三題話 №9「第一印象 天使 不自由」

三題話です

多少後味悪いので注意

三題話 №9「第一印象と天使と不自由」(お題ですったーより)


お題ですったー……そんなモノがあったとは
(ハッ)つまり投票を募る必要はなかった…!?


天使な第一印象

 病室に突如として現れたソレは、まさしく天使だった。
 真っ白のワンピースと背中にある翼。長い金髪に天使のワッカ。
 それ以上にわたしの心をひきつけたのは、その全身全霊から漂う美しさだ。


 この子は間違いなく天使だと、直感的にそう悟る。
「よ、お嬢ちゃん。お前、なんかしたいことある?」
 ゾッとするような美しさをたたえた彼女はしかし、わたしの第一印象を見事にぶち壊すような言葉遣いをしていた。
「……したいこと、ですか?」
「おう。まぁ何もないんなら、このままサクッと連れて行くけど」
 ベッドに横になったままのわたしを見下ろして、ニヤッとどこか嗜虐的な笑みを浮かべる。
 その腹に何か抱えたような薄暗い微笑みは、天使というよりも悪魔だ。
「えっと……あなたは、天使ですか? それとも悪魔?」
 印象をそのまま口にすると、なぜか彼女は怒ったように唇を尖らせた。まぁ、悪魔呼ばわりされて怒らない人なんていないと思うけど。
「俺のことはどうでも良いだろうが。したいことあるのか? ないのか?」
 普通、もうちょっと説明とかあるんじゃないかって思うけど、どうやら彼女は相当な面倒くさがり屋のようだ。
 わたしは天使さんについてそれ以上考えるのをやめて、ぼんやりと天井を仰いだ。
(そっか……わたし、死ぬんだ)
 自分の命が尽きることに、いまさら悲壮感などない。
 生まれたときから病弱で、人生の半分以上をこの病室で過ごしていたような生涯だったから、死ぬこと自体には恐怖があまり湧かなかった。ようやく死ねる、という気分ですらあった。
 そんなわたしが、死ぬ前に望むこと……。
「んっと……自由、かな」
「あん?」
「わたし、自由が欲しい」
 一度で良いから、ベッドに縛られることのない、健康な身体になりたかった。
 熱に浮かされることなく外を走り回って。
 お腹がはちきれそうなほどご飯を食べて。
 そんな些細な憧れを、わたしはずっと抱いていた。
「自由ねぇ…………」
 天使はその美しい髪をガリガリと弄りながら、渋い顔をしている。
 だがその逡巡は本当に一瞬だった。
「んじゃ、お前を『自由』にする」
 そう言って彼女はどこからともなく自分の身の丈すら追い越す大鎌を取り出し────
「え、ちょっと!?」
 驚くわたしを意にも介さず、両手で構えた鎌が振り下ろした。


 ……気が付けば、わたしは〝わたし〟を見下ろしていた
「え、え……!?」
 驚いてあたりを見回す。
 視点がだいぶ高くなっているけど、ここはわたしの病室だ。
 ベッドの上には、肌がいやに白い自分の身体がある。目を閉じて、ピクリとも動かない姿はまるで死体のように見えた。
「わたし……幽霊になったの?」
 声に出して、自分の手をじっと見つめる。手のひらを透かして、病室のベッドと床がはっきりと見えた。
「うわ……すごいすごい!」
 念じれば、漫画みたいにシューッと空を飛ぶことが出来る。
 コントロールが難しくて何度か壁や天井にぶつかりそうになったけど、わたしの身体はコンクリートを突き抜けて隣の部屋に移動しただけだった。
「あはっ、あははははっ!」
 どれだけ駆け回っても、息が全然乱れない。お医者さんの前を通っても、何も言われない。
 不自由な肉体から解放され、行く手を阻むものは何もない。
 これほど身体が軽いのは、生まれて初めてだ。
 わたしは、自由を手に入れた!

「おーおー、はしゃいでんなー」
「天使さん!」
 わたしの身体が置いてある病室に戻ると、天使さんがどこか皮肉っぽい笑みを浮かべてわたしを見上げていた。
「ありがとうございます、天使さん! わたし、もう思い残すことはありません」
「あっそ。そりゃよかった」
「……?」
 違和感があった。
 男みたいな口調に、いかにも清純そうな外見とは裏腹のざっくばらんな態度。
 それらは出会った当初からかわってないけど、わたしはさっきまでの天使の態度が少しだけ違うような気がした。
「あの……天使さん? わたしは、いつごろ天国に連れていかれるんですか?」
「天国ぅ? 連れて行かねーよ」
 なら地獄か。大それた悪事を働いた記憶はないけど……。
「いいや? 地獄にも行かない。なんせ、お前は自由だからな」
「はい?」
 彼女がいきなり何を言っているのか理解できずきょとんとしていると、さらに驚くことが起きた。
「よっと……」
 ベッドに横たわっていたわたしの身体が、突然、上半身を起こす。
「な、なな、なん、で……?」
 震える指で〝わたし〟を指差す。ベッドの傍らにいる天使は、うろたえもせずに、起き上がった〝わたし〟を見ていた。
「ひひっ、しかしラッキーだぜ。まさか魂のない生きた体がこんなところにあるなんてなぁ」
 〝わたし〟は男のような口調でニタニタ笑い、いきなりパジャマの上から乳房を揉み始める。
「な、なにしているの! やめてよ!」
「胸は……んっ、ささやかだけど、まァ贅沢も言ってられねぇか……これから、たっぷりオレ好みに開発してやるぜ」
 〝わたし〟はわたしの声が聞こえていないのか、胸への愛撫を止めずにぶつぶつと独り言を言っている。
「天使さん! なんですかこれ!?」
「さぁな。この病院で死んだ奴の魂でも入ったんじゃね? なんせお前は自由だし」
「また自由……、なんなんですか、自由って!」
「哲学的だな」
「からかわないで下さい!」
 天使に激昂する。その間にも〝わたし〟はとうとうパジャマを脱ぎ出し、その手を下半身へ……。
「やだ、やだやだ! そんな、やめて!」
「わめいたって無駄だぜー? 俺ら幽霊だし見えないんだよ?」
「そんな! 戻してよ!」
「何が不満だ? お前の魂は肉体を捨てて自由を得た。肉体はお前の魂から解放され、誰も自由に動かすことができる。正真正銘、心も身体も自由だ」
「そんなの、わたしが望んだ自由じゃない!」
「じゃあ具体的に言うべきだったな。もう遅いけど」
 言いながら天使がわたしに背を向ける。
「待って! どこ行くの!?」
「帰るんだよ。仕事終わったし」
「仕事って……何?」
 わたしがそう訊ねると、彼女は顔だけこちらを振り向き────。

 第一印象で天使と認めた美しい顔で、
「人の願いを叶え、そいつを絶望に叩き落すこと」
 悪魔と思い込んだ薄暗い笑みを浮かべ、
「ちなみにお前、あと数日の命でも何でもねーから」
「う、そ……」
「せいぜい、元・お前の身体が死ぬまで、自由を満喫するんだな」
 わたしに、地獄のような不自由を突きつけたのだった。
「は、あ、すげ……こりゃ、んっ、あ、あああああーーーッ」
 〝わたし〟の嬌声を聞きながら、わたしは、誰にもはばかることなく涙を流した。


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今までで一番黒組だった(褒め言葉)

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でも救いのないお話はもっと好きです(ゲス顔)
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