亡霊犯+ ~廃校の亡霊2

雨ばかり……


裏で公開していた「亡霊犯」の外伝です
被害者視点で絶望に至るまでの話を書いています

TS要素はなく、リア充どもの楽しそうな光景をみるだけの回です
リア充絶望しろ
亡霊犯+  ~廃校の亡霊・表 2

 旅館はまるでお化け屋敷のような外観だった。
 周囲は鬱蒼と生い茂った樹木で取り囲まれ、その中央に木造の二階建てがぽつんと佇んでいる。雑木林のほうからは時折ギャアギャアと気味の悪い鳥の鳴き声が聞こえ、風がそよぐたびにザザザ、という葉擦れの音がいっそう不気味さを引き立てていた。
「いやいや、見た目で判断しちゃ損するよ? ほらっ」
 と、先頭を歩いていた岩屋が旅館の入り口を開けて中に入る。
 見た目とは裏腹に館内は驚くほど清潔だった。木造は木造でも、キチンと整備された日本家屋のような、趣があってどこか落ち着いた雰囲気を出している。
「おー、なんだよスゲーじゃん」
「でっしょー? ここ、穴場だしねー」
 温井の言葉に、岩屋が誇らしげな顔をする。
 この旅館は岩屋の祖父母が経営していたらしいが、その老夫婦は先日入院し今は休業中とのことだ。それならばと、我等が委員長は旅館の手入れをする見返りとして、タダで宿泊させて貰うよう家族に頼んだという。
 もちろん食事は自分で用意しなければならないが、源泉から直接持ってきている温泉は健在だし何より泊り掛けの旅行というフレーズが俺たちの心をガッチリとつかんだ。
「お泊りなんて修学旅行以来だね、長見ちゃん」
「……ワタシは、よく、かれんの家に泊まるけど」
「そ、それはちょっと違うんじゃないかなぁ」
「かれんのパジャマ姿は……萌える」
「はぅっ、だ、抱きつかないでよぉ」
 七倉がかれんの身体にべたべたひっつき、親友アピールをしてくる。
 かれんの私服姿をほとんど見たことのない俺に対するあてつけか。っていうか、こっち見て鼻で笑いやがった。
「それにしても、本当にお金はよろしいんですか? こんな立派な旅館に無料で泊めていただくなんて……」
「気にする必要はないだろう。こちらは見返りとして掃除をするのだから、ギブ・アンド・テイクは成立している」
「ノットイコールのような気もいたしますけどねぇ」
 川俣さんが頬に手を付いてため息をこぼすが、上野はそれ以上会話を続けようとしなかった。
「それで、部屋はどうするんだ? まさか、みんな一緒の部屋じゃないよな」
「おんや? 滝沢君はかれんちゃんと一緒がいいって顔に書いてあるけどなー」
「ふえぇッ!?」
「書いてないから! 月山、照れないでくれ! 七倉はこっち睨むな!」
 本音は岩屋の言うとおりだけど、さすがにそれはヤバイ。
 かれんと同じ部屋で一晩中二人きりだなんて、自制できるワケがない。
「くだらない……どうせ他の宿泊客はいないんだ。それぞれ好きな部屋を使えばいい」
「それじゃつまらないでしょう? せっかくだから、部屋割りはくじ引きで」
「却下だ」
 吐き捨てるようにそう言って、上野はさっさと廊下の奥に行ってしまう。
「あーあ、可愛げのない男に育ったこと……それじゃみんな、好きな部屋使っちゃっていーよ。七時になったら外でバーベキューするから、それまで自由行動ね」
「わかった」
 俺を含めて他の皆が頷くと、岩屋は満足そうに微笑んだ。



「はい、みんなグラスは持った? それじゃ、乾杯!」
「かんぱーい!」
 七人の声が重なり、高々とグラスが掲げられる。
 食指をそそられる肉の音と匂い。それに、みんなの笑い声と薄暗さを振り払うほのかな炎の明かりは、不気味で静かだった旅館の空気を一瞬で明るく賑やかなものに変えた。
「委員長! 酒! 酒は!?」
「持ってきてないから! しのぶちゃんもいるんだよ?」
「当然だ。もし持ってきたら、僕の従兄弟にすぐ通報する。あと下の名前で呼ぶな!」
「上野の従兄弟は、刑事なんだっけか?」
「あぁ、僕の誇りであり目標だ。僕も将来は同じ道を目指している」
「立派ですねぇ。私なんて何の目標もありません」
「いいんじゃない? アタシ等まだ二年なんだし。ゆっくり探していこうよ」
「利香さん……そうですね。ありがとうございます」
「とりあえず、かれんの将来はワタシの嫁で決定」
「お、女の子同士は結婚できないよぉ」
「いや月山。そこはハッキリ断っていいんだぞ」
 ……とまぁ、こんな感じでいろいろ他愛のない話をして、夜もだんだんと更けてきた。
「なぁ、このあとはどうするんだ?」
 料理もあらかたなくなってきた頃、温井が岩屋にそんな事を聞いた。
「別に? 温泉入ってゆっくりするだけだけど……あ、せっかくだし枕投げとか怪談とかもしよっか?」
「怪談……得意」
「わたし、やだよぉ」
「私も、あまり……」
「非科学的だ」
 怪談と聞き目を輝かせる七倉の隣でかれんが怯え、川俣さんと上野も反対派に入る。
 温井と岩屋は賛成派だから、多数決的に考えると俺の答えで怪談をするかしないかが決まる感じだ。
 かれんが嫌がることはしたくない。が、いまだに面と向かって名前で呼べない以上、親密になれそうな一押しが欲しいのも事実だった。
「そうだ、どうせなら怪談じゃなくて肝試しにしないか?」
 俺が答えを口にする前に、温井が別の提案をしてきた。
「肝試し?」
「ああ、すげぇ綺麗な女の人とさっき会ってさ。この近くに今は使われていない学校があるんだってさ」
 どうも姿が見えないと思ったらこんなところまで来てナンパしてたらしい。
「学校かぁ。面白そうじゃん」
「不法侵入だ」
「おやぁ? 忍ちゃん怖いのぉ?」
「安い挑発をするな。僕は法律的に考えて反対しているんだ」
「私も、賛成いたしかねます」
「えうぅ、怖いよぅ」
 怪談が肝試しになっても賛成・反対の人数は変わらず、六人の目が俺に集まる。
「滝沢。女の子に抱きつかれるチャンスだぞ!」
「そうそう。男らしいところを見せてよ。もしペアになったら、思いっきり怖がって抱きついてあげるから!」
「……」
 欲望むき出しの温井と、怖がる姿の想像できない岩屋、それに七倉が目で訴えてくる。
「僕の期待を裏切らないでくれよ」
「夜の学校は危ないって、わかってくれますよねぇ」
「滝沢くん……」
 上野が眼鏡を光らせ、川俣さんが困った顔をし、かれんが涙目で訴えてくる。
「俺は……」
 今度は誰も口を挟まず、六人は俺の答えに耳を傾けていた。



 かれんともっと親しくなりたい。
 その欲求に抗いきれなかった俺は、肝試しに賛成してしまった。
「あーはっはっは! 民主主義だよしのぶちゃん!」
「……失望した」
「滝沢GJ! お前ならわかってくれると思ってた!」
「何事もなければいいんですがねぇ」
「大丈夫。かれんはワタシが守るから」
「ひ、ひどいよぉ。滝沢くん~」
 俺の答えに六人が一喜一憂して騒ぎ出す。
 かれんに恨まれてしまったが、お互いの名前を呼び合える関係に近づくためだと思えば何とか耐えられた。
 これからの行動が決まり、俺たちは手早くバーベキューの片付けを済ませて温井の案内で例の美女から聞いた廃校を目指す。
 もちろん、人数分の懐中電灯を持っていくことも忘れなかった。
「しかしなんでその人、廃校のことを教えてくれたのかな」
「あー、なんかこの辺りじゃ有名な心霊スポットらしいぜ」
「心霊スポットなぁ……」
 その人は逆に『近づくな』と言いたかったんじゃないか? ノドまででかかったその言葉は、突如ひらけた森の中に佇むソレを目に入れたことで霧散した。
 俺たちの泊まる旅館が小奇麗に思えるほどの、いまにも朽ち果てそうな三階建ての木造校舎だ。
 窓ガラスというものは一切なく、窓があったと思われる箇所には板が雑に打ち付けられていた。
 最上階から地上まで校舎全体に蔦が絡まり、まるで森に呑み込まれたかのような印象を受ける。
「これ……中に入っても平気なのか?」
 床が抜けたり、天井が落ちてきたり、心霊どうこうよりもまずそっちの方が心配になるボロさだった。
「ここまで来たんだから、今更引き返すのもバカらしいでしょ? ほら、みんなクジ引いて」
 いつの間に用意したのか、岩屋が割り箸を俺たちに差し出してくる。
「一番と二番が二人一組、三番だけ三人分あるからねー」
「えぇ!? みんなで一緒に行こうよぉ」
「それじゃつまらないでしょうが。ほら、引いた引いた」
 言われるまま、六人がそれぞれ手を伸ばし、割り箸を岩屋の手の中から引き抜いていった。
 せめて、男同士のパーティだけは勘弁してくれと願いながら数字を確認する。
「二番か……」
 となると、俺のパートナーは……。
「えへへ……一緒、だね」
「月山もか!?」
 運命の女神を崇め奉りたくなった。
「一番」
「あらー。私もです」
 先発は上野と川俣さん。肝試しに反対派の二人がトップバッターだ。
 つまり残りは……。
「クジのやり直しを要求する。かれんが穢される」
「両手に花! っつっても、山女と壁女じゃなぁ……」
「喧嘩売ってるわけ? アタシだって、どーせならしのぶちゃんとかかれんちゃんとか滝沢君と組みたかったし!」
 それぞれに不満たらたらなこの三人。
 もちろん俺はかれんがパートナーだから文句なんてあるわけがない。
「んじゃ、ルール説明ね。しのぶちゃんたちが最初に出発。で、その十分後にかれんちゃんと滝沢君。四人は最上階の一番奥の教室で、アタシらが来るまで待機。コースは自由だけど、一時間以内には終わらそうね」
「わかった」
 つまり、あちこちふらふらせずにまっすぐ三階の教室だけを目指せばいいわけだ。それなら、あまりかれんを怖がらせずに済みそうだ。
「それじゃ、しのぶちゃん&まいまい! 行ってらっしゃい!」
「くだらない……最短ルートで終わらせるぞ」
「はい、それがいいと思います」
 ため息をこぼしながら、半開きになっていた学校の入り口を開けて二人が中に入っていく。
「あーあ。どうせならシヅルさんも誘えばよかった」
「シヅルさん?」
「廃校のこと教えてくれた人だよ。草木シヅルさん」
「草木シヅル……」
 どこかで聞いた気がする。
 もしかしたら、芸能人だったのだろうか。
「……雲が出てきた」
 七倉が空を見上げ、ポツリと呟いた。
 分厚い雲が星空を覆い、月明かりが消えていく。
 冷たい風が吹き、木の葉同士の擦れ合う音だけが闇の中に響いていた。





BGM:雨の匂いに誘われて

被害者視点は次で終わらせたいです
亡霊の登場は裏の方で
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おのれリア充、許すまじ!

コメントありがとうございます

> John さん
リア充共を絶望に落として薄ら笑いを浮かべる心の準備はOKです?
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Author:巫

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・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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