ネコス44

TSした店主の喫茶店で巻き起こる人間関係をゆるゆる描く短編SSです
基本的に後先考えず気の向くまま適当に進行しています

ネコス44

 みなさまこんにちは。変身喫茶「ネコス」の美人マスターです。
 気が付けば女になって二年以上が過ぎています。
 さすがにそれだけ長い間女をやっていると、TS的なおいしさなど完全に失われてしまいました。
 TSとはお刺身のようなものでして、時間が経てば経つほど女になっているという感動は薄れていきます。
 私の場合、鏡を見て「これが俺?」も一人エッチも女の子の衣装にドキドキ☆も全部済ませてしまいました。
 あと残すところのイベントと言えば性交渉と恋愛ぐらいなものですが、残念ながらどちらも相手がいません。
 もちろん、男となんてヤです。女の子といちゃラブして、そしてゆくゆくは結婚・妊娠・出産の黄金パターンをこなしたいとおもいます。
「春先は悶々しますー」
「マスターがシモネタすぎる……」
 なにやらバイト美女のユカリちゃんががっくりとうなだれています。もう疲れてしまったのでしょうか。
「ところでユカリちゃん。あなた、鏡を見てムラムラしませんか?」
「しねーよ!」
「うーん……」
 もうちょっと斜め上のツッコミが欲しいです。
 実はマスター、彼女が以前懸念した通りの状態になりそうなので懊悩しています。つまりフェードアウトしてしまいそうな気がしますです。
 ユカリちゃんは以前は記憶喪失で、現在はおじいさんの人格と混ざり合っているためちょっと口の悪い絶世の美女という子です。
 しかしもっと口が悪く、ツッコミのキレもいいオウカちゃんが登場したため、このままだと本当に二軍落ちしかねないと思うわけです。
 そういえばあの時は青葉ちゃんが、ユカリちゃんは恋愛キャラだといっていましたがどういう意味でしょう。
──カラン──
「やぁ、僕の愛しい人」
「……いらっしゃいませですー」
 来客鈴を鳴らして入ってきたお客さんに、私は笑顔を強引に作ります。
 非歓迎ムードを全開にして言ってやりたい台詞でしたが、約束は約束です。彼がどんなにウザくても、来店時と退店時は笑顔で応対するように心がけなければならなくなったのです。
「あ、赤井! いらっしゃい」
「やぁ、ユカリちゃん。君は今日も元気そうだね」
「そ、そうか? えへへ……」
 ユカリちゃん、褒められて嬉しそうです。私が褒めてもそんな顔しないくせに、どういうことでしょう。
「それで、今日のマスターは、どうしたのかな?」
「ほぇ?」
「何か悩んでいるんだろう? 僕でよければ力になるさ」
 ……相っっ変わらず話の早い慧眼さんです。
「いーえー。ただ、ユカリちゃんのキャラ立ちについてもっとコレ! といった特徴がないものかと」
「俺、そんなにキャラ薄いか?」
「他の人間にはない部分……もしくは、他の追随を許さない抜きん出た性質があれば、なるほど確かにそれは大きな魅力になるね」
「無視か? そんなに今の俺は特徴がないのか?」
「だが僕は、それよりも先にマスターのランチを頼みたい。君の料理は、僕に活力を与えてくれるからね」
「赤井は本当にデリカシーないな! そろそろ泣くぞ俺!」
 デリカシーって何のことでしょう。このウザ客さんは、ただ食い意地が張っているだけだと思います。
「ぴーんっ。ひらめきましたです。今日の『マスターの気まぐれランチ』はユカリちゃんが作りましょう」
「はぁっ!?」
「常連客であるウザ……赤井さんが納得できる料理を作れるのなら、マスターの右腕キャラとして確立できると思いませんか?」
「なるほど、マスター代理キャラか。君が万が一のときにお店を任せられる人物……それが、ユカリちゃんというわけだ」
「俺を置いてけぼりにしてどんどん話が進んでいく……」
「珍しく意見が合いましたねー。というわけで、モルモ……味見役、お願いしますね」
「了解だよ」
 くくくっ、引っかかりやがりましたです!
 ユカリちゃんのキャラを立たせたいのは本当ですがこの提案、実は私の孔明的な策謀だったりするのです。
 このウザ客のために料理を作っていると言う事実は、結構イライラするのです。客商売だから仕方ありませんが、出来ることなら回避できないものかと常々思っていました。
 そこでユカリちゃんです。彼女がちゃんとしたものを作れるのならば、これからウザ客さんのオーダーはすべてユカリちゃんに作ってもらおうじゃないですか。マスターのストレスも軽減させられます。
 逆に、ギャグ漫画みたいな料理ベタでも、それはそれで特徴になります。その上、おいしくない料理をこのウザ客さんに食べさせられるのですから、まさしく一石二鳥です。
 『ユカリちゃんにランチメニューを作らせる』この一つの案で、同時に四つものマル得プランを立てられる私の頭脳、これぞ美人マスターです! ふははー。
「というわけで、ユカリちゃんに厨房を任せますです。パスタの一つでも、ちゃちゃっと作ってください」
「う、うん……赤井、おいしいの作るからなっ」
「ああ、期待しているよ」
 カウンターを乗り越え、厨房に行くユカリちゃんを、にっこりとウザ客さんは見送ります。
 フッ、すべて私の手のひらの上ということもしらず、のんきなものです。
「それじゃあ、料理が来るまで何を話そうか? マスター」
「( ゚д゚ )」
 ネコスは今日も、暇でした。

***

「お、おまたせ!」
 どんッとこの店一番の大皿が、カウンター席に置かれます。
「大量ですねー」
 お皿には、ユカリちゃん特製のカルボナーラが盛ってあります。ここからでも、バジルとブラックペッパーのいい香りがお鼻をくすぐります。
 ごくり……これは、成功フラグ!
「では、いただくとしようか」
 ウザ客さんがフォークにパスタをまきつけ、口に運びます。
「うん……うん。おいしいよ。お世辞ではなく、本当に」
「そそうかっ!? あああありがとう!」
「にゃー……」
 ユカリちゃんはウザ客さんに褒められて、舞い上がっています。計画通りではありますが、非常に面白くありません。
 絶世の美女が赤い顔をして慌てふためくなんて、一年ぐらい一緒に仕事をしている私ですら滅多に見たことがありません。それを、このウザ客はいとも簡単に引き出してくれやがりました。
 はっきりいいますがネコスの従業員は全員私のものです。私、意外と独占欲の強い美人マスターですから。
「? どうしたんだい、マスター。渋い顔をして」
「つーん。なんでもありませーん」
「……ははぁ。なるほど」
 ウザ客さんは何かに納得したかと思うと「マスター」私を呼び「なん……んむっ」。
 振り向いた私の口の中に、パスタをまきつけたフォークを突っ込みました。
 クリーミーな味わいが口の中に広がります。確かにウザ客さんの言うとおり、おいしいです。
「でも、いきなり何しやがりますか! 普通に危ないじゃないですか!」
「おいしいだろう? おだて上げるための心無い言葉ではないことを理解して欲しい」
「確かにおいしいですけど、言ってる意味がよくわかりません!」
「安心してくれ。僕はマスター一筋だし。料理だってマスターの方がずっと僕の好みに合っている」
「ますます意味がわかりません! ユカリちゃん、通訳プリーズです!」
 ウザキモイエンジンが掛かってきたのか、赤井さんの背景のキラキラ度が倍加しています。せっかくストレス解消の妙手を思いついたと思ったのに、これじゃあプラマイ0どころかマイナスに傾いてしまいます!
「ユカリちゃ……ん? あれ? ユカリちゃん?」
 店内を見渡しても、私の右腕であるバイト美女の姿が見当たりません。
「…………また無断早退ですか、ユカリちゃあああああああああああん!!!」
 あの子は基本的に真面目なのに、時々、何も言わず早退します。理由はぜんぜんわかりません。
 だからいつまで経っても私の相棒になれないのですよあのバイト美女はぁ!

「にゃー……最近の若者はわかりませんー」
「あのメンタルの弱さこそ、彼女の一番の特徴だと思うんだけどね、僕は」
 ウザ客さんが飽きもせず意味不明なことを気取って言うのを聞き流し。
 今日のネコスは、カルボナーラ祭りで決定しました。





ユカリ、報われない子一直線
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Author:巫

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・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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