試作2


前回の反応から不可、ではないと判断しました
一話~四話目まで公開していくつもりです


1:二人称で話が進みます
2:オリジナルの怖い話を基本にした微妙なTSモノです


「学校であったTSい話」 第二話

「二番目はボクだね。ヒヒッ」
 小太りの男が、頬を歪めて奇妙な笑い声を上げた。
 威圧するような古泉さんの笑い顔とは対照的に、背筋が震えるような醜悪な笑みだ。視線はせわしなく行き来し、それでも同席する二人の女性の胸元にはしっかり目を配っている。
 彼女たちもその視線を感じているのか、嫌悪感を露わにして居住まいを正した。

「ボクは二年の田無です。今日は、みなさんと会えるのをすごくすごく楽しみにしていました。
 ひとつの部屋に集まって一人ずつ怖い話をする……そういうのに、すごく憧れていたんですよ。だってこういうのって、友達みたいじゃないですか。
 みなさん、これを機会に今後も仲良くしてくれると嬉しいです。ヒヒヒッ。
 ボク、クラスでも浮いちゃっているんですよね。ブタとかキモオタとか、陰でそんなこと言って気持ち悪がるんですよ。
 みなさんの目から見てどうですか、ボクって太っています? いませんよね? アニメや漫画にだって詳しくないですよ? 自分で言うのもなんですけど、ごくごく普通の男です。
 見た目の印象だけで人を罵倒するのは、とてもいけないことだと思いませんか。
 でも困ったことに、こうやって正論を言ってもキモイの一言で終わるんですよね。ときには不用意な一言がいじめの原因にまでなったりするから世の中恐ろしいものです。
 佐倉君ならボクの気持ち、わかってくれますよね。
 キミ、可愛い顔をしているし背も低いからさ。女の子みたいだってからかわれたことだって、一度や二度じゃないんじゃないかな? 気に障ったならごめんよ。馬鹿にしているわけじゃないんだ。
 でも、可愛さは武器にもなるんだ。どちらかといえば、キミは恵まれているほうだってことをわかったほうがいい。
 人間ってさ、ひとつだけでもいいから周りの人よりも優れたものをもっていれば、意外と何とかなるんだよ。いじめの対象にだってなりにくいし、自信にもつながる。いいこと尽くめだ。
 ボクにもそういう取り柄があってね。キモオタとか陰口をたたかれてはいるけど、面と向かっては言われたことはないんだ。
 それはどうしてかというと、ボクには霊感があるからなんだ。
 ……誰ですか、いま、笑ったのは?
 ボクが、誰にも負けないボクだけの取り柄をこうして話しているのに、どうして笑うんですか?
 怖い話をするために集まった方々なら、霊の存在はもちろん信じているんでしょう? なのに霊感があるというボクの話は鼻で笑うんですか? そんなことありませんよね。
 ねぇ、佐倉君。キミもボクのこと、おかしいって思ったかい? いいんだよ、正直に言ってくれて。………………ああ、よかった。そうだねよ、そんなことないよね。
 霊感がある人間をバカにしたらだめだよ? 幽霊に取り憑かれたとき、救ってくれるのは霊感の強い人なんだから。
 そんな態度をとっていたら、もしものとき助けてもらえませんよ? ヒヒヒ……。
 ボクは別に、お払いとかができるわけではありません。でも、幽霊を見て話し合うことぐらいならできます。
 幽霊って未練の塊ですから、愚痴を聞いてあげれば大抵の場合成仏してくれるんですよ。お金はもらえませんけど、これは立派な人助けだと思っています。
 ……だけどね、そんなボクに対していい感情を持っていない人もいたんです。
 荻窪っていう男なんですけどね。彼は、とにかく超常現象を否定するのが大好きな男だったんです。
 幽霊は錯覚。超能力はトリック。それが彼の持論だそうですよ。
 どこで聞いたのかボクの霊感のことも知っていて、ずいぶん酷いことも言われました。
「幽霊とか頭おかしいんじゃねぇのお前」って、わざわざ大声でボクを笑い者にするんです。そんなにオカルトが嫌いなら無視すればいいのに、なんでかわざわざ寄ってくるんですよねぇ。
 ボクが思うにですね、あれはオカルトを否定したいんじゃないんです。単に、自分よりも弱い者を攻撃する口実がほしいだけなんですよ。そうやって、自分の存在を大きく見せたいわけです。
 当然、周りの人には好かれていませんでした。ボクと同じぐらい、いいえ、もしかしたらボク以上の嫌われ者だったかもしれません。

 だけど人間、何かしら取り柄はあるんですよね。
 荻窪には、付き合っている女性がいたんですよ。
 ノゾミさんといって、ひとつ年上で運動も得意。勉強は少し苦手みたいでしたけど、それを補って余りある美貌を持った人でした。 正直、なんでそんな人が荻窪なんかと……って、羨む人間は多かったみたいですよ。
 正直に言うと、ボクもそのうちの一人でした。


 彼女と初めて言葉を交わしたのは、荻窪がきっかけでした
「おいクソデブ。お前、放課後ちょっと付き合え」
 彼の国では人に物を頼むときは汚い言葉を付けなきゃだめみたいなんです。
 まぁ仕方ありませんよね。そういうお国柄で育った人に、この国での人との接し方について懇切丁寧に説明してあげる義理はボクにはありませんし。
 だからボクは汚い言葉を聞かなかったことにして、彼の要求にだけ耳を貸しました。
「付き合うって?」
「オレのカノジョが、怖い話聞きたいんだとよ。ったく、くっだらねぇ」
 吐き捨てるように言いましたが、恋人のお願いを突っぱねないあたり相当ベタ惚れしているのがわかりました。普段、あれだけオカルトを攻撃しているのに、いまさら迎合しようというのですからまったく虫のいい話です。
「お前、怖い話に詳しいだろ? 聞かせやってくれよ」
 どうやら彼は、ボクを語り部として連れて行きたいようでした。
 正直、荻窪の前で語り部をやるのは気が進みません。これまでの彼の態度を考えれば当然ですよね。そりゃあ彼女の前では大人しくしているでしょうけど、翌日にはボクの語った内容をバカにして、全否定する様子がありありと浮かんできます。
「あのぅ、せっかくだけどボク、今日は用事が」
 どうにか引き下がってもらおうと、ボクは相手を刺激しないよう、遠慮がちに言いました。
「すぐ済むって。なんなら、アイツの靴下でもプレゼントしてやろうか?」
 ニヤリと下卑た笑みを浮かべながら、荻窪が見透かすような目でボクを睨みつけます。
 わかっているとは思いますが、女性の靴下なんかプレゼントされたって困るだけです。でも荻窪は、ボクがそれで喜ぶと思っていたわけですよ。失礼だと思いませんか?
「……いいよ。でも、絶対に茶々は入れないでくれよ」
 腹が立ったボクは荻窪とノゾミさんを、取って置きの話で恐怖に突き落としてやろうと思いました。
 よくあるじゃないですか。この話を聞いた人は……っていうタイプの怪談。あれ、後味悪いですよね。
 オカルトを信じている人はもちろん、信じていない人だってイヤな気分になります。だからボクも本当は話したくなかったんですけど、荻窪が悪いんですからね、天罰という奴ですよ。ヒヒヒッ。

 ところで三年の先輩方はそろそろ受験の時期ですよね。
 進学か就職かはわかりませんけど、実際どうです? うまくいきそうですか?
 余計なお世話でしょうが、受験に失敗して自殺するのだけは止めた方がいいと思います。自殺すると、成仏ができずに半永久的に苦しむみたいですからね。
 この学校にも昔、そういう事情で命を絶った人がいたみたいで、ボクはそういう人たちの霊を校舎のあちこちでたまに見かけたりするんですよね。
 中にはエリート意識が強くて、受験に失敗したのは周りのせいだって思いながら死んだ人もいたみたいで…………荻窪たちに話したのは、そんなエリート学生の物語でした。
 内容としては実にシンプルなものです。エリート意識の高い男子学生が受験に失敗し、彼は家庭や学校を恨みながら飛び降り自殺した。この話を聞いた人の所には、その男子学生の霊が現れ、こう言うそうです。
 『腕が折れてペンがもてない。お前の腕をよこせ』
 『目が無くて答案が見えない。お前の目をよこせ』
 『頭が潰れて問題がわからない。お前の頭をよこせ』
 そうして順番に、体の一部をもぎ取っていくんです。

「バッカじゃねぇの?」
 予想通り、荻窪はこの話を笑い飛ばしました。
「頭が潰れて問題がわからない? じゃあ何も考えられないってことじゃねぇか。考えられない奴がなんで腕だの目だのよこせって言ってくるんだよ」
 とまぁ、得意げに矛盾点をつつくわけですよ。
 でも霊と人間を同じように考えたらいけません。彼らに、世の中の常識というものは通用しないんですよ。
「はぁ~あ。くっだらねぇ。さっさと帰ろうぜ」
 ボクが丁寧に解説をしてあげたというのに、荻窪は聞く耳持たずといった感じで帰り支度をはじめてしまいました。どこまで人を馬鹿にした男なんでしょうね。
「あ、待ってよ。……それじゃあ田無君、わざわざありがとう」
 その恋人のノゾミさんはというと、ちゃんとボクにお礼を言ってから教室を出て行きました。
 彼女の後姿を見送っていると、なんだかボクはとんでもないことをしたような気がしてきました。
 だって信じる信じないは関係なく、この話を聞いた人のところには自殺したエリート学生の霊が現れるんですからね。もし彼女が死んだら、それはボクの責任になります。
 荻窪なんかと付き合うから巻き添えにあうんだという気持ちで話しましたが、あとになって彼女は助かってほしいと思うようになりました。考えてみれば、彼女は男を見る目以外には落ち度なんてなかったんですよね。

 助かる方法? ありますよ。だからボクがこの話を知っていても生きているんじゃないですか。
 特別な何かをする必要なんてありません。条件は、単純に『頭が悪い』こと。
 エリート学生の霊だって、赤点を毎回取るようなバカの頭なんか願い下げってわけです。
 まぁそこは霊の方で判断するみたいですから必ず助かる……ってわけでもないんですけどね。ボクよりマシな成績だった荻窪なら、もしかして霊も狙うんじゃないかと期待していたわけですよ。

 話をしてから三日後のことです。
 放課後になり、帰り支度をしているボクに荻窪がまたもや話しかけてきました。
 驚いたことに、いつもの汚い言葉は付けずに普通にこのボクを呼んだんです。
「おい、田無。ちょっと付き合え」
 まるで今からカツアゲをするような不遜な態度と台詞でしたが、どこかその目には迫力がありませんでした。
 何かに怯えるような、それでいてワラにもすがるような、そんな複雑な目をしていたと思います。
「どうしたんだい、荻窪君」
「いーから来いってんだよ!」
 これが人に頼み事をする人間の言葉でしょうか。ボクは喉まででかかったその台詞をグッと飲み込んで、大人しく彼の後についていくことにしました。口答えをしてケンカになるのは面倒ですからね。

 道すがら、彼はポツリポツリと事情を話してくれました。
 なんでも、ノゾミさんが突然、学校に来なくなったんだそうです。
 それだけなら風邪とかサボりとか、いろいろ理由が考えられるじゃないですか。でもわざわざボクに相談をしたってことは、そういう一般的な理由じゃないってことです。
「アイツ、今は家で勉強しているんだよ。普段のアイツじゃ、ぜってーわかんねぇような難しい問題集広げてさ」
 昨日お見舞いに行った時に見た光景を伝えられ、ボクはより強く確信しました。
 ノゾミさんには、自殺したエリート学生の霊が憑いている。
 荻窪だってそう思ったから、ボクを頼ったのでしょう。
 普段から霊やボクをバカにしていたくせに、いざ心霊現象がその身に降りかかったらあっという間に手のひらを返してくるのですから調子のいいものです。
 みなさんの周りにもいるでしょう? 自分がピンチのときだけ友達面をするような人間。
 ボクはね、ああいう自己中心的な奴が大嫌いなんですよ。みなさんはそんな人間じゃありませんよね? そんな人間じゃないと信じているからボクの気持ちを明かしたんです。理解、していただけますよね?
 ……どうもありがとうございます。いやぁ、やっぱり友達は同じ感性を持つ人たちに限りますねぇ。ヒヒヒヒヒヒッ。


 案内されたノゾミさんの部屋に入ると、ボクはすぐに異変に気がつきました。
 一言で言うと、ひどい瘴気なんです。車の排気ガスとタバコの煙を一緒に吸い込んだような、むせ返るような不快感に息が詰まりそうでした。
「おい、こっち向けよノゾミ」
 不快な空気に目がくらみそうなボクとは逆に、荻窪は空気の悪さなど歯牙にもかけていないようでした。戸惑いこそあるものの、それは机に向かったままのノゾミさんに対してでしょう。
「……」
 ノゾミさんはこちらに背を向けたまま、卓上ライトが照らす机の上で必死に勉強していました。
 彼女に近づくと、バリバリという効果音が似合いそうなほど、すさまじいスピードでペンが動いているのがわかりました。
「x=4のとき放物線ABは交点Zの……」
 耳を澄ませば、ぶつぶつと問題の問いを読み上げています。頭の悪い僕には、最初は異国の言葉かと勘違いするほどの難解な問題でした。
 荻窪はうろたえ、今にもボクにつかみかかってきそうな危ない目を向けてきました。
「こいつ、ずっとこうなんだ。どうすりゃいいんだよ!?」
「うるさい!」
 わめき散らす荻窪を、ドスの利いた重厚な声が一喝しました。いったい女性のどこからそんな迫力のある声が出てくるのかと不思議でたまりませんでした。
「僕は勉強しているんだ。騒ぐならよそでやってくれないか」
 ないメガネを押し上げるような仕草をして、ノゾミさんが僕たちを睨みつけます。
 目の下にはクマがかかり、綺麗だった髪もろくに手入れをしていないのかクシャクシャでした。
「さあ、早く出て行ってくれ。勉強の時間が減るんだ!」
「ノゾミ! 俺だよ! 俺俺!」
「昨日も言ったろう。キミなぞ知らん! いいか?これ以上邪魔をするなら、僕にも考えがあるぞ」
 力強く睨まれ、荻窪は言葉に詰まりました。
 いわば彼女を人質にされているような状況ですし、逆らえるはずもありませんよね。
「……わかった」
 言われたとおり、荻窪はボクを引き連れてノゾミさんの部屋のドアを閉じました。

「……どうすれば元に戻る?」
 廊下に出ると、荻窪は暗い声で僕に尋ねます。
 彼女が昨日までの彼女とは別人なのは誰の目にも明らかです。だからこそ、荻窪も僕を頼らざるを得なかったのでしょう。
 内心ではバカにしながら、それでも彼は恋人のために僕に心霊相談を持ちかけてきたんですよ。ソレを考えると、スカッとした気分になりましたね。
「僕は、霊の話を聞くしかできないよ」
 彼の殊勝な態度に気を良くした僕は、ノゾミさんを助けてあげることにしました。僕にだって責任がないわけじゃなかったわけですからね。
「そ、そうか。助かる!」
 嬉しそうにいって、荻窪は僕の両手を握りました。もちろん、すぐに振り払いましたとも。僕はホモじゃありませんからね。
 面白いのは、僕がそんな態度を見せても荻窪は彼女のために我慢していたんです。あのときの表情は傑作でしたよ。写真を撮っておかなかったのが今でも残念です。


 ソレからの数日間は、毎日のように彼女の家に行き、ノゾミさんの中にいるエリート学生に語り掛けました。
 最初は無視をしていた彼ですけど、やはり幽霊って言うのは愚痴を語りたくてこの世をさまよっているようなものですからね。
 だんだん、会話をしてくれるようになりました。
 話を聞けばやっぱり彼は受験に失敗して自殺してしまった学生でした。心残りも、ウワサどおり合格できなかったことが悔しくて成仏できなかったそうです。
 彼は友達も恋人も作らずひたすら勉強しかしなかった人間だったようですし、そのぐらいしか未練がないと言い換えたほうがいいかも知れません。
 要するに彼は、ノゾミさんの体を使って受験勉強し、試験を受け、大学に合格したいわけです。
「なんだよ。代わりに勉強してくれるのか?」
 それがわかると、荻窪は羨ましがりました。
 体を乗っ取られるとはいえ、勉強せずに大学合格ができるのだからお得だとでも思ったんでしょうね。努力を放棄して自分の望みを叶えようなんて、どこまでも虫のいい人間です。

 ねぇ佐倉君。キミには、欲しいものがあるかい?
 ソレを手に入れるための努力を怠ってはいけないよ。
 努力すれば必ず叶うなんて綺麗事はいわないけどさ、それでも自分の欲しい物は自分から手を伸ばさなきゃ絶対に手に入らないんだよ。
 ……ボクはね、ちゃんと、自分の欲しいものに手を伸ばしたよ。


「キミも物好きだな」
 その日もボクは、ノゾミさんの部屋で二人きりの時間を過ごしました。
 学生の霊に害がないと知ってから荻窪はあまり足を運ばなくなったので、ここのところボクは一人で彼女の家に来ています。
 『ノゾミに手を出したら殺す』なんてシッカリ釘は刺されましたけど、ボクは内心喜んでいました。
 綺麗な女性と、同じ部屋で、二人きり。なんとも素敵な響きじゃないですか。これで喜ばないのは男じゃありません。
「物好きって、ボクのことですか」
「ああ。言っただろう? 僕は合格さえすれば成仏するんだ。毎日こうして顔を合わせることに何の意味がある?」
 女の子の可憐な声で、エリート学生の霊は勉強の手を休めて、ノゾミさんの声で疑問を口にします。
 ないと落ち着かないという理由で買い与えたダテ眼鏡の奥にある瞳が、心底不思議そうにボクを見つめています。
「……決まっているじゃないですか」
 ボクは彼女のそばに近づき、その、やわらかい肩を両手でつかみました。
「え……え?」
 戸惑いながら、肩に置かれた手と僕の顔を交互に見比べます。
「好きなんですよ。先輩」
 ボクはそのまま体重を乗せて、彼女の体を押し倒しました。
「なっ、た、田無く……ひゃっ」
 首筋に噛み付くようにキスをすると、ノゾミさんの口から小さな女の悲鳴が上がりました。
「ままま、待て。待つんだ。わかっているだろう? こ、この体は確かに君の好きな先輩のものだが、今は」
「違いますよ、先輩」
 舌を出して、今度は鎖骨を舐めてみました。すると、またもや可愛らしい声が彼女の口から漏れ出します。
「先輩が好きなんですよ。ノゾミさんではなく、今の先輩が」
「ぼ、僕、をか?」
「ええ」
 もちろん嘘です。ボクはホモではないので。
 でもチャンスじゃないですか。
 ノゾミさんは誰が見ても美少女です。そして今、その体を支配しているのは勉強ばかりで性や恋愛に疎い男子学生です。
 たとえば足を広げて座っていたり、胸元に不注意だったり、そうして無自覚に彼はボクを誘惑していたんです。
 目の前に極上の料理があるんですよ? いままで手を出さずにいたことを褒めて欲しいぐらいですよ!
「先輩ぃ……いい匂いです」
「あっ、う……」
 ボクはノゾミさんの華奢な体を両腕に抱えて、彼女の匂いを堪能しました。
 キスをして、体をなめて、胸を……ヒヒヒヒヒッ、あとはご想像にお任せします。
 とにかくそうして、ボクはノゾミさんの体を貪りました。
 ほとんどムリヤリやったみたいなものですが、最後は彼だって喜んでくれたので犯罪じゃありませんよね。

 でも、荻窪に知られたら……と思うと急に怖くなりました。
 だってそうでしょう? ノゾミに手を出したら殺すって言われていたんです。
 なのにボクが一人で彼女と会うことに何も言わなかったのは…………信頼、されていたんでしょうかね? それとも、手を出す勇気もないヘタレだとでも思われていたのでしょうか。
 今となってはもうわかりません。
 ……荻窪はもう、この世にいないんですから。


 彼女を押し倒してから数日後のことです。
 荻窪が、死体で発見されました。
 聞いた話では、腕はもがれ目もくりぬかれて、頭のてっぺんが巨大なハンマーで叩いたみたいに潰れていたそうです。
 ……ちょうど、エリート学生の怪談と同じ死に方なんですよね。
「ああ、僕が呪い殺した」
 放課後になってノゾミさんに尋ねてみると、彼はあっさりと口を割りました。
「ど、どうして……?」
「どうして? 決まっているだろう」
 そう言うと、彼は……ノゾミさんの顔は、いままで見たこともないほど無邪気な微笑を浮かべました。
「キミが、あの男に殺されては困るからね」
「は……い?」
「女の快感はすごいね。こんな世界があるなんて知らなかったよ」
 じりじりと、ノゾミさんは微笑んだままボクに近づいてきます。
「また教えてくれるだろう? 僕の知らない世界をさ」
 彼女の小さな手がボクの頬を覆い、その柔らかい唇を、ゆっくりとボクの唇に重ねました。

 ………………こうしてボクは、美しい恋人を手に入れました。
 ノゾミさんは受験に失敗し、今は近くのコンビニでフリーターをしています。
 もちろん、彼女との関係は今も継続中です。自分で言うのもなんですが、とても良好ですよ。
 彼女に嫌われたら今度はボクが死体で発見される番ですし、常にご機嫌を伺う必要があるのがネックといえばネックですね。
 でも、ボクは満足ですよ。綺麗な恋人がそばにいてくれるなら、なんだってやります。
 そういえば彼女、今度はレズプレイがしてみたいって言ってましたから、この集まりが終わったら彼女のところに行きませんか?
 イヤだ? まぁ、はじめから期待はしていませんが……帰り道には、気をつけてくださいね。ヒヒヒヒヒッ。

 ボクの話は終わりです。
 次は、誰が話しますか?

 




試作の正体は夏コミ用の小説です
零話~七話までの予定で
製本版には裏話としてエロ解禁の一人称SSをつける予定です(一話の立川視点等)
予定ばかりです

詳しいことは、当落が判明したときにまた
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製本時には是非ともスンバ○リア星人的な裏シナリオも

Re: タイトルなし

ス○バラリアを知って!?

コメントありがとうございます
裏シナリオがどんな風になるかは未定ですが、気長にお待ちいただけると嬉しいです

君もスンバラリア星人だったのかい!?
…懐かしいですねスンバラリア星人。
コミケ行けないけど楽しみにしています!!

Re: タイトルなし

> N.D さん
うぉう!? まだ知っている人がいた!
「あの男」がモデルの話もブログ公開分に含まれているので是非お楽しみくださいー
プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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