長編 約束 2-2

長めの全年齢向け小説を書いています
「不思議の国のアリス」ベースで女体化モノという定番な話ですが
いろいろ変な感じにしています

……PCあつい


 迷路のような垣根に囲まれた王城は、予想以上に派手な建物だった。
 赤をベースにして、ハートやクローバーなどトランプの絵柄をかたどった飾りが外壁のあちこちに取り付けられている。
 煌びやかを超えた悪趣味ともいえる外観に目が痛くなる。どう考えてもまともな人間が城主をやっているとは思えなかった。
「帰りたい……」
「今更何を言っているんです、リデル」
 俺の心からの呻き声を冗談だと思ったのか、隣を歩くムジックが笑う。
 その姿は普段の黒子めいた格好とはうって変わり、燕尾服をキッチリと着こなしていた。
「既に説明しましたが、この舞踏会には二つの意味がある。一つは、公式戦前に相手の力量がわかること」
「もう一つが、他のアイドルと自分の実力を比較できること、です」
 ムジックとは逆の方から、セビオスが台詞を引き継ぐ。
 こちらも普段と異なり、肩を出した青いイブニングドレスを着ていた。
 一応舞踏会というだけあって、正装しなければいけないらしい。
 そしてそれは、俺も例外じゃなかった。
「それはわかったけどさぁ……」
 セビオスとは色違いの淡いピンクのドレスを着て、同色のケープを羽織った自分の姿は、どこからどう見ても美少女だ。
 見た目がアリスだということも、余計に気恥ずかしさを増長させる。妹のお洒落を覗き見しているような、とても微妙な気分だった。
 ついでにこのドレスはセビオスの私物だからか、やたら良い匂いがするのも悩みのタネだ。
「ってか、社交ダンスなんてしたことないんだけど……」
「心配には及びません。舞踏会とはいっても、形式なんてないも同然ですから」
「ダンスにルールはありません。心の赴くままに身体を動かせば、それで」
(て、テキトーだ……)
 つまり創作ダンスだろうが何だろうが、とにかく踊ればいいわけか。
 もちろん、バランスを保ちつつ見栄えのする動きならそれだけ高評価にはなるだろう。
 そうなるとますます今の格好は俺に不向きだった。
「俺は創作ダンスするから、今から着替えに戻って良いか」
「入城は正装でなければいけないというルールがあるんですよ」
「今から戻ったら、舞踏会が終わってしまいます」
 セビオスとムジックに両脇から挟まれる形で、ひたすら前に向かって歩かされる。
 ほどなくして城門前に辿り着き、人生で初めて城の中へ足を踏み入れた。
「うわ……」
 感嘆の声を上げ、それ以上の台詞が出てこない。
 太い柱が何本も立ち並び、紅い絨毯の敷かれた広々としたエントランスが俺を出迎えた。
 外観と同じく内壁にもトランプの絵柄が描かれ、天井に吊るされた大きなシャンデリアが大理石を黄金色に照らしている。
「すっげ……」
 もしファンタジーRPGを仮想体験したらこんな景色が広がっているのかもしれない。
 未来の技術を垣間見ている気がして、実際それよりもリアルな光景に心が浮き足立っていく。
「な、なぁ、セビオス。…………セビオス?」
 返事がないことに気付き辺りを見回す。
 誰もいなかった。
「は?」
 セビオスどころかムジックも、いつの間にか消えていた。
 どうやらはぐれたらしい。
「……マジ?」
 さすがに取り乱しはしないが、見知らぬ場所ということもあって焦る。
 いつの間に消えたのか。それとも、エントランスホールに見蕩れていた俺が悪いのか。
「お、おぉ~い」
 気が付けばそんな頼りない声を上げて、ふらふらと歩き出していた。


「あ、あのぅ」
 長い廊下をあてもなく歩いていると、メイド服の女の子に声をかけられる。
 短い栗毛の少女だ。派手な美女でもないし、目を疑うような特徴的な髪色でもない。
 元の世界でも時々見かけるタイプの、平均的な女性だった。
「招待客の方……ですよね。まもなく、舞踏会が開催します。その、ホールに、いらして頂けませんか」
 ドレス姿の俺を見て、栗毛の少女は少しオドオドした調子でそんな事を言う。
 格好といい、どうやら城の人間らしい。
「あ、あぁ、えと、俺は……」
「はい?」
 メイド服の少女は目をしばたたかせて、小首をかしげる。
「じ、実は、迷っちゃって。ホールってどこ?」
 決まりの悪さを感じながら正直に打ち明けると、メイド少女は少しだけ顔を綻ばせた。
 そうした態度もまた元の世界でのありふれた反応を思わせて、俺も苦笑いを返す。
「そうでしたか。では、ご案内しますね」
「頼む」
 こうして俺は、親切なメイドさんに案内されて無事ホールへと辿り着いた。

 会場はドームほどの広さがありながら、テーブルに並んでいる食事量と比べて招待客はまばらだった。
 ムジックの言ってた通り男は背広を、女はドレスを着て、客同士は思い思いに談笑しあっている。
 その中にはアイクや、あの双子美女の姿もあった。
「リデル。ここにいたの」
 ざわめきの中にあっても変わらない澄んだ声が響き、青いドレスの少女が現れる。
 セビオスだ。しかしその隣にムジックの姿はない。
 俺の視線に気付いてか、セビオスがため息をついてどこか遠くを見る。
「ムジックなら、救護室に行きました。城の領土まで歩いてきた疲労と、人の熱気にあてられたそうです」
「熱気って……」
 数万人を収容しているならまだしも、よくて五十人いるかいないかだ。
 広々としたこの会場で、熱気なんて篭るはずがない。
「……よく生きてるよな、あいつ」
「まったくです」
 俺の軽口に、セビオスも珍しく同意する。
 そうして笑いあっていると、会場奥の壇上から厳かな声が響いた。
「みなさま、静粛に」
 タキシード姿の優男がにこやかな笑みを浮かべたまま、ホール全体に凛とした声を行き渡らせる。
「各領土の皆様方。本日は王城カペリオンの催す舞踏会へようこそお集まり頂きました。私はカペリオンのアイドル、クレイオと申します」
 マイクも使わず、怒鳴り散らすのでもなく大声を張り上げる男は恭しく頭を下げ、腰をほぼ直角に曲げた。
 声の端々からにじみ出る自信や身のこなしから、ステージ栄えする人間だと強く感じる。
「それでは、カペリオンの城主であらせられるダンツ様に、開会のお言葉をたまわりたく存じます」
「うむ」
 そういってクレイオの隣に立ったのは、とてもダンスを上手にこなせるとは思えない、だるまのような体型をした中年男だった。
 細身の男と並んでいるため、よりいっそう太って見える。
「あ、あれが、ここの領主……?」
「はい。ダンツ氏です。見た目に惑わされてはいけません」
「そういってもな……」
 太ってはいるものの、ダンツの顔立ちは悪くない。アイドルと呼ぶには違和感が物凄いが、ベテランの俳優っぽい雰囲気はギリギリなくもなかった。
「良く集まったな。みな、大いに食い、飲み明かし、競い合うがよい。今宵この場において、リヴァールのルールは通用せん」
 しゃがれた声が尊大な台詞を喋り、会場を睥睨する。
 さきほどの紳士然とした男とは全く逆の、絵に描いたような悪印象をもたらす王様だ。
「では、セレモニーとして、我が舞姫の舞踏を目に焼き付けるがよい。そして、力の差を痛感せよ!」
 威厳たっぷりに言い放った瞬間、どこからか音楽が流れ始める。
 荘厳でありながら、疾走感のあるテーマと共に、会場が暗くなり、スポットライトが壇上のみを照らす。
 そして、舞台袖から現れた漆黒のドレスに身を包んだ栗毛の少女は、握り締めたマイクを使って思いっきり叫んだ。
「イェーーーーーーーーーーーーッ!!」
 栗毛の少女の第一声が終わる直後、前奏が終わり曲が流れ始める。
 セビオスの美声には及ばないものの、可愛らしさと元気さが合わさった歌声とともに少女が軽やかに踊り始める。
 音楽と、歌と、ダンスが融合した舞台。それはまさしく、俺の良く知る『アイドル』のステージだ。
 しかしそれ以上に驚いたのは。
「あれは……!」
 汗をはじいて笑顔を浮かべる少女の顔は、俺をここまで案内してくれたメイドさんだった。



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