長編じゃない

昔話はやりやすいと思ったら大間違いでした
何あの荒唐無稽とご都合主義の集合体……


放置しまくっているのもなんなので、
長編のプロローグっぽいものを載せておきます。続きません

長い上にTS要素は一番最後にちょっと出てくる程度です


時代考証無用の戦争モノですので
ミリタリー好きと漫画『パンプキンシザーズ』をご存知の方は寛大な心で閲覧してください

 長い長い戦争があった。
 人々が塵あくたのように吹き飛ばされ、国が国としてまともに機能しなくなる戦争が、何年もの間続けられた。
 二つの国は疲弊し、誰もが絶望を胸に抱いてたある日。
 突如として、その条約は突如結ばれた
「停戦……」
 伝令兵が唱えた国の言葉は、この長い戦争を痛み分けとして、未来への教訓として幕を下ろすべきだという旨だった。
 互いが滅ぶ前に取り合った手と手。それを否定するつもりはない。
「……」
 男は、共に戦場を駆け抜けた相棒を握り締める。
 戦争という災厄において最たる活躍をし、しかし敵味方問わずに忌み嫌われる長身の銃は、男にただ冷たい感触を与えるだけだった。
「俺は……これからどこに行けばいい?」
 人を殺すことしかしてこなかった自分が、いまさら真っ当に生きられるとは到底思えず。
 男にとって停戦は、生きる意味を奪われたようなものだった。


***


 戦争が終わり、しかし国力や治安が上昇の一途をたどるかというと、実際はそうでもない。
 むしろ敵国という明確な攻撃対象がいなくなった分、治安は戦時中よりも悪くなっていた。
 その中でも特に目立つのが、兵の野盗化だ。
 戦地から逃げ出した隊。
 軍に見捨てられ、帰る場所を失った兵士。
 政府が諸悪の根源だったとは言わない。しかし国力の回復を焦るあまり人間一人ひとりを軽く見すぎていたのは確かだった。
「おい、いたか!?」
「いや、いねぇ。あの女、どこ行きやがったんだ」
「とにかく探せ! 絶対に見つけ出すんだ!」
 男の声が三つ、積雪の山中に響き渡る。
 そんな大声を出していたら雪崩が起きるだろーと心の中で毒づきながら、ユリアは小柄な体を木の幹に寄せた。
 吐く息は白く、空は相変わらず重苦しい灰色の雪雲が覆っていた。
 いっそ猛吹雪にでもなれば、ちょうどいい目くらましになる。
 生まれたときからこの山を遊び場にしてきたユリアには、雪で視界が悪くともこの場から村に帰ることなど造作もない。しかしそれゆえに、おそらくあと数日はこの曇り空が続くだろうこともわかってしまった。
「はぁ……寒い」
 手に息を吹きかけて暖を取る。
 男たちはいつごろ諦めてくれるだろう。我慢比べをしても良かったが、日が落ちると村の人間がいろいろやかましくなる。
 何をしていたんだと問い詰める村長の顔が、目に浮かぶようだった。
「……よしっ」
 意を決し、ユリアは木の幹から体を離した。
――――パァンッ
「!?」
 乾いた音が響き、今の今までユリアが身を預けていた木の幹には小さな焼け痕が穿たれていた。
「ちぃっ、外したか!」
 見上げると、数メートル先に小銃を構えた男が悔しそうな顔をしていた。
 銃口からは硝煙が立ち昇っていて、たった今起こったことを瞬時に理解する。
「い……いきなり、撃つとか!」
「動くんじゃねぇクソガキ! 今度こそその頭撃ち抜いてやっからよぉ!」
 怒鳴りながら、男が銃口をユリアに向ける。
「やっば!」
 本気で自分を殺す気なのだとわかり、ユリアはその場から全速力で駆け出すのだった。



 どこからか銃声が聞こえ、彼は灰色に覆われた空を見上げた。
 最初は幻聴かと思ったが同じ音が立て続けに聞こえ、それが現実のものだと認識する。
「こんな山奥まで来ても……銃声はするんだな」
 彼は河川に垂らしていた釣り糸を引っ張り、ミミズ一匹ついていない釣針を目の当たりにするとため息をついた。
 枝に糸をくくりつけただけの即席釣竿を河川敷に置き、代わりに布に包まれた『相棒』を手に取る。
 筋肉質というわけではなく、さりとて痩せぎすには到底見えない鍛えられた体つきをした彼は、川辺の岩に腰をかけた体勢のまま微動だにしない。
 右手に『相棒』を握り締めたまま、ただ、じ……っと細い目を更に細めて森の中を窺っていた。
 ほどなくして、川のせせらぎや風が木々を揺らすものとは明らかに違う、草木を掻き分ける音が接近してくる。
「うわああああああッ!」
 木々の間から飛び出してきたのは、まだ年端もいかないような娘だった。
 短く切りそろえた髪を乱暴に振り乱して、一目散にこちらへ駆け寄ってくる。
「!?」
 娘が川辺に立つ彼の存在に初めて気がつき、大きく目を見開く。しかしスピードは一切緩めずに凛とした声が発せられた。
「逃げろ!」
 娘が叫ぶのと、乾いた銃声が響くのはほぼ同時だった。
「あうっ!」
 苦しげな声を上げて少女が足をもつれさせる。
 走ってきたそのままの勢いで砂利に倒れ、柔肌にはいくつもの擦り傷が刻まれた。
「はー、はー……てこずらせやがって……あん? なんだてめぇ」
 娘が現れた木立の間から、今度は小銃を構えた男が現れる。
 小太りの男は荒い息をはきながら、娘の傍で微動だにしない傍観者に凶暴な視線を向けた。
「……」
 彼は倒れる娘と小太りの男へ交互に視線を向け、やがて小さなため息をつく。
「失せろ」
「あ?」
「消えろと言ったんだ。釣りの邪魔だ」
 それだけ言うと、用は済んだとばかりに前に向き直る。まるで小うるさい羽虫が現れたといわんばかりの態度に、小太りの男は頬を引きつらせた。
「へ、へへ……状況がわかってんのか? あぁ!? こっちは銃を持ってんだぞ!」
「そうだそうだ! 女がピンチなんだぞ! 助けろよ!」
 小太り男が銃を構え、娘は砂利の上に倒れたまま抗議をする。
 まさしく小うるさい羽虫たちに、男は鋭い視線を向けた。
 氷のような眼差し、とでも言うのだろうか。なんの感情も浮かんでいない暗い瞳に、ユリアの背筋が寒くなる。しかし小太りの男は何も感じないのか、銃口を男に向けたまま下劣な笑みを浮かべた。
「どうやらこの辺の人間じゃなさそうだが……運がなかったな。死にたくなきゃ、荷物は全部置いてきな!」
「……追剥か」
「逆らおうなんて思わないことだな、こっちは戦争帰りだ」
「……戦争……」
 男が『相棒』を手にしたまま、ゆらりと立ち上がる。
「人を守るために戦っていた男が、守ろうとした人を傷つけるのか?」
「しらねぇな! 無理矢理戦場に出されて、いきなりほっぽり出された俺の気持ちがてめぇなんかにわかるか!」
「徴集兵か。だが、銃を一般人に向けて良い理由にはならない」
 薄汚れ、黄ばんだ麻布を解き、彼は『相棒』を見せびらかすように掲げた。
 ライフル────それも、長距離を打ち抜くために特化した大型だ。
 通常ならば三脚をつけて地面に寝そべりながら撃つような、とてつもなく銃身の長い代物を、彼は腕一本で支えていた。
「な、ななっ……」
 構えさせてはいけない。そう思った瞬間、小太りの男は小銃を握り締め手に力をこめる。
「ぃってぇッ!?」
 引き金を引くための指に鋭い痛みが走り、思わず銃を落としてしまった。
 視線を下ろすと、彼の指には深々と釣り針が突き刺さっている。
「しま……っ!」
 慌てて視線を戻すが、もはや手遅れだった。
 長銃を持つ男が肉薄し、グリップでアゴを打ち抜かれる。脳が揺さぶられ混濁とした視界に喘ぐ男の鼻っ柱に、ヒジが打ち込まれる。状況を把握する隙すら与えない、一瞬の出来事だった。
 丸々とした姿に似つかわしい、弾むような動きで小太りの男が後方へと吹き飛ぶ。
 砂利の上に背中から着地し、さらにもう半回転をして、ようやく男の動きが止まった。

「すっご…………」
 一部始終を見たユリアは、長銃男の圧倒的な身体能力に痺れた。
 何が起こったのかすらわからない。ただ、この男は素人にも一目でわかるほどの強力な武器と、強靭な肉体を持っていることだけは確かだった。
「ね、ねぇ、あんた! 頼みがあるんだ!」
 体のあちこちに出来た擦り傷や、銃弾を掠めた太ももの痛みすら忘れ、男の前に立ち塞がる。
「……」
 興味の薄い目を向けながら、もはや用は済んだとばかりに男はボロ布を再び長銃に巻き付けていた。
 先程のような至近距離では、長距離用のライフルはむしろ役に立たない。しかし男はあえてその長銃をみせびらかすことで、本命の釣り針から注意を逸らしたのだ。
 戦い慣れている。この男も、おそらくは戦場帰りだろう。
 戦場帰りの集団で構成された野盗に対抗するのに、これほど相応しい人材はいない。
「うちの村に来て、用心棒になってよ!」
「断る」
 早かった。即答だった。
「れ、礼はするよ!」
「いらん」
 取り付く島もなかった。
 彼は小太り男に刺さった釣り針を回収すると、そのままユリアを無視して歩き始める。
「ちょっと! 待ってよ!」


 川辺から離れ森の中に入っても、ユリアは男の背中を追い続けていた。
「なんでよ! 話ぐらい聞いてくれても良いでしょ!?」
「厄介事はごめんだ」
 男は終始この調子で、いまだに会話が進まない。だが、それでもユリアは諦めなかった。
「私、ユリアっていうんだけどね。この近くの村で、自警団のリーダーをやってるの」
「……」
「こんな山奥の村に、自警団なんか必要ないって思う? それが、意外と狙われるのよ。拠点とか隠れ家的にちょうど良いんだって。まぁ、私や他のみんなの努力で、そういう奴等は全部追い返してきたけど」
 襲撃者も、無理をしてまで奪うほどの土地ではなかったのか抵抗されるや否やあっさりと諦める場合がほとんどだった。
 しかし停戦後に襲ってくる連中は、そのときとは必死さが異なる。
 戦場帰りの多くが、国による保障などゼロに等しい状態で軍務から解放されたからだ。
 万全の状態で『戦時中』から『日常』に戻れる者などほんの一握りで、多くは戦時中に家を焼かれ、家族を失い、一生涯癒えない傷を負った。
 国のために戦った者たちに対し、国は用が済んだから野垂れ死ねとの回答を出したようなものだ。
 当然そんな返答が受け入れられるはずもなく、戦場帰りたちはこぞって戦時中の武器を持ち出し野盗と化した。
「最初は可哀相だからって、食料を少し恵んであげたりしたんだよ。でもあいつ等、だんだん要求がエスカレートしてきてさ」
 雪山に囲まれたユリアの村は、戦争前ですら食糧難に喘いでいた。
 潤沢な蓄えなどあるはずもなく、村はやせ細っていく一方だ。
「お互い、そろそろ限界だったし……そこで、やられる前にやろうって思ったわけ!」
 毎日のように食料をタカリにくる連中が、どこを拠点にしているのか。ユリアは、それを探していた。
 だがあえなく巡回中の賊に見つかり、逃げ惑っていた所を彼に助けられたわけだ。
「……」
 彼は相変わらず無反応だった。
 ユリアの大きな独り言を意にも介さず、雪の積もった獣道を迷うことなく進み続けている。
「ね、可哀相だと思わない? 少しぐらい手を貸しても良いって気持ちにならない?」
「ならん」
 彼が足を止める。釣られるように、ユリアも足を止めた。
 瞬間、銃声と共に彼女の足元の土が弾ける。あと一歩でも進んでいたら、彼女の脚に風穴が開いていたところだ。
「なっ……!」
「おおっと、また外したか……ヒヒッ」
 傾斜の上から、男の声がする。見上げると、ユリアを追っていた賊の仲間だった。
「馬鹿だなてめぇはよ。あんなに騒いで、逃げ切れるつもりでいたのか?」
 雪を踏む音が聞こえ、背後から小銃を構えた男も現れる。傾斜の男と同様に、その顔には獲物を追い詰めた時に見せるような愉悦の笑みが浮かんでいた。
 周囲に盾になるような大木はなく、傾斜に居座る男の反対側は崖と呼んでも差し支えのない急坂が逃げ場を失わせていた。
 逃げ場も障害物も無い道で背後と頭上を取られている。まさしく絶体絶命だった。
「さあ……どっちから死にたい?」
「逃げてみるか? 俺らは優しいからな。五秒だけ待ってやる」
 五秒。それだけあれば、長銃の男には充分ではないか。先程の小太りの男を相手取った身体能力を鑑みれば、二人同時に倒すのも決して不可能では無いように思えた。
 だが、彼は立ち止まったままの位置から動こうともしない。
「ど、どうしたの? 早くやっつけてよ」
「無理だ」
 すっかり彼をアテにしていたユリアの耳に、信じられない台詞がぶつけられる。
 なぜ、と疑問を口にしようとしても、賊たちのカウントダウンがそれを許さなかった。
「にーい、いーち……」
「お祈りは済ませたか? ひゃっはー!」
 背後の男がトリガーに指を掛け、轟音と共に鉛玉を連射する。
 同時に頭上からは正確にして無慈悲な一撃が放たれ、ユリアの背中には無数の穴が、長銃の男の脳天には風穴が開く────はずだった。
「え……?」
 ユリアの身体が浮き上がる。
 長銃の男が彼女を肩に担ぎ、銃撃がその身に着弾するよりも素早く、崖の向こうへと飛び降りた。
「ひゃあああ!?」
 担がれたまま、男と共にユリアも落ちる。
 経験したことの無い落下感に、意識が切り離される。
(みんな……ごめん……)
 村人達の顔ぶれが走馬灯のように頭の中をよぎり、そのまま、ユリアは意識を手放した。



「……い、おいっ!」
 乱暴な女の声に呼ばれ、ユリアの意識が徐々に覚醒する。
 逆光を背負い、短く髪を切りそろえた少女が自分を見下ろしていた。
「いい加減に、起きろ!」
 少女が長い棒切れのようなものを振る。
 瞬間、彼女の頬に激痛が走った。
「いった!? ちょ、起きてるから!」
 慌てて身体を起こし、目の前の乱暴な少女を見下ろす。
「……れ?」
 棒切れ……ボロ布を纏った長銃を握る少女は、ユリアと瓜二つの顔をしていた。
 顔だけではない。背丈も、格好も……銃弾をかすめた脚の傷までもが、同じだった。
 ただひとつ、表情だけが見慣れない。戸惑いこそはあるものの、その瞳はどこか冷めていて口角の下がった無愛想な顔つきをしている。
「……あんた、誰?」
「…………」
 自分とそっくりな少女は無言で長銃のスコープをこちらに差し出してくる。
 レンズには、長銃の男が映っていた。先程の様子からでは考えられないほど感情豊かにこちらを睨んでいる。
「え……?」
 ユリアが自分の頬を触ると、レンズの長銃男も同じ動きをした。
「え、ええむぐっ!」
「騒ぐな。またあいつ等を呼ぶつもりか」
 『ユリア』そっくりの少女が、小さな手で『長銃男』となったユリアの口を塞ぐ。
 その台詞や挙動、表情から、彼女は一つの可能性に至った。
「ま、まま、まさか……あんた……」
「……その、まさかだ」
 『ユリア』がため息をつく。
「俺とお前の身体が、入れ替わってる」
「…………うっそぉ……」


 これが、ユリアと長銃を持つ男……ウェスターの、受難の日々の幕開けだった。





つづけられない

舞台設定やアバン部分が漫画の設定そのままです……これはとても一次創作とは……
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プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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