黒組4 バレンタイン前編

バッドエンド成分を含む、ダークっぽいTS短編です
前後編まとめてVTに出したかったですが間に合いませんでしたorz

とりあえず前編
エロの期待はダメ絶対です

ジャンル系統:憑依

バレンタイン 前編

 バレンタインなんて、これほどアホらしいイベントはそうそうないだろう。
 女からの一方的な気持ちを、男は有無を言わさず受け取ることが義務付けられているような、そんなイベントがなぜ廃れないのか、不思議でしょうがない。
 けど、それが好意から来るものなら、まだいい。しかし女という生き物は従来ずるがしこいものだ。

「はい、これっ」
「お、サンキュー。手作りか?」
「もちろーんっ」

 僕の隣の席で、クラスメイトの女がクラスメイトの男にチョコを渡していた。
 ……手作りねぇ。市販のチョコを溶かして固めただけなのに、手作り!
 それを知らない男は手作りという言葉に満足して、来月の「お返し」を約束している。バカすぎてみていられなかった。

 教室を出て、廊下を歩く。あたりは、バレンタイン一色に染まっていた。
「ああ……くだらない」
 僕は、右を見ても左を見てもチョコの受け渡しをするバカたちからすぐに離れたい気持ちでいっぱいだった。
 校舎の外れにある、体育準備室。この間偶然、窓に鍵がかからいないのを知って以来、僕は一人になりたいときはいつもそこにいた。

「うん?」
 昇降口にやってくると、僕の下駄箱に何かが入っているのが見えた。
 靴を取るついでに、その正体を確かめる。
「チョコ?」
 それは、小粒のチョコが六個入った市販チョコのパッケージだった。振ってみると、中身もちゃんとあるのがわかる。
「……」
 誰かのイタズラかと思い、辺りを見回す。けど、僕を窺っている様子を見せる人間は誰もいなかった。
「まさかね……」
 仮にこれが、僕にあてられたバレンタインチョコだとしても、やっぱりおかしい。
 市販のチョコを、包装も何もしないまま、靴箱の中に入れるか? いや、普通入れない。
「……とりあえず、一人になりたい」
 僕は市販チョコをポケットに隠して、最初の目的の場所に向かった。


 かび臭い匂いに包まれた体育用具室に腰を落ち着け、パッケージを開けてみる。
 中身は僕がこれまで食べてきたのと同じ、六粒のチョコがあった。
 少し予想と違っていたのは、チョコの下に敷いてある紙に、文字が書かれている。
「んー?」
 チョコには手をつけず、紙だけを引き抜いて広げる。
 
 【このチョコには、憑依成分が含まれています。一度で多量の摂取はお控えください 賞味期限は本日迄となります】

「は? 憑依?」
 書かれていた内容は、キャンペーンとかではなく、不思議な単語が混じった警告文だった。
 憑依……っていうと、漫画とかで見る、アレかな? 生きてる人に乗り移って、身体を操るっていう。
「まさか」
 そんな御伽噺あるわけがない。そしていよいよ、このチョコが怪しい物に思えてきた。
「……で、でも、もし本当だったら……」
 頭の中に、さっきのクラスメイトの女を思い浮かべる。確かあの女、結構いいスタイルをしていた。
 あの身体を、僕の自由にできたら……。
「食べて見よう……かな」
 このままゴミ箱に捨てるには、僕の抱いた妄想はあまりにも魅力的だった。それが叶えられるかもしれないんだぞ?
「……えぇいっ」
 僕はチョコを一粒口に運ぶと、歯で砕き、舌で溶かし、飲み込んだ。
 甘い。普通のチョコだ。僕自身にも、なんの変化も……。
「え、あれ……」
 くらりと、目の前が歪んだ。
 目を開けられなくなり、身体の自由も奪われ、用具室の床に倒れこむ。
「な、ん……」
 やっぱりアレは、毒だったのか?
 最後にそんなことを考えて、僕の意識は途切れた。

────────

「はっ」
 目を覚ます。
 僕は、自分の教室に戻ってきていた。……夢、だったのか?
「どうしたんだ?」
「え?」
 僕に声をかけてきたのは、クラスメイトの男だった。
「え、じゃなくてさ。急に黙ったと思ったら、きょろきょろ見回したりして、どうしたんだよ」
「え、えと……」
 むしろ僕が君に、どうしたんだ?と聞きたい。クラスメイトだって言っても、僕と君には接点なんて一つもなかったじゃないか。
「おーい? 本当にどうしたんだよ、朝子」
「あさ……こ? あっ!」
 呟いた僕の声は、女の子のものだった。
 慌てて喉を押さえる、手のひらに、喉仏の感触がなく、首周りもずっと細くなっていた。
 下を向く。
 僕は、女子の制服を着ていた。
 膨らんだ胸に目を奪われ、恐る恐る手を伸ばす。伸ばした手も、驚くほど小さくなっていた。
「おーいってば?」
「わひゃっ!」
 目の前の男が、胸を凝視する僕の視界に割り込んできた。
「何してんだよ朝子。デート、いやんなったか?」
「え、えええ、っと……ぼぼ、僕、トイレ!」
「は? 僕?」
 怪訝そうな顔をする男を尻目に、僕は教室から飛び出して廊下を走る。
 走るたびに、スカートの裾がひらひらとし、胸が揺れていた。

 そして────
「うわ……ほ、本当に、僕……」
 トイレの鏡には、クラスメイトの女、朝子が、驚いたような表情をしていた。
「……うひひ」
 やがて、その驚きの顔は、女の子らしさとは無縁の、いやらしい笑みに取って代わる。
 もてない男が、可愛い女の子の身体を自由に出来る――――これで、何もしないなんて、ありえないだろう?
「ひひ……朝子のこと、たっぷり教えてあ・げ・る……なんてな」
 僕は鏡の中で笑う朝子から離れ、トイレの個室へと向かうのだった。




エロ抜きのまま後半に続く
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Author:巫

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・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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