三題話 №6「脳 液体 増殖」

お待たせです
三題話 №6「脳 液体 増殖 」 行きます

薄味な黒組系・バッドエンド注意

天才の憂鬱

「ふむ……なるほど」
 序破急の三部構成で作られたアニメの観賞が終わり、天才の僕が世界をどのようにして導いていくべきかのヒントを得る。
 善人がバカを見て、悪人がのさばるこの世の中を変える。それは、この僕にしか出来ないことだ。


 数日後、純白と真紅のボディスーツスーツが完成した。
 ヒントとなったアニメの服に似せ、ただのコスプレ衣装にしか見えないようにしている。違うところといえば二着は透明のカプセルの中に保管され、いくつものコードに繋がれているところか。
 着替える支障にはならないが、このボディスーツのみを外に持ち出すことは出来ない。のちのち改良するが、最初の内はこの場所で計画を遂行するしかないようだ。
「教授ー、来ましたー」
 研究室のドアがノックもなしに開かれ、丸眼鏡をかけた助手が笑顔で入室する。
「あのねぇキミ。入るときはいつもノックしろと……」
「うっわ、なんですかそれ? エバっすか!?」
 僕の言葉も聞かず、助手は目を輝かせてカプセルのボディスーツに飛びついた。
 彼女は優秀なはずなのに、どうも僕の前ではバカっぽさが際立つ。僕のパートナーとするには教養は申し分ないが、あまりにも知性が足りない。
 まぁ、だからこそ、彼女を呼んだのだが。
「あれ? でも本物とはちょっと違う……教授、これどうするんですか?」
「ああ。これは……新感覚体感操縦式アクションゲームの筐体だ」
「しん……?」
「つまり、キミがあの赤いボディースーツを着る。そうすると、後ろのモニタ画面にあの赤い人造兵器が映し出され、キミの思いのまま動かすことが出来るのだ。わかりやすく言えば、キミが右手を上げれば人造兵器も右手を上げる」
 それが、表向きの設定。
 しかし世界を導く僕が、ただのゲーム開発をして終わるはずがない。
「弐号機を自分の思い通りに動かせるんですか!? あれ、でもそれエバっていうよりGガン……」
 Gガン? ……彼女の教養の深さには、僕もときどきついていけなくなる。
「……いいから着てくれ。そのために呼んだんだ」
「まじっすか! わーい!」
 無邪気の喜ぶ彼女を見ていると、これから僕が行うことに罪悪感が……芽生えないな。
「きょーじゅー、この中で着替えるんですかー? カーテンとかないんですけどー」
「ああ。じゃあ、僕は後ろを向いているよ」
 助手に背中を向けて歩く。
 彼女の犠牲で世の中がよりよくなるなら、何も迷う必要はなかった。

「着替えたか?」
 機材の前まで移動し、スイッチに手を掛ける。
 これを押したその瞬間、ある液体がカプセルの中に注入される。
「はーい。もうこっち向いて大丈夫ですよ」
 振り向く。
 真紅のボディスーツを身に纏った助手は眼鏡を外し、カプセルの中でVサインをして微笑んでいた。
「では、はじめよう」
 スイッチを押す。
 密閉されたカプセルの中に、赤い液体が注がれる。
「きょ、教授!?」
「問題ない。ただのアニメ準拠だ」
「も、問題ないって……溺れるじゃないですか!」
「アニメで溺れた描写があったか?」
「いや、ないですけど! でもこれはアニメじゃなくて現実……」
「黙れ」
 液体の注入速度を上げる。
 狭いカプセルの中はあっという間に液体で満たされ、彼女の騒がしい声も聞こえなくなった。
 ……さあ、本番だ。

 ────

 カプセルの中に閉じ込められた私は、ガラスをどんどんと叩きながら脱出を試みる。
 だけど水中では本来の力が出せず……っていうか、女の私がおそらく強化ガラスだろうこれを壊せるわけがない。
(教授……どうして)
 全身が赤い液体に包まれ、息が苦しくなる。
 問題ないって教授は言っていたけど、マスクも酸素ボンベもつけていない人間の私が水の中で呼吸できるはずがない。
(でも……もう……)
 限界だった。
 なけなしの酸素を泡にして吐き出し、口の中に液体の侵入を許す。
 ……苦しくはなかった。
(え……? ほ、ほんとに……?)
 おそるおそる目を開けてみる。
 眼球が液体に触れ、だけどまるで地上にいるみたいに違和感なく開けられた。
(すごい……すごいすごい!)
 まるで魚になった気分だ。
 私は水の中で自由に呼吸をしている。
 新感覚ゲームなんかよりも、こっちの方がずっと凄い!
(あ、でもこれゲームなんだよね)
 そもそもの目的を思い出し、後ろのモニタ画面を見る。
 …………いくら待っても、液晶画面には何も映し出されなかった。
(ッ!?)
 いきなり、頭に激痛が走る。
 まるで脳を直接殴られたような鋭い痛みに、はしゃいでいた私の気分は一気に吹き飛んだ。
≪実験体は、助手で決まりだな≫
(教授?)
 外にいるはずの教授の声が聞こえる。
 いや、その声は「私の記憶が」喋っていた。
(な、なんで……)
 頭の中に、いくつもの私の知らない場面が記憶として再生される。
 実験体を探す教授の声。
 この装置を設計する、男の人の手。
 あのアニメで、ヒロインが敵に乗っ取られるシーン。
 「僕」の思想……世界中を導く、最良手を「思い出して」いく。
≪僕の細胞情報を液体化し、カプセル内の人間へ注いでいく≫
(細胞……?)
≪コードとボディスーツにより、助手はいま自己免疫力をほとんど失っている。……それはつまり、攻撃に対して非常に脆弱だということだ≫
≪脳への攻撃を始め、体内に小さな傷を作る。欠損箇所に、液状化した「僕」が流れ込めばそれで十分≫
≪「僕」はガン細胞のごとく増殖し≫
「細胞を塗り替え、記憶や肉体の内面情報を、上書きする」
(!?)
 水中にも関わらず、私が喋る。
 ……ちがう。喋ったのは、教授だ。
「上書きするといっても、外見は元のままだ。本来の記憶も消えず、僕の記憶が追加される」
(ヤダ……やだやだやだッ、何喋っているの、私!)
「喜べ助手。キミの外見と素晴らしい教養は僕がすべて引き継いでやろう」
(そんな……教授、お願いだから……)
「だが、キミの思想はいらない」
(やめて……私の中に入ってこないで!)
「思想や感情は、「僕」と同一化させる。すべての人間が同じように考え、世界をよりよくしていくんだ」
「人類はすべて「僕」になる! ははは、きっと素晴らしい世界になるだろうさ!」
 細胞が生まれ変わる。
 私が新しい私になっていく。
 昔の私が……消えてしまう。


 数年後。
「教授、いよいよですね」
「ああ。もうすぐこの装置がゲームとして発表され、全世界に知れ渡る。これも、キミの素晴らしい教養のおかげだ」
「水臭いですよ教授。私は僕なんですから、協力するのは当たり前です」
「ははっ、そうだな」
 助手の肩に手を回し、胸を揉む。何度触っても気持ちのいい、弾力のある乳房だ。
「ん、もう、僕ってばそんなにスケベでしたか?」
「いや……女の肉体はどんなものかと、興味深くてね」
 僕の細胞情報で上書きをしても、「僕自身」が彼女になったわけじゃない。
 毎晩ベッドの上で乱れる「僕」を見るたびに、どんな気持ちでいるのか想像する。しかし想像は実現せず、男の僕は女の快感を知ることは出来ない。
 「他人」を「僕」として操ることは成功した。
 だが「僕」が「他人」になることはない。そんな思想は、世界を導くのに不要だからだ。
 ……しかし。
 女になりたいわけではないが、「他人の身体」というものに僕は興味を持った。
 天才の僕に、知らないことがあるというのも許せない。
「新たなスーツを作らねばな」
 世界を導くには、すべてを知っておく必要がある。
 天才には、ゴールなどないのだ。




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No title

復活してるー!
あと三題話をカテゴリにいれてほしいです・・・

くのいちアフターの続きをッ!続きをォッ!お願いいたします!

感謝

復活を望んでいる稀有な方がいる……こんなに嬉しいことはないっ

感謝の印というわけでもありませんが三題話をカテゴリ分けしましたー


くのいちとはまた懐かしいものを……w
「続きなんかなかった」にならないように注意しておきます
プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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