ネコス7

一応、ここで一区切りとします。
そのうちまた再開します


ネコス7 ~恋の芽生え?編

 こんにちは。
 異性に変身が出来る喫茶店「ネコス」の美人マスターです。
 今日はちょっと不機嫌ですが、仏頂面でも私の美しさは損ないません。
 ですが正直、ここまで魅力的になってしまったことをほんの少し後悔しています。
「ははっ、いきなりそんな顔しないでくれよ。僕が最近顔を見せないから寂しかったのかな?」
 久しぶりに見たウゼェ常連客は、相変わらずのウザさで私に近づいてきます。
 この人は、TPO無視して私を口説いてきたり、ときにセクハラじみたことは言ってきたり、そのくせTSには興味がないとか言うわけのわからん男です。
 要注意人物なのですが、こんな男でもお客なので笑顔で対応しなければいけません。商売人のつらいところです。
「君は本当に素敵だよ。僕は毎晩君のことを考えて眠っているのを、知っているかな?」
 知るかキメェ。とは言いたいけどいえません。
 そう、私は美人マスター細腕繁盛記の主人公なのです。汚い言葉遣いはダメ、絶対っ!
「ああ、そうそう。今日こそ僕の注文をしっかりと通してくれよ? デザートはマスター、君だ」
 殴りたいのをぐっとこらえ、私は張り付いた笑顔を見せて厨房に消えます。

「はー、女はつらいですねー……」
 男だった頃には特に感じなかった自制の念が、女になってからというものやたらと強く沸いてきます。
 『可愛い女の子』でいるためには、仕草や言葉遣いといった点に対して注意しなくてはなりません。
 ガサツな女とは言われたくありませんからねぇ。
 しかしここまでストレスがたまると、たまーに男でいた頃を懐かしく思います。
「……そーだっ」
 ネコスは変身を可能にするコーヒーを取り扱っています。
 そして、いまの私は女であり、今の状態でこのブレンドを飲めば男に戻ると思います。
 あのウゼェ客も、男の姿の私を口説きまではしないでしょう。男のままで、彼にご奉仕してやるのです。ふふふふ。
「というわけで……しばしのお別れです。美人マスターの私」
 鏡に向かってカップを掲げ、そして私は、TSブレンドを口にしました。

「ま、マスター……その姿は」
「ええ、これが私……いや、俺の元の姿だ」
 私の姿は別に筋骨隆々のたくましい兄貴でも、お姉さま好きのするショタでもない青年なのですが、やはり女の姿しか知らなかったウザ常連さんはショックを受けているようでした。
 私が元男だと知って口説いたのに、実際男になるとこんなものです。
「さて、それじゃあお先にデザートからお召し上がりください。わ……俺で、いいんですよね?」
 私はベストのボタンをはずし、ウザ客ににじり寄ってやります。
 ウザ客は泡を食ったような顔で何度か口をパクパクとさせ…………どうしたことか、急にまじめな顔つきになりました。
「あ、ああ。頼むよ」
「…………は?」
 もしかして……このウザ客は。
「待った。僕は断じて同性愛者じゃない。だが、今の姿も、マスターであることは変わりないだろう?」
「…………」
「僕は君の心に惚れた。だから、最初は驚いたけど……うん。男の君でも、愛せると思う」
 いいながら、ウザ客は私の手をとり、骨ばった甲に口づけをしました。
「~~~~~~~ッッッ!!」
 彼が口付けするのと、ブレンドの効果が切れるのはほぼ同時でした。
 でもそれはまるで、『男になった姫君が王子の口付けで元に戻る』。そんなおとぎ噺のようなワンシーンに見えたことでしょう。
「お、おおおお、覚えてろ、このウザ客ーーーーー!! です!!」
 負け犬の台詞を叫びながら、私は厨房に駆け足で戻ります。
 冷蔵庫に背中を預け、へなへなとその場に座り込みました。心臓が、バクバク脈打っています。
「ああ……もう、なんということでしょう」
 以前と違い、今度は本当にドキドキしています。
 それにあろうことか、先ほどあの客に「ウザ客」などと言って素の自分をさらけ出してしまいました。
「わ、私は、私は美人マスター。女の子が大好きな、元男の美人マスター!」
 冷蔵庫にごつごつ頭をぶつけながら、自分が何者であるか自覚を促します。
 というか、これもそれも全部、あの男が素直に女の子にならないからいけないのです。
「こーなったら……何が何でも、女の子にしてやりましょう」
 空調をオフにし、コーヒーの香りを店内に充満させる。これで、TSブレンドの効果が空気感染するはずです。
 飲むより効果が薄いのですが、もうこの際贅沢は言っていられません。
 お店の人全員、性転換しやがるがいいです。


「ってか、アイツ帰りやがりましたーーーーーー!!」
 なんということでしょう。お店にはあのウザ客はおらず、無関係の人だけが性転換しているではないですか!
「おい、マスター。これはどういうことだ? 俺の体が、女に!」
「マスター、あたし、男にしてなんて言ってないわよ!」
 望まないTSをしたお客さんたちが、私に詰め寄ってきます。
「あ、ああああ……す、すぐに! すぐに元に戻りますから!」
 評判を犠牲にしたのに、結局あの男は女の子になりませんでした。
 バイトさえ……バイトさえ入れば、男なんかに心が動くことも……!
 うわーーーーん! 独りはもう飽きましたーーーーーーー!!


 『喫茶店「ネコス」はバイト募集中です。
  そこのあなた。可愛い女の子になって、私と一緒に働きませんか?』

第一部~美人マスターは孤独編 終わり


――――――――
読んでくださった方、ありがとうございました
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
管理者の詳細

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
FC2投票
無料アクセス解析
応援バナー
ちぇ~んじ!~あの娘になってクンクンペロペロ~
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR