オカ研2

短編TSのSSです
内容は……あるんだかないんだか。


 オカ研 ~百物語に至るまでの憂鬱な議事録2

「入れ替わりにおける最大の効能は、なんといっても心の交流よね!」
 外で鳴くセミの声をBGMに、会長は平らな胸を張って声高にそう語った。
「い、入れ替わり、ですかぁ……?」
「会長……くっ、やはりあなたは、素晴らしい人です。悔しいですが、その慧眼を僕は否定できません!」
 会長の言葉に、いつもほんわか笑顔の耐えない川留さんが引きつった愛想笑いを浮かべ、詐欺師のように常に微笑む鳥月が渋面を浮かべている。
 入れ替わってしまった経験のある鳥月と川留さんには、この単語はちょっとトラウマになっているようだ。
「で、どうしてまたそんなことを?」
「バカね。あたしたちオカルト研究会は、よくわからないけど、心を入れ替えることが出来るのよ?」
「川留さんと鳥月限定ですけどね」
 しかもトリガーは俺に食らわせる会長の頭突き。
 なんというか、もうオカルトでもなんでもないと思わないでもない。
 もっとさぁ、俺としてはサダコ的な刺激がほしいね。サダコって実は美少女だし、需要あるよ絶対。
「不思議な現象を検証し、不思議を普通にすることこそ、オカ研の存在意義よ!」
 初めて聞いたよ。入会前に説明しろよそーゆーことは。
「なるほど……不思議が不思議でなくなれば、それはつまり普通……」
「つまりぃ、誰かが頭突きをすると入れ替わってしまうのもぉ、普通のことになってしまうわけですねぇ」
「って、何で二人とも納得してるんだよ!」
 明らかにおかしいって、その世界。
「そこよ!」
「は?」
 会長が腰に片手を添え、『異議あり!』と叫ばんばかりに人差し指を俺に向けた。
 人に指差したら失礼に当たるその行為も、このお子様会長がやるとこんなにほほえましい気持ちになる。
「そこって、どこです?」
「なんで、あんたはあたしにだけ敬語なのよ!」
 え、なにそのイチャモン。
 正しい言葉遣いをしろってんならともなく、なんで敬語使うんだって怒られ方は初めてだ。
 が、それをそのまま口に出すのもいろいろ面倒になりそうだったんで速やかに答えを返す。
「……オカ研の会長ですし。一応、三年ですし?」
 そう。信じがたいことだがこのロリ会長、実は俺より年上の三年生だったりする。
 発育不良にもほどがあるが、そこは暗黙のタブーなので触れてはならない。
「だ、だからこそ、ここはあたしとあんたは身体を入れ替えて、心の交流をはかるべきなのよ!」
 どう聞いてもむちゃくちゃな理論です。本当にありがとうございました。
「何、嫌なの? きっと、元に戻る時はお互いの秘密を知り尽くした親しい関係になれわよ?」
 それはつまり、俺の弱みを握ろうとしていませんか、会長。
 大体、入れ替わりが出来るのは鳥月と川留さんだけだって、ついさっき言ったばかりでしょうに。
「ふっふーん、安心なさい。今回は頭突きじゃないから!」
 ――ヤナヨカン襲来。
「さあ着いて来なさい! 一緒に階段から落ちるわよ!」
 ――ヤナヨカン被弾。
「ちょっ、下手すりゃ死にますから! 少なくとも絶対、怪我しますから!」
「こ、この期に及んで敬語なのねあんた! でもそれも入れ替わったら最後。私とあんたは劇的ビフォアーアフターよ!」
「意味不明すぎます! ああもう、離してください! つーか触んないでください!」
 口では抵抗するが、俺の足取りはよたよたと会長を追いかける。
 いや、触ってほしくないのはマジだけど、本気で抵抗してやるとこのお子様は泣き出しかねないし。

 ……で、階段まで来たのはいいけど、やっぱりお子様会長はどこまでもお子様だった。
「え、ここから落ちるの? ちょ、ちょっとまって、心の準備しなきゃ!
 すーはーすーはーすーはー。…………よし!(チラッと階段をまた見下ろし)た、高いわね。
 ああっ、そうそう、準備運動しなきゃね準備運動! いちにーさんしー……(チラッ)うううう……。
 ――(中略)――
 きょ、今日のところは、ここで勘弁してあげましょう! 階段が哀れに思えてきたわ!」
 哀れなのはあなたの脳みそです。
「ソウデスネー」
 思っていることとは正反対の単語を機械的につむぎだし、きびすを返す。
 ……俺たちの後ろに、両手を前に突き出した、長い黒髪の女の子がいた。
「…………どうも」
「…………ふふっ」
 少女は、淑やかに微笑みを浮かべ。
 突き出した両手で、俺の胸を押した。
「おっ?」理解が追いつかない。
「危ない!」あ、これ会長の声だ。
 少女の立ち位置が、遠ざかる。視界も斜めに傾き。
 そこでようやく、『ああ、階段から落ちているなぁ』と、いやにのんきなテンションで状況を理解した。

 ――胸に窮屈感を覚え、ハッと目を覚ます。
 つーか、俺はいつの間に目を閉じていたんだろう。それに、会長は? あの女の子は?
 きょろきょろと辺りを見回して気付いたが、ここはオカ研だ。
 川留さんや鳥月の姿はない。壁にかかった時計を見上げると、俺と会長が出て行ってから十分も経っていないことがわかった。
 あの二人は、先に帰ったのか? いや、そもそも俺は階段から落ちたはずじゃ?
「んー……?」
 というか、なーんかさっきから違和感がある。目覚めたきっかけもそうだったが、胸が苦しい。
「た、大変です! 会長たちが階段から落ちました!」
 急にドアが開き、鳥月が入ってくる。
 あー……やっぱり、さっきのは夢じゃなかったのか。
「落ち着け、鳥月」
 と言った本人が、その言葉の直後に戸惑いを覚える。まったくひどい話だ。
「…………あー、あー……」
 俺の声が、やたら可愛くなっている。
 しかもどっっっっっかで聞いたことのある、のんびりした声。
「落ち着いていられますか! 幸い無傷でしたが、あの男が目覚めないからと、会長は大混乱なのですよ!」
 んで、次の鳥月の言葉が、俺の疑問を払拭してくれた。
「とにかく行きましょう、川留さん!」
「…………ふむ」
 鳥月の言葉には答えず、俺は、ここに置きっぱなしにしていた自分のカバンからマイ手帳を取り出し、簡単なメモを走らせる。

「オカルト研究会、百物語、八個目。
 会長と俺が階段から落ちると、なんか俺、川留さんになるっぽい」

 俺を階段から突き落とした謎の少女のことは、まだわからないことだらけすぎるので、保留。
 とりあえず、川留さんとして生きていく気はまったくないので、元に戻るとしよう。
 会長と、おそらく抜け殻になっているっぽい俺の身体をもう一度階段から落とせば、大丈夫だろうし。
 ……にしても、話には聞いてたが本当に肩凝るのな、胸大きいと。


 余談だが、俺が川留さんの身体に入っていると説明すると、会長はあれだけ怖がっていた階段落ちをなぜか今度はためらわずにやってくれた。
 おかげで元の身体に戻れたわけだが、その代わり会長は軽傷を負ってしまった。
 ……まあ、これに懲りて、もう入れ替わろうなんてあほなことは言わないだろう。……たぶん。
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Author:巫

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