学園モノ1

ダークばかり書いてると欝りますので
ど直球な明るい学園ラブ米モノでも作っていこうかと

こっちも連載予定ですがさてさて
とりあえずプロローグのみを
プロローグ

 世の中はいろんな性癖で溢れている。
 あくまで仮の話だが、男に「巨乳は好きか」と聞いてNOだ言い切れる野郎はまずいないだろう。人類が猿だった頃からオスはメスの乳房に惹かれ、その中でも大きいものが好ましく思われていたことは疑いようもない。もちろん俺だって嫌いじゃないぞ。
 とはいえデカイ胸が嫌いだと言うやつを否定する気はない。洗濯板に干しブドウが乗っているようなのじゃないと興奮しねぇというヤツも、俺の周りにはいないだけで案外ありふれた性癖かもしれない。
 この春無事に薄氷学園の二年生へと進級し、クラス替えの末に出会った新たな友人がそういった性癖の持ち主であろうとも、俺は拒絶することなく、また巨乳貧乳論争を勃発させることもなく、そ知らぬ顔で彼と友情を育んでゆけるだろう。
 なにが言いたいかっつーと、人の好き嫌いは本当にいろいろで、乳についてとやかく言うのなんざ一般的で実に王道でむしろ逆に微笑ましくさえある性癖だと断言してしまいたいわけだ。
 多くの人から共感できるものもあれば、まったく理解されない場合もある。
 たとえばこの俺。
 俺の性癖を聞いた友人は、口を揃えて「ホモかよ」なんて言いやがる。激昂して心の赴くままに説いてやりたい気持ちはあるのだが、そんなことをすればますます自分の立場が悪くなるだけなので、血の吐くような思いで「冗談だよ」と誤魔化す日々だった。
 片手で足りる数だろうと俺の趣味に理解ある友人がいるぶん、恵まれていると思う。
 男が女になる物語……いわゆる性転換モノ。トランスセクシャル。TSF。
 例えば朝起きたらとんでもない美少女になっていたとか。曲がり角でぶつかった男と女の体が入れ替わっていたりだとか。男の霊が女のカラダに憑依したりだとか。
 手術とかじゃない、常識を超えた原因で男が女になる話が俺は大好きだ。
 この性癖について存分に語り聞かせたい気持ちは山々だが、興味がないならまだしも同性愛認定者やら嫌悪感を剥き出しにして牙を剥く輩も多いジャンルであるがゆえに、泣く泣く割愛する。
 そして世間は俺の望みを叶えてくれるほどイカレてもいないし、些細な問題はあろうと身の回りは概ね天下泰平。価値観がひっくり返るような目覚しい出来事もなく、十代の青春が折り返し地点も半ば過ぎたこの時期。

『すまない。相談があるんだが……いいかな』
 隣の部屋に住む無邪気な後輩の女の子が、妙に大人びた口調で喋り出し。
『それにしても、実にけしからん体だな』
 恐ろしいほど無口で無表情な神社の巫女さんが、戸惑いながら胸を揉み。
『実は僕……男なんだ!』
 春先の水着姿を惜しげもなく見せ付ける痴女めいた美少女が、俺の前に現れた。

***

 四月。
 見知らぬ同級生たちがそろそろクラスメイトとして馴染むようになり、二、三人が集まって放課後の予定を話し合っていたりするその傍らで、俺もまた彼らと同じよーなことをしていた。
「いいよなぁ。スポーツ少女……」
 紙パックのジュースをじゅるじゅると飲みながら、白山(しろやま)が俺の机にヒジを下ろす。
 俺の席は窓際にあり、奴はここからグラウンドを見下ろすのを日課にしている。校庭では女子陸上部が柔軟体操の真っ最中だ。
 顧問の笛の音がリズミカルに鳴り響くたびに、体操服を着た麗しい女子の肢体が動く。
「うぉ~……あの一年の子可愛いなぁ。乗っ取りてぇ」
 一般的な男子学生ならまずつかない語尾を恍惚と呟き、しまりのない面をする白山。
 こいつは俺の性癖、つまりはTSFを理解する数少ない友人だ。とはいえ、俺的には同じ趣味の持ち主だとはどうも考えにくい。少々ベクトルが違うのではないかと思っている。
「あの子の体乗っ取ってさぁ。先輩達の前でいきなり服を脱いでさぁ。くくくく!」
「……はぁ」
 この男は、女の子の体で好き放題したいらしい。相手の人格とか、立場とか、尊厳とか、そんなものは一切無視して欲望のままにカラダを貪る、ようするにどうしようもない外道だ。名前に反して全然白くない。黒山と改名しやがれ。
 俺だって美少女になったら、快楽を探求したい気持ちはある。女の快感は男の十倍だとか百倍だとか言われているので興味をそそられるのは当然だろう。
 それでも出来る限り、少女自身への被害は最小限にとどめたい。相手の人生を壊すような行為はさすがに俺の趣味から逸脱しているし、どちらかといえば俺は自分が女の子になるより、女の子になった男をじっくりと眺めたい欲求の方が強い。
 もし白山の今の妄想が実現しあの陸上女子が正気に戻った際、彼女がどれほどの絶望を味わうか想像に難くない。女の子が泣き崩れる姿を見て何が楽しいものか。
「何バカなこと言ってんのさ?」
 俺の気持ちに同意するようなタイミングで、もう一人の盟友が話に割り込んできた。
 六村(ろくむら)は「わかってないわねぇ」と言わんばかりの呆れ顔で眼鏡をクィッと持ち上げ、長い三つ編みを振って俺と白山の視線を追う。
「あの、ポニーの子? 可愛いわね」
 同じ女子でもそう感じるらしい。ただ、続いて出てきた言葉はやはり問題まみれだった。
「可愛い子は、男の子になるべきよね。顔は変わらないからなんとか誤魔化して今までどおりの生活をするんだけど、そのうち友達や先輩にムラムラしてきて、最後には体育用具室で性欲に抗えず……うひひひっ」
 先ほどの白山同様、己の妄想を全開にしてだらしのない笑顔を浮かべる六村。なまじっか真面目そうな見た目をしているので、ギャップが物凄いことになっている。
 六村玉緒(たまお)は、女子でありながら俺や白山の趣味を理解するとてつもなく希少な存在だ。ただし男が女にではなく、女が男の体になったり憑依したりが好きと言う性癖のため、やっぱりこの女とも俺は方向性の違いを感じざるを得ないわけだが。
「俺はあの子のカラダを奪う方が萌えるね!」
「男の子になって男の性欲に振り回される方が可愛いの!」
 放課後の教室で、下級生をオカズにR15指定の入りそうな台詞をぶつけ合わせる友人ども。放課後とはいえまだまだ教室に人は残っているんだが、こいつらの向こう見ずなところは逆に羨ましくさえあった。
「桑倉(くわくら)君!」
「タケ!」
 ほぼ同時に二人が俺の名を呼び、同じような顔で睨みつけてくる。
「あなた、どっち!?」
「お前も男なら、やることは一つだろ!?」
 なんでそう派閥を作りたがるかね。楽しみ方は人それぞれでいいと思うんだが。
 しかし二人はさっき、聞いてもいないのに自分の理想というか妄想を語り出した。ならば俺も語らないとフェアじゃない。
「俺は……あの子が男と入れ替わって、元に戻ろうと頑張る二人を近くで応援したい」
 さっきも言ったが、俺は自分自身が女の子になるより、性転換した相手の友人ポジションの方が魅力的に感じる。状況が状況なら、TSモノ特有のお色気イベントに巻き込まれれば最高だ。
 女の子になった男がブラをつけ忘れたまま登校してきて、揺れる胸とかに気を取られて赤くなる俺を見て「どうしたんだ?」とか言って顔をのぞきこんでくるなんて素晴らしいじゃないか。
「こいつは……変態だな」
「変態ね」
 ヒキ気味に顔を見合わせる二人に、俺はよっぽど鏡を見せてやろうかと思った。


 ところで健全な男女が揃いも揃ってネタにしていた陸上部の一年生。実は俺の顔見知りだったりする。
 大鳥雛姫(おおとりひなき)ちゃんは、去年隣の部屋に越してきた一つ下の女の子だ。
 人の好さそうな大鳥父と一緒に元気よくハキハキと引っ越しの挨拶に来た雛姫ちゃんの笑顔は、ばっちり脳裏に焼き付いている。今時珍しいぐらい素直で可愛い子だ。
 この春からここ薄氷学園に通う話は聞いていたが、どうやら陸上部に入ったらしい。挨拶の仕方とかどことなく体育会系っぽかったし、公園でランニングする姿もたまに見かけていたので、今日初めてグラウンドを走る彼女の姿にも「ああ、そうか」と妙に納得したものだった。
 純粋な雛姫ちゃんを個人的な妄想に巻き込んでしまっていることにはいささかの申し訳なさを感じてはいるが、ここのところ逆に興奮するようになってきて我ながらなんとも救えない男だと思う。
 救われなくていいから、とりあえず理想のTS現象に巡り合えないものか。
 白山や六村と別れ学園を出た俺は、日課となる神社への参拝を行っていた。
 俺の暮らす街は海岸に面していて、夏になれば海水浴客でそれなりに賑わう。そんな自慢というか生命線たる海岸沿いを一望できる光明(こうみょう)神社は、街外れの高台にあった。
 この性癖が完全に開花してからお百度参りよろしく足しげく通っているわけだが、TS少女と出会えたことはない。そもそもここがどんな神をまつっているのかすら知らんが。
 波の音を聞きながら百以上はありそうな石段をのぼりきり、広々とした境内と立派な本殿に出迎えられる。
 この瞬間ばかりは煩悩も吹き飛び、爽快感に満たされる。やや汗ばんだ体を心地の良い潮風が通り過ぎ、ふぅ、と一息ついた。
 俺のほかに参拝客の姿はなく、聞こえるのは鳥の声や木々の音ばかりだ。自然に囲まれた人気のない社殿は、心がすっきりと洗われる。
 二礼二拍一拝の作法に従ってお参りを済ませると、視線を感じた。
「……」
 振り向くと社務所の入り口に巫女装束が見えたので、俺は誘われるようにそこへ近づく。
「どうも、こんちわっす」
 ひさしの陰になっていた端正な顔立ちとのご対面を果たし、気さくに挨拶をする。ロングの黒髪を後ろに束ねた巫女さんは、無言のまま静かに顎を引いた。
 通い続けているうちに挨拶程度はするようになったが、この人は相変わらず無口だ。余計なことは一切喋らず、俺にも興味を抱いている様子はない。
 年齢は謎。声はお守りを買った時の「ありがとう」しか聞いたことがない。表情も豊かとはいえず、しかし神社の巫女さんという属性やそれでなくても美人な彼女は非常に神秘的な雰囲気をまとっている。
「おんや? そこにいるのは、いつもの少年か」
 美女の観賞会にふけっていると、背後からこれまた聞きなれた声が届いたので俺は泣く泣く巫女さんから目を離した。
 思っていたよりも近い位置に、青い袴姿の老人が立っていた。いつの間にここまでの接近を許したのか、砂利を踏む音すら聞こえなかった。
「どうもっす」
「うむ、感心感心。信心深い若者は今時珍しいぞ」
 しわがれた声で嬉々として語る老人は、バシバシと上機嫌に俺の肩を叩く。小柄な見た目にそぐわずかなり威力があって痛い。
 わざわざ説明するには及ばないだろうが、この人は光明神社の神主である。シーズン問わず通う俺を気に入ってくれて、たまに茶飲み相手をさせられたりもしていた。
「ほれ、葛葉(くずは)。お前も礼を言わんか」
「……ありがとう」
 感情のこもらない口調で再び頭を下げる巫女さん。正直、会釈との違いが判らないのだが、それを口に出す野暮な男は一生かけてもTS現象とは遭遇しないだろうと俺は断言したい。
「して少年よ。今日はどのような用件かな? 今なら占いが格安大サービスだ」
「いや、普通にお参りですって」
「ふむ。何をそこまで強く願掛けしているかは知らんが……叶うといいのぅ」
 まさかお宅のお孫さんが霊に取り憑かれる系の出来事を期待しています、などと答えるわけにもいかず、俺はあいまいな笑みで誤魔化すしかなかった。
「さて、せっかくだ。茶でも飲んでいくかね」
「おじいちゃん……今日は、祈祷の予約……」
 抑揚のない葛葉さんの澄んだ声が、俺の腕を引こうとする神主さんを制止する。長いこと通っているが、彼女が二言以上喋るのを見たのは初めてだった。
「おぉう、そうだったな。すまんな少年。これから祈祷の用意をせねばならんのだ」
「いえ、俺ももう帰りますから」
「そうか。またいつでも来るが良い」
「……」
 にこやかな老人とみたび無言で会釈する葛葉さんに見送られながら、俺は来た時と同じ長い階段を下りるのだった。


 住宅街まで戻ってくるとさすがに海風の匂いも薄れ、夕日が街中をオレンジ色に染め上げていた。
 一人で歩く夕暮れの風景は、わけもなく物寂しい。彼女でもいればまた違うのだろうが、あいにく今の俺には趣味をオープンにできない相手と付き合う気になれない。そもそも女になりたい男など、女性陣の方からお断りだろう。
 性癖を隠してまで恋人が欲しいかというと……俺は、ノーだ。だが、いつかはそんなこだわりを捨てなければならない日が来るのだろうか。
「あっ、桑倉先輩っ。こんにちは!」
 暗くなりかけた気持ちを照らすような底抜けに明るい、元気のいっぱいの挨拶が聞こえる。
 振り向くと、薄氷学園の制服を着た女の子が走っていた。数時間ぶりぐらいになる雛姫ちゃんは、グラウンドで見かけた時と同じ短いポニーテールをパタパタ振りながら、裏表のない眩しい笑顔で駆け寄ってくる。
 まるで尻尾を振る子犬のような愛嬌に、俺も思わず頬が緩んだ。
「こんにちは雛姫ちゃん。今帰り?」
「はいっ! 今日は部活でしたから!」
 胸の前で拳を作り、住宅街で会話をするにはやや大きめな返事をする。部活帰りとはとても思えない元気の良さだ。
「うん、見てたよ。雛姫ちゃんって、足が早いんだね」
「み、見てた!? え、あの、どこで……?」
 大きな目をさらに丸くして、どういうわけかしどろもどろになる。
 当然白山や六村たちとの妄想話はきれいさっぱり削除して、俺は教室から校庭が見下ろせることだけを教えた。
「う、うわぁ。それはますます気を引き締めないとですね! 先輩に恥ずかしい走りは見せられませんし」
「いや、別に気負う必要はないんじゃない?」
 他人の走るフォームに口を出せるような立派な人間じゃない。白山あたりなら『あの鍛え抜かれた無駄のないカラダを乗っ取って(自主規制)』という全力で外道な妄想を披露してくれるだろうが、俺は平和的なTSFが一番である。……平和って何だろうな。
 もちろん彼女も俺の性癖など知る由もない。知られたが最後、二人の関係には決して埋まらない溝ができる未来が目に浮かぶ。
「薄氷の制服って、セーラーなんですよね! わたし、中学の時はブレザーだったから、新鮮ですっ」
 何気ない話題を交わしあいながら、同じ帰り道を並んで歩く。
 雛姫ちゃんは明るく、しかもかなり気を遣える子で、一人寂しい帰路がだいぶ賑やかなものになった。
(あぁ、良い子だなぁ)
 こんな子と入れ替わりたい。もしくは、こんな子が男と入れ替わって、全然別の印象を見せてくれる光景が見たい。
「おや、二人とも今帰りかい?」
 俺や雛姫ちゃんが住むマンションが見えてきたところで、ちょうどエントランスから眼鏡をかけた細身の中年男性が出てきた。
「お父さん。今からお仕事?」
「うん。帰りは遅いから、先に寝てなさい。……お風呂場では寝ないように」
「ちょっ、お父さん! 先輩の前でそんなとこ言わないでよぉ!」
 気色ばみ、父親に抗議をする雛姫ちゃんへ、大鳥父はあくまで穏やかな口調のまま真剣に訴えた。
「いいか、雛姫。冗談じゃなく、浴槽で寝るのは危ないんだよ。今度やったら、彼に見張りを頼むからね」
「は、はぁい……ごめんなさい」
 しょんぼりして首を垂れる。心なしか、ポニーテールも下がり気味になって、とぼとぼとエントランスをくぐった。
 俺は雛姫ちゃんが風呂場でよく寝てしまうという情報を得、心配をする傍ら彼女の裸が一瞬脳裏をかすめる。TS好きとはいえ思春期男子の悲しいサガだった。
「桑倉君」
「うぃっす!?」
 俺のヨコシマな妄想を見抜かれたかと、思わず体育会系な返事をしてしまった。
 大鳥父は娘と話していた時と変わらない穏やかな表情で、眼鏡の奥にある両目を細めたまま雛姫ちゃんの背中を追った。
「あの通り、いろいろ危なっかしい娘だが……同じ学園のよしみで、可愛がって貰えると助かる」
 あつかましい願いですまない。という言葉を付け足して、大鳥父は力なく笑った。
「いえ、俺の方こそ、雛姫ちゃんには色々お世話になっていますから」
「そうかい? まぁ、あの子が君の役に立てているのなら、私も嬉しいよ」
 その後、大鳥父は仕事に向かい、俺も何事もなく自宅へと戻った。


 神社の巫女さん。
 近所の後輩。
 同じ趣味の仲間。
 まるでラノベ主人公のような恵まれた人間関係だった。
 だが幸せで平凡な日常は、ほんの些細なきっかけであっさりかき乱されるのだと。
 俺は、やはりラノベで学んでいたのだった。
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プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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