夏なので怪談でも

一話完結タイプの怪談話です
ある部屋に集まった語り部が、主人公に向かって話していくという、変な百物語風の設定。
TS要素がある話とない話があります。TSの有る無しはカテゴリを参考にしていただければと


「呪われた絵」

「それじゃあ、私から行くね。えーと、まずは自己紹介しようかな。
 私はヒロエ。2のCで、そこにいる二人のクラスメイトなの。よろしくね。
 で、私のする話は、美術室の話なんだけど……知ってる?
 美術準備室にはね、『呪われた絵』があるらしいよ。
 といっても、普通の風景画でさ。賞とかもらっちゃってる、普通に上手い絵なんだよね。
 それがどう呪われているのかって?
 あはは、焦らない焦らない。まずは、どうしてそれが呪われてるっていうのか、そこから話すね。
 
 えっとねぇ、何年か前に大場佳代子さんっていう、すっごく絵のうまい女の子がいたんだって。
 特に、風景画がすごくてね。まるで写真みたいにきれいな絵を描いてたらしいよ。
 うんそう。その呪われた絵を描いたのも大場さん。
 でもさ、彼女が本当に凄いのは、その絵を描く前なんだって。
 いったい、何をしていたと思う?
 ……わかんない?
 それはね、今から描くって決めた場所には、まずお祈りをするんだって。
 例えば、公園を描くとするじゃない。
 大場さんはまず最初にお辞儀をして、それから呪文みたいなのを唱えるんだってさ。
 なんだっけ、確かなんとかに捧げます、とか。お許し下さい、とかだったような……。
 まぁ、そんな感じの台詞をたっぷり10分ぐらいぶつぶつ言ってから、ようやく描き始めるの。
 何でそんなことするのって友達が聞いても答えてくれなくてさ。
 中には、やめさせようとした子もいたけど、大場さんは頑固だったんだね。
 絶対にお祈りをやめなかったんだって。
 でも、出来上がる絵は全部プロ並だったし、絵を描くとき以外は気さくでいいひとだったから、大場さんは特に孤立することも無かったんだよね。美人だったし。
 でもさ、大場さんのことをよく思ってない人間も、やっぱりいたわけ。


 美術の教師でね、阿部先生っていったかな。彼は、大場さんを目の仇にしていたのよ。
 やっぱり面白くないじゃない? 自分の授業中に10分以上わけのわからないお祈りなんてされたらさ。
「おい大場。いますぐそれをやめなさい。周りの人にも迷惑がかかるだろう」
 そんな台詞が授業をする度に繰り返されてさ。クラスメイトの間じゃ、もう日常みたいになってたんだよね。
 人間の順応力って凄いよね。大場さんのお祈りだって、いつの間にかそれが普通みたいに思っちゃうんだから。
 でもさ、阿部先生は総簡単に諦めなかったし、いつまでも大場さんを受け入れなかった。
「何か理由があるのか? 無いなら、いますぐやめるんだ!」
 って、もうほとんど怒鳴り声に近い調子で大場さんに詰め寄ったんだって。
 多分そのときが初めてだったんじゃない? 何がって、大場さんが阿部先生とまともに口を利いたのが、よ。
 真っ直ぐ先生を見つめてさ、真剣そのものの声で、何て言ったと思う?
「精霊様にお許しをもらっているんです」だって。
「風景を絵にして写す事は、その土地に住む精霊様に対して無礼を働いているようなものです。
ですから、私はお祈りを捧げ、この景色を絵として納めて良いというお許しをもらっているんです」
「ふ、ふざけるな!!」
 阿部先生は大場さんの説明なんて全然聞いていなかった。
 顔を真っ赤にして、神経質な叫び声を上げてさ。
 正直、先生の方がみんなの迷惑になってるよね。
「何だそれは、人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
「馬鹿になんてしていません。それに、ちゃんとお祈りをしないと祟りが……」
「いい加減にしろ! 何が祟りだバカバカしい。お前は今年から受験生なんだぞ!
いくら絵が上手くたって、そんな授業態度では推薦もしてやれんからな!」
 阿部先生がそう一喝すると、ちょうどチャイムが鳴り響いて、その話はそこまでになった。

 ……ね、大場さんの話、どう思う?
 土地の精霊にお祈りして、それで許しをもらって絵を描いてるんだよ? 信じられる?
 だよね、とてもじゃないけど、信じられないよね。
 うん、当然、阿部先生も信じなかった。
 それならまだしも、大場さんの家まで行って両親に直談判したらしいよ。
 「お宅は一体どういう教育をしているんですか」って。
 うん、効果なんて無かったよ。だって、家ぐるみでそんなことやってるんだもん。
 大場さんのお父さんもお母さんも。
 それからスポーツ少年の弟さんまで、みんな、風景画を書く前には必ずお祈りするんだって。
 家の窓には全部カーテンがひいてあってさ、昼間でも薄暗かったらしいよ。
 しかも、家族みんなそれを気にしていないんだから、ぜったいにおかしいよね。
 阿部先生もだんだん余裕がなくなってきてさ、美術の授業はほとんどの時間、大場さんを怒鳴り散らすことだけに使われていたみたいよ。いい迷惑だよね。
 大場さんも、さすがに自分のことでこれ以上クラスのみんなに迷惑かけるのは忍びなかったみたいでさ、ある日、阿部先生に言ったの。
「今度、家に来てください」
 阿部先生は、大場さんの家にまた行ったと思う? あなたならどうするかな。
 ……ふぅん、行かないんだ? まぁ気持ちわかるよ。
 薄暗くて、家族みんなが絵を描く前にお祈りするような家だもんね。
 出来れば二度と行きたくないよ。ヘタな宗教より不気味じゃない。
 でも、阿部先生はそんなの全然気にしていなかった。
 きっと親が反省して謝って来るに違いないって、そんな都合のいいこと思ってたんじゃないかな。
 あなたの周りにはいない? 自分の言ってることは絶対に正しいって思い込んでいるような人間。
 自覚が無くても、結構そういう人っているんだよね。
 もしかしたら、あなたがそう? 冗談冗談、怒んないでよ。
 でも頑固な人っていうじゃない? それも自分は正しいって思い込んでいるとこからきているんだよ。
 阿部先生はまさに、そういうワガママなタイプだったんだよね。自分の思い通りに進まなきゃ我慢できない人。
 でも、大場さんも頑固なんだからどっちもどっちかな。
 本当に迷惑なら、無視していればよかったのよね。実際迷惑に思っていたのって、阿部先生ぐらいだったんだし。
 話が逸れちゃったね。えーと、どこまで話したっけ。
 そうそう、大場さんの家に阿部先生が招待されたとこまでだったね。

 日曜日の昼、大場さんが指定した時間よりもずっと早く阿部先生は彼女の家の前にやってきた。
 その日は曇り空で、今にも雨が降りそうな天気だったんだって。
「こんな日に呼び出すなんて……」
 阿部先生は何度も舌打ちしながら、大場さんの家の呼び鈴を鳴らした。
 でも何度鳴らしても、どんなに強くドアを叩いても家の人は出てこない。
「人を呼び出しておいて、どういうつもりだ?」
 それでも阿部先生は諦めなかった。
 せめて中の様子を見てみようと、庭に忍び込んだのよ。
 ……そしたらさ、何を見たと思う?
「……なんだこれは」
 庭には、沢山の木の枝が刺さっていた。
 どれもこれも十字架みたいな形をしていてね、それはあたかも墓標のようだった。
 ほら、ペットが死んだときって簡単なお墓作ってあげるじゃない?
 そんな感じのものがパッと見100ぐらいあったんだって。
「ふ、ふざけるな!」
 阿部先生は庭を埋め尽くすお墓を踏み荒らしながら、家の窓際まで歩いていった。
 この間訪ねてきたときと同じように、窓はカーテンがひかれてて家の中がどうなっているのかわからない。
「おい、いるんだろ!」
 今にも窓を叩き割りそうな顔で、阿部先生は怒鳴り散らした。
 すると、ね。ふいに、カーテンが開け放たれたの。
「……」
「大場……」
 家の中には、能面のような顔をした大場さんが、じっと阿部先生を見つめていた。
 かと思うと、いきなり大場さんは両手を合わせてね、一回、二回と丁寧にお辞儀し始めたの。
「貴様……なんのつもりだっ! ここを開けろ!」
 阿部先生は怒鳴り散らしながら、窓に手をかけた。
 けれど、窓はガタガタと揺れるだけで、決して開かなかった。
 そうしている間にも、大場さんは両手を合わせてはお辞儀して、何かをぶつぶついうような仕草を繰り返している。
「その気持ち悪い動きをやめろ!」
 阿部先生は拳を握り締めて、窓を叩き割ろうとした。
 だけど、突然空から降ってきた石が先生のこめかみを直撃した。
「ぐぅぅ……っ!」
 石の落ちてきた上空を睨むと、大場さんの母親が2階のベランダにいたの。
 足元には拳ぐらいの石がごろごろあってね。彼女の手にも、同じような石が握られていた。
「まぁまぁ先生、どうなさったんですか?」
 ニコニコと人当たりのいい笑顔を浮かべながら、大場さんのお母さんは持っていた石を投げつけてきた。
「や、やめろっ! 何を考えている!?」
「精霊様に捧げます」
「!?」
「彼の者の血肉を、魂を」
「それと引き換えに、この一角の風景を、人間の手によって映されることをお許し下さい」
 そう唱え終わると、大場さんはスケッチブックを片手に絵を描き始めた。
 阿部先生のいる庭の風景をね。
「大場……いいかげんにし」
「大人しくしてくださいよ、先生」
 今度は男の人の声が、阿部先生の背後から聞こえてきた。
 でも振り向こうとしたのと同時に、首にネクタイが巻かれる。
 ぐいぐいとネクタイが首に食い込み、阿部先生の意識はどんどん朦朧としていった。
「これは、名誉あることなんですよ。精霊様の捧げモノに、あなたのような理解の無い人間が選ばれるのですから」
 穏やかに微笑みながら、大場さんのお父さんが阿部先生の首を絞め続ける。
 そして……。

 ……私の話はここでおしまいだよ。不満? だよね。私もそう。
 けどしょうがないでしょ。この話をしてくれた子、ここまで話すと消えちゃったんだから。
 どういうことだって? そのままの意味。まるで最初からいなかったみたいに、ふっと消えたの。
 その子大場さんの友達でさ、彼女の家に入ったら、偶然阿部先生がそういう目にあっている光景を見ちゃったらしくてね。
 あからさますぎるぐらい、声と身体を震わしながら今の話を聞かせてくれたの。
 で、パッと消えちゃったわけ。まるで、それ以上言うなって釘刺されたみたいに。
 ちなみに、阿部先生も行方不明。大場さんの家も家宅捜査とかされたらしいけど、何も出てこなかったみたい。
 私も気になって大庭産の家に行ってみたんだけどさ、何も無いの。
 ううん、もちろん大場さんの家はあったよ。でも、彼女の友達が言っていたような庭じゃなかった。
 墓標なんて一つも見当たらない、綺麗な花が咲いている普通の庭だったのよ。

 そうそう余談なんだけどね、その頃にあった絵画コンクールで、大場さんの絵が入選したらしいよ。
 しかも異例のダブル優秀賞。二つ出展したらしいけれど、その二つともが最優秀賞を取ったんだって。
 一つは、自分の家の庭を描いた絵。その絵も、やっぱり普通庭だったよ。
 そしてもう一つが……私が大場さんの友達から話を聞いていた公園の絵。
 これって偶然かな? 二人の人間が消えた直後、その人物と深く関わっていた大場さんの絵が入賞したのってさ。
 普通なら関係ないって考えるだろうけど、私これでもオカルト好きだし? ここにいるみんなだってそうでしょ?
 だからついこう考えちゃうんだよね。
 大場さんの絵は呪われている。
 大場さんが描く風景の中にいる人間は消えちゃう。ってね。
 確かめたいなら、彼女に頼んで絵を描いてもらってよ。私は、怖くてそんなことできないけどね。
 だってこれが本当なら、私、消えちゃうもん。あはは。
 
 語り部になりたいなら、怖い話には深入りせず、想像を逞しくするべきだよ。死んじゃったら意味ないし。
 それじゃ、私の話はここまで。次は誰が話すの?
 ここに集まったオカルト好きのみんななら、きっと私よりも凄い想像してると思うんだよね。
 それとも実体験かな? そうだとしたら……また、怖い想いするかもしれないから、覚悟しといたほうがいいかもね」



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