爆発しろ 4

年末に向けてアップを始めたようです(?)
ウソですしていません

といわけで
恋人の恵莉(めぐり)が突然『エリタ』という男だった頃の記憶を蘇らせた
転生系TSの恋愛モノをまったり書いています

タイトルは(仮) ラノベっぽく
……うん、これは、違う意味に取られる




『僕の彼女はオトコノコ!?』


 彼女の前世で恋人だった女性を探す。
 まるで雲を掴むような話だけど、詳しく聞くとそれほど不可能でもなさそうだった。

 どうやらエリタが住んでいた街は今とそう変わらず、さらに僕らと同じ朱城学園の生徒でもあったらしい。
「つまり俺はお前の先輩だ。もっと敬え」
「今は僕と同い年でしょ」
 肝心の探し人である歌谷さんも同じく昔の先輩だったようで、それなら彼女が三年生だった時の担任から話を聞けば、何かわかるかもしれない。
「どーだろーなぁ、十年以上前のことだぞ? ってか、美優の担任なんて知らねぇし」
「そっか……あ、でも卒業アルバムに載っているんじゃないかな」
「それだ!」
 そんなやり取りがあって、僕たちは放課後に二人で図書室を目指すことになった。

 朱城学園の図書室は、教室三つ分があるかないか程度の大きさで、入り口からなら全ての本棚が見渡せるぐらいの広さだ。
 利用する生徒たちの数はまばらで、窓の外から聞こえる運動部の賑わいもどこか遠くのように思える。耳を澄ませば、本をめくる紙擦れの音まで聞こえてきそうだった。
「こんにちはー」
 その静寂を打ち壊すかのように、入り口のすぐ隣にある受け付けカウンターから女の子の明るい声がかかる。
 振り向くと、図書委員と思われる女の子が笑顔を見せてひらひらと手を振っていた。
「……誰だ?」
 なんとなくそれに応えていると、エリタが妙に低い声で問いただしてきた。
「さあ?」
 可愛い子だけど、見覚えはない。
 制服のリボンは一年生の赤だし、この子が単に社交的なだけだと思う。
「ふぅん……へぇー」
「何さ」
「別にー」
 なんだか急に不機嫌になった。
 けどそれも一瞬のことでエリタはいま声をかけてきた女の子に近づくと、卒業アルバムはどこかと訊ねていた。
「昔の卒業アルバムですか? 奥の棚の一番右下です。あ、貸し出しはできませんのでー」
「そっか。さんきゅ」
 短いやり取りを交わし、僕の傍に戻ってくる。
「行こうぜ」
「うわっ」
 ぐいっ、と乱暴に腕を引かれる。いきなりのことで足が少しもつれ、僕はヨタヨタとしながら彼女の後に続いた。

 図書委員の子が言っていた棚の隅には、『朱城学園卒業アルバム』という背表紙が年代別にキチンと陳列されていた。
 目立ったホコリこそ被っていないものの、日焼けして色褪せた表紙には時代を感じると共に、おそらく滅多に人の手に触れられていないだろうことが窺わせられる。
「あいつが卒業した年は……コレか?」
 エリタは身体を屈めて、一番下に並んだ『99』という年代が振られた背表紙に手を伸ばす。
「ん、固いな」
 詰め込まれているのか冊子は簡単に抜けず、てこずっていた。僕はそれを後ろから眺めていて、だけどすぐに顔をそらす。
 恵莉さんの制服はキッチリしている。だから、屈んだぐらいでスカートの中が見えるはずはないけど、彼女のオシリが目の前に突き出され揺れていることに気付いたらもう直視できない。顔はたぶん、真っ赤だ。
「よし、取れた。……何してんの、お前」
「べ、別に」
 エリタはあまり気にした様子もなく、卒業アルバムを持って手近な机の方に移動した。
 ……今の自分が女の子だって自覚、本当にあるのかな。ちょっと無防備すぎない?
「ほら、お前も探せ」
 アルバムを叩いて、手伝いを要求してくる。中身はともかく外見は僕の好きな女の子のままだから、真横に座るのは恥ずかしくて逃げるように向かい合わせの席に座った。
「それで、歌谷さんって何組?」
「さぁな」
「はい?」
「俺って、三年になる前に死んだからな。アイツがこの年に卒業していない場合もある」
 エリタの口調はあくまでも軽いままだったけど、どこか寂しそうに感じた。
 ……そうか。エリタは、僕とほとんど変わらない歳で亡くなっているんだよね。
 卒業をする前に死ぬなんて、そんなこと考えたこともなかった。
「あ、懐かしいな。……こいつら、ちゃんと卒業できたのか」
 エリタは悲壮感など微塵も感じさせず、アルバムを見て顔を綻ばせている。
 机の上に広げられたそのページには、『部活動』という見出しと写真が載っていた。
 野球部、サッカー部、バレー部にバスケ部。
 たくさんの運動部の先輩たちがそれぞれカメラに向かって笑みを浮かべ、生き生きとした表情を浮かべている。
「…………こいつら、今どうしてんのかな」
 恵莉さんの細い指が、一枚の写真を小突く。『バスケットボール部』というタイトルが付けられたその写真には、ボールを持って笑うユニフォーム姿の男たちが写っていた。
「バスケ部だったの?」
「まぁ、な。っと、それより美優だ美優」
 ごまかすように笑い、ページをめくっていく。
 だけど、その手はすぐに止まった。
「…………いた」
 身を乗り出して、彼女の手元を覗き込む。
 そのページはクラス別のものじゃなくて、『委員会』という見出しが付けられた、さっきのページとほとんど同じ構図のものだった。
 エリタはその中の一つを指差して、僕に見るよう促してくる。
「真ん中にいるのが、歌谷美優」
「え……」
 そこには、ショートカットの女性がカメラを睨みつけるようにして写っていた。でも僕が驚いたのは、その写真のタイトルだ。
「『風紀委員会』……」
「偶然って、すげぇよな。学園の後輩として生まれ変わったどころか……この俺が、カノジョと同じ風紀委員をやってるなんてさ」
「……本当に偶然、なのかな?」
「決まっているだろ。じゃなきゃ、運命か?」
「偶然でいい」
 運命と聞くと、途端にロマンチックな印象になる。
 自分の恋人の前世が男だった時点で、ロマンも何もない。
「にしても、ずいぶん目つき悪くなったなぁ、お前。……はは、懐かしいわぁ」
 さっきのバスケ部を眺めていたときよりもずっと優しい顔をして、エリタが写真の歌谷さんを撫でる。
 恋人だった女性の見ることの叶わなかった姿を見て、いったい何を思っているんだろう。
「あの……」
 どうしてエリタは死んだのか。
 ふとそんなことが気になり、僕は口を開いた。
「!?」
 僕が言葉を続ける前に、恵莉さんの身体がビクッと震え、前屈みだった姿勢がピンと正される。
「うわ、ちょ、な、くすぐ……あ、やめっ」
 いきなりくねくねと身もだえ、どきっとするような艶かしい声まで出してくる。
 僕は慌てて席から立ち上がったけど、傍に行く前に彼女はブレザーの胸ポケットから携帯電話を取り出した。
「え、えっと、どうすりゃいいんだこれ」
 振動する電話を見据えて、恵莉さんの顔がぐるぐる百面相をしている。
「ちょ、落ち着いてタップしなよ」
「タップ!? タップってなんだ! 新しいラップか!?」
「恵莉さんの記憶あるんでしょ!? ちょっと、貸して!」
 どうやらスマホの操作を知らないようだ。
 軽くパニクっている彼女の手から携帯をひったくると、マナーモードで震える電話を急いで止めた。
「はぁ……メールが来たみたいだね」
「お、おう。さんきゅ」
 恐る恐る僕の手から携帯を受け取り、まるで初めて触ったかのようにぎこちなく操作する。
「……恵莉さんの記憶、あるって言ってたよね」
「知識があるのと、実際にやるのとじゃ大違いなんだよ……あ」
 ようやくメールが開けたのか、画面を見て短い声を上げる。
「何?」
「風紀委員集会……だってよ。早く来いって」
「そっか」
 ちゃんと恵莉さんらしく振舞っているのか心配になるけど、少なくとも今朝は普通に仕事をしていた。
 恵莉さんの知識を上手く使っているのか、それとも風紀委員だった恋人の真似をしているだけなのか。
「しょーがねぇ、行ってくるか。あ、先に帰ってていーぞ」
 さっぱりした口調で、エリタは僕にアルバムを押し付けるとそのまま図書室を出て行った。
 彼女の後姿を見送っていると、入り口にいた後輩の子と目が合う。
「う」
 笑顔のまま、女の子は口元でバッテンを作った。さっき騒いだせいだろう。
 笑っているけど、それが逆に怖かった。
「ご、ごめんなさい……」
 小声で謝り、いたたまれなくなった僕はアルバムを元の場所に戻すと急いで図書室から出て行った。


「はぁー」
 夕暮れの校門を抜けて、秋空に息を吹きかける。
 以前なら委員会が終わるまで適当に時間をつぶしていたけど……今はとても、彼女を待つ気になれなかった。
 変わってしまった恵莉さん。
 前世の記憶。
 恋人関係の終了。
 エリタと、歌谷さん。
 問題は沢山あるようで、結局、僕が目指すものはひとつだけだ。
 彼女ともう一度恋人同士になる。
 そのために、いま出来る限りのことをしよう。
「…………よしっ」
 拳を握り締め、足早に歩き出す。

 ────図書館の閉館日を知ったのは、入り口の前までやって来た後だった。
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Author:巫

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