爆発しろ 3

 拍手や需要の差が、やる気の決定的違いでないことを……あれ?

……これはなんだつまりあれか前回の記事で拍手をせびっていたように読み取られたのかうっわ恥ずかしい調子に乗るな自分そんなつもりはなかったんですぬおおおお
拍手ありがとうございます!(焼き土下座)

といわけで
恋人の恵莉(めぐり)が突然『エリタ』という男だった頃の記憶を蘇らせた
転生系TSの恋愛モノをまったり書いています

タイトルは(仮) 坂本冬美かっ





『また君に恋をする』


 体育館のバスケットコートの隅に立ちながら、どうすれば彼女を元に戻せるのか考える。
 僕はオカルト話が苦手だし、そういうのが詳しそうな知り合いだっていない。いっそのこと神社でお払いをして貰おうかとも思ったけど、恵莉さんは別に『エリタ』に取り憑かれたわけじゃないし行っても意味はなさそうだった。

「うーん……あ、そうだ」
 体育館シューズの足音やボールの弾む音、クラスメイトたちの応援の声を右から左へと聞き流して、とりあえず図書館に行ってみることを思いつく。
 オカルトとか、生まれ変わりとか、あるいは多重人格の本とか。そういった、いまの恵莉さんに関係しそうな本をとにかく読み漁ってみれば何か解決の糸口がつかめるかもしれない。
 学園にも図書室はあるけど、蔵書の数は図書館の方がずっと上だ。当たり前だけど。
「永倉ーッ、行ったぞー!」
「え?」
 自分の名前が呼ばれハッとなった直後、目の前にバスケットボールが飛んできた。
 とっさに避ける間もなく薄茶色の塊が顔に直撃する。
 てん、てん、と足元でボールの弾む音が聞こえるけど、そんなものに構う余裕はない。この場でうずくまってしまいそうなほど、鼻先に激痛が走っていた。
「いっ……たぁ~……」
 泣くほど痛い。って言うか泣く。
 チームメイトから罵声が飛んでくるけど知るもんか。何もせずここに立ってろって言ったのはそっちじゃないか。
「なにやってんだ、お前」
 敵チームに回っていた輪島が僕の足元からボールを掠め取り、ドリブルを始める。
 一人、二人、三人。
 痛みも忘れかける、目をみはるような素早いドリブルテクニックで次々に僕のチームメイトを抜いていく。
 あっという間にコートの半分を通り過ぎて、そのままゴールポストへと直行するかと思っていた輪島の足が急に止まった。
「シュッ」
 ボールを高く掲げたかと思うと、流れるような動作でロングシュートを放つ。
 輪島の手から離れたボールは、綺麗な放物線を描き────そのまま、吸い込まれるようにゴールポストの中を潜り抜けた。
「うっしゃあ!」
 ガッツポーズを取り、それと同時に試合終了のホイッスルが鳴る。
 点差は圧倒的で、そのほとんどが輪島のファインプレーによる功績だった。
 バスケ部でもないのに、この運動性能は凄いと思う。まぁだからこそ、女の子に人気なんだろうけど。
「いてて……」
 鼻先の痛みがぶり返し、顔を手で押さえながらよろよろと壁際に向かう。僕や他のメンバーがコートから出て行くのと入れ替わりに、次のグループが試合を始めた。
「よ、平気か」
 肩を叩いて、輪島が隣に来る。爽やかとしか形容のしようがない、男の僕にも好感が持てる笑顔を浮かべていた。
「まぁ、ね」
 手のひらを見ると、少しだけ血がついていた。口でも切ったか、それとも鼻血か。どっちにしろ大したことはない。
「大活躍だったね」
 念のため外していた眼鏡をかけ直しながら、一人舞台も同然な活躍を見せていたクラスメイトを素直に褒める。
 輪島は一瞬だけきょとんとしたが、何も言わずすぐにまた同じ笑顔を浮かべた。
「んなことよりさ。お前と三坂、何かあった?」
「え」
「あいつ、今日、なんかおかしくね? っていうかお前も」
(……鋭いなぁ)
 さて、どうしよう。彼女のこと、輪島に相談してみようかな。
 生まれ変わりだとかそういう話をしてもバカにはしなさそうだし、少なくとも僕よりずっと交流は広い。力を貸してくれるなら、これほど頼もしい男もいない。
 だけど……。
「なんか、僕たちのことよく見てるね」
 この前だって、僕と彼女が付き合ったきっかけとか聞いてきたし。結局最後はノロケになって呆れられたんだけど。
「そうか? まぁお前ら、おもしれーからな」
「面白い?」
「よし、じゃあお前に三坂の最新情報をやろう」
 僕の疑問には答えず、輪島が内緒話をするように声の大きさを一段落とすと耳打ちをするように近づいてくる。
「あいつ、いま保健室にいるぜ」
「え、どうして? っていうかなんで知って……」
「なんかな、体育の着替え中に倒れたんだとよ。女子から聞いた」
「…………ッ!」
 その言葉を理解した瞬間、ざわっと心が騒ぐ。
「ぼ、僕、ちょっと保健室行ってくる」
「おー、いけいけ」
 輪島は笑顔のまま送り出してくる。たぶん、お見舞いをして好感度を稼いでこいって程度の意味で彼女のことを伝えたんだろう。ちょうどケガもしているし、言い訳は作りやすい。
 でもそのとき僕は、まったく別のことを考えていた。
 "今"の恵莉さんは男で、保健室に運ばれた本当の理由が同級生に興奮していたんだとすれば、きっと自分自身のカラダにだって────。
「うわあああああーーーーッ」
 僕もまだまともに触ったことのない彼女の柔肌が弄ばれるのを考え、その想像を振り払うように叫びながら走った。


「エリタぁ!」
 飛び込むように保健室のドアをノックもなしに開けると、部屋の中央で保健の先生と向かい合うように椅子に座っていた恵莉さんが振り向いた。
「な、なんだ、どうした」
「ドアはもっと静かに開けなさい」
 驚いた顔をする彼女と、美人だけど目つきの鋭いことで有名な先生に睨まれ、沸騰していた頭が急激に冷めていく。
 恵莉さんは教室で別れたときと同じブレザー姿のままで、服が乱れている様子はなかった。
「それでどうしたの。急患?」
「あ、いえ…………ボールに、当たっちゃって」
「はぁ?」
 先生はますます眉間にしわを寄せて、僕を睨みつけてきた。
 蛇を前にしたカエルみたいな状態が数秒間続き、やがて先生は白衣の中から出したポケットティッシュを投げつけるように渡してきた。
「これでも詰めておきなさい。ほら、帰った帰った」
「あ、じゃあ、"わたし"も」
 ……え?
「本当に大丈夫? 無理したらダメよ?」
「いいえ、本当に平気ですから。じゃあ、失礼します」
 ニコニコとしたまま、少しだけ早口に言って恵莉さんが椅子から立ち上がる。
 入り口で棒立ちになっていた僕は、慌てて廊下に出た。……乗り込んできたときの勢いは、すっかり萎えてしまっていた。

「怒られてやんの。ばーか」
 保健室のドアを閉めた途端、恵莉さんが笑いながら僕をからかってきた。
「うるさいな。それより、さっきと話し方違ってない?」
「あ?」
 笑っていたかと思ったら、さっきの先生ほどじゃないけど鋭い眼光を向けてくる。彼女の方が背が高いから、そういう顔で見下ろされると余計に怖い。
 付き合っていたときは身長の差なんて気にしてい……なくはなかったけど、『エリタ』になってからはそれが印象の悪い方向にばかり働いている気がする。
「あー、『わたし』か? そりゃお前、言えるよ。俺は恵莉だぜ?」
「……じゃあ、僕の前でもそう言っててよ」
 恵莉さんの綺麗な声で"俺"とか使われると、違和感がひどい。自分の理想像を無理に押し付けるつもりはないけど、やっぱり彼女には似合わないと思う。
「つまんねーヤツだなお前……ほら、ありのままの自分を見せているんだって考えれば、グッとこねぇ?」
「こない」
 それにしてもこの『エリタ』はいくつなんだろう。前世ってことは少なくとも『エリタ』という人間はずっと前に死んでいるはずで、だけど目の前にいる彼女の仕草や言葉遣いは普通に若々しい。……もしかして、僕と同じぐらいの歳なんだろうか。
「あっ、そういえばどうして保健室に?」
 僕がここに来た理由を思い出し、また怒りが再燃する。
 近い歳ってことはつまりその、思春期的なあれなわけで、さっきの自分の想像もあながち的外れじゃなかったかもしれないわけで。
「あー、その…………仕方ねぇだろ! あそこはパラダイスだぞ!?」
 ビンゴ。っていうか、足元に穴が開いたみたいに絶望する。
 何が『俺は恵莉だぜ』だ。しっかり男じゃないか。
「ま、まさかお前、恵莉さんのカラダに……い、いやらしいこと……っ」
「あぁ?」
 何を言っているんだという目で見られる。けどすぐに彼女は相好を崩し、バシバシと乱暴に僕の肩を叩いてきた。
「ばぁっか、ナニ想像してんだよお前は。エロイなおい!」
「痛っ、痛っ」
「安心しろよ。自分のカラダに興奮するほど俺はナルシストじゃねぇって」
 本当だろうか。
 そもそも彼女はいったい、今どんな状態なんだろう。口調や仕草はほとんど別人だけど、三坂恵莉としての思い出とか知識はそんなに変わったわけでもなさそうだ。
 いや、でも同級生に興奮しているしなぁ……。
「何、難しい顔してんだよ。……わたしのこと、信用できない?」
「!?」
「ぷっ、はははっ。ちょろい」
「そ、そういうのやめてよ!」
 わかっていても、彼女が元に戻ったんじゃないかと期待してしまう。心臓に悪い。
 さっさと『エリタ』を追い払えばいいのだし、もうあれこれ考えるのは止めにしよう。
「心残りとか、そういうのはないの? 誰かを恨んでいたとか」
「いやだから幽霊じゃねぇって…………あー、でも」
「うん?」
「気になることなら、あるな。うん」
 自分自身の言葉で説得されたように頷いた彼女の苦笑いは、『エリタ』になってから初めて見せる、わずかな陰りを帯びていた。
「何?」
「…………人探し、手伝ってもらえるか?」
「いい、けど」
 誰を?
「歌谷美優。生きてりゃ今は、30ぐらいかな」
 昔を懐かしむように、どこか遠い目をして紡がれたのは僕の知らない名前で。
 だけどその表情や口調が、歌谷さんと『エリタ』の関係を十分すぎるほどに物語っていた。
「俺の、カノジョだった女だ」
 照れながら笑った恵莉さんの顔は、どこか寂しそうでもあった。



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