子抜けするぐらい、平穏無事に過ごせましたです。
 しかし……なんだかすっきりしませんねぇ。




明日に続きます

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Author:巫

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・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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