三題話 №3「ネコミミ・宇宙人・蟲」

だいぶ間が空きました……
三題話 №3「ネコミミ・宇宙人・蟲」 行きます

蟲注意


知らぬGA猫耳

 『今からこの星は、ワレワレのものにゃ!』
 頭上から女の甲高い声が響き、顔を上げれば円盤型のUFOなるものが空を埋め尽くしていた。
 一世紀以上も前から確認されていた宇宙人の存在が、ついにあらわになった瞬間だった。
 円盤は怪光線を放ち、俺たちの家や森を破壊していく。交渉など一切ない、一方的な力による侵略が今まさに行われていた。
「か、勝てるわけがない……もう、おしまいだぁ……」
 俺の隣ではM字ハゲの男が地面に這い蹲り、頭を抱えて絶望していた。こいつの悲観主義はいつものことなので放っておく。
 それに俺はまだ諦めていない。この緑豊かな星は、今も昔もこれからも俺たちの星だ。
「くそっ、あいつらめちゃくちゃだ!」
 家を焼かれ逃げ惑う者の中には、街の中で一番の力自慢を誇っていた男も混ざっていた。空全体が宇宙人の円盤で覆われているというのに、いったい彼らはどこへ逃げようとしているのだろう。
「何をしている! 早く逃げるぞ!」
「勝手にしろ」
 どこへ逃げても一緒。ならば、俺たちのとるべき行動は一つしかない。
「お、お前、どこに行く気だ! 戻って来い!」
 背後で情けない台詞を吐く力自慢の声を聞きながら、それでも俺は脚を前に踏み出すのをやめなかった。


「にゃははははー! ちょろいちょろい」
 森を進むと、少し前に聞いたばかりの甲高い女の声が聞こえてきた。
 木の葉の陰に隠れながら様子を窺うと……ネコミミの生えた女がたくさんいた。
「この分なら今日中にもこの星を征服できよう……にゃははっ、先住民が虫けらばかりとは楽な侵略にゃあ!」
 ネコミミ女たちの中で唯一木の根に座り、豪奢なマントを羽織ったネコミミ女が、実に愉快そうに笑う。おそらく、あれが宇宙人たちのリーダーなのだろう。
 リーダーの物言いにはムッと来たが、戦いもせず逃げ惑う住民ばかりだったのを思い出し虫けら呼ばわりも仕方ないかと思った。
 だが、今に見ていろ。虫けらには虫けらの戦い方があるんだ。
「総統。しかし油断は禁物です」
 別のネコミミ女が、やや厳しい口調でリーダーに話をかける。
 並んだ猫耳兵士もリーダーも、全員その女に視線が集まっていた。
(今しかない……!)
 俺は地面を這い、落ち葉に隠れながらじりじりと猫耳女たちに近付いていった。
「なんにゃコノエ。勝利の美酒は嫌いかにゃ?」
「好物です。しかし、まだそれに酔うには早すぎだと申し上げているのです」
 コノエと呼ばれた猫耳女は手元の資料を開くと、パラパラとページをめくり始めた。
 俺はそいつの背後に回り、距離を詰めていく。
「この星の先住民……総統が虫けらと呼んだ、者達の生態には謎が多すぎます」
「虫けらは虫けらにゃ。踏み潰してしまえばいいにゃ」
「ただの虫ならばそれもいいでしょう。しかし彼らは『ヤドリ蟲』。我らが猫から進化したのと同じく虫から進化した蟲なのです」
「誇り高い猫人類を虫けらと同じ扱いする気かにゃ!」
「いえ、そこまでは……現に彼らは我等のように手足を進化させず、また成虫にも進化しない変種です。間違いなく非効率的な進化を辿っています」
「ようするにこの星の連中はずっと芋虫なわけにゃ。おかげで侵略も楽だにゃ」
「それはそうなのですが……しかし、なぜ、幼虫形態のままなのか私にはどうにもそれが不可解で……」
 リーダー猫とコノエが俺たちのことについて話している間に、俺はついにコノエの足元までたどり着いた。
 ヒールの高い靴を這い登り、ストッキングに包まれた脚を目の前にする。
 そして俺は
 ヤドリ蟲の身体に備わった牙を使い、
 ストッキングに小さな穴を開け、
 晒された素肌に、思いっきり、潜り込んだ。
「彼らが幼虫形態でいつづけることの利点を理解し、それから一斉攻撃に移るべきかと」
 コノエは気付かない。
 今、コノエの身体の中でうごめいている俺の存在に気付かない。
「利点にゃあ~何がある?」
 目の前のリーダーは気付かない。
 足の先から徐々に神経を侵し、コノエの頭脳へ這い寄る俺に気付かない。
「たと……えば…ばば………ばぅっ!?」
 コノエはようやく気付いた。
 身体中の神経が麻痺し、脳を食い荒らされる自分の異常事態に、ようやく気が付いた。
 しかし、手遅れだった。
「い……あ……たすけ……」
「にゃ!?」
 コノエはその場にうずくまり、弱々しい断末魔の悲鳴を上げる。
 そう、断末魔。
 それがコノエ……「私」の最期で、「俺」の始まりだった。

 コノエが心配していたヤドリ蟲の生態……それは、相手の身体に入り込み、肉体と記憶を奪う「寄生」だった。
 外敵から身を守り、なおかつ外敵の知識を得ることの出来るヤドリ蟲。相手に気付かれず近付くには幼虫形態のほうが便利だということで、あえて進化してこなかった。
 それが、この星に住むヤドリ蟲の進化の過程だ。身体を貰う代わりに教えてやるよ、「私」。
「……もう聞いていねぇか。くく」
 目を開ける。
 うずくまっているはずなのに、視線は当然、蟲の俺よりずっと高かった。
「成功……」
 ニヤリとコノエの声と顔で寄生の悦びに浸る。「俺」が入った足を除こうとしたが目の前を丸い二つの物体が遮っていた。
 なんだこれは……ああ、おっぱいか。
「ふぅん……俺って胸が大きいんだな」
 コノエの脳から猫耳女たちの知識を得て、ついでにこの身体が平均的な猫耳女よりもだいぶ大きい胸を持っていることも知る。
 「私」はこんなことにコンプレックスをもっていたんだなぁ……こんなに、魅力的なのにな。
「にゃはは……」
 胸を片手で弄りながら、思わず笑い声が漏れる。
 猫耳星人の口癖で油断するとおもわず「にゃ」と言ってしまう。実にふざけた言語だ。
「こ、コノエ……? お前、「にゃ」って言ったかにゃ? あんなに努力して、「にゃ」をやめたのに? それに、なんでさっきから胸を揉んでるんにゃ?」
「総統……」
 目の前のアホ総統が、心配そうな顔で俺を見ている。
 ああそうだ、この考え無しのおかげで「私」がどれだけ苦労したことか……。
「すぐ殺すつもりだったけど……気が変わった」
「にゃ?」
「いいえ、なんでもありません総統。それで、さっきの話の続きですが」
 俺はコノエの顔で微笑み、総統に話しの続きを切り出した。
「話しって、なんにゃ?」
「…………ヤドリ蟲が幼虫形態のままでいることの、利点です」
「おう、そうにゃっ、虫けらに利点なんてあるわけないにゃ」
 総統のゆるいおつむは、それで一気にさっきまでのコノエの異変を忘れてしまった。
 こんなのの副官だなんて同情するよ、コノエ。
「例えば……彼らはとても小さい。その意味がわかりますか?」
 総統にではなく、立ち並ぶ猫耳兵士達に問う。
 兵士達はお互いに顔を向かい合わせて、見るからに動揺を表した。
「どういう意味にゃ! わかるように言うにゃ!」
「つまり……この森の中。落ち葉の影に、石の下に、地面の中に、大量のヤドリ蟲が潜んでいる可能性があるわけです」
「やにゃ……っ」
 兵士の一人が、自分の身体を抱き身震いする。しかし俺は構わずにコノエの口を動かし続けた。
「もしかしたら、既に囲まれているかもしれません。幾匹幾千匹の蟲にね。火を見て逃げるのは虫のサガですが、ヤドリ蟲全部がそうだとは限りませんし」
 この俺がそうなように、と心の中で続きを呟く。
「たかが虫にゃ! 踏み潰せばいいにゃ! 森ごと全部焼き払えばいいにゃ!」
「本部からはこの星を綺麗なまま侵略せよと言われていますが?」
「知るかにゃ! 蟲は消毒にゃ! ノミ一匹生かすにゃ!」
「そうですか……」
 総統は蟲への嫌悪感も顕にし、激情に任せ本部の命令を無視しようとしている。
 コノエの知識どおり、単純バカで面白いほど思い通りだった。
「それでは、あなたは反逆者ということになります」
 コノエの懐から銃を取り出し、総統に向ける。
 他の兵士がいる前でリーダーに歯向かうぐらいだ。副官とはいえ、今この場でコノエが返り討ちにあってもおかしくはない。
 このアホにどれだけの求心力があるかにもよるが、これは俺の博打だ。
 大人しく言うことに従えばよし。仮にコノエの身体が壊されても、今度は総統に寄生するだけだ。
「……っ」
 ジャッ! と銃を構える音が一斉に響き、兵士達が銃口を向ける。
 ……俺、つまりコノエにではなく、総統に向けて。
「な、なんのつもりにゃお前ら!」
「ヤドリ蟲は寄生民族だ! にゃめるにゃよぉーーー!」
 銃口を向ける猫耳兵士の一人が叫ぶ。
 その口調には、聞き覚えがあった
「……M字ハゲか」
「調子に乗るにゃよ! この星を守るのはこの俺様にゃあ!」
 知能の低い猫に寄生したためか、いちいち台詞が締まらない。
 だがこれで完全に形勢逆転。
 ただのブラフだったつもりが、どうやら本当にこの一帯、ヤドリ蟲に囲まれていたらしい。
 おそらく、他の兵士も既に乗っ取られているのだろう。無事な猫は、おろおろして銃を構えていない数匹だけだ。
「……さ? 撤退しましょうか、総統?」
「う、うりゃぎりものどもめーーーー!」


 ────数ヶ月。
「コノエ総統」
 猫耳兵士の一人が俺をそう呼び、近付いてくる。
 通信士のこの猫は、ヤドリ蟲の寄生を免れた数少ない猫耳兵士だ。
「なんです?」
「その……本部からまた電信です。『応答せよ』と」
「いつものように無視しなさい」
「……しかし、もう食料が」
「無視しなさい」
「……了解です」
 何かに怯えたように息を呑み、通信士は急ぎ足で俺から離れる。

 あれから数ヶ月。
 俺はコノエの身体のまま、猫耳宇宙人の宇宙船で暮らしている。
 一度寄生してしまえば寄生した身体が死ぬまで離れられないのだから、始めからこのつもりだった。
 だが幸いなことに、M字を始めとしてたくさんの兵士がヤドリ蟲に乗っ取られている。一人ではコノエとして生きるしかなかったが……仲間がいれば話は違う。
 ……いつか、本部から再び猫耳の兵士達が送られてくるかも知れない。
 ならば、我らの星は我らが守ろう。
 補給が出来ないのが難点だが……まぁいい。死ねば本来の蟲に戻るだけだ。
 ヤドリ蟲は殺さなければ死なないのだから。

「にゃはははは……!」
 廊下に倒れる猫耳兵士達の餓死死体を素通りしながら、俺は哄笑をあげて独房へ向かう。
 今日は、どのようにしてあのアホをいじめ倒そう。

 恥辱に耐え切れずアホの心が壊れれば、俺の勝ち。
 コノエの身体が先に飢えで死ねば、アホの勝ち。
 全ては余興。
 星を守るのも、アホを嬲るのも、退屈しのぎ。

 さあ、今日は何をして過ごそうか。




ダークオチ
総統とコノエの独房Hがないとかバカなの死ぬの?

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No title

面白いですね!

Re: No title

> 面白いですね!

ありがとうございます!
自分の創作物が誰かを楽しませる……こんなに嬉しいことはない!
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Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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