三題話 №1「マジック・エステ・銭湯」

お待たせしました
三題話 №1「マジック・エステ・銭湯」 行きます

しかし本来三題話は即興で作るものなのにこの遅さ……
あとタイトルでおわかりでしょうがアレです。アレの設定借りてます

テルマ・エロ前


「……騒がしい」
 テルマは辟易していた。
 彼が今いる銭湯は、それはそれは大変な賑わいを見せている。彼の浸かる湯は常に波打ち、湯は我先にとばかりにざぷざぷと湯船から逃げ出していった。しかし水道からは常に新しい湯が補填され、湯船はいつでも満杯のままだ。
 彼の正面には火山の壁画が描かれ、湯煙とあいまって風情を醸し出している。それは、いい。
 問題なのは左右からくる光景と音だ。
「へいらっしゃいらっしゃーい!」
 右を向けば、籠を首から提げた男の怒号にも似た商い声が聞こえる。
 湯に浸かっていた一人が男に駆け寄ると、わずかなやり取りの後、男は籠から飲み物を手渡した。
「どうかしている……」
 銭湯に、なぜ販売員がうろついているのか。そしてなぜ皆、なんの疑問もなくその者から飲料だのタオルだのを買い求めるのか。
 確か入り口にだって、同じようなものが販売されていたはずだ。わざわざ浴場で手に入れる必要など皆無なのに、なぜ?
「次はジャグリングです。上手に出来たら、皆様盛大なる拍手をお願いします」
 左を向けば、ボールや桶などを手にした芸人が興行をしている。
 足場の悪い浴場で、ボール、濡れタオル、桶の三つが湯煙の中で宙を舞う。その腕前は賞賛に値するものの、テルマは頑として思う。
「風呂でやることじゃないだろ……!」
 あまりにも場違いな風景に、頭痛さえ催してきた。
 せめてもの抵抗として、耳を塞ぎ、火山の壁画のみに視線を集中する。
(風呂というのはもっとこう、自由で、なんというか救われていなきゃあ駄目なんだ)
 静かに豊かに、最高の癒しを求める。忙しい日常から離れ、こうして風呂に入っているときぐらい、喧騒とは一切無縁でいたかった。
 ところが今の時代、広い浴場を提供する銭湯は度の過ぎた社交場になっていた。
 販売員もいれば芸人もいるし、審判のいないトーナメントを開催する人間までいる。
 風呂に浸かってゆっくりしたいテルマにとって、これほどひどい話もない。

「そうですねぇ……では次は、お客さんに助手をしていただきましょう。そこの、耳を塞いでいるあなた! あなたです!」
「なにっ!?」
 両手で耳を塞いだところで、拡声器で増幅した芸人の声までは防ぎきれなかった。
 振り向くと、芸人は明らかにテルマを指差している。
 周囲を見回しても、耳を塞ぐ男など自分の他にいなかった。
「こちらへどうぞ。いまから、消失マジックを行います」
「消失マジック?」
「ささ、どうぞこちらへ!」
 芸人は仮面をつけた顔でニヤリと笑い、テルマを招く。
「いや、私は……」
「いいじゃねーか兄ちゃんっ、たまにはよ」
「そうそう、にーちゃんいっつもムズカシィ~顔して風呂に入ってんだからよぉ」
「たまにはハメを外してみればいいんじゃねぇか?」
 風呂の常連である男たちが、断ろうとするテルマを後押しする。
 そんなことを言われても、はいそうですかと気軽にこのバカ騒ぎの一員になる気はなかった。
「私のマジックは完璧です! 種も仕掛けもございませんよ!」
「……くだらん」
 テルマはそういい、湯船から体を出す。
 マジックなど、種があるからマジックなのだ。
 ならばこの芸人の鼻を明かし、明日から二度とこの銭湯に来れないようにしてやるのも一興かもしれない。芸人が一人減ったところでこの騒がしさには焼け石に水だろうが、やらないよりは良いだろう。
「では交換条件だ。参加してやる代わりに、私が種を見つけたら二度とこの浴場に現れるな」
「ご参加表明、ありがとうゴザイマス! ええ、もちろん構いませんよ、種も仕掛けもございませんので!」
(まだ言うか、この男)
 芸人は、風呂場だというのにタキシードを着てマントを付け、顔の半分を仮面で覆っている。
 以前から奇妙な男だと思っていたがもしかしたら湯の熱気にあてられ前後不覚になっているのかもしれない。
「それで、私は何をすれば良い?」
「そのままで結構です。ワタシガ今からあなたをこのマントで覆い隠します。そして3、2、1と唱えればあなたはこの場から消失してしまうでしょう。もちろん、身の安全は保証いたします」
「はっはっ、わかったやってみろ」
 あまりのくだらなさに乾いた笑いが出る。人間が外套に覆われた程度で消失とは、この男、本気で頭がおかしいのかもしれない。
「では、じっとしていてください」
 芸人が自らの黒マントを外し、テルマの頭からかぶせる。
 芸人より長身のはずのテルマが、足の先まで黒マントに食われ、すっぽりとその姿を覆い隠す。
「では、参ります。3!」
(くだらん……)
「2!」
(マジックなどバカバカしい)
「1!」
「!」
 それは一瞬だった。
 芸人の掛け声が終わるか田舎の間際。
 縦長の黒マントがその中身を失い、ふわりと、水浸しの床に落ちる。
「消失、成功!」
 芸人が黒マントを取り払うと────。
 そこには、テルマが腰に巻いていたタオルだけが残されていた。

………………

「ぶはぁっ!?」
 水中から飛び跳ねる魚のように、テルマは湯船から勢い良く立ち上がった。
「はぁ、はぁ……?」
 滴をぽたぽたと落としながら、周囲を見渡す。
 いつの間に、湯船に入ったのだろう? いや、それ以前にテルマの目に映る光景は、さっきまで自分がいた銭湯とは似ても似つかない場所だった。
 二畳半がせいぜいといった、狭い部屋はまるで独房だ。
 三方が白い壁に囲まれ、曇りガラスのドアがここの唯一の出入り口らしい。
 アレだけ騒がしかった衆人環視どもは忽然と消え、芸人も火山の壁画も何もかもがなくなっていた。
 そして自分の立つ湯船もまた棺のようなサイズで……と、そこで、テルマは違和感に襲われた。
(なんだ……これは)
 足元を見る視線上に、ふたつの膨らみがある。滑らかな曲線を描くソレは自分の胸に密着し、軽く身体をゆすると膨らみも連動して揺れた。
「まさか……ち、乳房? お、女の乳房なのかこれは!?」
 叫ぶ声が独房に響く。その声もまた、自分のものとは思えないほどの高い音を発していた。
「お客様? いかがなさいましたか」
「!?」
 曇りガラスの向こうに人影が浮き出る。声からすると、女のようだ。
(じ、自分は男湯にいたはず……なぜ、女が? それになぜ私の胸が膨らんでいるのだ!?)
 よくみれば胸は薄っぺらい布で覆われ、股間部分も角度のキツイ布地で覆われている。
 そこにテルマに付いていた男根の存在はなく、陰毛さえほとんどが剃り落とされていた。
「まさか私は……お、女に……!?」
 湯船から足を出し、壁につけられた鏡を小さな手のひらで拭う。
 そこには────シンプルなビキニの水着を着た、見知らぬ女がいた。

────────

「さて、仕上げはマッサージをさせていただきます。どうぞ、そこのベッドにうつぶせになって下さい」
「……」
 テルマは目の前でへらへらと笑う女に従い、枕も布団もないベッドにうつ伏せで寝転んだ。
 胸が押しつぶされ、多少の苦しさを感じる。
 先ほどの狭い浴場から出た後、テルマは笑う女に出迎えられ、そのままこのベッドのみしか存在しない奇妙な部屋に導かれたのだった。
 なぜ自分が女になったのか、なぜこの場所にいるのか。疑問は尽きなかったが、下手に自分の主張を掲げたところでどこまで通じるか怪しいものだ。
 まずは大人しくして、情報を集める。この笑う女が自分の正体を明かすに相応しいかどうか見極める必要もあった。
「では、始めます。痛かったらおっしゃってくださいね」
 笑う女が腕まくりをし、両手を女になったテルマの身体に伸ばす。
「おぉっ!?」
 ビクッときた。
 わき腹が触れられただけなのに、こそばゆい思いと同時に言いようのない緊張感が湧き上がる。
「うーんだいぶ緊張していますねー」
「ひゃっ、はっ、あくっ!」
 笑う女は、次々と身体の柔らかい部分を攻め立てる。
 わき腹、二の腕、首と肩の付け根、ふくらはぎ、尻。
 まるで、千の手を持つ仏像に全身をくまなく撫でられているようだ。
「はぁっ、やめ……そんな、」
「あら、気持ち良いんですね? ……うふっ、さっきのビキニライン処理のときも、良い声で喘いでいましたよね♪」
「あ、喘いで……?」
「大丈夫。何も怖くありませんよ。このエステに来た人はみんな、最初はそんな反応です。そのうち慣れて……クセになりますよ」
 女の笑い顔がいっそう強化され、全身を撫でる手が速度とテクニックを上げる。
「あ、お、おおおっ」
 気持ちが良い。こんなのは初めてだ。
 風呂に入っているわけでもないのに、この全身を包み込むような心地よさはどうしたわけだろう。
 女の手が、疲れを軽減させる。それが、実感としてわかる。
 小売も芸人も、火山の壁画も、広々とした浴場さえ必要ない。
 最高の癒しとは、まさにこのことだ。
(これは……是非とも伝え広めねばなるまい!)
 意識を失うほどの快楽に飲み込まれる中。
 テルマはここに新しい癒しを見つけたのだった。


 数日後。元の男の身体と騒がしい浴場に戻ってきたテルマは、『癒しの手』という看板を掲げ、浴場備え付けのマッサージ師になったとかならなかったとか。
 その結果、あまりの気持ち良さに男湯はイチモツを勃起させた男で溢れたという。
 が、それはまた、別の話────。




アーッ

第一回目からこんなオチ……
相変わらず女体化メインにしてないネ


アンケ追加を更新しています
リンクや注釈、今後の三題話更新予定など掲載しているので
出来れば拝見してください

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