ネコス71

TSした喫茶店のマスターが織り成すぐっだぐだストーリーです
ちょっと長くなりましたが紫編最終です

ネコス71 紫編

 みなさまこんにちは。
 ネコスを飛び出してバイト美女の人格を取り戻しに来た美人マスターです。前回までのあらすじです。
「ほう……これは興味深い」
「モルモットを見る目は止めんか。私はお前だぞ!」
 応接間に通され、前回までのあらすじをユカリちゃんの祖父シヅキさんに説明すると、ジジイ(本物)はあごを撫で、ニヤニヤとユカリちゃん(ジジイ)を見つめました。

 前も勝手にユカリちゃんを人体実験して息子夫婦に怒られたというのに、このジジイ、ぜんぜん反省していませんね?
 ユカリちゃんが元のユカリちゃんに戻る可能性が、グッと低くなりましたです。
「それで? 私に何をしろと?」
「ユカリちゃんを元に戻せです」
「はっは。おかしなことを言う。いまのユカリの状態は完全に予想外の出来事だ。私にどうにかできると思うか」
 ジジイがしたり顔で笑います。自分の孫娘が自分の人格に代わってしまったというのに、なぜ笑えるのでしょう。マッドです。
「ならば私の身体を男にしろ。いつまでも女の身体でいるなど気色悪い」
「おう、それなら出来るぞ。元々、そのためにユカリを使ったのだからな」
「私の目の前でみすみすTS娘を消させると思いますかこのWジジイー!」
 やっぱりこのジジイ、とんでもない外道です。鬼畜の所業です。
 でも『ユカリちゃん』より『TS娘』の比重が高い私の発言もなかなかに人道を外れています。
 ベクトルは違えどシヅキさんから未来の自分が見えてしまった気がします。否です否、否!
「シヅキさん。一つ、取引をしませんか?」
 頭に浮かんだ未来の自分を必死で否定していると、赤井さんが話しに割り込んできました。
「取引だと? 若造がこの天才を相手にか?」
「ええ。むしろ、あなたが天才だからこそ僕の取引相手足りうると思ったのです」
 イスに座ったまま足を交差し、両手を組んだポーズで不敵に笑います。なんでこんなに偉そうなんですかこの男。
「いかがですか? いまここでユカリちゃんを元に戻してくれたのなら……僕は、あなたのパトロンになって良い」
「パトロン、だと?」
「ええ。お見受けした限りでは、失礼ながらあなたは孤高の天才タイプだ。故に、理解者も後援者も少ない」
「そこで、この僕があなたを援助しましょう。若造なりに、人脈や資金はそれなりのものだと自負しています」
「僕を上手く利用すれば……そして、シヅキさんが本物の天才ならば、素晴らしい利益を生むと約束しましょう」
「う、ぬぬ……」
 ジジイは悩んでいるみたいです。
 一方、私はとってもびっくりです。
 個人商だと聞いていましたが、そんなにお金持ちだったのでしょうかこのウザ客。
 だとすると、金に物を言わせて私を口説こうとしなかったあたり、非常に好感が持てます。でもウザイです。絶対、好きになったりしませんからっ。
「よし……やるだけはやってみる。だが、成功は保証せんぞ」
「失敗したら、あなたを凡愚とみなし、先ほどの話もナシになりますが」
「そうではない! いいか? 以前のユカリ……男っぽい性格をしたユカリそのものが、偶発的に生まれた人格なのだ! いくら天才でも、偶然を意図して作ることは不可能なのだよ!」
「なるほど……それなら、出来高ということにしましょう。ユカリちゃんがどの程度まで元に戻れたのか……僕がそれを見て判断します」
「ぐぬぅ……な、なぜそこまで、元のユカリにこだわる? あのユカリに惚れているのか」
「!」
 マスターに電流走りました。
 赤井さんがユカリちゃんを好き? 普段アレだけ私のことを愛しているだの言っているのに、もしそんな返答をしようものなら打ち首モノです。
 ああ、でもここは方便として頷いていた方がいいかもです。そしたらジジイも『そうか、いいものだな愛とは』とか言って感涙するに決まっています。
「彼女は確かに美しい女性だ。しかし僕には、外見も内面も、元のユカリちゃんも現在の彼女にも興味がない」
 ストレートに自分の気持ちを語り始めました。空気嫁ですウザ客。
「ただ元のユカリちゃんに戻らないと、悲しむヒトがいるから……だから僕はあなたに人脈を紹介し、私財をなげうつのさ。すべては愛しい人のために!」
「うっざいです! 最高にうっざいです!」
「そうか……いいものだな、愛とは」
 ジジイは急に感涙しやがりました。予想通りですけど予想と違います!
「よろしい! この天才・シヅキの全知をかけ、孫娘を前の人格に戻してやろう!」
 ジジイは勢い良く立ち上がり、バサッと白衣を装備しました。
 逆に、ユカリちゃん(ジジイ)は慌てています。
「おい、私はお前だぞ!? 自分の人格を殺すというのか!?」
「くく……お前が私? 所詮お前は私のコピーだ! ニセモノだ! ただの実験対象でしかないわぁっ!」
 清々しいほどに外道な台詞でユカリちゃん(ジジイ)の手を取ると、二人のジジイは応接間の出口に向かいました。
「しばらく待つが良い! 天才の実力をみせてくれる!」
「私の……私の『永遠に生きる』野望がぁああああああ!!」
 ジジイ(偽)はジジイ(本物)にひきづられるまま、手を伸ばして悪の首領のような叫び声を上げました。
 見た目が美女だったのでちょっと可哀相に思いましたが、良く考えれば中身はジジイなので萎えました。
「ふむ……しばらく二人きりというわけだね、マスター」
「私、帰って良いですか?」
 ウザイ奴の傍にいたくないというのもありますが、お店もほったらかしだったのです。
 いつまでかかるかはわかりませんが、ユカリちゃんの安否を気にして時間を過ごすよりもお仕事していた方がマシです。私、美人マスターですから。
 お客さん、あんまり来ませんけどね!
「おや、目を覚ましたユカリちゃんに一番初めに会う栄誉を僕にくれるのかい?」
「その栄誉は間違いなくあなたのものですし」
 実際、私は何もしていませんです。
 むしろこんな超科学展開に、資金も人脈もない一介の美人マスターが何を出来るのでしょう。
「どうぞ、目覚めたばかりの絶世の美女を、ハグするなりキスするなりご自由にしてください」
「ふっ、嫉妬かい? マスター。言っただろう、僕の一番はキミだけだ」
「うざいですー」

 言いながら、私も応接間のドアに手を掛けます。
 ……でも、このぐらいは言ってやりましょう。

「ユカリちゃんのこと、ありがとうございます」

 素直にお礼を言うのは何だかとっても恥ずかしくて。
 逃げるように、私はシヅキさんの家を出て行きました。

――――――――――――――――

 みなさまこんにちは。
 私は……弱い! 美人マスターです。
 ユカリちゃん事件から三日が経ち、赤井さんによると今日、お店につれてくるそうです。三日後ではなく二年後に再会したい気分です。
「私、何も出来ませんでした」
 女の子になれるコーヒーを扱うお店のマスター。それが、私のキャラです。なのでどうしても、巨大な陰謀とかが絡む事件には対処できません。
 お向かいの『オレンジ』に済むワケありな夫婦の事情にも、裏手のアパートにいるカワモノの怪人の正体にも、私個人の力で太刀打ちは出来ないでしょう。
 今回のユカリちゃん事件だって、赤井さんがいなければ最悪の展開になっていたかもしれません。
「はぁ……本当に、二年間修行しましょうかねー」
 今の私では、みかんコンビにもIさんにも勝てません。私は解説役のモブキャラではなく、主人公キャラになりたいのです。

────カランッ

 来客ベルが鳴り、一組の男女が逆光を背負ってお店に入ってきました。
「やあ、愛しい人」
 男の方は、相変わらず笑顔がうざったい赤井さん。
 そして、彼の腕に抱きつく長身の美女は────。
「あなたが私のマスター? 紫です」
 某騎士様の台詞を、こんな絶望した気分で聞くとは思いもしませんでした。
「……失敗、したんですか?
 電話では、赤井さんはジジイの成否を教えてくれませんでした。その時点でもう、なんだかヤな予感はしていたんですけど……。
「いや、それが……」
 珍しく赤井さんの歯切れが悪いです。
 と、ふいに、さっきまで澄ましていたユカリちゃんが破顔しました。
「冗談だよ、マスター。今戻ったぜ!」
 やたらと男気のある台詞で、彼女は私が良く知るユカリちゃんっぽい口調になりました。
「せ、成功したんですか!?」
 これぞ奇跡です! アンビリーバブルです!
「いや……それがねマスター」
 赤井さんは相変わらず、バツの悪そうな顔をしています。
 何か問題があるのでしょうか? 見た目も口調も完全にもとのユカリちゃんじゃ………………違和感がみつかってしまいました。

 違和感その1。ユカリちゃん、ああいう心臓に悪い冗談を言う子じゃありませんです。
 違和感その2。クールビューティーな彼女ですから、こんな風にパッと明るく笑う子じゃないです。
 違和感その3。
「な、なんで、さっきから赤井さんにくっついているんです?」
「は? だって俺、赤井のこと好きだから」
「( ゚д゚ )」
「ははは……」
 いや、苦笑いしていないで説明してください赤井さん。
「どうやら、シヅキさんの実験はやっぱり上手くいかなかったみたいで………………今までの記憶は持っているんだけど、性格が、ちょっと」
「なんだよアカイー。俺になんか不満でもあるのかー?」
「…………こんな感じで、素直になった」
「え、ええ……と」
「あー。っていうかコレ、元々の俺の性格な」
「わ、私と会う前のユカリちゃん、ですか?」
「そ。前は「俺」じゃなくて「私」だったけど、なんか「俺」の方が言いやすいし良いかなって」
「あ、あははははは……」
 なるほど、これは確かに、苦笑いが出てきます。
 つまりユカリちゃんは、本当のユカリちゃんに戻ったわけです。どうも私と過ごしていた間の彼女と、そう違いはなさそうな印象ですが……。
「つーわけで、これからお前と俺は恋のライバルだ!」
「はいぃ!?」
「コイツがどれだけマスターを好きでも、俺は赤井が好きだ! もう隠さない! 赤井ーーー、デートしろーーー!!」
「はっはっはっは」
 赤井さんが、オレンジ店主ばりの貼り付いた笑顔を見せています!
 なんですか、この子。クールビューティーから素直ヒートに属性チェンジしていません!?
「ま、記憶はあるし、僕としてはシヅキさんに半分ぐらい成功だと伝えたけど……どうかな、マスター」
「えー……ま、まあ、いいです。記憶を引き継いでいるなら、基本的にユカリちゃんなのは何も変わらないはずです」
「うん、そ、そうだよね?」
 私と赤井さんが、ふたりしてキョドっています。珍しい事態です。

「はははー! もうキャラが薄いとかいわせねーぞぉ! マスター!」
 新・ユカリちゃんは、拳を握りながら無駄に熱血しています。
 そういえば、発端はそんな話でしたね……。
「さようなら……豆腐メンタルのユカリちゃん」

 さよならは寂しいはずなのに。
 不思議と、寂しい気になりませんでした。
 私は、薄情なのでしょうか。




紫編終わります
豆腐メンタルな紫が好きだった方ゴメンナサイ。まぁいないとは思いますが

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巫

Author:巫

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・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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