毎日暑いから怪談でも

怪談シリーズ三話目です
……ブログ全体にTS分が足りない気がしてきました


「怪人赤マント」


「キミキミ、僕の話を聞いているのかい? この田中高校一の美男子、麻生光輝の壮大なる自己紹介はもう終わってしまったよ。
 まったく嘆かわしいね。キミはさ、上級生に対する敬意ってもんが足りないんじゃないかな。
 そんなんじゃ世の中渡っていけないよ?
 ああ、ゴメンゴメン。後輩の指導に気を取られて時間を浪費するところだったよ。
 まぁ、僕に免じて、気の利かない彼を許してやってくれ。
 それじゃあ、いよいよ本番だ。女の子達、怖かったら僕の傍に来てもいいんだよ?
 遠慮なんてしないで、さあ。
 ……ふふ、恥ずかしがりやだね。でもいいねそういう態度。
 ファンの子達みたいにキャーキャー騒ぐ女の子よりよっぽど好感が持てるよ。
 あっはっはっ、やだな、そんな呆れたような顔をしないでくれ。
 何、さっさと話せ? わかったわかった。せっかちだなキミは。

 さて、キミ達は怪人赤マントって知っているかい?
 子供向け怪談特集とかの本なら、たいていどこにでも載っている有名な奴さ。
 聞いた事ないかい? ほら、トイレの個室に入っているとさ、どこからともなく声が聞こえるんだ。
 『赤いマント着ましょうか』『青いマント着せましょうか』ってね。
 赤いマントと答えれば首を切られて血塗れになる。
 青いマントと答えれば血を抜かれて真っ青になる。とまぁ、こんな感じだ。
 似たようなやつでは『赤い紙青い紙』とかあるけど、これも同じ結末さ。
 それで、この質問をしてくる声の正体こそ、怪人赤マントなワケだ。
 ん? なんで青マントじゃないのかって?
 僕が知るわけないだろ。怪人は赤いマントの方が好きだったんじゃないか?
 ともかくそういった怪人がかつてはあちこちで出没していたらしい。
 僕が思うに、そいつの正体は変質者だね。妖怪なんかじゃないよ。
 人間なら殺人鬼だろって? 甘いねキミは。少し頭を使ってみたまえ。
 首を切られたり血を抜かれたりして死んだ人間が、どうやって怪人赤マントのことを伝えるんだい?
 そういうのは大抵、尾ひれ背びれがついて大げさになっただけなんだよ。
 そこで、基になった話はどんなものだったかと考える。
 血塗れや真っ青になったというのは、赤もしくは青のペンキをぶちまけられたからじゃないかな?
 それを見た子供達が、面白おかしく……いや違うな、恐ろしく脚色して怪人赤マントが出来上がった。
 あっはっは、我ながら見事な推理。惚れ惚れするね。
 そんなわけで、怪人赤マントの正体はペンキをぶっかける変質者。これで決まりさ。

 それでね、この学校にもそういう変質者がいたわけだ。二年前……僕がまだ一年の頃の話だよ。
 僕はこんな幼稚な真似する奴がいる高校を選んだつもりはなかったんだけどなぁ。
 まぁでも、おちこぼれって言うのはどこにでもいるからね。キミみたいに。
 あっはっは。冗談だよ怒らないでくれよ。
 それで、そのおちこぼれ変質者だけど、当時はかなり噂になっていてね。
 いかにももっともらしく、『アカバネ様』だなんて呼ばれていたんだよ。
 そのアカバネ様は、さっき言った怪人赤マントとはまったく違うタイプの変質者でね。
 一体どんなことをしていたと思う?
 不幸の予言をするのさ。

 そいつは頭の先から爪先まで全身をすっぽり包み込むようなフードを着けていてね。
 ただのフードじゃないよ? そのフードは血のように真っ赤なんだ。
 だから、遠目では真っ赤な塊にしか見えない。それでも近づくとやっぱり人の形をしている。
 中からのぞく手は、ミイラみたいにシワだらけでやせ細っていた。
 腰も曲がっていて、背もそんなに高くない。たぶん老人だね。全くいい歳して何やっているんだか。
 それともボケているのかな。
 そうそう、顔はわからないよ。というのも、そのアカバネ様は、牛のお面をかぶっているんだ。
 そうだなぁ……色は真っ黒で、鼻輪はつけていない。ツノは『U』の字型で六センチ前後の長さだったかな。
 んん? なんだい不思議そうな顔をして……え? ああ、僕も実際に会ったよ、その変質者に。
 だからこんな細かく言えるんじゃないか。順を追って説明して行くから待っていなさいって。
 ホントにせっかちだなキミは。……ああもう、どこまで話したかな。
 とりあえず赤いフードを着て牛のお面を被る変質者がいたって覚えておきなさい。それだけわかれば十分だから。
 そいつは夕暮れ時の校門前で、下校する生徒の前にふらりと現れるんだ。そして、暗くてしわがれた声で予言をしていく。
 『お前は、三日後、交通事故に遭う』って感じのやつをね。
 想像できるかい? 全身が真っ赤なフードで身を包んだ牛面の老人が、いきなり目の前に現れてそんなことを言う光景が。
 大抵は呆気に取られるんだよね。すると、そいつは老人とは思えないようなスピードで走り出し、予言をした人間の前から立ち去っていく。
 予言をされた人間は、イタズラだと思って信じないけど、実際に予言の通りに事故に会う生徒が何人もいた。
 中には細心の注意を払っていた人もいたようだけど、結局無駄骨だったらしい。
 あいつの予言は絶対に回避できない。みんな怖がっちゃって、当時は集団下校なんてザラだったねぇ。
 なんでって? そいつは、一人きりで下校する奴しか狙わないからだよ。
 ちなみに僕も集団下校組だったよ。いや、女の子達が僕を離してくれなくてね。家に帰るまでずっと僕の周りは賑やかさ。あっはっは。
 それでもやっぱり、一人で帰る寂しい奴っているからさ、被害者は後を絶たなかったわけだ。
 そのうち、その変質者は『アカバネ様』なんて呼ばれ、畏れられるようになった。
 なんでそんな名前がついたのかって? だから僕が知るわけないだろう。僕がつけたんじゃないし。
 きっと赤かったからだよ。それ以外に理由がありそうかい? ないだろ。わかったらちょっと黙っててくれないかな、キミは。
 ああ、もうまた脱線した。キミね、僕に恨みでもあるわけ? とにかく、アカバネ様と呼ばれるようになった変質者を、みんな怖がっていたの。OK?
 そんな中、無謀な奴がいてね。そのアカバネ様を捕まえてやろうって男がいたわけよ。
 アカバネ様は予言をしたらすぐに逃げる。しかも物凄い速さでね。だから捕まえようなんてする奴はいなかったんだけど、そいつ陸上部のエースで、足に自信があったんだってさ。
 結論から先に言うと、そいつはアカバネ様を捕まえた。まぁ捕まえたって言っても、ちょっと触っただけらしいけどね。
 僕のファンの子から聞いた話じゃ、そのエース君は赤いフードに触れるまで追いついた。
 けど、彼の手がフードに触れた瞬間、アカバネ様は人間とは思えないような高さまでジャンプして、電線の上を綱渡りしながら逃げていったんだってさ。
 もちろん、僕は信じなかったけどね。どうせそのエース君の言い訳に過ぎないんだからさ。
 でも、彼は事故に遭わなかった。
 なんでも、アカバネ様が走り去っていくのを見つめていると、空から赤い羽根が一枚だけ降ってきたんだってさ。それを持っていたら、不思議なことに予言された日になってもを無事でいられたらしい。
 どういうことかわかるだろ?
 走り去るアカバネ様に触れれば、赤い羽根がもらえる。それを持っていると、予言を回避できるんだよ。
 それからは、実力を試そうとしてわざと一人で帰る奴も出てきた。
 まぁほとんどの奴がアカバネ様に追いつけず、事故に遭ったんだろうけどね。
 
 キミは足に自信あるかい? もしあるなら、挑んでみたらどうかな。
 といっても、もうアカバネ様は予言をやめてしまったんだけどね。
 いや? まだこの高校の周りをうろついているよ。でも予言はしていかない。
 どうしてか分かるかい? 僕がそのアカバネ様を懲らしめてやったからさ。
 いやいや、冗談じゃないよ? 最初に言ったと思うけど、僕はミーハーっぽい子はちょっと苦手でね、たまには一人で帰りたいときもあるんだ。
 僕が奴と出会ったのはその時だったよ。
 『お前は二年後に首を吊る』なんて、噂どおりの不気味な声で、こともあろうにこの僕を指差しながら言ったのさ。
 あの時ばかりは、温厚な僕もさすがにムッと来たね。
 別に捕まえれば予言を回避できるなんて話、信じていなかったけどさ。ああいう礼儀知らずには説教の一つでもしてやろうと、僕は逃げる変質者を追いかけていった。
 もう一度いうけど、予言が気になったとかそういうワケじゃないからさ。そこんとこよろしく。

 アカバネ様はまぁ、それなりに速かったね。僕もつい本気を出しちゃったよ。今思えば、少し大人気なかったかな。
 ほぼ真後ろまで迫り、赤いコートに手が触れた。
 その瞬間、アカバネ様はまるで地面から跳ね飛ばされるように大きくジャンプをした。……とまぁ、ここまでは凡人でもできることだ。でも僕は違うよ。
 ちょうど足元に猫避けの水の入ったペットボトルを見つけてね。
 僕の華麗なフォームで投げつけられたペットボトルは、電線を綱渡りして逃げるアカバネ様にクリーンヒット。
 まるで撃たれた鳥みたいに、その変質者は電線からボトッと地面に落っこちてきたよ。
『まったく、きみぐらいだよ。僕をこんなに走らせる礼儀知らずは』なんていいながら、僕は地面に寝そべるアカバネ様に近づいていったんだけど……。中身がなかったのさ。
 赤いコートだけで、牛のお面もミイラみたいな手もどこにもない。
 一体いつの間に逃げたんだろうね。しかもそのコートは何年も洗っていないみたいでさ、臭くてたまらなかったよ。
 僕は善良な市民だからさ、コートはその日のうちにゴミ収集所に持っていった。ちょうど明日はゴミの日だったしね。
 それから何日か経ったけど、アカバネ様を見かける生徒はいなくなった。それも当然だよね。だって、そいつは僕にコートを取られちゃったんだからさ。牛のお面だけじゃ、いまいち迫力がないしね。

 そういうわけで、この学校の平和は守られたわけだ。
 どうだい、キミ? 少しは僕を尊敬する気になったかな。もし僕があの変質者を退治していなかったら、キミは真っ先に予言をされていたね。
 『お前は二時間後に、心臓麻痺を起こす』って感じでさ。あっはっは。
 うん? 僕が言われた予言? 気になるのかい。あんなもの、どうせ嘘だよ。
 実際、この話をするまで忘れていたね。そうそう、『二年後に首を吊る』だなんてふざけたことを言われていたんだったよ。
 ついでに言うと、ちょうどこの時期だったなぁ、そいつと会ったのもさ。もしかしたら、今日がその『二年後』なのかもね。
 僕はこのあと、キミ達の目の前で首を吊るのさ。

 ……ぷっ。
 あっはっはっはっは。そんなわけないだろ。冗談だよ。
 なんだいキミ、さっきの顔。もしかして、一瞬本気にしたのかい?
 実に単純だねぇ。あっはっはっは。あー楽しい。
 ただの変質者が、僕の未来を予言できるワケないだろ。キミね、もう少し常識的に考えてみたまえ。
 あーはっはっはっは。

 はは、僕の話はこれでおしまい。さぁ、次は誰かな?」
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
管理者の詳細

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
FC2投票
無料アクセス解析
応援バナー
ちぇ~んじ!~あの娘になってクンクンペロペロ~
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR