爆発しろ 2


同時公開した、『裏』との圧倒的需要の差!
しかし止まらない
なぜならイチャラブTSが好きだからーッ


といわけでハートフルな雰囲気の長編TS恋愛モノを書いてみます
二回目でTS出しましたが……これは、TSか?
タイトルは(仮)




『僕はキミに恋をする』


 目を覚ましてまず一番に考えるのは、もちろん彼女のことだった。
 体調はよくなっただろうか。昨日はかなり苦しそうだったけど、最後の方は穏やかな顔をしてくれていたのがせめてもの救いだ。

 お見舞いに行ったときの会話と、彼女の笑顔がフラッシュバックする。
『また、明日ね。皆希君』
 彼女から僕の名前を呼ばれたのは、あれが初めてだ。何回かお願いしたことはあるけど、いつも恵莉さんは恥ずかしがって呼んでくれなかった。
 どうして彼女が名前を呼んでくれたのか。あのとき僕が感じていた落ち着かない気持ちとは、何か関係があるのか。ざわつきの正体は結局わからないまま、こうして朝を迎えた。

 だけどそんな不安は、校門に立つ彼女の姿を見たことで一気に吹き飛ぶ。
 昨日僕にプリントを渡した先輩の後ろで、恵莉さんはいつもと同じように、左腕にクリップボードを抱えて、右手に持ったペンを走らせていた。
(…………あれ?)
 なにか、違和感がある。だけどその違いを見つける前に、僕の足は校門の前にたどり着いた。
「おはよう、恵莉さん」
「うん? あぁ、うん……」
 挨拶をしても、彼女はどこか上の空で返事をしている。
 いつもかっちり編みこまれているおさげも、初めてみつあみに挑戦してみたような、ゆるゆるでヨレヨレの有様だった。
「寝坊したの?」
「あ?」
 訊ねると、まるで本来はつかない文字に濁点が付いているかのような声で僕を見下ろしてくる。
 なんだか、すごく不機嫌っぽい。
「えっと、いや、髪、クシャクシャだったから」
「んなっ……わ、悪かったな! 一時間かけてこんなザマで!」
「はい!?」
 気分を害したのか、恵莉さんはぷいとそっぽを向いて行ってしまった。
 いや、そんなとこより今の言葉遣いの方がずっと衝撃的だ。
(い、いまのって、恵莉さんが言ったんだよ……ね?)
 何がなんだかわからず、その場に立ち尽くす。
 付き合ってまだ半年にも満たないけど、僕はそれ以前から彼女のことは良く知っているつもりだった。
 あんな風にいきなり怒ったり、ましてや男みたいな乱暴な言葉遣いをしていた記憶は一度たりともない。
「何があったんだろう……」
「いや永倉くん。そこなんだよね」
「うわっ」
 いつの間に来たのか、風紀委員の先輩がなんだか難しい顔をして僕の傍に立っていた。
「あたしはてっきり、キミがめぐりんに無理矢理迫って、だから機嫌が悪いんだと思っていたんだけど……」
「そ、そんなこと、するわけないじゃないですか!」
「だよねー。それに、イラついているってだけじゃ説明付かないところもあるし」
「……」
 やっぱり、先輩もそれは感じていたらしい。
 もう一度彼女を見る。風紀委員の仕事をするその姿は、髪の毛が乱れていることをのぞけば普段の様子と何も変わりがない。
「あっ」
 昨日までの彼女とはまったく異なるところを見つけて、思わず声が出た。
 違う。
 どうして恵莉さんが、右手にペンを持っているんだ。
「めぐりんって、両利きだったっけ?」
「違う……と思います」
 先に違和感の正体にたどり着いていたらしい先輩が、確認するように僕に訊ねてくる。
 そう、彼女は左利きなんだ。右手でペンをすらすら動かせるはずがない。
「んー、キミにも原因わかんないかー。ま、ちゃんと仕事はしているしいいんだけどね」
 薄情なことを言って、先輩も自分の仕事に戻っていく。
 髪が乱れていたり、言葉遣いや態度が乱暴なのはまだわかる。そんなもの、少し意識すれば簡単に変えられることだ。
 だけど利き手だけはどうしようもない。少なくとも一晩で変えられるものじゃない。
(恵莉さん……何があったの?)
 どこかへ飛んでいったはずの不安が再び這い寄り、鎌首をもたげる。
 僕は、それをただじっと怯えながら見守るしかなかった。


 昼休みになると、それまで先生しか喋っていなかったクラスが一気に賑わい、喧騒に包まれる。
 上の空で聞いていた授業の教科書をしまうと、僕の目は自然と彼女の姿を探した。
 恵莉さんの席は窓際で、かなり後ろの方だ。先生の目も届きにくく、絶好の昼寝ポイントになっている。まぁ、恵莉さんに限ってそんな真似するはずないんだけど。
 事実、彼女は今日半日、まったくいつも通りだった。
 大人しく授業を受け、板書をして、先生からの質問にも淀みなく答えていた。……ずっと右利きのままでだ。
 今朝の乱暴な言動は夢だったんじゃないかと思い込みたくても、利き腕が変わっているというだけで凄まじい違和感に襲われる。まるで、偽者を見ているような気分だった。
「どうした? 愛しの彼女ンとこに行かないのか」
 輪島がいつも通りの軽い調子で声をかけてくる。からかっているつもりなんだろうけど、今の僕にリアクションをする余裕はなかった。
「あ」
 まごまごしていると、恵莉さんが席を立ち教室から出て行く。最近ではよく一緒にお昼を食べるのだけど、やはり今日の恵莉さんはいつもと違っていた。
「なんだ? ケンカでもしたのか」
「違うよ。じゃあね」
 きょとんとする輪島をあしらって、彼女の後を追う。
 恵莉さんに何があったのか。いろいろ考えたけど、やっぱり本人に直接聞くのが一番だ。
「あれ?」
 てっきり学食に行くのかと思っていたのに、彼女が向かったのはまったくの逆方向だった。
 学食や中庭からはどんどん遠ざかり、進めば進むほど人気も少なくなっている。
 いったい、何の用があるんだろう。声をかければいいのだけど、まるで呼び止められるのを拒むような速さで歩く後姿にどうしてもためらいが出てしまう。せめて見失わないようについていくのが精一杯だ。
「……」
 やがて彼女は一階の、校舎の裏口にあたる小さな二枚扉を開けて、上履きのまま外に出て行った。
「え、だって、鍵……」
 ドアが閉まるのを待ってから近づくと、取っ手には簡単なダイヤル式の錠前が開錠されたままの状態で引っかかっていた。
 彼女が外したのだろうか。でも、どうして番号を知っている?
 ドクドクと心臓をイヤな感じに脈打たせながら、そっとドアを開ける。
 隙間から見える景色は、高い石垣に囲まれた、落ち葉が散らかり放題の裏庭だった。
 そしてその中央で、彼女はブレザーの胸ポケットに手を突っ込み短い棒状のもの────タバコを、取り出した。
「ちょ! 何してるの恵莉さん!?」
 二枚扉のドアを大きく開き、悪行に走ろうとする恋人を慌てて止める。
 不良になりそうだ、とは言ってたけど、本当に不良のようなことをするなんてそんなバカな話があってたまるもんか!
「なっ、なんだよ、お前!」
 尾行には気付いていなかったのか、恵莉さんは突然現れた僕の剣幕に驚いていた。
「お前じゃないよ! とにかくそれ渡して! っていうか捨てて!」
「落ち着けって! 何と勘違いしてんだ、お菓子だよお菓子!」
「だから……っ、え、お菓子?」
 しがみつくように握った彼女の腕から力を抜き、手の中にあるタバコに見えた棒状のものをよくよく眺める。
 タバコというよりはチョークに近い、有名なラムネのお菓子だった。
「……ったく、このメガネが」
 お菓子だとわかり気の抜けた僕の手を乱暴に振り払い、けなしているんだか何だか良くわからない言葉を吐いて口にくわえる。
「あの、恵莉さん。お菓子だとしても、学園に持ち込んじゃ……」
「うっせーな。いーだろコレぐらい。優等生やりまくって疲れているんだよこっちは」
 お菓子を口にくわえながら、尖った目つきで見下ろしてくる。
 ひょっとするとコレが彼女の本性なのかと一瞬疑いかけたけど、そんな考えはすぐに追い払った。
 真面目で、優しくて、とても照れ屋ですぐに赤い顔をする三坂恵莉という女の子が演技だったなんて、信じられるはずがない。
「あの、恵莉さん。訊いていいかな」
「あー、ちょうどいいや。こっちもお前に言っとくことがあるんだ」
 そう言いながら、恵莉さんは手を後ろに回して朝からずっとヨレヨレだったお下げを乱暴にほどいていった。
 スラリとした、細く艶やかな黒髪が彼女の背中でふわりと舞い広がる。
「ミナキ」
 そう、僕の名前を呼び捨てにした彼女は、秋晴れのような笑顔で。
「別れようぜ、"俺"ら」
 僕の日常を決定的に叩き壊す一言を、さらりと突きつけてきたのだった。



 生まれ変わりという、その単語や意味は知っていても僕はそれを信じていなかった。
 これまでの人生でそんなものを気にする必要はなかったし、これから先も特に意識せず雑学の一つとして知っているだけの言葉────そのはずだった。
「俺は、恵莉になる前は男だったんだよ。前世の記憶ってやつだ」
 なのに今日、付き合っておよそ半年になる恋人から突然そんな話を持ち出され、僕は混乱していた。
 なんだそれは。まるで意味がわからない。
「男だったときの名前も、死んだときの記憶も、ちゃんと思い出せる。そんな俺が、男と付き合ったりなんかできるかって。わかるだろ?」
 彼女は一方的に、古風なお下げ髪をやめてストレートロングになった三坂恵莉さんは、言葉通り男みたいな口調で僕をそう説得していた。
 もちろん納得できるはずがない。まだ、僕に嫌気が差して別れたくなったという方がわかりやすい。
「悪いとは思ってんだぜ? 一応、恵莉として生きてきた記憶だってあるんだ。お前が恵莉を好きで、恵莉もお前が好きだった記憶は確かにある。だけど、"俺"は無理だ。俺は男とは付き合えねぇ」
 けど彼女は、自分は前世では男で、男と付き合ったりはできないと、そればかりを繰り返していた。
 タチの悪い冗談だと思う。
 だけど、心のどこかでそれを信じる自分もいた。
 髪型。利き腕。喋り方。
 どれをとっても、僕の知る恵莉さんとはかけ離れている。唯一同じなのは容姿のみだけど、それでも言動や表情の動かし方が違うせいで良く似た他人を見ている気分だった。
「ま、なんつーか……お前の知っている恵莉は、昨日、死んだ。そういうことにしてくれないか」
 ぱき、と口にくわえていたお菓子を噛み砕き、最後まで食べきる。
 とても長い時間、こうしていたような気がする。だけど実際は、小さなラムネ菓子一本分を食べ終わるだけの時間しか経っていないことに愕然とした。……いやいやいや、そうじゃない。
 驚いたのは、『恵莉さんが昨日、死んだ』という彼女の台詞に、だ。
「昨日?」
「ああ。熱、出したろ? で、お前に看病してもらって……目が覚めたら、"俺"だった頃を思い出した」
「それじゃあ」
 ふいに、希望の光が見える。
 まだ彼女は、変わったばかりだ。なら、元に戻せるかもしれない。
 優しくて真面目な、僕が好きな三坂恵莉さんに。
「僕、絶対に諦めないよ。必ず君を元に戻す!」
「おいおい…………まるで悪霊扱いだな、俺」
 恵莉さん(偽)は煩わしそうに頭を掻き、徐々に苦笑いらしきものを浮かべる。
「ま、とりあえず恋人関係は終了ってことで」
「いいよ」
 いまの彼女と恋人関係を続けていくのは、僕も無理だと思う。いったんリセットして、全てが元に戻ったそのとき、もう一度キミに告白をしよう。
「名前は?」
「あ?」
「お前は恵莉さんじゃないんだろ。男だったときの名前、教えてよ」
「…………エリタだ」
「そう、これからよろしく。エリタ」
「ダチとして、な」
 恵莉さん……エリタが拳を突き出し、僕の胸を小突く。
 彼女の顔は元の彼女とは違う、元気で、どこかいたずらめいた笑顔が浮かんでいた。

 こうして僕の幸せな日々は、恋人の前世に振り回される奇妙な日々へと変わっていくのだった。




というわけで転生モノです
これはTSに入るか否かの議論は受け付けませんです!
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プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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