空箱4-1

未完成の長編小説を投下します

*以下、注意事項
1:TSの話ではありません
2:女装キャラがメインにいます
3:女主人公です
4:相変わらず拙い文書です
*以上に不愉快を感じる方は、読まないことをお勧めいたします


前章のあらすじ
ヒビキ爆発


空箱 4-1
 呪われた姫君は、キスで目覚める。
 例えば、愛する者が相手でなければ、死んでしまうとか。
 例えば、運命の相手でない者の口付けでは、カエルになるとか。
 物語をハッピーエンドで終わらせるためには、そういったデメリットはあってないようなものだ。あくまでも、ストーリーを盛り上げるための設定にしか過ぎない。
 ヒビキに託された合作小説の内容も、結局はこれに尽きた。
 男に戻って欲しいと願っている者でなければ、男娘は女のまま。ならば、口付けの相手はそうならない人物に仕立ててしまえばいい。むしろその結末以外にハッピーエンドを迎える方法があるのか、逆に問い質したかった。
「でも、なんか……」
 ノートを睨みつけるヒビキの手は、頭の中にあるエンディングのあらすじを書くために動こうとはしなかった。
 こんなお約束を踏襲した三文話など、誰でも考えられる。裏を返せばフミはその結末を書かず、未完成のままにしてあえてヒビキに結末を書かせようとしている。
 まるで試されているような、そんな気がしてならない。
 そのことに気付くと、なぜだか不愉快が湧いてきた。
 男娘の言葉は、おそらくフミの本心を代弁をしたものだ。物語に感情移入をし過ぎている節は否めないが、どう考えても重なる部分が多すぎる。
 ヒビキは実は女が好きだから、女のような外見のフミに告白をした。その疑惑を、劇中の台詞でもいいから切り払って欲しいのではないか。────『弱気な女の子は、男娘にキスをしました。男娘の身体は男性に戻りました。女の子は本心から、男娘を男性として愛していたのです』と。
「違う」
 ヒビキは首を左右に振って、思い浮かんだ結末の一文を打ち消した。
 何が違うのか、上手く言葉に出来ない。しかし今のをそのままノートに書き写すのは、正答ではあっても正解でない気がした。それは直感のみの思惑で、あるいは単にフミの手のひらの上で転がされるのが気に入らないだけなのかもしれない。
 ヒビキは自分の気持ちを疑われて、試されて、それで従順なままでいられるほど純真で可愛い女じゃいられなかった。
 いっそのこと直接『気に入らない』と言えたら、いろんなものがスッキリするだろう。だが綾女のときみたいな衝突は、二度としたくない気持ちもある。
 鬱屈とした思いをぶつけて、許して貰えるなどと都合のいい考えは抱かないほうがいい。綾女だって最後は笑顔を見せてくれたが、裏では生意気な後輩に対して不倶戴天の如き感情を抱いた想像を否定は出来ない。苛立ちを素直なまま口に出して、その結果、嫌われてしまっては元も子もないのだ。
 自分の気持ちは押し殺して、大人しく相手の言うことに従えばいい。それが平和的解決への早道だ。
 頭ではわかっているのに、ヒビキの手はピクリとも動かなかった。
 くだらない自尊心が、フミが望む通りの結末を、拒否している。
「わたしってホント、ヤな女だ……」
 ペンを投げ出し、ノートの上に突っ伏した。
 ヒビキの懊悩はしばらく続き――――。

 気が付くと、期末試験が始まっていた。
「はい?」
 前の席に座るクラスメイトから試験問題の載った紙が回され、ヒビキは久しぶりに小説以外のことに頭を働かせた。
「え、え、うええええええ!?」
「そこ、静かに」
 試験官に注意をされ、一時的に同級生達の注目が集まる。が、皆すぐに気を取り直し、緊張した様子で机の上の問題用紙に視線を戻した。小テストでは体感できない張り詰めた雰囲気に、ヒビキのパニック値はどんどん上昇していく。
「あ、ああああああああああ」
「では、始めっ」
 目を白黒させる生徒を無視して、鋭い声が試験開始の合図をする。
 紙が一斉にめくられる音にだいぶ出遅れて、ヒビキも問題用紙と向かい合った。冷や汗がだらだらと流れ、頭の中はみるみるうちに白んでいく。────試験終了まで失神せずに済んだのは、自分の成長が感じられて少し嬉しかった。
 大人しくぶっ倒れて、日を改めた再試験を受けた方が得策だったわけだが、そこに発想が至ることはなかった。


「あうあうあー」
 奇声を上げながらよろよろと廊下を歩く。テストの出来はもちろん散々だった。
 現実から目をそむけるように窓の外を見ると、どんよりとした重苦しい色の雲が空一面に広がっていた。凝らして見ると、小雨程度の雨脚がガラス越しに確認出来なくもない。
 試験期間さえ忘れていたヒビキが今日の天気を弁えているはずもなく、豪雨に変わる前に急いで帰ったほうが良いことは明らかだったが、思いと裏腹に足はピタリと止まってしまった。
「あれ……って」
 校舎の外、落葉樹が生い茂った人気のない場所で、見知った二つの顔を見つける。両方とも黒のセーラー服を身にまとい、片方は衣服と正反対の美しい白髪をしていた。
「フミさん……と、メイ?」
 窓から顔を出し、友人二人を頭上から見下ろす。
 鳴子たちは向かい合って何か話をしているが、声が遠くて聞き取れなかった。
(何話しているんだろう?)
 そもそも水と油な関係の二人が顔を合わせている時点で、まったく良い予感がしない。いままさに口論の真っ最中なのだとしたらどうしようと、ヒビキはヒヤヒヤしながら見守っていた。
「────ッ!」
「あっ」
 鳴子が何か叫んだかと思うと、手を振り上げ、フミの頬を叩いた。
 瞬間、ヒビキは窓辺から離れ、二人のいる校舎脇へ向かった。昇降口を抜け、小降りの雨の中を走り出す。急げば急いだ分だけ小雨は激しい雨粒として顔を打ち付けた。
 現場にたどり着いたところで、事態が収拾する可能性は薄い。むしろ話が余計にこじれる場合が濃厚だが、それでも走る速度は緩めなかった。
 口論の理由など知らない。だからと言って、親友達が取っ組み合いをする事態など、見過ごせるわけがない。声を大にして、身を挺してでも、ヒビキは二人の諍いを止めて見せる決意だった。
「ん? ヒビキじゃん。そんなに急いでどこ行くの?」
「め、メイ?」
 決意は、肩透かしで返された。
 急ぎ足でたたらを踏み、校舎の角から急に現れた親友をまじまじと眺める。雨で多少の湿り気を帯びている以外には、特に変化のない、いつもの鳴子だ。
「あ、あの、さっき、フミさんと……」
 言いながら、鳴子が出てきた角の向こう側を覗く。ボコボコにされたフミが地に伏していた──ということもなく、極めて普通の、人気のない校舎脇の光景があるだけだった。
「ヒビキ」
 視界の外から、鳴子が声をかけてくる。振り向こうとしたその瞬間、ヒビキは両腕を掴まれ、校舎の壁に背中を押し付けられた。
「ねぇ、アタシのこと、好き?」
 戸惑うヒビキをよそに、真剣な様子の鳴子が問いかけてくる。
「す、すすす、すき、だよ?」
「あの変態男よりも?」
「それ、は……」
「目を逸らさないでっ」
 鳴子の左手が頬に触れ、視線を無理矢理正面に向けさせられる。まっすぐ見つめてくる親友の瞳に、冗談を言うときの雰囲気は宿っていなかった。
「アタシなら、ヒビキを悩ませたりなんかしない。告白されて、気持ちを疑うわけがない! ってゆーか泣いて喜ぶしッ!」
「メイ、なん、で」
「ねぇヒビキ。アタシじゃ、だめ?」
「めっ、めめめめっ、めい?」
 鳴子の顔が近付いてくる。どこにってそりゃあ唇に、だろう。実際、鳴子の視線は既にそこだけしか見ていないっぽいし目をギュッと閉じ迫り来る親友の帰りたい急激なアプローチに身構え帰りたいというか帰る帰る帰るったら帰る絶対帰る泣いてでも帰る。
「……ふっ。やっぱり、テンパるヒビキは最高ね!」
「むぎゅっ」
 暗闇の中で、押さえられていない側の頬が、何かに触れた。
 湿り気のある柔らかな感触に、ヒビキはおそるおそる目を開く。
「くっくっくっ。ヒビキの初ほっぺちゅーは、アタシが頂いた!」
 いかにもおどけた雰囲気を身に纏った鳴子が、手の甲で唇を拭っていた。
 態度は不遜で、表情はとても満ち足りている。
「……メイ、いまの」
「え? 初ちゅーOK? めーちゃんGO?」
「言ってないよ!?」
 完全にいつもどおりの調子でいる鳴子に、ヒビキも冷静な思考力を取り戻す。どうやら、まんまと騙されたようだ。
 つくづく、本当に、心の底から、鳴子の冗談は心臓に悪い。
「メぇ~イぃ~」
「そう! それだよヒビキ!」
「何が? わたし、怒っているんだよ?」
「その調子で、あの変態野郎にも怒ればいいの!」
「……え?」
 鳴子は笑顔のまま、さっきの真剣さを帯びた口調で語る。
「ヒビキ、最近ずっと変だったでしょ? あの変態のせいで。自分の気持ちを疑われたんだから、怒って当然なの! いまみたいな目をして、『このシラガ野郎!』って言って殴っちゃえばいいの!」
「え、いや、それはちょっと」
「うん、そう言うと思って先に殴っておきました。ヒビキは罵り担当ねっ!」
「ほぁっ!?」
 いつの間にか分担作業にされていた。
「ね、ヒビキ。あのシラガ野郎のこと、まだ好き?」
「め、メイ。悪口に、人の身体のこと言うの良くない」
 フミの髪は人目を引く。ある意味では、女装よりも際立つ部分だ。
 染めているのか、それとも別の理由からなのかは知らないが、後者の場合それを槍玉に挙げるのは人として間違っている。少なくともヒビキはそう感じ、親友である少女にもそうした真似はして欲しくなかった。
「きゃー怖い顔。こりゃあ、めーちゃん惨敗かな」
「メイ。ふざけないで」
「そーゆー風にちゃんと怒れるヒビキは、いつもよりずっと素敵で可愛いよ?」
 笑顔でそう言うと、鳴子はパステルブルーの傘を広げる。
 いつの間にか本降りになっていたらしく、開いた傘の上で激しい雨音がした。
「帰ろ?」
「……」
 本心に響く、からかいの含まれていない声色で、可愛いと、素敵だと言われた。それで怒りもある程度流されたのか、少しだけむくれながらも、ヒビキは鳴子と並んで歩き出した。
 単純だ、と呆れる自分がいる。だが「素敵」や「可愛い」といった言葉を不相応だと思う自分は現れなかった。
「……ありがとう、メイ」
「んー? 何か言った?」
「さっきの悪口、ちゃんと謝ってね。って言ったの」
「あっれー? なんか文字数合ってなくない?」
 とぼけたやり取りを交わすうちに、やがてヒビキにも笑みが戻る。
 空は暗い。しかし心は、頭の上にある傘の色のように爽やかだった。




次で最後です
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・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

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