ネコス41

TSした店主の喫茶店で巻き起こる人間関係をゆるゆる描く短編SSです
基本的に後先考えず気の向くまま適当に進行しています

ネコス41

 みなさまこんにちは。
 美少女の涙は最強の武器ということを知っている喫茶店「ネコス」の美人マスターです。
 ただいま最強の武器の大安売り中です。
「へぷしっ! ずず……うにゃぁ~」

「なんだ風邪か? 自己管理能力ゼロの野良猫め」
「美人マスターは花粉症なのですよ~。目が痛いです~」
 まったく、毎年毎年、この時期は本当に苦しいです。
 くしくしと涙目を手の甲でこする女の子の姿は萌えーですが、私は私の姿を見ることができないのでいいことなんて一つもありませんです。
「休んだらどうだ? それともこの店の客は全員、お前のツバや鼻水入りの料理を喜んで食うタイプばかりなのか?」
 ……? もしかしていま私、このツンギレちゃんに心配されていますか?
 自分の婚約者以外まったく眼中になさそうなオウカちゃんが、ついに心を許そうとしてくれていますか?
 だとするとやっべーです! ここからの会話の運び方は間違いなく今後の展開に左右するに決まっています! この子の好感度が上がるように上手くお話ししなければなりません!
「お店を閉めたら、オウカちゃんが看病してくれますか?」
「ハァ?」
 目つきの悪いお嬢さんが『ギヌロッ!』という謎擬音が聞こえてきそうな目で私を睨みました。怖いです。
「どこの世界に花粉症の奴を看病をする人間がいるんだ。野良猫世界での話を持ち込むな」
 辛らつですが言っていることは正しいです。花粉症はアレルギー反応なので看病したって治るものでもありません。
 マスター選択失敗しました。フラグへし折りました。しょんぼりです。
「まったく……なぜこんな奴をセキナは……」
「セキナさん?」
 突然出てきたオウカちゃんのフィアンセの名前に、ピクリと耳を動かします。
 そういえば、セット登場に定評のあるオレンジコンビですが今日は一人欠けています。また遅れて登場するかと思っていたのですが……。
「忌々しいが野良猫。セキナはお前を、私達の店に招待したいらしい」
「招待ですか?」
「そうだ。お前は一度もウチに来たことがないだろう。礼を欠いているとは思わないか?」
 初対面でいきなりけんかを売ってきた金髪幼女が何か言っています。
「でも、もうすぐ開店時間ですし……それに、ユカリちゃんも来るんですが」
「知ったことかハナタレ猫。いますぐ閉店の立て札を掛けてこい」
 有無を言わせない調子で幼女は一方的にまくし立てて、お店を出て行きました。
「……へくしゅっ」
 扉が開け放たれた際に侵入してきたのか、スギ花粉のヤロウめが私の鼻腔をくすぐりました。
「ずずっ……さて、どうしましょうか」
 たしかに、今日は特に花粉が酷く仕事に差支えが出そうです。
 それに、せっかくの招待を受けないのも、悪い気がします。
「うーん……」
「はよーっす」
 どうしたものかと悩んでいると、ちょうどユカリちゃんがやってきました。私は運がいいです。
「そういうわけですのでユカリちゃん。今日はあなたが美人マスターです」
「は?」
「私はちょっとリア充カップルのイチャイチャを見学してくるので、あとはよろしくです~」
「はぁっ!?」
 私はマスターの証である前掛けをユカリちゃんに渡すと、そそくさとお店を後にしました。
「ちょ、なんだってんだよぉおおおおお!?」
 背中にバイト美女改め美人マスター代理の絶叫を聞きながら、私はお向かいのカフェ『オレンジ』に進みます。
 さてさて、いったいどんなTSメニューといちゃラブをあの二人は見せ付けてくれるのでしょうか。
 なんだか、ちょっと楽しみです。……へくしゅっ。

────五分後────

「追い出されました」
「何したんだよ……」
「いーえー、ちょっと期待を裏切られたというか……」
 あの二人、いちゃラブするどころかとっても真面目に仕事をしていました。
 お店の雰囲気も、「ネコス」が気を許しあうゆるーい空気だとすれば「オレンジ」はお互いの背中を任せあう信頼の空気を感じさせました。
 どちらも『安心』ではありますが、私の主観では信頼で回るお店の方が絆が強いような気がします。
「でも、入れ替わり能力者のくせに入れ替わった状態がメニューにないなんて……こんなの絶対おかしいです」
 オウカちゃんの姿でのセキナさんは萌えるし、『入れ替わり状態での接客』をメニューに載せない手はないはずです。私なら、絶対にそれをウリにします。
「それにそれに、入れ替わりメニューもないんですよ? 入れ替わり能力者のくせに!」
 美人マスターは秘密のコーヒーを飲んで女の体になりました。なので、時間制限付きですが他の皆様にもTS気分を味わってもらうため『TSブレンド』をメニューに載せているのです。
 なのにあの二人は自分達だけ入れ替われれば、それで満足なんでしょうか。残念でなりません。
「つーかマスター。それはもう、ただのクレーマーだ」
「お店をより良くするための愛ある言葉じゃないですかー。なんでユカリちゃんまでそういうこといいますかー」
「……『TSブレンドをメニューから外そうぜ? そうすればもっと店が繁盛する』って奴がいたら?」
「なんですかそのクレーマーは。TSブレンドを飲ませて一から女体の悦びを教えてやらなければいけませんねぇ」
「……はぁ~」
 なぜかユカリちゃんが盛大にため息をつき、私を哀れんだ目で見つめてきます。
 とにかく、あのお店の雰囲気はわかりました。TS的な期待を抜きにすれば普通にいい感じのお店だったので、またいずれ訪問したいと思います。
「ところでユカリちゃん。私、夏限定で入れ替わりドリンクが作れるのですが」
「飲まねぇからな!?」

 マスターの私に友達感覚で会話をしてくれるバイト美女のツッコミにニヨニヨしながら。
 今日も、美人マスターは一日がんばります。
 ……へくしっ。


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Author:巫

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・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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