爆発しろ 11 最終話

おわったー!

恋人の恵莉(めぐり)が『エリタ』という男だった頃の記憶を蘇らせた
転生系TSの恋愛モノをまったり書いていました
最終話のためいつもよりやや長めです

タイトルは……もうこれでいいかな 



『Explode!! ~末永く爆発しろ』


 輪島にリベンジする。
 エリタの望みをようやく一つ叶えることのできた僕は、肩の荷が下りたような清々しい気持ちで朝の通学路を歩いていた。

 もちろんあの結果を出すまでに積み重ねてきた苦労は並大抵のものじゃない。筋肉痛にもなったし、特訓の間は生傷が絶えなかった。
 だけどいまは、こんなにも気分がいい。
 絶対に無理だと思っていた勝負に勝つ事ができた。その事実が、僕に確かな自信を与えている。まぁ、こんな話をエリタにしたら『調子に乗るな』とか言って叩かれそうだけど。
 自分の想像に苦笑いをしていると、朱城学園の校舎が見えてきた。
 門の手前ではいつものように風紀委員たちが仕事をしている。今日の当番は、先輩と恵莉さんだ。
「あれ」
 その光景に、どこか違和感を覚える。だけどそれがなんなのか、ハッキリとした正体はつかめないまま足は一直線に『彼女』の傍へ進んでいた。
「おはよう」
「あ……お、おはよう、ございます」
 "ございます"?
「どうしたの?」
「え?」
「いや、喋り方……」
 それだけじゃない。
 さっきから目を合わせてもすぐにそらしてしまうし、顔色もこころなしか赤い。服装はいつもと同じだけど、ここの所ずっと放ったらかしにされていたストレートヘアが今日はキチンと結わえらていた。
 懐かしささえ感じる、みつあみスタイルの恵莉さんだ。
「えっと……」
「めぐりーん。仕事しなさーい」
 何かを言いかけたそのとき、横から先輩が割り込むように入ってきた。
「あ、はい。すいませんッ」
 小動物のように萎縮して、風紀委員のクリップボードを抱え直すと小走りに僕から離れていく。
 やっぱり、様子が変だ。
 そもそも言葉遣いが、ぜんぜんエリタらしくない。
「あ……」
 服装違反者を取り締まる先輩の傍らで書記を始める姿を見て、やっと違和感の正体に気付く。
 彼女は、ペンを左手に持っていた。


 教室での恵莉さんは、特におかしなところはなかった。
 前世の記憶を思い出す前とも思い出した後とも変わらず、いつも通り大人しく授業を受け板書をして先生からの質問にも淀みなく答えていた。
 ただ利き腕だけが、本来の「三坂恵莉」のものに戻っている。それだけだ。
「ちょっといい?」
 昼休みに入るのと同時に、彼女の方から声をかけられた。手に小さな包みを提げていて、今日はお弁当なんだと変なことに納得する。
「話があるの。ついて来て」
 口調にどこか女の子っぽさを匂わせる喋り方をして、先だって教室を出て行く。
 ちょうど僕も聞きたい事があったから、素直に席を立ち上がった。
「なんだぁ? 中庭でレジャーシートでも広げるつもりか?」
「はは、だといいね」
 ニヤニヤとからかう輪島をやり過ごして、僕も彼女の後についていく。
 歩くたびにぱたぱたと揺れるおさげを見つめながら、どこに行くのか、どうやって話を切り出そうかあれこれと逡巡する。
 そうこうしている間に僕らは階段を下り、一階の突き当たりにある裏庭へと続く小さな二枚扉の前で立ち止まった。
「235……5」
 恵莉さんは取っ手に付けられたダイヤル式の錠前を、暗証番号らしき数字を呟きながら回す。
 別に出入り禁止になっているわけじゃないけど、施錠されているドアを開けて入ることになんとなく罪悪感があった。
「ほら、早く」
 向こうも同じ気持ちなのか、周囲に誰もいないことを確認してさっと扉の隙間にもぐりこんでいく。
 そういえばエリタの正体を明かされたのもここだったなぁ、とか思いながら僕も扉を抜け裏庭に降り立った。
「うぁ、寒ッ」
 外に出た瞬間、秋風というには冷たすぎる風が吹き思わず身を縮ませる。
 もうじき紅葉の季節も終わりだ。
「あの……」
 しっぽのような髪の毛をなびかせて、恵莉さんが振り向く。
 どこか申し訳なさそうに眉尻を下げて、でも顔にはあくまで微笑みを浮かべたまま。
「こ、これ、受け取ってくれるかな」
 頬を染めて、持っていた包みを差し出してきた。
「これは?」
「お、お弁当。迷惑、かけちゃったから」
「えっと……?」
 戸惑いが多すぎて、頭の中がこんがらがる。
 言葉遣い。振る舞い。お弁当。それに、迷惑?
 どれ一つとして、ここしばらく一緒に過ごしてきたエリタのイメージとそぐわない。けどそのおかげで、朝から抱いていた一つの疑念が確信へと後押しされる。
「あの、エリタ?」
 確信を現実に変えるために、僕は最後の一歩を踏み込んだ。
 すると目の前の彼女は手を引っ込めて、呼びかけに対してはにかむように笑い、首を横に振る。
「恵莉、です」
 強めの風が落ち葉をかき鳴らし、周囲の喧騒が彼女の台詞を除いて上塗りされる。

 僕の日常をさんざん引っ掻き回した男は。
 現れたのも突然なら、消えるのもまた突然だった。


「いままでごめんなさい。全部、覚えてるよ」
 そう言って頭を下げた恵莉さんは、朝目が覚めたら『エリタ』の人格が綺麗さっぱり消えていたと語った。
 もっとも記憶までもが消えたわけではなく、ここしばらくの自分の言動はちゃんと覚えているらしい。
「ひどいこと、たくさん言ったよね、わたし。……ごめんなさい」
「き、気にしてないよ」
 手を振って否定しながら、僕の心の中はいまだに状況が呑み込めずドタドタと騒々しい。
 エリタが、消えた。その言葉に少なからずショックを受けている。そう思うこと自体が驚きだった。
 まるで肩透かしを食らったような残念な気持ちが胸の中で渦巻いている。
 もちろん、元の恵莉さんと再会できたのはとても嬉しかった。
 なのになんだろう。この、スッキリとしない感じは。
「あの、ね。それで、皆希君」
 口元に手を添えて、頬を赤らめながら遠慮がちに僕の名前を呼ぶ。
 動揺なんか一発で打ち消され、もじもじとした仕草に顔が緩んでしまう。やっぱり恵莉さんは可愛いなぁ。
「良かったら今度の休み……デート、したいな」
「え、えぇっ!?」
「ほ、ほら、この前はバスケで一日潰れちゃったしッ! ちゃんとした格好で、もっとデートっぽくしたいなぁ、なんて……」
 僕の戸惑いを受けてか、わたわたしながら理由を教えてくれる。
 そういえばあの日のデート……といっていいのかわからないけど、あのときは最後、喧嘩別れっぽくなっちゃったしなぁ。悔いがないといえば、うそになる。
「えっと……そ、それじゃあ、よろしくお願いします?」
「こ、こちらこそ?」
 お互いに頭を下げて、なんだかおかしくて照れ笑いをし合う。

 こうして僕は、可愛い彼女と過ごす幸せな日常を取り戻したのだった。



 あれから僕は好きな女の子とともに、平凡な日々を過ごしていった。
 学園へ行き、昼休みには雑談とかをしながら食事をして、放課後は別れ道まで一緒に帰る。その繰り返しだ。
 退屈だとは思わない。むしろ今までが刺激的過ぎた。
 前世での恋人を探すために調べ物をして回ることもない。翌日筋肉痛に悩まされる無茶な特訓をする必要もない。
 ほのぼのと穏やかに時間は流れ、気が付けばデートの前日になっていて、慌ててプランを立てたことが唯一のトラブルだった。

 僕と恵莉さんの二度目の休日デートは、電車で一本のところにある水族館にした。
 ペンギンと一緒に写真を撮ったり、部屋のいっぱいのクラゲに癒されたり、エイリアンのような顔をしたでっかいダンゴ虫の模型にはしゃいだりと、とても充実した一日を過ごせたと思う。
「今日はありがとう。楽しかった」
 住み慣れた街に戻ってくると、ベージュのワンピースを着た恵莉さんは裏表のない微笑みを浮かべてそう言ってくれた。
 急ごしらえで仕立てた計画にしては上手くいったようだ。ありがとう水族館。
「どこか寄っていく?」
 このまま別れるのも惜しいので、ファミレスかどこかに行って話さないかと訊いてみる。
 だけど、彼女の返事はつれないものだった。
「あまり遅くなるといけないし、今日は帰るね」
「え、でも」
 駅前広場の時計を見る。
 バスケの特訓をしていたときは、ここから更に一時間ぐらい走り回っていたはずだ。
「も、もう……あの時は……だから」
 顔を赤らめて、良くわからないけど何となく通じることを言う。
 恵莉さんは、自分が『エリタ』だったときのことをあまり語りたがらない。恥ずかしいのだそうだ。
「忘れてよ。あの時はちょっと、変だったの」
 両頬を手のひらで覆い、湯気が出るんじゃないかってぐらい顔を赤くする。可愛い。ので、もうちょっとからかいたくなる。
「そういえば、元々バスケが好きなんだよね。テレビの試合とか見て、寝不足になっているとか言ってたけど」
「も、もおぉッ!」
 ふくれ面になって、子牛みたいな可愛い唸り声を上げながらポカポカッと頭を小突かれる。身長は彼女の方があるせいか、脳天を的確に叩かれた。
「皆希君のいじわるッ」
 ぷいっとそっぽを向いて、足早に歩いていく。
 調子に乗りすぎたかな……怒らせてしまった。
「ご、ごめんねっ! また明日!」
「ふーんだ」
 拗ねたような台詞を吐いて、彼女はスタスタと雑踏に消えていく。
 一人になり、もうすっかり冬の風景になった街並みを、僕も歩き出した。
「うーん……失敗したなぁ」
 僕らのデートは、どうも少し気まずい感じで終わる運命のようだ。まぁ、今のは全面的に僕が悪いんだけど。
「あ、そうだ」
 ポケットから携帯を出し、今日撮った写真のフォルダを開く。
 一覧には、恵莉さんと僕とのツーショットがあった。二人で写ったのはこれが初めてだ。
 優しく微笑む恵莉さんと、緊張した顔つきで腕を伸ばして自撮りをする僕が並んで写り、その間に挟まるようにしてペンギンが後ろの水槽にいる。
 今度からこれを待ち受けにしておこう。
 いや、巨大ダンゴ虫の模型に目を輝かせている彼女の写真も捨てがたい。青い光を浴びて水槽を見つめる横顔も綺麗だ。
「……」
 楽しかった一日の思い出を振り返っていると、ますます最後の失敗が悔やまれた。
 やっぱり、ちゃんと謝ろう。
 そう思うのと同時にきびすを返し、恵莉さんの後を追いかけた。

「うぅ……」
 公園の公衆トイレで手を洗いながら、ほとほと自分の情けなさに落ち込む。
 追いかけようと思った直後、僕は生理現象に襲われ急いでこのトイレに駆け込んだ。デート中は何だか恥ずかしくて行けなかったから、かなりたまっていたのだ。
「もう、帰っちゃったよなぁ……」
 手を拭いて携帯を見る。
 直接謝りたかったけど、明日改めて頭を下げるのも大袈裟にしているようで気まずい。
 なら、電話だ。
 11桁の番号を押して、恵莉さんにかける。
「うぇっ、ちょ、くすぐ……あン、うわはっ」
「え?」
 コール中に壁の向こうから聞こえてきたソレは、少し慌てた様子の、どきっとする喘ぎを混ぜた恵莉さんの声だった。
 相手が電話に出るのを待たず、隣の入り口に走る。
「……何しているの?」
「み、ミナキ!? どうしてここに、あ、いや……っ」
 女子トイレの洗面台には。
 携帯の画面を右手でおそるおそるつつく、『エリタ』がいた。



 照明器具の照らすバスケコートの中央で、僕は彼女と改めて向かい合った。
「なんで、恵莉さんのフリをしてたの?」
 目の前にいるのがエリタであることに、僕はもう何も疑いがない。思えば、『恵莉さん』と過ごしてきた日々は楽しかったけど、どこか空々しさも感じていた。
 エリタはその気になれば『恵莉さん』らしく振舞うことだってできる。
 スマホの事がなければ、たぶん、ずっと気付かなかっただろう。
「…………あー……こんなに早くバレるとか、ついてねぇ」
 自分のおさげをクルクルといじりながら、ワンピースのポケットに手を突っ込んで何かを取り出す。
 タバコ……に似せた、ラムネ菓子の箱だ。
「騙す気はなかった……んだけど、ま、結果的には同じか」
 やけに落ち着いて話すエリタは、細長いお菓子を口にくわえて笑みを漏らす。
 仕草とお淑やかな格好とのギャップが物凄いけど、その姿を見ているとエリタが戻ってきたんだなという実感がますます湧いてきた。
「俺はもう、満足したんだよ。お前は、美優と会わせてくれた。バスケに付き合ってくれた。本当に、本当に感謝している」
 でも、と顔を曇らせて、言葉を続ける。
「やっぱり、前世の記憶は消えなかった」
 エリタは恵莉さんに取り憑いた幽霊じゃない。
 生きていた頃に果たせなかった望みを叶えて、満足したところで、何も変わらなかった。
「もうお前の知っている恵莉には、やっぱり、どうやっても戻れそうにないんだ」
 それでもなんとか『恵莉さん』になりきろうと、さまざまな努力をしたらしい。
 髪の結い方を調べて、前世では握ったこともない包丁を使ってお弁当を作り、喋り方にも細心の注意を払って。
 エリタは必死で、自分自身を殺そうとしていた。
「こんなことになって、悪い」
 頭を下げて、初めて『エリタ』にしおらしい態度を取られる。
「いいよ」
 僕はそれに、首を振ってこたえた。
「こっちこそ、ごめん。ずっと、キミにひどいことを言ってた」
 近づくなとか、元に戻れとか。
 たった半年の付き合いで彼女の全部を知った気になって、僕はずっとエリタを否定していた。
 本人がずっと「俺は恵莉だ」っていってたのに。
 生まれる前の記憶が蘇っても、恵莉さんは恵莉さんだということを、頑なに認めようとしなかった。
「僕が知らないキミのことを教えて欲しいって……付き合うとき、言ったのに」
「あぁ……あれか」
 本人も覚えているのか、頭をかく。
 やっぱりこの子は、恵莉さんだ。
 前世の記憶を思い出したことで、多少言葉遣いが乱暴になったかもしれない。
 でも、バスケが好きなことも、お転婆な一面も、きっと元からだったんだ。
 だから、僕は、大きく息を吸い込み。
「三坂恵莉さん」
 息を吐いて。

「僕は、あなたの事が好きです」
 また君と恋するために、告白をした。

「真面目で大人しくて、照れ屋で、病気のときにも人のことを気遣って」
 目を丸くする彼女の肩を抱きながら、思いの丈をぶつけていく。
「子供っぽいお菓子が好きで、女の子の着替えを見たら倒れるぐらい純情で」
 半年間積み重ねた恵莉さんへの思い。
 それと、一ヶ月の短い付き合いで知った、新しい一面を声に出して紡いでいく。
「いまどきスマホも使えなくて! 実は涙もろくて、なのに血の気が多くて負けず嫌いでッ!」
 少しでも、僕の想いが届くようにと願って。
「いつだって努力を惜しまない、そんな恵莉さんが……僕は、大好きです!」
 ありったけの言葉で、そう伝えていった。
「……んだよ、それ」
 恵莉さんが苦々しく声を漏らして、顔を背ける。
「俺は、男の生まれ変わりなんだぞ? 気持ち悪いだろ、そんなのっ」
「僕だって、前は女の子だったかもしれない」
「乱暴で、口が悪いし……前と違って、すぐに手が出るんだからなッ」
「知っているし、気にしない」
「背なんか、お前より高いんだぞ! 彼氏として恥ずかしくないのか!」
「すらっとしてて、綺麗だよね! そんな子が彼女なら自慢に思う!」
 たかが10センチ程度の身長差なんて、手を伸ばせば届く。
 乱暴なのは困るけど、そんな恵莉さんも可愛いと思える。
 前世での性別がどうだったかなんて、最初から気にする必要はない。
「三坂恵莉さんの全部が、僕は好きだから!」
 一緒に"今"を生きよう。
 長く生きられなかった、前世のキミの分まで。
 幸せをつかめなかったエリタの分まで。
 だから────
「もう一度……僕と、付き合ってください」
 頬に手を添えて、真正面から彼女の顔を見上げる。
 手のひらから伝わるぬくもりは熱くて。
 目じりには涙を溜めていて。
 けれど和らいだ口元には、微かな笑顔が浮かべてあった。
「よろしく……お願いします」
「んんっ」
 彼女が身を屈め、唇が一瞬で奪われる。
 柔らかな感触に触れていたのは少しの間で、だけど僕の頭は沸騰寸前だ。
「……『恵莉』のファーストキス、大事にしろよ?」
「あは、ははは……」
 いたずらっぽく笑う恵莉さんに、乾いた笑いでこたえる。

 こうして僕たちは、恋人同士に戻り。
 同時に、前世で付き合っていた人がいる彼女の記憶は、"どこまで進んでいたのか"という疑問を抱くのだった。

***

 平凡な日常は、いきなり終わる。
 そのことを身にしみてわかっていたはずなのに、世の中の理不尽さを嘆かずにはいられなかった。
「なんで……どうして……」
 朝のHRで先生から聞かされたのは、期末試験が今週から始まる、という絶望的な言葉だった。
 もちろん勉強なんてしているわけがない。
 まったく準備のないまま迎えた最初の教科は、ほとんど白紙のまま、あるいはとりあえず空欄を埋めただけの状態で回収されてしまった。
 どんなに前向きに考えても、いい結果が出てくるとは到底考えられない。
「……」
 僕と同じ境遇なのか、恵莉さんも自分の席に座って突っ伏していた。
 縦線を背負っているかのように落ち込む彼女の姿を、クラスメイトの何人かが不思議な目で見ている。
「な、なんか、三坂のヤツ変じゃね?」
 輪島が声を潜めて、そう切り出す。僕はそれに、苦笑いで返した。
「別に、普通だよ」
 席を立って、彼女の傍に行く。
 距離が近づくと、背中からにじみ出る『近づくなオーラ』がピリピリと肌を刺してきた。
「恵莉さん」
「あ?」
 怯まず進み、声をかけると、不良じみた呻き声を上げて顔を起こした。目が据わっている。
「えっと……今日、家に行っていいかな。あ、僕のうちでもいいけど」
「あぁん? 何言って……」
「勉強しようよ。一緒に」
 まだ試験は始まったばかりだ。
 今日の科目はもういっそ全部諦めて、明日からのテストに備えよう。
 二人でやれば、きっとはかどるに違いない。
「……エロイことすんなよ?」
「しないよ!?」
 珍しい彼女の上目遣いのまま、ドキリとするようなことを言われ思わず大声で突っ込んでしまう。クラス中の視線が集まった。
「あとお前」
 他人の目なんかまったく気にせず、恵莉さんは言葉を続ける。
「呼び方、やり直し」
「え」
「…………」
 じっと、見つめられる。
 輪島やその他からも、遠巻きに見守られる。なにこの羞恥プレイ。
「……め……恵莉」
 恥ずかしさを堪えて、彼女の名前を、呼び捨てにする。
 ガラじゃないんだけど、しょうがない。
 他でもない、恋しい人がそれを望んでいるんだから。
「ん、よろしい」
 恵莉の笑顔を見ると、呼んで良かったという思いでいっぱいになった。我ながら単純だと思うけど、満足だからこれでいい。
「けっ、爆発しろ」
 背後から飛んでくる不穏な台詞も、なぜだか僕らを祝福するかのような言葉に聞こえる
 幸せな気持ちに浸りながら、僕と彼女は笑顔をつき合わせるのだった。



おわり





というわけで長編TS恋愛話、これにて終了です
「生まれ変わりは憑依と違う…違うはずだ」と思ってこんな風になりました
最後までTS要素が薄くて申し訳ないです
だが後悔はしていない

ここまで読んで頂きありがとうございました

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非公開コメント

No title

完結お疲れ様です!
で、二人のエr(ry

コメントありがとうございます

> N.D さん
バカップルのイチャラブHが見たいと申しますか!?
「爆発しろ」どころの気持ちじゃなくなること間違いなしですね


お疲れ様でした!

すっかりご無沙汰してしまって本当に申し訳ありません。
年の瀬になってようやく日常から逃れることが出来ました。

今回も凄く面白くて一気に読んでしまいました!
転生モノということで制約が多いのではないかと思いましたが、読み進めるごとにそんな事は全然無くて、むしろ上手くストーリーに絡めて来て、更に各キャラは活き活きとして、改めて流石巫さんや・・・と思いました。
クライマックスのバスケシーンは手に汗握りましたね~!

いやぁ、やっぱり自分はダークよりイチャラブ派ですねw
カレーもいいけど御節が王道。なetaでした。

返礼

>eta さん
感想ありがとうございます
バスケは体育の授業以外でやった事がない上にスポーツモノ描写自体が初めてだったので
たぶんおかしなところはたくさんあるはずです
パッと見すんなり受け入れて読んでいただけたのなら重畳です


自分もイチャラブが好きです
同じぐらいダークが好きです
カレーソバ、オイシイデス



プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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