ネコス54 山3

TSした店主の喫茶店で巻き起こる人間関係をゆるゆる描く短編SSです
基本的に後先考えず気の向くまま適当に進行しています
もはやTS設定忘れがちです

ネコス54 山編3日目


「そう……そういうことだったんですね」
「え、じゃあ……」
「はい。謎は────全て解けました」
「……にゃー」
 みなさまこんにちは。ユカリちゃんと青葉ちゃんの茶番を見守る美人マスターです。

 アレから数日たち、キャンプ客は皆自室に引きこもっています。
 男とエッチなことをしていたおっさんも。
 女になったのに男に戻っておっさんとキスしてしまった若者も。
 破局したカップルも、みんなそれぞれの理由で落ち込んでいます。
 予定では今日で私達は地元に帰りますが、結局、最後の最後までキャンプ客の一人────くわえタバコの男がこの山小屋喫茶に来店しそうな気配はありません。
「さすがは一流……手の内はそう易々と見せない、ということですね」
 セキナさんはそんなことを言い、最終日の今日、私達に自由時間を与えました。
 つまり、仕事は忘れて遊んでいいということです。
 そこ。仕事したか? とか言わない。
「で、湖畔で青葉ちゃんとユカリちゃんを見つけたから近付いてみると、さっきの台詞というわけです」
「回想ご苦労様です、兄さん」
「いーえー。それで、なにがわかったんですか?」
 できればもう、意味深なフラグは全部へし折ってもらいたい気分で私は尋ねます。
 謎と伏線に満ちた会話なんて私はもうこりごりなのです。
「それは、セキナさん達の目的です。彼らは取引相手の調査と言っていましたが……それだけが目的ではありませんでした」
「どういうことだ? 青葉」
「彼ら、人を探していたのです。そう、今後の「オレンジ」を左右する、ある重要人物を!」
「そ、それは誰だ!?」
「そればかりは本人の口から……」
「ああああああああーーーーーーーもう、フラグ立ては飽きたっつってんですよぉーーーーーーーー」
 マスターは二人から離れます。もう付き合っていられません。
 どいつもこいつも伏線張りやがって、そのくせしょぼい結果しか残せないんですから、私のイライラも少しはわかってください。
 とにかく私は森の中を走ります。走って走って。
 そして気が付くと、迷いました。
「どこですかここはー……」
 上下左右。すべて木ばっかりです。お日様の光もハッパで遮られて、薄暗いです。
「……怪盗様? 怪盗様ですか?」
「にゃ?」
 辺りを見回していると、茂みの中から一人の女の人が出てきました。
 赤と黄色がこしらえられた大仰な着物は、山中において酷く不自然な出で立ちです。
「あら、申し訳ございません。人違いでしたわ」
「いいえー」
 着物で山にいることとか、あんた誰とか、そんな突っ込みはしません。なぜなら……。
「おら、そのお顔は……もしや「ネコスのマスター」とは貴女様で?」
「何で私のことを知っているんですか!?」
 マスター突っ込みます。さすがにこれは看過できません。
「怪盗様からお写真を……あなた様が来たということは、ワタクシ、もうこの山から下りていいのですね?」
「すみませんが、ぜんっぜん意味がわかりません! 貴女誰ですか! そもそもなんでこんなところにいるんですか!?」
「ワタクシは……怪盗様に『世界を見せてやろう』といわれて、お屋敷を飛び出した愚かな小鳥でございますわ」
「やっぱりわかりません!」
「怪盗様に連れられてきてみれば、小汚いテント生活……怪盗様はつい先日、「ネコスのマスター」様と会えたら、ワタクシは下山しても良いと言いました。そうすれば、また新しい世界を見せてやると……」
「……」
 世間知らずのお嬢様です。
 その怪盗様とやらの言葉を鵜呑みにして、実際は誘拐さているとしか聞き取れないのは、私のココロが綺麗ではない証拠でしょうか。
「では、さっそく下山いたしましょう!「ネコスのマスター」様、お覚悟!」
 そういうと、着物お嬢様は懐からはさみを取り出しました。
 お嬢は狐目を吊り上げ、切っ先を私に向けています。
「急に何なんですか!? 私、殺されちゃいますか!?」
「「ネコスのマスター」様から髪の毛を採取しろとのご命令です。それが、ワタクシの下山条件です」
「いったいどこのサイコ野郎ですかその怪盗様とやらはぁ!?」
「さきっちょだけ! 先っちょだけでいいのです!」
「お嬢様がそんな言葉使うなですーーーー!」
 私はB級ホラーの主人公ばりに、お嬢様のハサミから逃れます。
 まさに、そのときでした。
「ヒヒヒ……サイコ野郎とはひでぇな、ブラザー」
 聞き覚えのある、ねちっこい男の声が聞こえてきました。
 振り向くと、茂みの中からキャンプ客の一人であるくわえタバコの男が現れました。
「ああっ、怪盗様!」
 お嬢様が私を追い掛け回すのをやめて、男に駆け寄ります。
「ハトリ……オレの名前は出すなって、言わなかったか?」
「言われておりません」
「HAHAHA、その通り! オレのミステイクさ!」
「……にゃーるほど、です」
 なんか、いろいろ繋がりました。詳しくはネコス46参照です。メタです。
「とにかく久しぶりですねぇ、Iさん」
 くわえタバコの男のコードネームを、私は呼びかけます。
「ヒヒ……懐かしいな」
 男は自分の頬を掴み……そのまま、一気に顔の皮を剥ぎ取りました。
 しかし不思議なことに、その下からは筋肉ではなく、鼻の高い外国人の顔が出てきました。
「だが、予定よりも随分早い再会だ。豆は足りているか?」
 この男は、私の商売相手です。私が作り出すTSブレンド用のコーヒー豆を販売してくれる、とっても怪しい外国人業者です。
「そんなことより、なんであなたが怪盗なんて呼ばれているんですか?」
「オレの裏の商売は怪盗だからさ」
「いいえ。怪盗様は、何も盗んでなんかいません」
「盗んださ。あなたの、心を」
 三世気取りですか。
「いいえ、盗まれておりませんわ。ワタクシの心は、あの日以来橙藤様に」
「ヒヒヒ……ま、盗んだのは事実だ。あんたを、あのお屋敷から盗んだのさ」
「あのー、いいですかー?」
 私は挙手をして、二人の会話に割り込みます。
 そろそろ本気で関わりたくないのですが、残念ながらそういうわけにも行きません。
「私、迷っちゃってですねー。出来れば一緒に帰りません?」
「ヒヒ……このまままっすぐ、500M歩け。そしたらキャンプ場さ」
「え……にゃあ!?」
 突然、ぶわっと風が舞い上がりました。
 たまらず、私は目をつむります。
 次に目を開けたときには、お嬢様も、Iさんの姿も、どちらも忽然と消えていました。
「にゃー……幻覚、でしょうか」
 とりあえずIさんに言われたとおりに進むと、青葉ちゃんとユカリちゃんのいる湖畔に戻ってこれました。
「つまり! セキナさんは政略結婚を自らの手で壊し! そして黄花さんとの再スタートに踏み切ったのです!」
「すげぇ……あの二人に、そんな過去が!」
「……まだ事件解決モードだったんですか」
 そして、なんかセキナさんの事情が赤裸々に語られていたっぽいです。
 キャンプ場に戻ると、ガイドの人が例のくわえタバコの男を捜していました。
 あの人はニセモノだったことを教えてあげると、ガイドの人は悔しそうに「クソ、ボクの計画が」とか言っていました。気弱そうだったのに、随分凶悪な顔も見せてくれます。
「セキナ。羽鳥の令嬢はやはりここにはいないようです」
「ありがとうオウカ。……誤情報であったことが、こんなに嬉しいとは思わなかった」
「ふにゃー……」
 山小屋喫茶に戻ると、みかんコンビがなにやら安堵していました。

 とにかく、もう伏線話はこりごりですー。
「だが三日後、恐るべき事態に!」
「フラグって奴だねターミィ!」
「あんたらはこっちの世界に割り込んでくるなですー!」

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巫

Author:巫

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・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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