TS短編 黒組 2

TS色の濃い(つもりの)エロい(気でいる)短編です

エロむずい
アクションもっとむずい
期待ダメ絶対

ジャンル系統:変則入れ替わり

くのいち前編

 深夜の都会に突如、爆音が響き渡った。
 ビルが炎に包まれ、入り口からは何人もの会社員が飛び出してくる。
 その逃げ出してきた彼らの眼前には、通行を妨げるように横一列に並ぶ、全身黒ずくめの鬼面の集団がいた。
 集団は一糸乱れずに行進し、燃え盛るビルとの距離を縮めてくる。
「うわあああああっ、つ、ツキハミ党だぁ!」
「ついにこの街まで……俺達はもう終わりだぁ」
 逃げ出してきた多くの者はその場に座り込み、絶望の表情を浮かべた。
 ツキハミ党に目をつけられて、生きている人間は皆無だと知っているからだ。
「や、やめてくれ! お願いだ、命だけは!」
 ビルの社長である小太りの男が、へたり込む社員達より一歩前に出て地面に頭をこすりつめた。
 見るからに高級そうな茶色のスーツが、アスファルトに散らばる砂塵を付着させボロ布への進行を早めていく。
「かか、金ならある! そうだ! 私はツキハミ党を支援したい! だから助けてくれ!」
「…………」
 鬼面は命乞いする男などには目もくれず、一切の歩調を乱さずに進んでいく。
 やがて、先頭の一人が社長のすぐ目の前までやってきたところで、鬼面たちの足はいっせいにピタリと止まった。
 止まる必要性などない集団の右端から左端までもが立ち止まり、隊列は横一線のまま乱れていない。
「ののの、望みなら、社員ともども、ツキハミ党に加わろう! きょ、強力なスポンサーと、二百人の労働力をほぼ無償で提供する! 悪い話ではないはずだ!」
「おいこらハゲ! ナニ勝手に決めてんだ!」
「うるさい歯車! 何もしなければ、殺されて終わりだ!」
「……ノゾミ」
 罵りあう社長と社員の会話に割り込むように、機械的で不気味な声が鬼面から漏れた。
「ワレラ、ノ、ノゾミ、ハ」
「の、望みは?」
「シ」
──ザンッ──
 瞬間、社長の首が胴体から離れ、小太りな体の天辺からは、赤い血が噴水のように噴出した。
 茶色のスーツはあっという間に赤く染まり、アスファルトに血だまりを作っていく。
「う、うわあああああああ!」
 いまさっきまで喋っていた者が物に変わる瞬間を目の当たりにして、冷静でいられる人間などまず存在しない。
 首狩りに驚愕し、多くの人間が四方八方に逃げ出した。
 燃えるビルに逃げ込む者。集団に背を向けて走り出す者。モップを片手に蛮勇を振りかざす者。
「コロス」
 その全ての行動が引き金となり、不気味なほどに隊列を崩さず行進していた鬼面たちは、手の甲に仕込んでいた刃をむき出しにして、散り散りになって会社員達を殺戮し始めた。
 逃げるものを後ろから切り、立ち向かう者を縦断し、隠れる者をなぶり殺しにした。
 それはまさに、地獄絵図と呼ぶのに相応しい光景だった。
「────そこまでです! ツキハミ党!」
 悲鳴のみがコダマするその空間に、場違いな、澄んだ少女の声が響いた。
「あ、あれは!」
 鬼面に追い詰められ、今にもその命を散らす寸前だった男が空を見上げ歓喜の声を出す。
 燃えるビルの真正面。向かいのビルの屋上には、裾の短い着物を着た少女が、両手に短剣を持ち月をバックに佇んでいた。

「夜に潜む魔性。生み出す闇を狩るは月!
 ツクヨミ機関が戦忍、楓! ただいま推参!」

 声高に名乗った少女はビルの屋上から飛び降り、鬼面集団の中心に飛び降りた。
 それまで無表情に殺戮を繰り返していた黒ずくめたちは、手の甲から飛び出した鋭い刃を、一斉にその少女へと向ける。
「ツキハミ党ゲニン、いざ覚悟!」
「センニン、コロセ!」
 楓の一言を皮切りに、鬼面が襲い掛かる。
 一対多数。数の上では圧倒的に不利という状況だが、その考えは一瞬で改められることになる。
「ギィィィィ!?」「グゥゥゥゥ!?」「ゲェェェェ!?」
 一体。また一体と、次々に鬼面たちが切り伏せられ、直後、黒ずくめの身体が爆散していく。
 鬼面がどれだけ刃を振りかざそうと楓にはかすりもせず、そしてまた一体の鬼面が爆発した。
 多勢を覆す、圧倒的な戦闘力に、ゲニンと呼ばれた鬼面たちは次々にその数を減らしていく。
 それまで感情など見せずただただ殺戮機械の様だったゲニンたちが、たった一人の少女にてこずり、たじろぐ。
 逃げ惑う鬼面も数体現れたが、楓はそのゲニンも見逃さずにクナイを投擲した。
 放たれた刃は、全てゲニンの頭部に突き刺さり、一つまた一つと爆炎を上げる仕留めた。

「すごい……これが、ツキハミ党殲滅機関「ツクヨミ」の戦忍の力!」
 感激する会社員の目の前で、鬼面の一体が振り返る。
 手の甲の矛先を楓のいる場所から会社員に向け、一瞬の躊躇なく襲い掛かってきた。
 刃が会社員の胸を貫く、まさにその直前。
────ドッ!
 鬼面の額から、短剣の切っ先が飛び出していた。
 ゲニンの背後で、楓が厳しい声をあげる。
「闇に消えなさい、ゲニン!」
「ガ……グ……」
 剣先の飛び出した鬼面からは青白い光が走り、ゲニンはそのまま前のめりになって倒れた。
 楓は深々と突き刺さったゲニンの後頭部から剣を抜き、血のりを払う動作の後、鞘の中に収める。
「あ、ありがとう」
「いいえ」
 楓は礼を言う会社員に軽く微笑み、背を向けた。燃えるビルが照らす夜道に、ゲニンはもう一体も残っていない。
 だが、遠くから聞こえる消防車の音が、そして、痛みに呻く一般人たちが、首のない死体が、ゲニンが確かに存在したことを証明している。
「はっ!」
 楓は大きく跳躍し、ビルからビルへと飛び移り、その姿を消した。
 夜空の中で跳ねる楓の顔が、悔しそうに歪んでいたことを、誰が知る由もなかった。


 これは人類抹殺を狙う「ツキハミ党」と、その対抗機関「ツクヨミ」の戦闘員である楓の物語。
 などでは、決してない。



くのいち後編

「ここが……ツキハミ党の本拠地」
 あちこちに岩山がそそり立つその地において、楓の目の前には不釣合いにも程がある、純和風の城がそびえ立っていた。
 ツキハミ党、本拠地への招待状。世を忍ぶため学生生活を送っていた楓の元に、そんな手紙が送られてきたのが、つい三日ほど前の出来事だった。

 「貴殿の力 ツクヨミで腐らせるべきではない  ツキハミ党首領が以下で待つ」

 簡単なその一文の下には、いま楓のいるこの地までの地図が記されていた。
 もちろん楓には、ツクヨミを裏切りツキハミ党の部下として働くつもりなど毛頭ない。
 本当ならば上に報告し、万全の体制でこの城に踏み入れるべきだった。
 しかしツクヨミ機関の対応の遅さに、楓は密かに失望していた。
 前回の任務だってそうだ。
 大群のゲニンの出現。ビルの炎上。そういった大規模な作戦を事前に察知できず、常に後手に回る管理体制は、救えたはずの命をたくさん失わせてしまった。
 このまま戦忍を続け、果たしてツキハミ党を壊滅に追い込むことが出来るのか、楓にはそれが疑問だった。
 手紙のことを教えたところで、即時対応など期待できそうにない。
 まごまごと出撃準備をしている間にツキハミの首領が地図に印された場所から姿を消す可能性は、非常に高い。
 せっかく敵の大将がわざわざ自分の居所を明かしているのだ。多少の危険を無視してでも、ここは迅速に動く必要があった。
 ここには楓と、恋人である情報忍カシワしか来ていない。
「楓……ちょっとでもやばくなったら、すぐ逃げるぞ」
「わかっています。……ごめんね、カシワ君。私のわがままにつき合わせて」
「いいって。……俺も、ツクヨミの対応は遅いって思っていた」
 楓と柏は、緊張を伴った声で話しながら、天守閣を目指す、
 城の内部は薄暗く、廊下を土足で進む二人の前に立ち塞がるゲニンも現れない。
 まるっきり廃墟同然の静まり返った城内に、本当に敵の首領が待っているのか、楓は疑心を抱えながらも階段を上がる。
「あ……」
「どうした、楓」
「明かりが……」
 そういって指差した先には、廊下の突き当たりに構えられたふすまだった。
 ふすまの隙間からは確かに行灯のような明かりが漏れ、薄暗い廊下を仄かに明るくしている。
「あそこに首領が?」
「もしくは、罠、ということも。……柏君はここで待っていてください」
「……わかった」
 情報忍では、戦闘に特化した楓の足手まといにしかならない。
 柏をつれてきたのは、あくまでも自分に代わって敵の情報を本部へ伝えるための保険だ。
 本人もそれがわかっているのか、自ら危険に飛び込むようなことは避けてくれた。

 楓は廊下に柏を残し、光の漏れるふすまの前まで進む。
 いずれにせよ、相応の覚悟をもって楓はこの城にやってきた。
 命など、惜しむ理由がない。
 謎に包まれた首領の情報を少しでも知ることができれば、たとえ自分が死んでもそれは意味のある死だ。
「私が死んでも、代わりはいるし。ね」
 楓はそう呟くと、柏を振り返った。
 ほんの少し寂しそうな笑顔を浮かべ、またふすまを睨みつける。
「――――はぁっ!」
 構えた短剣でふすまを文字通り切り開き、楓は部屋の中からの光を一身に浴びた。

 畳の敷かれた大広間には、そこかしこにろうそくの灯火が立ち並んでいた。
 その一番奥に、あぐらをかいて頬杖を着く大柄な老人がいた。
「入室に挨拶もなく、それどころかふすまを破壊するとは……くっくっく。なかなか勇ましいの」
「……貴様が、ツキハミ党の首領か!」
「いかにも。儂こそツキハミ党が首領、ツキハミゲンロウサイ」
「ツクヨミ機関、戦忍・楓!
 ツキハミによる悪逆非道の数々、断じて許せません! その命、いざ貰い受けます!」
「くっくっく……やはり我が軍に下るつもりはないか……」
「わかりきったことを!」
「儂の命が欲しいか? ならばくれてやる。だがツキハミはうぬの命を貰うぞ!」
 老人はその大柄な身体をゆっくりと起こし、声高に吼えた。
 ろうそくの炎が燃え上がり、大広間の周辺がカッと明るくなる。
 ――――ドォン!と近くで重いものが落ちる音が響く。
 楓の後ろは、鋼鉄の檻によって阻まれていた。
「さあ、この老体を打ち滅ぼさぬ限り、広間からは抜けられぬぞ!」
「望むところだ! いざ、覚悟!」
 楓は短剣を構え、身を低くして老人に迫る。
 老人も身の丈に劣らない巨大な長刀を構え、楓を迎え撃った。
 剣閃が飛び交い、金属の打ち合う音が一合、二合三合と矢継ぎ早に響く。
 そうしてどれほどの時間が流れたか、やがて、ひときわ大きい金切り音が上がった。
「くっ」
 長刀の刃が畳の上に突き刺さり、大男がしりもちをつく。
 剣戟に敗れた老人に、楓は容赦なく剣先を突きつけた。
「これで終わりです、ツキハミ!」
「……くっくっく、思った以上の強さだ……小娘と思って、少々侮りすぎた」
「油断が、命取りになるのです」
「ああ……くく、まったくその通りよ」
 老人は、不気味な笑みを浮かべていた。
 武器を失い、刃を目の前に突きつけられ、それでもその男は笑いを崩さない
「楓、といったか。一つ、教えてやろう。ツクヨミは、大きな勘違いをしている」
「……どういう、意味ですか」
「ツキハミ党を月を喰らう……「月喰ツキハミ」に対抗し「月読ツクヨミ」を名乗ったのだろうが……それは間違っている」
「いったい、何を……?」
「儂は憑刃身。人に取り憑きし凶刃よ」
「!」
 男のその言葉が引き金となり、畳に刺さった長刀の切っ先から、黒い霧のようなものが広がった。
 黒いもやは床を瞬く間に黒く染め、やがて老人の身体をも黒く包んでいく。
「なっ、は、はなせ、離れろ! いやっ」
 黒い靄は楓の身体にもまとわりつき、その肢体を漆黒に包んでいく。
「んっ、んーーーーーーーーーーー!」
 口腔内まで黒い霧が侵入し、楓は言葉を発せなくなった。
 すぐさま黒い霧は楓に群がり、あっというまに彼女の身を漆黒が包みこむ。
「……」
 大岩のような黒い塊と、細いオブジェのような黒い塊が、ピクリとも動かなくなってから数秒。
 突然、糸がほつれるように、黒い靄が解けていった。
 闇に包まれた楓の姿が現れ、大男の姿も現れ、畳の表面が浮き出て、海の潮が引くように黒闇が長刀のなかに戻っていく。
「…………」
 楓はしばらく空ろな目をして、小刻みに身体を震わせていた。
「はっ……く」
 瞳の焦点が合い、自分の身体を見下ろす。
 手のひらをしげしげと見つめ、ややあってから、その口をにやりと歪ませた。
 楓らしくもない醜悪さを思わせる表情を浮かべた楓は、自分の足元に落ちていた短剣を拾い、再び大男の首筋に切っ先を突きつけた。
「ん……ん?」
 ツキハミがゆっくりと目を開ける。
 彼の目の前には、まるでさっきまで彼自身が浮かべていたような、邪悪で不気味な笑顔を浮かべる楓の姿が映った。
「わ、わた、し!?」
「くっくっく、ツキハミの命、確かに貰い受けた。正確に言えば命……魂を交換したわけだが、な」
「命の、交換!?」
 少女の可憐な声色で、楓は邪悪な台詞を言う。
「これからは儂が戦忍・楓として生きていく。もっとも、邪魔なツクヨミ機関を壊滅させた後は、再びツキハミと名乗らせてもらうがな」
「わ、わ、私の体を、返しなさい!」
「くくっ、それは本気か? このような若い身体を捨て、風前の灯だった老体に戻る理由が、なぜあると思う?」
「そ、そん、な……」
「しかし儂が女になるとは……おぅ、体中からいい匂いが染み出しておるわ。ははっ」
 楓の姿を纏ったソレは両腕を天井に伸ばし、ぐっと伸びをした。
 身をそらした弾みで、楓の乳房がふるりとたわむ。
「胸が邪魔くさいのぅ。……ふふ、まぁ、前の身体は腹が邪魔であったがな。見下ろす分には、胸の方が断然眼福といえよう」
「やめろ! 私の声で、そんな下品な言葉遣いをしないで!」
「薄汚い老人の声で、その言葉遣いもどうかと思うがの。……一度女の身体を試しておきたいが……外にうるさい小僧もいるようだからな、余計な真似はやめておくか」
 そういうと、楓は探検の柄を握り締め。
「終わりだ、ツキハミ」
「違……わたしはツキハミじゃ」
 ツキハミの言葉は最後まで紡がれることはなく。
 彼ののど元からは、鮮血が飛び散った。

 大男の命が果てるのと同時に、部屋を囲っていた格子は無くなり、楓は血を滴らせる短剣を片手に提げたまま、悠々とした足取りで広間から出てきた。
「楓! 無事だったか」
 柏が顔を綻ばせ、楓に駆け寄る。
 楓はそれに対して、薄ら笑いを浮かべて応えた。
「おまたせ、柏君」
「ああ、心配したぞ。……首領は?」
「安心して。ツキハミゲンロウサイはもういないわ」
 その仕草や口調は、ツキハミではなく楓そのものだ。
 ツキハミは楓の肉体を奪い、そして記憶をも奪っていた。
 「楓」としての仕草、口調、性格までも、いまやツキハミは完全に体現できる。
(ほぅ。この娘、この小僧に好意を……むこうもまんざらではなさそうな様子。これは、面白くなりそうだ)
 柏との交流や、楓が秘めていた想いまでをも読み取り、ツキハミは心の中でニタリと唇をゆがめた。
「そうか……やったなっ! これで後は、ツキハミ党の残党をどうにかすれば……!」
「そうね。でも油断はしないでね、柏君」
「ああ、もちろんだ! 油断こそ、命取りだからな」
「くくく……その通り」
 意気揚々と凱旋する準備に取り掛かる柏とは対称的に、楓は不気味な笑みを浮かべた。
 血に濡れた短剣から、黒いモヤがあふれ出る。その色は、ゲンロウサイの使っていた長刀と同じく、禍々しいまでの黒さだった。

 全ては、ここから始まる。
 柏とともにツクヨミ機関へ戻り、そしてツクヨミは内部から崩壊していく。
 月食の如く、じわじわと。
 ツキハミカエデが、ツクヨミを食らうその日は。
 決して遠くはない。





俺たちの戦いはこれからだ!
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プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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