くだらない一日 2

TS要素のないSSです
小学生レベルのやり取りをする男女の話で、罵声の会話が主となっています。
「死ね」などの単語に寛容でない方は、読むことをお勧めしません



くだらない一日 二日目


 子供の頃の他愛ない話だが、武には結婚を誓った相手がいた。
 しかしいつからか、その想いの方向性は百八十度の転換を迎える。
 一方が罵声を浴びせ、もう一方も負けじと言い返す。桂木武と浅井舞は、いつしかそんなことばかりを繰り返すようになり、はや数年が過ぎた。
「ふわぁ~……」
「でっかいアクビね。いつものバカ面に恥の上塗りして何がしたいの? 私のショック死でも狙っていた?」
「ははは、普段から鏡でクリーチャー見ている相手にショック死なんて、そんな無意味なことするわけないだろ」
 晴れ渡る青空の下、鳴き声に力強さを得たセミの声に混じりながら、夏服に身を包んだうら若き男女が並んで歩き、爽やかな朝に似つかわしくない会話を交わしている。
 武はツンツンと跳ねた自分の髪の毛を片手でいじりながら、隣を歩く少女を横目で一瞥した。
 ボブカットの黒髪の隙間からのぞく三角形の瞳が、上目遣いに意地悪く細められている。返す台詞はたくさんあるとでも言いたげなその笑みは、獲物を追い詰めた狩人のそれに酷似していた。実際見たことはないが、きっとこんな感じに違いないという根拠不明の確信がある。
「自分の顔がショック死レベルのアホ面だって気付いていたの? よしよし、褒めてあげるから嬉しさのあまりそこの道路に飛び込みなさい」
「ビュンビュン車が走ってんですけど。暑さで視神経やられてんじゃねぇの?」
「いま飛び出せば玉突きぐらい起こせるんじゃない? 車も減るしCO2削減だよね」
「お前がやれ。跳ねられて空を自由に飛んで来い」
 照りつける太陽を浴びながら、いつものやり取りで通学路を歩く。
 そんな風に、お互いがお互しか眼中になかったためか、背後から近付いてくる一つの影には気付いていなかった。
「おっはよう、タケぽん! マイマイ!」
 黒いものがだだ漏れする空気を吹き飛ばす、必要以上に明るく元気な声が、武の背中を打撃付きで急襲する。
 車の走行音にも負けないほどの音を響かせた気合注入の張り手は、大の男を悶絶させるのに十分な勢いを得ていた。
「~~~~~っ! は、羽山。てめぇ」
「およ? どったのタケぽん」
 羽山と呼ばれた少女は、小首をかしげながら、道端にうずくまる武を不思議そうな顔で見下ろす。
 茶色の掛かった髪がさらりと流れ、頭の上でまとめられたポニーテールが揺れた。
「逃げた方がいいよー、歩。このバカ、あんたから慰謝料ふんだくるつもりみたい」
「そういうならまずお前が払えよ。いつもいつも顔合わせる俺の精神的苦痛に謝罪しろ」
「あはっ、二人とも相変わらず仲イイねー」
 悪態を付き合う二人を、羽山はのほほんとした笑顔で見守っている。
 当たり前だが、それは罵りあう本人達からすれば心外極まりない評価だった。
「羽山、この世には呪いの言葉がある。それが、幼馴染ってやつだ」
「そうよ歩。会いたくもない人間に毎朝顔を合わせてしまうのも、その呪いが影響しているの」
「はいはい。つまり、二人は強い強い絆で結ばれているんだよね」
 他人が割り込む隙なんて、ないよね。という、最後の台詞だけをやけに小声にして、羽山は二人の横を早足に通り過ぎた。
「ほらほら、そろそろ急がないと、遅れるよー」
 くるりと振り返り、満面の笑顔で手を振る。
 再び背を向けて駆け出す羽山の後姿を追いかけながら、武は自分と同じように足を急かす舞を見た。
「おい、マネすんな。お前はいつもみたいにバクテリアと同じ歩幅で進んでいろ」
「私に起こされなきゃ昼まで寝ている下等生物がなんで走っているの? 歩をストーキングしたいっていう願望の表れ?」
「まぁ、羽山は可愛いし、ストーカーの一人や二人はいそうだな。お前と違って」
「記憶を辿る限りじゃ、物心付いた頃から史上最悪の男にずっと付きまとわれてんですけど」
「奇遇だな、俺も物心付いた頃から地上最悪の女にずっと付きまとわれているんだが」
 タッタッタッタッと軽妙な足音を響かせながら、しばらくの沈黙が降りる。
「……自意識過剰女ウザッ」
「……被害妄想野郎ウザッ」
 今日も今日とて飽きもせず、武と舞はくだらない一日を過ごしそうだった。





それにしても自分の人間性を疑われそうなSSだ…
けど、まあ、いいか
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Author:巫

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・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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