ネコス39

TSした店主の喫茶店で巻き起こる人間関係をゆるゆる描く短編SSです
基本的に後先考えず気の向くまま適当に進行しています

ネコス39 白日編その2

 みなさまおはようございます。仕入れは業者に頼らず自分の目で見て入荷する喫茶店「ネコス」の美人マスターです。
 慧眼です。
 しかし今日の仕入れはさっぱりです。いい食材がせり出されていたかと思いきや、タッチの差で奪われ、後回しにしていた調味料はいつの間にか他の誰かに買われていました。
「どうも調子が悪いですねぇー」
 身体は万全ですが、どうにも商売に向ける気合が不足しがちです。
 もしかして、美人マスターのみに罹る難病でも患ってしまったのでしょうか。
 ひょっとすると政府の散布したウイルスによる、ネコスの営業妨害かもしれません。美人マスターは狙われています。
「そこの中二病患者さん? いいお薬ありますよ?」
 人通りの少ない路地の地面に近い位置から、とっても無礼な台詞を放つ女性の声が聞こえてきました。
 やっぱり私は今日は調子が悪いのでしょう。私のすぐ足元に、青いビニールシートを広げる女性がいたことに今始めて気がつきました。
 というか、なんでこんなに接近するまでこの人の存在に気付かなかったか不思議です
 薄暗くほこりっぽいこの裏路地に、とてもとても似つかわしくない衣装を身に着けた美人さんがいるというのに、です。
「うふっ、どおしたの? お姉さんに診察さ・れ・た・い?」
「……とりあえず、ナースは診察しないはずですけどねー」
「ヒヒッ、相変わらずノリが悪いなブラザー」
 ナース服の美女は、急に口調を乱暴にして、白いストッキングに包まれたおみ足を交差しあぐらをかきました。
 漫画やゲーム、それとエロビデオぐらいにしか存在しない、美しいストレートロングのミニスカナースとの出会いですが、あいにくと私はまったくうれしくありません。
「どこから調達したんですか、その人の皮」
「そいつは企業秘密って奴さ、ブラザー」
 ニタニタ美人ナースが笑いながら、真っ白なミニタイトスカートを撫で始めます。
 それはまるで、ポケットに手を突っ込む仕草のようにも見えました。
「……ああ、そうか。こいつの皮には入れてねぇんだっけな」
 独り言を呟き、ナースさんは今度は両手を自分の腰にあてがい――――ずるりと、スカートをおろしました。
 おろされたスカートの中から出てきたのは白いストッキングでもなく、純白のショーツでもなく。
 黄色の引き締まった男の上半身の裸と、青いジーパンでした。
「フーンフフーンフーン♪」
 ナースさんは妖艶な声で鼻歌を口ずさみ、自分の足を、脱いで、いきます。
 やがて私の目の前には、上半身が白衣の天使、下半身が引き締まったお腹を見せる男性のジーパン姿というとてもとてもアンバランスな存在が出来上がっていました。
「ヒヒヒッ、これだぁ」
 美人さんの顔が嬉しそうにゆがみ、細い腕がジーパンのポケットをまさぐります。
 そうして取り出したのは、白地に赤いラインの入ったタバコケースでした。
「ナースの皮は不便だねぇ。娯楽品のひとつも身につけられやしねぇぜ」
 いいながら、清楚な白衣の天使の唇が、たばこの煙を吐き出します。
 まったく、仕入れ業者兼カワモノ職人のアイさんはどこまでもどこまでもアンバランスを追求するHENTAIですねー。
「中二病な妄言をぶつぶつ呟く元男より、マシだと思うぜぇ? ヒヒッ」
「誰が中二ですか。私、二十歳とちょっとの女ざかりですよ?」
 でも中学生な美人マスターというのもソレはそれでありだと思います。
 今度、青葉ちゃんに頼んで中学時代の制服でも貸してもらいましょうか。
「で? どうしたんだブラザー? 調子悪そうだな」
「別に…………いつもどおりですよ」
「ヒヒヒヒヒ」
 アイさんはタバコをくわえながら、不気味な笑みを浮かべ続けています。
 ほんの一瞬、言いよどんでしまったのを見逃さなかったのでしょう。
 言いよどんだその一瞬、私は不調の原因かもしれない相手の顔を思い浮かべました。
 ……そうですね。この人なら、ネコスの事情も詳しくは知らないでしょうし、ちょっと愚痴ってみるのもいいかもしれません。
「ところでこれはたとえばの話なのですが、顔を合わせたくない相手が実際に姿を消してしまったら、意外とショックを受けました。これはいったい、どういうことだと思います?」
「好きなんだろ? その人間が」
「面白い冗談ですねメリケン野郎」
 私の周囲は恋愛脳ばかりですか。
「冗談じゃねぇよ? 気にするってことは、そいつが本気で嫌いなわけじゃないんだろ? もちろん、オレもブラザーのこと好きだけどな。ヒヒヒ」
「……あー。そーゆーことですか」
 どうやら欧米人感覚で好き嫌いという意味らしいです。ラブではなくライクということですか。
「ヒヒ、まぁその嫌いな相手と今度会ったら、ほんの少しだけでも優しくしてみろ。悩んでいたことがバカらしく思えてくるぜ?」
「そーゆーものでしょうか」
「ソーユーモンさ」

***

 みなさまこんにちは。開店準備の整った喫茶店ネコスの美人マスターです。昨日、私の顔を見逃したお客様は、じっくりと目の裏に焼き付けるといいです。
 ――カラン――
「マスター。久しぶりだね」
「……にゃ? 誰です?」
「ハハハ、この顔を見忘れたのかい?」
「残念ながら、人工物のカワモノを見破れないほどの節穴アイではないのですよ、Iさん。私、美人マスターですから」
「…………ヒヒヒ」
「ところで、野郎だけでしょうね、皮を作ったのは。青葉ちゃんとかユカリちゃんとかの皮を作っていたら、マスター許しませんよ?」
「ヒヒ。俺は約束は守る男だぜ? 長生きしたいしな」
 あのウザイ客とは似ても似つかない笑みを浮かべ、仕入れ業者の皮モノ職人はお店を出て行きました。
 ……ひやかしに来たんでしょうか。わけのわからない男性です。
「にゃー……」

 ホワイトデー過ぎの十五日。
 はたして一日遅れで、あのウザ客はご来店するのでしょうか。
 きて欲しいようなきて欲しくないような、そんな気持ちでいっぱいになります。
 マスター心は、とっても複雑です。





もう一回続きます
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
管理者の詳細

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
FC2投票
無料アクセス解析
応援バナー
ちぇ~んじ!~あの娘になってクンクンペロペロ~
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR