短編「ABCオブTS」 U

26のアルファベットの頭文字をタイトルにした TSがテーマの短編を作っています

黒い話ですがエロ抜きなのでこちらに載せます

投票所にて素敵な単語を教えて頂きました
ありがとうございます

短編「ABCオブTS」

ugly -醜い-
 醜いアヒルの子、という童話を知っているだろうか。
 自分をアヒルだと思っていた雛鳥は実は美しい白鳥だったという話だ。
 しかしこのタイトルには偽りがある。
 アヒルの雛と比べると確かに羽毛は黒みがかかっていて体つきも少しばかり大きい。しかし白鳥の雛は、決して醜くなどない。
 醜いというのはあくまでもアヒルの側から見た価値観であり、自分と違うものを異質として攻撃するのは鳥でも人間でもどちらも大差がないということだ。
 もっとも、醜い人間の子はどれだけ経とうと白鳥にはなれない。
 望まれないで生まれてきてしまった子供は、親から十分な愛情を与えられずに育った。何かの気まぐれで買って貰った『みにくいアヒルの子』だけが、唯一の宝物だ。
 肥満児で生まれ、子供の頃から毛深かった俺は、その醜いアヒルの子に深く共感し、羨望を抱いたものだ。
 自分もいつか、白鳥のように美しくなれるんじゃないか。
 そんな希望を胸に季節を過ごし、そんなことは不可能だと悟る頃には、もうどうしようもなくなっていた。
 デブと罵られ、女の子たちからはキモイと囁かれ、不良にはお金を取られ、蹴られ、裸にされた。
 俺はどうやら悪臭を放っているようで、連中は"親切"にも服を洗濯してくれるらしい。
 真冬の鉄筋校舎でパンツ一枚でいることの辛さを知っているか? あいつ等には全員、それをわかって貰いたい。
 運が悪いことに体操服はつい数時間前に何者かに切り裂かれ、着替えは持っていなかった。
 そもそも、制服を返してくれる保証もない。
 かといって、このままでいたら確実に凍え死んでしまう。

 追い詰められた俺がソレを見つけたのは、本当に偶然だった。
 教室の後ろに並ぶ扉つきのロッカーから、服の切れ端がはみ出ている。どうやら鍵を閉め忘れていたらしく、切れ端を引っ張ると簡単に扉が開いてしまった。
 中には紺色のブレザーと白のブラウス。それから黒のストッキングと灰色のスカートが出てきた。女子のロッカーだ。
 名前を確認すると、いつも俺を悪く言ってる女子グループの中の一人だった。
 部活にでも出ているのだろうか。確か、剣道か何かをやっていた気がする。
「……んぐっ」
 生唾を飲む音が、やけに大きく聞こえた。
 この耐え難い寒さと、そしていつもキモイ・クサイと罵る女の服に自分の身体が包まれる事を想像し、女装をすることへの抵抗感が薄まっていく。
 意を決して、俺は女子の制服に袖を通していった。
 真っ白で清潔そうなブラウスが、否応もなく太い腕と密着する。予想通り、ピチピチだ。
 それでも強引に腕を通し、続いてボタンを締めていく。
 男物とは正反対のボタン配置に戸惑いながら、果たして俺の出っ張った腹が収まりきるのかと言う疑問に駆られた。
「お、お、お」
 入った。
 第一ボタンはあけたままだが、丸々としていた腹が見事にブラウスの中に隠れている。女の子の服は意外と伸縮性があるようだ。
 深呼吸をすると、甘い香りが鼻いっぱいに広がった。
 ブラウスの下は相変わらずパンツ一枚を除いて露出し、さっきから吹く隙間風に震えていた。このままスカートを穿いたところで、焼け石に水だろう。
 俺は続いて黒のストッキングを手に取ると、スネ毛まみれの太い足を包んでいった。
 破れるのではないかと思うぐらい大きく強引に間口を広げ、爪先を通す。
 脚が黒生地に覆われると、強い締め付けが全体に掛かった。
 それでも俺はストッキングを引き寄せ、足の先から腰元まで全てを覆いつくす。
 締め付けによる負荷は相変わらずで、しかし驚くべきことにそれまでの腹の底から冷えるような寒さが解消した。
「おお……おおおお!」
 太ももを撫でると、さらさらとした気持ちの良い手触りが返ってくる。身じろぎをするたびに脚がタイツ生地と擦れ、その摩擦がより暖かさを生んだ。
 スカート一枚で冬場を過ごす女の子たちは大変だと思っていたけど、なるほどコレなら納得だ。動くたびに気持ちよさと暖かさが同時にやってきて、心までもがポカポカする。
 締め付けの効果か、太い足も心なしか細くキレイに見えた。
 暖を得たことで有頂天になった俺は、それからどんどん女子の制服を身にまとっていった。
 ベスト、スカート、リボンタイ、ブレザー。そして最後にアウターを羽織り、肉体以外の全てが女性のもので満たされる。
「あはぁ……あったかいぃ……」
 それに、なんともいえない良い香りだ。
 女の子はずるい。こんな温かい格好をして、こんな良い匂いを放って、こんな気持ちの良い思いをしているのか。
 俺は女性たちが羨ましくなり、自分も彼女たちと同じように可愛らしく着飾ってみたい、と強く思った。
 しかしそんなことが叶わないのは、自分がよく知っている。
 醜いアヒルの子はいつまでたっても醜いままだ。

────ガラ
「でさぁー……」
「それマジ? ウケるぅ……って、あれ?」

 教室のドアが開き、誰かが入ってくる。
 女子の声だ。しかも、複数。
 それを理解した瞬間、今までの恍惚とした感情がいっせいに抜け落ち、焦燥に取って代わった。
 マズイ。マズイマズイマズイ。
 今、後ろを振り返るわけにはいかない。
 いや待て振り返るまでもなく、この格好はどこからどう見ても変態そのものだ。
 自分は何て事をしてしまったのだろう。
 これでは、明日からのイジメはもっと厳しくなる。それどころか、訴えられるかもしれない。
 さまざまな絶望の未来がめまぐるしく飛び交う俺の耳に、信じられない言葉がかかった。
「ユウじゃない。部活、終わったの?」
「え?」
「あっ、じゃあもしかして今から遊びに行ける? やりぃ!」
「え? え?」
 女の子が……いつも俺のことを生ゴミを見るような目で蔑む少女が、俺の腕を取って体を引き寄せる。
 腕に、胸が当たっていた。
「ちょ、ちょっ!?」
「何よ。今から帰るんでしょ?」
「もー、最近公式戦が近いからって、付き合い悪いぞー。せめて今日ぐらい遊ぼうよ」
「あああ、あの、え、ええええ!?」
 女の子二人の勢いに流されるまま、俺は女子の制服を着たまま教室を出て行った。
「あれ、もしかしてあんたノーブラ!?」
「やっべ乳首浮いてる。ウケるんですけど!」
「え、ええ!?」
 彼女たちに言われて、自分のカラダを見下ろす。
 相変わらず突き出た脂肪の塊は存在していたが、明らかに見慣れた位置からかけ離れていた。
 丸々とした腹は胸のところに移動し、まるで二つに分かれたかのように膨らんでいた。左右それぞれの頂点には小指の先ほどしかない出っ張りがあって、それがブラウスと擦れるたびにわずかな痛みとこそばゆさに刺激される。
「俺……わ、わたし?」
 言葉遣いが、声が、自然と変わっていた。
 ──俺のカラダは、女に変化していた。



 いつも俺の事をいじめる性悪女たちは、ユウ……つまり俺を随分と楽しませてくれた。
 ファミレスで駄弁り、ショップをひやかし、カラオケに興じ、気が付けば辺りはすっかり暗くなっていた。
「じゃあねー、また明日ー」
「うん、バイバイ」
 彼女たちと別れ、ショーウインドウに映る自分の姿を改めて見つめる。
 そこには、あのぶくぶくとした醜い男ではなく、切れ長の目をした線の細い、しかし出るところは出ている美少女が映っていた。

「俺はあの醜い男だったとき、こんな幸せがあるなんて夢にも思わなかったなぁ」
 『みにくいアヒルの子』の台詞を真似して呟いてみる。
 友達との交流は楽しかった。
 叶うのなら、これからもずっとこんな幸せを謳歌したい。
 そのためには……。
「"ユウ"を、消さなきゃ」
 今頃彼女は、制服がなくなっていると騒いでいるだろうか。
 ともかく、同じ人間が二人もいるとなれば面倒だ。
「ふふっ」

 白鳥になった「みにくいアヒルの子」は、自分を虐げた相手には何もしない。
 俺はずっと、それが不満でたまらなかった────。




復讐メイツ要素が抜けきらない…
やっぱ休憩挟まないとダメだ

あと5つ
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非公開コメント

Vain うぬぼれの強い、自慢する
Virus ウィルス
Vulgar 下品な、卑しい
などどうでしょうか?

返礼

> 名無しさん
コメントありがとうございます
参考にさせていただきます

まだぜんぜん考えていないのでしばらくお待ちください…

管理人のみ閲覧できます

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コメントありがとうございます

>  さん
素敵なあらすじを私などに教えていただきありがとうございます
今回は反映できませんでした…

自分も見てみたいので是非書いて下さい、師匠!
プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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