ぞっこん2-3

長編のTS小説 第二部第三章

概要:少年少女の入れ替わり話です
            ぞっこん2-1とあらすじはこちらから

ぞっこんショット!2-3

 結論を言えば、頭をぶつけた程度で入れ替わるなんてことはできなかった。それどころか何度も頭突きを繰り返したせいで、放課後になったいまでもまだくらくらしている。
 またもや理不尽なことに俺の体はあまりダメージを受けなかったようで、藤はピンピンとしていた。それでもなけなしの釣果として、どうにか男言葉を使わせることだけは約束させることが出来たので、まぁ良しとする。
「なぁ、今日くらい休まないか?」
「だめだめ。俺も藤も、いつも部室にいるだろ?」
 やれといわれてすぐに話し方を変えた藤にはさすがに少しむかついたが、これで当面は気持ち悪い自分を見ずに済む。そう思うと、ほんの少しだが溜飲も下がるというものだった。
「う、上手く言い訳できるのかよ?」
「平気だってば。舌先三寸の二枚舌でいけるから」
 階段を上り、四階の写真部へと向かう。放課後になるとこの区画の人通りはほとんどなくなり、昼の喧騒が嘘のようにしんと静まり返る。

 おそらく夕香先輩は今日も部室にいるはずだ。というか、いない日がない。そして会ったが最後、今朝のことを根掘り葉掘り聞いてくるだろう。思い返してみれば、俺も藤もずいぶんと不審な行動を取っていたもんだ。
「本当に大丈夫なのか?」
「疑い深いなぁ。ダテに夕香センパイの幼馴染はしていないって。むしろタカくん……じゃなくて、藤がボロを出しそうな気がするんだけどな、俺は」
「う……」
 藤の口調は自分とは正反対の性質をしているせいで、演じにくさのハードルが殊更に高い。とはいえ、ほぼ同じ難易度のはずなのにこの女は鷹広の口調をあっさりとマスターしている。つまり俺だって、やってやれないことはないはずだ。
「あは、は。やだなぁ、あ、アタシが本気出せば、このくらい、できる……もん」
「ガチガチじゃねーか」
「うぐっ」
 速攻でダメ出しされた。
 口先でどうとでも先輩をごまかせるようなことを言ってはいたが、これではフォローしようがないらしい。
「じゃあ、あんま喋んないように、とりあえずテキトーにやってけ」
「て、適当って……」
「ほら、行くぞ」
 俺の抗議など聞く耳持たないようで、藤はスタスタと先を行き、やがて部室の前まで辿り着いた。
「ちゃーっす」
 ドアを開け、その後ろに俺が続く。
 いつもならば中に夕香先輩がいて、雑誌を読むかカメラをいじるかしているのがパターンだ。しかし、どうも今日はイレギュラーに恵まれているらしい。
「ごきげんよう藤くん、鷹広くん。そして、待っていたよ」
 腕を組み、ラスボスのような立ちかたをする夕香先輩が、俺達を確認するや否やそう言った。
 眼差しは鋭く、しかし口元は三日月に笑んでいる。その表情だけで、静かな怒りが腹の内側で渦巻いているのが目に見えるようだ。何にご立腹なのかぐらい、床一面に雑誌の散らばった部室を見ればすぐにわかる。
「早速ですまないが、この惨状はいったいどうしたことか納得のいく説明をもらいたい」
 昨日はドタドタしていたせいで片付けにまで気を回せなかったわけだが、こうした理由を包み隠さず言えるものならば初めから苦労はしない。
 どう言い訳したものかと頭をめぐらせるが、先輩はそんな悪足掻きさえをも封じるかのように、矢継ぎ早にまくし立ててきた。
「考えても見てくれ。何も知らず部室の扉を開けると、そこに広がっていたのは本に囲まれた空間ではなく、本に呑まれた光景を目の当たりにしてしまった私の気持ちを、だ」
 早口に、それでいてきちんと相手に伝わる速さで、にっこりとわざとらしい笑みを添えながら言葉を連ねていく。
 先輩は怒りの度合いが激しければ激しいほどよく喋り、笑うといった傾向がある。なまじそれを知っているだけに、いまはその笑顔が怖かった。
「夕香センパイ。実は、藤はずっと、俺の家にいました」
「ちょっ!」
 いきなり大嘘がきた。藤の意識は確かに俺の家にいたのだから、ある意味では本当のことだ。しかし事情を知らない夕香先輩に伝えたところで、それは誤解してくれといわんばかりの情報ではないか。
「ほほぅ、キミの家に?」
「そして、あのデザインについての魅力を一から教え込まされることにより、俺の心を捉えたのですっ」
「おまっ、いいかぐぇむぃ!」
 とんでもないことを続けて言われ、いい加減にしろと異議を唱える。が、口に出す前に藤はその無骨な手でうら若き乙女の口を乱暴に塞いだ。
 ……ちょっと待て。なんだいまの思考ノイズは。
「むー、むーっ!」
「藤くん、いいたいことはわかる。キミ達二人があのガイド服を推すというのなら、私はこれ以上自分の案にこだわる理由はない」
 ぜんぜんわかっていない。
「ね、上手くごまかせたでしょ?」
 こっそりと、俺にだけ聞こえるようなボリュームで耳打ちする。
 さりげなく今朝のこともうやむやになっているし、口がうまいと思わなくもない。その代償として俺の好みがあんなよくわからない背中丸出しのミニスカガイド服だと誤解させられてしまった上に、さらなる問題が浮上してしまうわけだが。
「それにしてもまさか、キミが藤くんを家に招くなんてね。いつのまにかずいぶん仲良くなったね」
「え、あーそれね。それですか。あー、なんといいましょうか。あはははは」
 そこまでの答えは用意していなかったのか、藤は視線を泳がせると乾いた笑い声を上げた。
 なんというか考えが浅すぎる。こんな調子でいつまでごまかしきれるのか、先行きが不安でたまらなかった。
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