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T.S.S その9

間が開きましたがルート確定しました
入れ替わった父娘と、憑依された巫女と、女体化男子に囲まれた、TS好きな男の物語です

あらすじ:友達に3人のことを話しました
トランスセクシャルシンフォニア その9


 いやに暗いなと思いながらカーテンを開けると、雨が降っていた。
 雨脚の輪郭は窓ガラス越しにもはっきり映り、アスファルトのくぼみには水たまりが出来上がっている。まるで俺の気持ちを代弁しているかのような空模様だとまでは言わないが、起き抜けにため息の一つでもこぼしたくなる程度には憂鬱な朝だった。
 机に置いたままのスマホは沈黙を続けている。TS現象に囲まれた俺の立場を知った二人は、SNS越しではなく直接詳しいことを聞くつもりだろう。
 うざいぐらいハイテンションであることは想像に難くない。ダーク思想の白山と男体化好きの六村という凄まじく面倒な二人に直で同時に詰め寄られるなどと、想像するだけで気が重くなった。

 そんなわけで。

「詳細希望!」
「KUWASHIKU!」
 予想を裏切ることなく、教室のドアを開けるなり二人が詰め寄ってきた。
 台詞のタイミングも完全にハモっていて胸倉つかむ動作までピッタリ同じで仲良いなお前ら結婚しろ。
「ってか、顔近い。離れろ」
「なんだと! 瞳を覗き込んだ相手に魂を移す力に目覚めたとでも言うのか!」
「なんですって! 触ったら女の子がイケメンになる能力を授かったとでも言うの!」
 それぞれ息をするように異能の力を勝手に妄想し、双子もかくやという動きで俺から大仰に距離を取る。他のクラスメイトからは「また桑倉たちが何かやっている」という呆れ交じりの生暖かい目を向けられてしまった。
 なぜ絡まれているだけの俺まで一味に組み込まれているどころかメインに添えやがったのか、後で問い詰めよう。声は覚えたからな。
「あー……今はちょっと。昼休みにしないか? 屋上で」
 俺は息巻く二人をあしらい、なるべく人目を避けられる時間と場所を指定した。
「屋上だあ?」
「焦らすつもり? やだ、桑倉君って意外とSなのねッ」
 あからさまに不満そうな顔をする白山となぜか頬を赤らめる六村を交互に見やり、再びため息が漏れ出す。
 まったく頼りになる友人だった。

 初夏も近づいた頃の雨にしては冷たく、校舎全体もどこか冷え冷えとしている。
 そのせいもあってか、薄氷学園の[屋上]はいつにも増して寒々しい。季節を逆戻りしたような冷気に思わず身をすくめながら階段を上がりきると、施錠された屋上へ続く扉の前で男と女が雁首そろえて仁王立ちしていた。
「待っていたわ! この時をねッ!」
「詳細の時間だオラァ!」
 エキサイトしまくる二人には気温など関係ないのか、朝から全く変わらないテンションで再び詰め寄られる。だから近いって。
「詳しくも何も……メールに書いたとおりだよ。一週間ぐらい前から、TSした男たちと話すようになったんだ」
 床に腰を下ろし、購買の菓子パンをあけながらとつとつと口を動かす。
「それは知ってる。親父と入れ替わった後輩の女の子だろ?」
「昨日言ってた女になれる男の子ってのも、本当の話だったのね」
 白山と六村も腰を下ろし、円座になって話し合いを続ける。
 俺は頷き、二人は面識のない葛葉さんのことも伝えた。
「なにそれハーレムじゃない」
「いやいやいや、男に憑依された巫女って! 巫女憑依って! たまんねぇなぁおい除霊に失敗したのか悪霊に取り付かれたのかくくくこれからは俺が退魔師様として生きてやるよ、とか言って元の巫女さんの魂を消滅させてちょうど手ごろな相手が欲しかったとか言われて逆レ的にイケナイこと沢山されたんだろ畜生このR18野郎めが!」
「そういう反応するから言いたくなかったんだよ……」
 打ち明けたのをさっそく後悔したくなる暴走っぷりだった。
「でも、どうして今になってそんな話を?」
 弾み声ではあるものの六村の方はいくらか冷静さを取り戻している。やっぱり主食が男体化だからか、男女入れ替わりや自由変身に比べて憑依への反応は薄い。
 とはいえこの状況をハーレム呼ばわりする時点で俺たちは同類だ。
「手伝って欲しいんだ。俺は、全員を元通りの生活に戻したい」
「は? 何言ってんだお前……中年親父が女子高生になって、死んだヤツが巫女さんのカラダを奪って、いつでも女に変身できる男がいるんだろ? 何も問題ないだろ」
「道徳って言葉知っているかお前」
「うぅーん……お父さんになった女の子はともかくさ、変身できる男の子って、何か問題あるの?」
 指摘はもっともだった。
 司馬のそれはアクシデントではなく、体質だと言っていた。詳しくは聞いていないが、あのすっかり順応しきった振る舞いは一朝一夕で仕上がるものじゃない。
 本人も変身体質を受け入れている風で、「男なのに女」という心の葛藤……女体化の醍醐味はすでに薄れてしまった感がある。
 ひとまず司馬の女体化は、他人の介入が必要なほど逼迫した状況ではない。ならどうして俺は問題視しているのかというと。
「うぉ……っ」
 ゾクッと悪寒が走り、肩越しに振り返る。
 薄氷学園七不思議のひとつ、「階段に現れる女の霊」を目撃したような絶望的な気分で、階段の踊り場からこちらを窺う男を見てしまった。
「……いるよ。いたよ」
 女体化していない、男の司馬だ。
 まるで生首でも転がっているように頭だけ踊り場に置いて、厚底眼鏡に覆われた女のような顔がじぃーっと恨みがましく段上の俺たちを見上げている。時間が時間なら絶叫していたかもしれない。
 これだ。司馬の女体化そのものが問題ではなく、このストーカーじみた行動こそが悩みの原因だった。正直怖いからどうにかしてほしい。
「ほいっ!」
 誰もが、憑依という単語にエキサイトしていた白山でさえ視線の先に気付いて凍り付いていた空気の中で、ただ一人軽妙に動きスマホを構える女がいた。
 カメラのシャッター音を聞こえよがしに響かせ、撮影者である六村は不敵な笑みを浮かべている。
「ねーねー、ちょっとこっち来て話しようよ」
 何を言い出すのかと見守っていると、六村はあれだけ異様な雰囲気を見せ付けていた相手を友達でも呼ぶような気軽さで手招きした。
 誘われた方もきょとんとしている。直前の行動といい、意図が読めない。
「……えげつねぇ女だ」
「え、お前わかったの」
 冷や汗を浮かべて戦慄する白山に解説を求める。
「まあ……あれだ、ネット社会は怖いってことだ」
「は?」
「あの……」
 オドオドとした男の声に振り向くと、司馬が俺の背後に立っていた。
「お、お話し、しましょう……」
 両手を胸の前でもじもじとさせる美少年は、そういいながらチラチラと六村に視線を送っている。
 六村は顔に笑みを貼り付けたまま、撮ったばかりの写真を削除した。踊り場に顔を出す男の写真が消えるのを見届け、俺以外の男どもになぜかホッとした空気が流れる。
 ……なんなんだいったい。
「こうして話すのは初めてだよね。あたし、2Cの六村珠緒。よろしくね」
 腑に落ちない俺をよそに、風もないのに長い三つ編みを揺らして右手を差し出す女子生徒。その気さくな態度と真面目そうな委員長スタイルに思わず心を許す人間も多いと聞くが、司馬はあからさまに警戒していた。
「2A……司馬、達成……です」
 おずおずと自分の右手を差し出した、握手を交わす。
「うんっ、でさ、ちょっとお願いしたいんだけど」
「お願い、ですか?」
「女の子に変身してくれない? 今すぐ、目の前で」
 飾り気のない豪球ストレートな「お願い」に、緩和されたはずの空気がまたも緊張した。
(なんだあいつ! 自由か!)
 勝手に女体化のことを話してしまった俺が言うのもなんだが、こういう問題はもっとデリケートに扱うべきだと思う。間違っても「女いなれるんだって? ちょっと見せてくれよ(ニヤニヤ)」なんて見世物扱いするセリフを吐く奴がTS男子と親しくなれるわけが……。
「いいよ。……はいっ」
 一瞬だった。
 六村のぶしつけな言葉も、それに対する俺の反応も、あっさりした司馬の承諾も、美少年が六村と握手をしたまま美少女へと変身したことも、何もかもが一瞬で終わっていた。
 爆発するみたいに髪が伸び、曲線の多い肉体が男子の制服を窮屈そうに着ている。握手をしていない方の手で眼鏡をはずすと、綺麗と可愛らしいのちょうど中間にあるような整った顔立ちをあらわにして目を細めた。
「え……え?」
 握った手のサイズが縮み、派手な音や光や煙のようなものもなくまさに一瞬で女体化した元男を正面から見せ付けられ、ついに六村の顔から余裕じみた微笑が消える。
 白山も、もちろん俺も、初めて見る「変身」にただただ唖然とするばかりだ。
 そんな俺たちの視線をどう受け取ったのか、美少女になった司馬の顔にふっと影が差す。
「あの……や、やっぱり気持ち悪……」

「ィエクセレント!」「ブラーボォウ!」「スパシーヴァ!」

 三者三様。アドレナリン全開限界突破した無類のTS好きである俺たちは同時に吼え女体化男子への賛辞を送った。
「すごいわっ!まるでバケツに入った水を当然のように頭からかぶって変身するみたいにあっさり女の子になった!」
「すげぇな! だんだん体が変わっていくシークエンスとか全カットしてスイッチを切り替えるみたいに女になりやがった!」
「目の前にいた男の性別が一瞬で変わってしかも美少女だったときの俺の感動をどう伝えればいい! 最高か!」
 思えばこれまで事後報告の主張を聞かされてきただけで、決定的な証拠は何もなかった。雛姫ちゃんや葛葉さんの言葉を信じていないわけじゃないが、今まさに男が女に変わる瞬間を目の当たりにしたことで司馬を疑う余地はもはや完全に消える。
 俺たちはここが校舎の中だということも忘れ、女体化した少年を祀り上げるように大はしゃぎした。


 ハッと気が付いたときには既に遅く、女の司馬がぽかんとしたまま固まっていた。
 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、ようやく俺たちから興奮の熱が引いていく。
「わ、悪い! 気持ち悪かったよな!」
 両手を打ち、心底申し訳ない気持ちで頭を下げた。
 TSが他人には理解されにくい性癖だと知っていたはずなのに、俺たちは女体化した司馬を取り囲み、褒め称え、鼻息荒く熱狂してしまった。
 最悪だ。体が女になっても男の頃と同じ態度を貫ける男だけが女体化男子との絆を育めるのに、これじゃあ「女になったんだって?(ニヤニヤ)」と言って群がるモブ野郎と何も変わらない。
「だ、大丈夫。気にしてないから。……本当に好きなんだね。女の子になった男が」
「それは、ちょっと違うな」
 そう答えたのは、白山だった。
「俺たちは別に、男が女になるってだけでTSを好きなわけじゃない」
「異性へなったことへの戸惑いや喜び。人間関係や生活の変化。他にもいろんな要素が絡まりあった結果生まれるシチュエーションにこそ、あたし達は最大限に萌えているのよ」
 相変わらず「わかっていない」反応をした司馬に、白山と六村はピッタリと息の合った応酬をする。
 激情に任せて女体化男子はこうあるべきだと定義するのではなく、諭すように自分の理想を押し付けるのでもなく、自分はこいういうのが好きなんだと胸を張って言う。女の司馬と最初に出会った時に、俺もこんな風に言えればどれだけ良かったか。
 方向性は違うものの同じ趣味を持つ白山と六村の存在は、俺にとって改めて心強い存在だと思った。
「……そっか」
 司馬は口元を和らげて呟くと、まばたきをする間にパッと男の姿に戻った。
 大きく張り出していた胸のふくらみが消失し、髪の毛の長さが平均男子のそれになる。
 元に戻ったはずなのに、「女が男に変身した」という目で見ている女が女体化のときよりもさらに狂乱していた。
「ご、ごめんね、本当はもっと話したいけど……授業、遅れちゃうから」
「サボりましょう!」
「テスト前でそれは流石にまずいだろ」
 親指を立てながら、さわやかに不良への第一歩を踏み出させようとするな。
「ってか、俺達もやばいだろ。午後イチの授業って、久賀センだぞ!」
 サドっ気たっぷりの科学教師の顔を思い出しにわかに慌てだした俺たちを、司馬はのほほんとした顔で見ている。似たような立場にいるはずなのに、この差はなんだ。
「それじゃね! 今度、ゆっくり話しよう!」
「なんか困ったことあったら言えよ!」
 駆け足で階段を駆け下りる白山と六村に続き、俺も走り出す。
「またな」
「うんっ」
 去り際にチラリと見た司馬は、笑顔を浮かべていた。

**

 放課後になると、六村は長いみつあみをひるがえして教室を出て行った。
 俺はというと、担任への礼が終わった直後に駆け寄ってきた白山に両肩をつかまれ、身動きとれずにいる。
「憑依巫女と会わせろ」
「目が据わってるぞお前」
 憑依にご執心の男は、ギラギラした目つきで葛葉さんを紹介しろと迫ってきた。
 もともと今日は神社に行くつもりだったが、飢えた狼のような白山の目を見ていると不安になってくる。
「お前さ、葛葉さんに……っていうか亮祐に会ったら何て言う気だ?」
「決まっているだろ! 『その身体を自分のモノにしてみませんか』だ!」
「やめろバカ野郎」
 懸念したとおりの邪悪な発想だった。
 この男を自由に喋らせていたら、葛葉さんの人生が終了しかねない。
「あのな。俺は元に戻したいんだよ。「これからは俺がお前として生きてやるよ」エンドは可哀相すぎて苦手なんだ」
「何言ってんだお前。それこそが憑依の醍醐味だろうが! 人生を奪われた女の気持ちを想像するとゾクゾクくるね!」
 訂正しよう。心強い存在なんかじゃなくて、不倶戴天の敵だ。方向性が違うので全くわかりあえない。
「さあ行くぞほら行くぞヒャッハー!」
 世紀末的な雄叫びを上げ、椅子に座ったままの俺をムリヤリ引っ張っていく。
 万が一自分が女体化したとしても全くときめかない、強引な先導だった。


 校舎から出ると、午前の雨はすっかり上がっていた。
 傾いた日差しの陽光が曇り空の隙間から漏れ、濡れた街並みを薄く夕暮れ色に染めている。
 俺は白山と並んで石段を登り、何を奉っているかいまだにわからない光明神社の鳥居をくぐった。
 途中から聞こえてくる音で何となく予想していたが、境内には竹箒を持った葛葉さんがいた。長い髪を後ろで一つに束ね、雨風を受けて落ちた葉っぱを足元にかき集める巫女服の彼女からは、久しく見ることのできなかった厳粛で神秘的な雰囲気が感じられる。
「おっ」
 俺たちに気付くと、葛葉さんは整った顔立ちを綻ばせ、ぶんぶんと腕を振る。それまでの近寄り難い印象が反転し、気さくな近所のお姉さんにしか見えなくなった。
「なんだよ、さっそく来たのか。んんぅ?」
 嬉しいのに嬉しいと素直に言わないツンデレのような笑顔を浮かべ、竹箒の柄でつついてくる。
 どうやらテスト勉強をしに来たと勘違いしているらしい。どうしてそれが上機嫌に繋がるのかはよくわからないが。
 ふと視線が俺の隣に移動すると、初めて白山の存在を認識したような顔をして首を傾げた。
「何だコイツ。お前の友達か?」
「ふっ……まぁ、この姿じゃわからねぇか。俺だよ、俺」
「なんだその自分も憑依者ですとでも言いたげな台詞!」
「へぇ……こりゃまた、ずいぶん線の細い男になったもんだ」
「亮祐も悪ノリすんな!」
 ひょっとすると本当に白山も憑依能力者なんじゃないかと疑ってしまうから!
「ところで、なんでその身体を自分のものにしたいとか思わないんだ?」
「ブレねぇな! その質問はやめろって言っただろうが!」
 本当に心変わりして葛葉さんが乗っ取られたらどうする!
 しかし顔を青くさせる俺の気持ちをよそに、亮祐はニカッと歯を見せる笑い方をした。白くて綺麗な歯並びだった。
「あっはははは、なんだお前。面白いダチ持ってるな!」
 たったいま猛烈に友達やめたくなりましたが。
「なんか、俺の事情は知ってるみたいだし、説明とかは良いな。よし、二人まとめて面倒見てやる」
「3Pっすか!」
 神様、こいつに天罰与えてください。女の子になるとかじゃなくてガチのやつ。
「ちょっと待ってろ。すぐに、おつとめ終わらせるからさ」
 そう言って亮祐は集めた落ち葉をゴミ袋に入れ、俺たちを社務所の中へと案内してくれた。
「……ふぅむ」
 前を歩く巫女の後姿を見つめながら、白山が何か考え込むような顔をする。
 胸中を想像するのは頭が痛くなりそうなので止めておいた。



「ダウトだな」
「は?」
 葛葉さんに勉強を教えてもらっての帰り道、白山はいきなりそんなことを言った。
「ダウトじゃないにしても、ありゃダメだ。完全に精神が同化しているパターンだよ」
 白山が示唆したのは、亮祐は葛葉さんが生み出した擬似人格。あるいは言動こそ男っぽいが感情自体はもともとの葛葉さんと同化している可能性だった。
「なんで普通に巫女服着て、普通に竹箒で境内の掃除をしているんだよ。ただの巫女キャラじゃねぇか」
「キャラ言うな」
「時々あるんだよなぁ、憑依とか女体化って見せかけて、実は最初から女性でしたってパターンがさ」
 勉強を教えてもらった約一時間、白山はずっと彼女を観察していたらしい。
 葛葉さんの言動は一見すると男だが、意識してそう演じている風に感じたという。
 ちなみに亮祐は本当に学力が高く、教え方も上手かった。
「元は大人しい女の人だったんだってな? 確かにギャップが大きい分、別人にしか思えなかっただろうがな」
 だが『葛葉さん』を知らない白山にとって『亮祐を名乗る葛葉さん』は、あくまでも思い込みによる演技の範疇に見えたようだ。
 もちろん、そこまで強烈な思い込みをするには何かしらの問題があったには違いないが、そこまで推測することは出来ない。
「精神同化ってのは?」
「憑依したはいいけど、感情が全部身体の持ち主と同調しちまうってことだよ。胸があるのは当たり前。男を好きになるのに何の抵抗も感じない。女には欲情しない。それじゃあもう、TSの旨みなんてどこにもねぇよ……はあぁ~」
 心底からがっかりしたようなため息を漏らし、差し掛かった丁字路を右に曲がる。俺は逆の道だ。
「やっぱり憑依はダークじゃねぇとな。エロと嗜虐性のコントラストがない憑依なんてぬるすぎだ」
「全年齢向け憑依モノに土下座しやがれ」
 そんな言葉を交わし、それぞれの帰路についた。
 帰り道と同様、正反対の思想を持つ俺たちはやはり分かり合えないのかもしれない。
 ただ、頭には白山の言葉が妙に残っている。
(……葛葉さんが演技をする理由なんて、あるのか?)
 ない。と、断言できるほど、俺は彼女のことを知っているわけではない事に気付き、わかりきっていたことだったのにそれが少しだけショックだった。



 ノートを広げ今日一日の復習をしていると、メールが届いた。
 覚えのある名前に思わず二度見して、おそるおそる開封する。
《こんばんは、六村さんからアドレスを教えてもらいました。僕のも登録してくれると嬉しいです。  司馬達成》
「六村ぁ……っ」
 俺達が勉強を教わっている間に、二人もずいぶんと親しくなれたらしい。ただこのまま放っておくと俺の個人情報がどんどんリークされそうだった。
 帰り道での白山の台詞といい、なんだか悩みの種が増えただけな気がする。
 解決に向かって確実に一歩ずつ進んでいるとは、到底思えなかった。
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プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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