ぞっこん2-2

長編の第二章、二回目です
            ぞっこん2-1とあらすじはこちらからどうぞ

ぞっこん2-2

 昼休みになると俺は学校中を探し回り、ようやく校舎裏でターゲットを見つけ出した。そいつは手入れのまったく行き届いていないだろう茂みに這いつくばり、まるで狙撃を行うスナイパーのようにカメラを構えている。
 レンズが向けられた先には、みつあみの女の子がベンチの上に座っていた。眠っているのか、その両目は伏せられたままで、茂みに隠れた不審者に気付く様子はない。
「何してんだ、てめぇはよ」
「へぶっ」
 寝そべる男に近づき、その頭を思い切り踏みつける。自分の身体を痛めつけることになったが、通報してくれといわんばかりのポーズを衆目に晒し続けるよりはマシだ。
「いったぁい! 何すんのよ!」
「やかましいっ、気持ち悪い喋り方すんな!」
 鼻を赤くさせながら、涙目で抗議してくる男を全身全霊かけて怒鳴りつける。
 口調どころか、テンションや仕草まで女のときから変わっていなかった。まさか、教室でもこの調子でいたんじゃあるまいな。


「ふん、何をしているかって? あれを見なさい!」
 指を向けるその先には、先ほどの光景と寸分変わらず、ヒザにハードカバーの本を置いた女子生徒が静かに目を閉じている。
 木漏れ日を浴びる安らかな寝顔は、息を呑むほどに平和な風景だ。
「どう? あの姿をカメラにおさめない理由はないでしょ。野外で読書、ハードカバー、みつあみ! この三大テーマから導き出される四文字熟語は何か、わからないとはいわせないわっ!」
「隠れて撮るなっ」
「一枚いいですかー? なんて言ってたら起きちゃうでしょうがっ。ありのままの光景をおさめるからこそ、写真は美しいのよ!」
 言っていることはまともに聞こえるが、結局のところは盗み撮りには変わりない。撮ったあとで被写体に説明して了解を得るならまだしも、撮影者が藤ではそれも期待できない。
「って、俺はそんな話をしにきたんじゃなくて……待て、なんでこっちにカメラを向ける?」
「んー? 記念撮影」
 そう言い、俺の足元でシャッターを切った。
 瞬間的に何を撮られたのか悟り、慌ててスカートを押さえる。
 なにやら自分の仕草が女っぽくなっているような行動に恥じらうヒマもなく、藤は続けざま二枚三枚と、次々に俺を、というより、スカートの中をカメラにおさめていった。
「わぉ、その表情いいねっ! あたしじゃ絶対にしないカオだわっ! はい、そのままカメラ目線っ」
「う、う、うるせぇぇぇぇぇぇっ!」
 撮られるのも構わずに、足を振り上げ、靴底をカメラレンズに叩きつける。『みぎゃっ』と奇妙な悲鳴を上げ、ようやく藤は大人しくなった。

「はぁ、はぁ……うん?」
 視線を感じて、顔を上げる。だが、いつのまにか体勢を崩しまるで酔っ払いのような格好でベンチに寝そべる少女の他には、誰も見当たらなかった。
「い、いたたたた。酷いなぁ、女の子がカカト使っちゃだめだよ」
「うっさいバカ。それより、いくつか教えてもらうぞ」
「スリーサイズ?」
「違うわアホッ!」
 知りたきゃ自分で測っている。って、そうじゃない。
「まず、朝に言っていたカメラのことっ!」
「ああ、それね。実は、店の人に朝イチで直してもらうように頼んだんだけど、やっぱり古いカメラだからさ、長くて七日間ぐらいはかかるって言ってたよ」
「な、七日?」
 どっかのパパとムスメじゃあるまいし、そんなに長い間このままでいなきゃいけないのか。
 にわかに、ついさっき聞いたばかりの情報を思い出し、血の気が引いていく。
「……お前の提案だろ」
「何が?」
「クラスの出し物!」
 藤のクラス、二年C組が出展するのは中華風の模擬店だという。
 接客する女子は全員スリットのきわどいチャイナ服を着るらしく、そのメンバーの中には四ノ宮藤の名前もあった。
 当然、衣装合わせは奨励祭の本番より前にする。そしていまの状態のままでは、その格好をするのは俺ということだ。
「俺に、チャイナ服を着ろってのか?」
「着るのはその身体なんだし、問題ないでしょ? それとも事情を話してあたしが着てみる? 結構イケルかも」
「そのネタはもういい!」
 いまもなかば女装をしているような気分だが、男の身体でそれをやられては絶対に立ち直れない。
 それにしても、部活でクラスでと、とりあえずコスプレ趣味を貫き通すのはある意味では見事だった。
「うーん。っていうか、チャイナ服はあたしの提案じゃないんだけどね」
「お前以外に誰がいるんだよ」
「すぐわかるよ。カメラが直れば元に戻れるんだし、このさい楽しんでみたら?」
 楽しめるものか。
 だいたい、カメラが原因だとまだ確定したわけではない。ほぼそれで間違いないとはいえ、絶対ではないのだ。
「もーネガってるなぁー。戻れるよ、きっと。なんなら、昨日言ったいくつかの方法でも試してみようか?」
 衝撃。道具。キスやそれ以上の肉体関係。藤がいうところによると、これらが入れ替わり理由のセオリーらしい。
 その道具に該当するカメラがダメだった場合、残る方法はぶつかるか抱かれるかしかないということだ。
 相手が自分であろうと、男に抱かれるなんて絶対にイヤだ。万が一それしかないというのなら、俺は一生このままでいい。
 となれば、いま取れる方法はたったひとつ。
「あっはは。真っ赤になっちゃって。ウブだねぇ」
「よし、歯ぁくいしばれ」
「え? ちょ、タカくん? 何、なんであたしの頭を掴むの?」
 いい機会だし、口調の件も徹底的に調教してやろう。
 両手で藤の頭を固定しキスをするような体勢に持ち込む。
 そして、
「うりゃぁ!」
「あがっ!」
 渾身のヘッドバッドを、そのヘラヘラした顔に向けて振り下ろした。


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