長編第二章スタート

長編の入れ替わり系小説です。小分けにしています
ワードデータベタ貼りなので見づらいかもしれません(……というか最初にすべき挨拶なのに今更かよ)

第一章のあらすじ
写真部部長、夕香に惚れている後輩の鷹広は、ある日先輩の幼馴染である藤と体が入れ替わってしまう。
原因は、藤が先輩にプレゼントする予定だったクラシックカメラだと当たりをつけるが、カメラは壊れてしまっていた。
ひとまずお互いの生活を交換することにしたが、思春期の男である鷹広にとって豊満な藤の体は目の毒である。
夕香に操を立て自らを律する鷹広。だがその努力の必要もなく、藤は百年の恋も冷めるほどのだらしない一面を
持つ女だった。
エロフラグを強引に回避し、そして体を取り替えての一日目が、始まる……。

ぞっこんショット! 2-1

 木漏れ日から差し込む日差しは眩しく、スズメのさえずりと相まって実にサワヤカな朝を演出している。
 そんな快い日和とは対照的に、通学路を歩く俺はひたすら憂鬱だった。
 女子の制服はブレザータイプだったおかげで特に問題なく着ることが出来たが、下着類との格闘に三十分。いつもならほうっておくはずの寝癖がなぜか気になり、格闘すること十五分。そんなこんなで、朝から妙な疲労感に襲われている。
 それでも気の休まる暇はなかった。歩くたびに胸が揺れ、制服のスカートのヒダが太腿を擦りつける。丈はちょっとした風でも吹けばめくれてしまいそうな長さで、不安極まりない。
 さらには通学途中ですれ違う男子生徒達の目は、ことごとく胸やら尻やら脚やらに集まっているようで、非常に落ち着かなかった。
 正直言って、めちゃくちゃ恥ずい。ずっと下半身を無防備にしているようなこの状態をまったく気にする素振りも見せずに生活できるのだから、女という生き物は実にたいしたものだと、感心さえ覚えてしまうほどだ。
「やぁ、藤くん」
「おわぁ!」
 なんの前触れもなく、突然、真横から親しげな声が掛けられた。
 いまどき珍しく膝上ラインの長さを保ったスカート丈と、すっきりとした平野を思い起こさせる胸には見覚えがある。
「お、おはよう、ございます。夕香先輩」
「おはよう。今日はずいぶんとおしとやかだね」
 いつもの何を考えているのかよくわからない顔ではなく、口調や表情には初めて見るような明るさが滲んでいた。一瞬、誰かと思ったほどだ。やはり幼馴染である藤が相手ならば、鉄壁の無愛想も多少は和らぐのかもしれない。
「え、えぇ~と。そ、そんなことは、ない、かと」
 藤らしく喋ろうとしても、口先はどもるばかりだった。というか、一晩で女言葉を円滑に使えるわけがないだろと、逆切れ気味に思う。
「そんなことがあるから言っているのさ。花も恥じらう、とはよく言ったものだね」
「え、えと、あの……」
「どんな心境の変化があったのかはともかく、いまなら、藤くんを籠絡できるような気がしてきたよ」
「ろ、ろーらく?」
 夕香先輩はさらさらと話を進めていくが、俺はどんな受け答えをすればいいのかと気ばかりが焦ってしまい、オウム返しに問い返すだけで精一杯だった。
 ひたすらあたふたしていると、先輩はいきなり、一枚の絵を突き出してきた。道のど真ん中で彼女が見せびらかすそのコピー紙には、大正時代を思わせる袴服のデザイン画が描かれている。
「私の最終カードはこれだ。古きよき時代に思いを馳せる、袴コスチュームの案内人。ワビ・サビを基調とし、淑やかな華を持たせたこのデザインこそ、私が推すロングスカートの魅力を最大限に引き出す衣装だと自負している」
「……は?」
「袴姿の女性が淑やかな身振りで、飾られた写真を流暢な語りで紹介していくという光景を想像してほしい。その上でこの意見の是非を問おう」
 どうやら、まだ昨日の話は終わっていなかったらしい。
 登校中の生徒達が足を止め、高々と掲げられた大正ロマンスいっぱいのデザイン画を興味深そうに覗き込んでいる。呆気にとられ何も言えずにいると、射るような眼差しで先輩が俺を見つめてきた。
「私のターンは以上で終わりだ。約束どおり、次はキミが最高だと自負する衣装画を見せる番だぞ」
「えぇと、その……」
「では、こちらのカードッ」
 背後から聞こえてきたその台詞と同時に、俺の頭の上から伸びた腕が、夕香先輩と同じ位置にコピー紙を広げて見せる。
 途端に、先輩の背後にいた男達からなぜか歓声が上がった。
「全身を包み込むのはグランブルーで統一されたデニムのワンピース。そのタイトスカートの丈はなんとヒザ上十五センチッ。もちろん安全面を考え、黒のストッキングでおみ足は完全防御! おっと残念がるにはまだ早い。この衣装、実はなんと背中丸出し! ギャラリーのガイドがあられもなく背中をさらけ出し、お客を先導するその姿を想像して下さい。そして賛同を!」
「た、鷹広くん?」
 戸惑い、ポカンとした無防備な表情が、俺の背後を見上げる。可愛いが、それに見とれてばかりもいられなかった。
「お前、ちょっとこっち来い!」
 どす黒い声を上げて紙切れを奪うと、後ろにいる人間が誰か確かめることさえしないまま腕を掴み、全力で走り出す。背後で先輩の呼び止めるような声を聞いたが、カッとなった頭ではこの場から離れることしか考えられなかった。

「ど・お・い・う・つもりだ、テメェは!」
 相手を物陰に押し込んだ俺は、その胸倉を掴んで一言一句に力を溜めながら叫んだ。ハタから見ると女が男に詰め寄るといったなかなか誤解を生みそうな光景ではあるが、いまの俺にそんなことを気にする余裕などない。
「いや、実は昨日、デザイン画を見せ合うって約束してて」
 紙切れを広げていた張本人――俺の身体をした藤は、ヘラヘラとお気軽に笑っていた。
「あのな、お前がデザイン広げてどーする!」
 通学路で露出を重視した服の絵を広げ、それを絶賛する男なんてイヤ過ぎる。
 というか、まさしくたったいま、〝俺〟はそれをやってしまったのだ。
「ああもう、どーすんだよ変な噂されたら! 変態じゃねぇか、俺!」
「いや、普通の男ならミニスカ萌えなんて理解していて当然だし、セーフじゃないかな」
「道のド真ん中であんな流暢にヤバイ説明している時点でもう三者凡退コールド負けだボケェ!」
 ガクガクと揺さぶるが、藤から笑顔は消えない。
「タカくんってさ、萌えに理解ない人? だめだよそんなんじゃー。本棚も面白味に欠けるし、エロ本もオーソドック」
「るっせぇぇぇぇぇ!」
 さらに揺さぶり、詰め襟で首を絞め上げる。もういっそ、このままオトした方がいろいろ平和になる気がしてきた。
「あはは、苦しいってば、もう」
「ぬぁっ!」
 全力で絞め上げていた手が、片手であっけなく振りほどかれる。
「まぁまぁ、落ち着いてよ。ね? あんまりカッカしてると身体によくないよ」
「誰のせいだと思ってんだ!」
「それに、ほら」
 藤が指をさした方向では、通学中の学生らが興味深そうにこちらを窺っていた。
 俺と視線が合うと、人垣はそそくさと散っていく。
「これ以上騒いでいたら、二人にとってマイナスにしかならないと思うんだよね。それとも、あたしとワンセットで変な噂、されたい?」
「絶対にノゥ!」
 藤に捕まえられた腕を乱暴に振りほどき、背中を向ける。性差の力がここまで圧倒的なものになるのかと、疑問を抱かざるを得ない。というか理不尽だ、いろいろと。
「もしかして、泣いている? 泣いちゃった?」
「泣いてねぇよ! 先に行くからな!」
 啖呵を切って、路地裏から走り去る。ひとまず、わかったことが一つあった。
「あ、カメラの修理だけど、しばらく時間かかるって」
 そんな重大なことを、ついでのように笑顔で告げる藤を見て、俺はよりいっそうそれを強く確信した。
 こいつ、絶対にいまの状況を面白がってやがる。



2-2へつづく
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