ネコス74

TSした喫茶店のマスターが織り成す、ぐっだぐだストーリーです

ネコス74

 みなさまこんにちは。
 シングルベルが年中鳴りっぱなしな喫茶店『ネコス』の美人マスターです。なんだかお久しぶりの気がします。


「リア充はいますぐ爆発するべきだと思いますー」
 お店のカウンターで頬杖をつきながら、外を歩くうかれカップルどもに呪いの念を送ります。
 私のお店は閑古鳥が今日も元気に鳴き、百合百合できる恋人のいない私の脳内では来客鈴のかわりにシングルベルが鳴っています。ふーんだ。社会人にクリスマスなんかないんですよーだ。と強がってみますが一人身はやはり寂しいです。
「こんなはずじゃなかったんですけどねー」
 秘伝のコーヒーで念願の女体化を果たしたは良いものの、誰ひとりとしてこの美人マスターの魅力に気がつかないのは計算外でした。
 美少女の一人や二人傍にいるのがTS系主人公だというのに、私の周りには残念系女子ばっかりです。
「聞き捨てならないな野良猫。誰が残念系女子だ」
 カウンターに座る唯一のお客、金髪幼女が凄みの聞いた人殺しアイで私を睨みつけてきました。
 残念系女子その3の黄花ちゃんです。
 ちなみにその1の青葉ちゃんは今頃はバイトちゃんの青田君と百合百合デートをしているでしょう。妹が主人公ポジなのはいかんともしがたいと思います。
「いい加減気づくんだな。お前は、物語の主人公なんかじゃないんだよ」
「そんなことありません。人は生まれながらにして人生という物語の主人公なのです」
 マスター哲学的です。カッコイイです。誰も言ってくれないので自分で言います。
「ふん。恋人もいないような奴が、人生の何たるかを語るか」
 金髪幼女は憎たらしげに鼻を鳴らし、席を立ちます。
 どうしてこう、恋人のいる人間はいない人間に対して尊大な態度になるのでしょう。いや、そういえば黄花ちゃんはもともとこーゆー娘でした。
「私は今から、フィアンセとデートだ。野良猫は野良猫らしく、この巣で一人寂しい夜をすごしているほうがお似合いだ」
「ご忠告どうもです。涙堪えてネンネしますー」
 私もいい大人です。いまさら、ひとりぼっちが嫌で泣いたりなんかしません。……しませんとも!

「はぁー……退屈ですねー」
 黄花ちゃんが店を出て、再び店内はがらんどうです。
 みなさまはこんな辺鄙な場所にある小さな喫茶店に入るより、繁華街の一流レストランの方に用があるみたいです。ぐすん。
 残念系女子その2のフリーター紫ちゃんは予定があるとかで今日は出てきていません。店内BGMから流れるクリスマス・ソングが私の寂しさを余計に煽ります。

────カラン
 来客鈴が鳴り、お客さんがやってきました。
「やあマスター。プレゼントを持ってきたよ」
 嬉々として顔を上げると、サンタコスをした青年が大袋を抱えてお店に入ってきました。通報するべきでしょうか?
「さあ、何も言わずに受け取って欲しい」
 青年……元男と知りながら私を口説き続ける稀有な青年……赤井さんは、そのニコヤカ過ぎて逆に胡散臭い笑顔のまま、袋の中に手を突っ込みます。
 出てきたのは、封筒と小さな箱でした。
「なんですか、これ?」
 何も言うなといわれましたが質問します。
 プレゼントはありがたいのですが、妙な物なら要らないのが正直なところです。
「もちろん、箱の中には婚約指輪が」
「せっかくだから私はこの茶色い封筒を選ぶぜです!」
 彼が言い終える前に、私はテーブルに置かれた茶封筒をひったくるように手に入れました。
 箱が婚約指輪なら封筒は婚姻届かも、という想像を働かせるより先に身体が動いてしまいました。ちょっと後悔です。
「そうか。まだ、指輪は早かったようだね」
「親切に教えておきますが、私があなたからの指輪を必要とする時期なんて永遠にないとここに誓います」
「ふっ。いいよ。君が納得するまで、僕はいつまでも待つよ」
 どうにも通じていないっぽいです。というか本当にウザイお客さんです。略してウザ客です。
「それで? こっちは何ですか?」
 婚姻届なら今すぐ燃やしてしまう心構えをして、訊ねます。
「ふふっ……チケットが二枚。有効日は今日だ」
「( ゚д゚ )」
 マスター、デートに誘われてしまいました。


 ウザ客と出かけるなんて非常におぞましいのですが、チケットは今人気の映画で、私も興味があったものでした。
 仕方がないので誰も来ないお店を臨時休業にして、彼と二人で出かけることにしました。断じてデートではないです。
 ………………。
「う、うぇ、ぶぇええええんっ」
 み゛な゛さ゛ま゛こんばんば。
 良い歳して映画でマジ泣きしてしまった美人マスターでず。
「あんな……あんな終わり方、悲しすぎますー」
 映画は、ひょんなことから孤独になってしまった男の物語でした。
 誰もそばにいない。光さえ届かない。音も聞こえない。暗闇だけが彼を取り巻く唯一の環境です。
 そんな絶対的な孤独に立たされた男は、死という理不尽ながらも現実的な結末を迎えて終わります。……最後まで、独りのまま。
「マスター気付きましたよ」
 隣を歩く赤井さんに話しかけるように、独り言を呟きます。
 彼は映画館を出てからずっと、私の肩を抱き、何も言わずに寄り添って歩いてくれていました。
「孤独が平気なんて人間は、どこにもいないのですね」
「うん。だからこそ、僕はキミと共に生きていきたい」
 そういって、彼は肩を抱くのをやめると私の前に立ち塞がります。
「マスター。これを、受け取ってくれないか」
 彼の手のひらの中には、お店で見た、小さな箱がありました。
「僕は、キミを一人ぼっちになんかさせない」
「…………」
 真剣な顔で口説く赤井さんに、私は手を伸ばし……。
「ふぐっ!?」
 その鼻っ面を、思いっきり引っ張りあげてやりました。
「そーゆー魂胆でしたかこのギャルゲ主人公!」
「な、何のことだいマスター?」
「ヒロインの気持ちが弱っているときに、「俺がいる」みたいなことを言って信頼度をMAXにするやり口! ギャルゲならそれで美少女はオチるでしょうが、私はそう簡単にいきませんよ!」
「ま、マスター。キミは何か誤解している」
「ふんっっだ! 私を攻略したかったらTSして美少女になって出直してくるが良いです!」
「いや、それは断る。僕は男として君を愛したい」
「私は男なんざと付き合うつもりなんかねぇっつーんですよぉー!」

 赤井さんと私は、どうやら一生相容れないようです。
 それではみなさま。
 ぼっちさんもリア充どもも、メリークリスマスです。
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何故かこの二人が結ばれる未来しか想像出来ない。

Re: タイトルなし

>結ばれる
いつか上手い具合に二人くっつけたいですねー

マ「フシャーッ!!」
  --マスターは威嚇している!
プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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