空箱2-1

未完成の長編小説を投下します

*以下、注意事項
1:TSの話ではありません
2:女装キャラがメインにいます
3:女主人公です
4:相変わらず拙い文書です
*以上に不愉快を感じる方は、読まないことをお勧めいたします


前章のあらすじ
女装男に告白したけど瞬殺されたヨー


空箱 2-1
 世界記録でも狙っているかのようなタイムで告白を断られてから、丸一日が過ぎた。
 放課後特有の開放感が漂う教室では、いくつかのグループが談笑し活気に満ちたざわめきを生んでいる。部活動もすでに始まっているのか、吹奏楽部の演奏や運動部の掛け声などが耳に心地よく響いていた。
「えー、嘘だぁ」
 グループの中でも特に規模が小さい二人組みのうち片方が、鼻で笑うような口振りで相方の前言を疑いに掛かっていた。
 否定された相方──ヒビキは、せっかく打ち明けた内容をこともなげに一蹴され、少しばかりショックを受ける。最初から信じてくれるとは思っていなかったものの、実際に面と向かって否定をされるとやはり気持ちが沈み込む。
「あの変態に告白したぁ? ないない。ヒビキにそんな勇気ないって」
「あう」
 ひどい言われようだが、事実なので粛々と受け止める。確かに、昨日ほどアクティブに動いたことはこれまでなかった。ましてやその事後報告を自ら友達に語って聞かせるなど、初体験もいいところだ。
「ほ、本当、なのに」
 できることなら、認めて貰いたい。一世一代の告白をした自分を、よく頑張ったと褒めて欲しいとさえ思う。
「メイぃ……」
 親友の名を呼び、じっと目を見つめる。
 無理強いはしたくない。けれど、少しぐらい信じてと、切に願った。
「くっ、うるるん光線とはやるじゃない」
 鳴子は謎の造語を操り、たじろぐ真似を見せる。よくわからない反応だが、どうやら話の内容を改めて吟味してくれるらしく、気を取り直すように小さな息を吐いた。
「……マジ話? 告白したの?」
「う、うん」
「で、振られたと」
「……うん」
 昨日を振り返る。
 まさに、瞬殺だった。
 考えてもらえたのかどうかすら怪しいほどの、速攻のゴメンナサイだった。
 もちろん、振られると思っていなかったわけがない。というよりOKすら想定していなかった。想いに気付いた瞬間、激情に流されるままあふれ出た告白だ。可能性など想像していたはずもない。
「ちょっと、変態撲滅キャンペーンを実施してくるね」
「どこに行く気っ!?」
 金属バッド片手に教室を飛び出しそうな雰囲気の鳴子を慌てて呼び止める。
 ジョークなのだろうが、とても心臓に悪い。
「だってヒビキの告白断るなんて、死にたい系の人でしょ?」
「意味がわかんないよ……」
「っていうかさ、振られたにしては、なんか元気そうだけど」
 鳴子は机の上に両手をついて、顔と顔との距離を詰めてきた。
 吊りがちの眼差しが近くまで迫り、頭の中ではすでに出ているはずの答えが言えなくなる。代わりに発声される単語は、『あ』だの『う』だのというお決まりの音だった。
「アタシの中じゃ、ヒビキは失恋したら一日ぐらい塞ぎこんでいそうな子だったんだけどなー」
「あ、あはは」
 否定はしきれないので、代わりに乾いた笑いが出てくる。
 去年までの、女装男と出会い気を失っていた頃なら、鳴子の言う通りだったかもしれない。泣きはらした顔で学校に来て、心配されて、慰められて。そしてあんな男のことは忘れるんだと、自分に言い聞かせていただろう。
「でもそんなの、ヤダ、から」
 自分は変わるんだと、フミのように輝くのだと、そう決めた。
 失恋で悩んで、落ち込んで、周りの誰かに優しくされてばかりの人間が、魅力的であるはずがない。
「あ、あのね、メイ。わたし、振られたけど、ね」
 たどたどしい言葉でも、思っていることを声に出す。
 恥ずかしさが顔中から溢れそうだった。
「わたし、それでも、好き」
 口火を切ってしまえば、あとは勢いに乗るだけだ。
「い、いい、いまより、ずず、ずっと、かわ……いく、なる」
 絶対に無理だと蔑む自虐派の自分を封じ込め、もっともっと言葉を紡ぐ。
「ど、ど、ど、どもり、グセ。少なくなるように、がんばる」
 吃音の克服は不可能ではない。無理なんかじゃないと、奮い立たせる。
「じ、自分に自信、持てるようになって、それで、また告白する」
 芽吹いた恋の花が萎れても、根っこはまだ生きている。
「わた、わたし、諦めない」
 ヒビキは、この恋に挑み続けることを、はっきりと宣誓した。
「……言うねぇ」
 決心を最後まで聞き、鳴子はやってみろと言わんばかりの挑発的な薄ら笑いを浮かべている。しかし表情は人を小ばかにしたものではなく、むしろ陰から応援してくれるような暖かみのある眼差しだった。
「ま、気が変わったらいつでも陸上部に来なさいな。こっちはヒビキに似合いそうなチアガール服だって用意しているんだから」
「何で用意しているの、ねぇ何で?」
「っと、めーちゃんそろそろ部活に行かなきゃだから。バイバーイ」
「メイぃ~」
 突拍子もない台詞と一緒に、強引に話題を変えて席を立たれる。
 一応弱々しい声で呼び止めたが、親友が振り返ることはなかった。
「うぅぅ……恥ずかしかったのに」
 言いたかっただけだから別に構わないが、でもこんなに顔を熱くさせてまで言った決意に対して、もう少し何かリアクションをしてくれたらと思わずにはいられない。ただ、会話に見返りを求めるなんて浅ましいのではないかとも思う。
「うぅ~」
 人と喋ることは、本当に、難しい。


 廊下に出ると、足は自然と文芸部へ向かった。
 部室にはフミが来るとわかっているのに、ヒビキはきびすを返すことなくスタスタと歩いていく。昨日の今日で顔を合わせるのはいくらなんでも気まずいはずだが、足取りにはまるで迷いがなかった。
 逆に胸の鼓動は、部室の入り口が近付くごとに早まっていく。
「うにゅぅ」
 テンションに押しつぶされ、間の抜けた鳴き声が漏れる。幸福感など一切存在せず、不安だけが心の中を占める動悸は、卒倒する前兆にすら思えた。
「すぅーーーー、はぁーーーーーーーーっ」
 たどりついた文芸部の前で、いつものごとく心を落ち着けるための儀式をこなしてからドアノブを回す。
 鍵のかかっていない部屋は容易くヒビキの入室を許し、すでに室内にいた人物が一斉に入り口を振り向いた。
「こんにちわです、ヒビキちゃん」
「今日も遅刻、昨日も遅刻、明日も遅刻……」
 綾女の朗らかな笑顔と、不愉快を溜め込んだ声色を発する章一の嫌味に出迎えられる。フミの姿はない。
「章一さん、明日はお休みですよ? デートするんですからねー?」
 けろりとした声で、綾女はこともなげに恋人っぽさをアピールしてくる。
 後輩の前で自分達が明日いちゃつくことを宣言されたのが気まずいのか、笑みを向けられている章一はしかめっ面を手のひらで覆いながら、低い声で唸っていた。
「わかっている。ただの、嫌味だ」
「好きな子ほどいじめたくなるタイプですか? 浮気ですねひどいです」
「なぜそうなる!?」
「何を隠そう、私がそのタイプだからですっ」
 豊かな胸をドンッと張って答える綾女に、章一は毒気も気力も根こそぎ奪われたのかヘナヘナと机の上に突っ伏した。
「……よく知っているさ」
「あは、は」
 力無い笑いがこぼれる。
 目の前で、いつも通りの漫才じみたやりとりが繰り広げられている。しかし昨日までなら素直にほほえましいと思っていただけの光景が、いまは胸を切なくさせた。
 ふざけあう恋人たちを見て、羨ましいと思う。
 いつか自分も、フミとこんな会話を交わすことが出来るのだろうか。想像してみるが、『あなた誰』と突っ込みたくなる正体不明の女の子が出演していた。他人の前でじゃれあったり平然と惚気たりする恋人同士の道は、かなり険しいようだ。
「あ、あの、すいません、先輩がた」
「うん? なんですかヒビキちゃん?」
「どうした、武内」
 温度差の対照的な視線が、それぞれの方角から差し向けられる。見られることで心の片隅が不安を訴えるが、不起訴にして台詞の続きを声にした。
「わ、わ、わた、わたし、好きって言いました。……フミ、さんに」
 主語が出遅れたものの、ちゃんと届いていたのか上級生らは突然の報告に目を丸くする。
 弱気な後輩が、自分達の知る女装男に対して恋愛感情を持っていたという新事実に、さすがに驚きを隠せないらしい。もっとも、この恋心を明確に意識したのは昨日からなのだし、予測しておけという方が無茶な話だ。
「本当か」
「は、はい」
「わぁー、おめでとうございますヒビキちゃん」
 戸惑う章一とは逆に、綾女ははしゃいだ声を上げて祝福する。告白が成功したと信じてやまない純粋な瞳が細められ、満面の笑みを作っていた。
「わたし、妹がいたらって思ってたから嬉しいです。一緒に可愛い服着て、ウィドーショッピングとかしましょうねー?」
「……ツッコミ待ちか? アヤ」
「章一さん、エッチなのはいけないと思います。めっ」
 微笑んだまま、短いお叱りの声を飛ばしてくる。子供を諭すような台詞だが、綾女がやると無条件で従ってしまいたくなる威力があった。
 なぜそうなる、と再び言葉を返す気力は沸かなかったのか、章一はまた下を向いてしまう。
「とりあえず、祝福しておこう。長い付き合いになるといいな」
「いえ、あの……ふ、フラレ、ました」
 今度は主語を抜いた台詞だったにもかかわらず、二人はその意味をちゃんと理解してくれたらしい。
 一見して綾女の表情には変化はなさそうだが、章一の方は口を大きく開けて実にわかりやすい驚愕の面構えを見せている。キリッと整えられたクールな顔立ちが、自分の一言で百面相するサマは少しだけおかしくて、そして快感だった。
 彼をからかう稲木姉弟の気持ちにも、納得がいく。
「そうですか~……チッ、そこは押し倒せよ常考」
「え?」
「あの子も昨日から様子が変だったんですけど、そういうことですかぁ」
 綾女らしからぬ台詞がぼそりと呟かれた気がしたが、おそらく幻聴だろう。そんなことより、フミの様子がおかしいという言葉の方が重要だ。
「家で話しかけても、なんだか心ここにあらずって感じでしたし、いまも部活に出てきませんねぇ」
「そうだな。もしかしたら、今日は欠席するつもりなのかもしれない」
 気を取り直した章一が、綾女の言葉を引き継ぐ。
 もしそうだとしたら、その原因はどう考えても昨日の告白だ。
 後先考えず想いを伝えたせいで、迷惑をかけている。きっと部活に出てこないのも、顔も見たくないぐらい嫌われてしまったからだとネガティブに考えるほど少女漫画してはいないが、だからといってポジティブになれるかといわれると難しく。
 単純に、顔を合わせずに済んで良かったと、ほっと胸を撫で下ろした。
「それで今日は、退部届でも出しに来たか?」
「ふぇっ!?」
 せっかく落ち着いたのに、発想の出所がよくわからない一言で再び心がかき乱される。
「稲木弟と顔を合わせるのが辛い。ならばいっそ文芸部を辞めてしまおう。……そう考えたのだろう?」
 まさしく少女漫画的な発想だった。
「い、いえ。違います。すいません」
「なにっ」
「あははー、章一さんはオトメですねぇ」
「うぬぅっ」
 章一は太いうなり声を上げると、真っ赤になった顔を思いっきり逸らした。考えをバッサリ否定されたうえ恋人にもからかわれ、冷静な先輩というイメージも形無しだ。
「でもヒビキちゃん。本当にもう吹っ切れたんですか? 無理してません?」
「アヤ、君はオトメだな」
 意趣返しなのか、顔を背けたままの章一が茶々を入れる。
「乙女ですよー? 私は、章一さんに恋する乙女ですー」
 ノロケで応じられ、耳まで真っ赤に染まった。
「ふふふ、吹っ切れては、い、いません。わたし、諦めてません」
 放っていたらまた目の前でイチャイチャしだしそうな年上たちに割り込み、鳴子にも聞かせた宣誓をもう一度する。
 今度は綾女も笑顔を払拭し、二人分の驚き顔がヒビキを見つめた。
「へぇ~。ヒビキちゃん、意外と頑丈ですねー」
「そうだな。失礼な話だが、武内はもっと弱々しい女だと思っていた」
 綾女は感心した声を上げながらも、少しずつ元の表情を取り戻していく。口元には、瞬きしているわずかな間にまた笑みが張り付いていた。
「これは、いわゆるアレですね。『女は恋すると変わるもの』です」
「気のせいか? 付き合う前と後でアヤが変わった覚えがない」
「私に恋する章一さん、可愛いですよ? クールキャラから大変身しての萌えキャラです」
「俺の話だと!?」
 話題の中心に割り込んだはずなのに、いつの間にかまたイチャイチャしていた。章一からすればからかわれているだけだと言いそうだが、ふざけあう二人の顔はとても楽しそうに見える。
「あ、あのぅ」
 羨望もあってか、自分をダシにして恋人同士の魅力を見せ付けられてはたまったものではないという小さな不愉快が芽生えた。
「こーなったら私、応援しちゃいますよー!」
「え?」
 綾女は声を張り上げ、握りこぶしを肩に持ち上げるポーズで席を立ち上がる。
 そして、弾けんばかりの笑顔で、高らかに宣言をした。
「あのバ……ウチの弟が、ヒビキちゃんを好きになるように、協力しちゃいます!」
 いま、バカって言おうとしていた。
「はぁ~、どうしてくれる武内」
 テンション急上昇中の恋人を章一はどっと疲れた顔で眺め、重々しく呟く。
「ど、ど、どうって」
「アヤのスイッチが入った」
「あははー、見た目は女同士、しかし実はノーマルカプ! 倒錯的なのに倒錯的じゃないという微妙な萌え! 最高ですか最高でっす!」
 『スイッチ』が何を指すのかさっぱりわからないが、異常なほど一人で盛り上がる綾女の姿を見てなんとなくニュアンスだけは伝わる。
 女神の偶像には、いろいろと修正を加える必要がありそうだった。





リア充ェ……
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Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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