ネコス9

ゆるい空気で進行する短編SSです
ネコス8の続きですが、別に読まずとも不都合はありません


ネコス9

 みなさまこんにちは。
 この私、変身願望を叶える喫茶店「ネコス」の美人マスターは、不用意にも記憶喪失フラグをたてた少年を拾ってしまいました。
 さすがに目の前で気を失った少年を放置しておくほど、薄情ではありませんからねー。

 お店の奥にある居住区に寝かせましたけど、もうそろそろ起き出す頃でしょうか。
 もし起きていたら、目覚めのコーヒーと言って私のオリジナルブレンドを差し出してあげるつもりです。
「もっとも、善意ではありませんけど」
 くすりと唇を吊り上げ、誰も見ていないというのに悪女の顔を作ります。
 そしてこんな表情さえ驚くほど似合っているに違いない私は、素敵です。これぞ美人マスタークオリティ。
 ……コホン。
 とにかく、私のオリジナルブレンドは性転換するコーヒー。いたいけな少年はきっと見目麗しい美少女へ変わるでしょう。
 そして変身した暁には、めくるめく百合色の世界へご案内です。
「じゅる……うへへへへ」
 私は淹れたばかりのブレンドを片手にし、彼を寝かせた和室へ戻ります。
 頭から血を流していたし、本来なら救急車を呼び出すのが、きっと人として正しい道なのでしょう。
 しかしあわよくば、ねんがんのバイトTS娘が手に入るかもしれないのです。
 そう。これはチャンスなのですよ。
 私はもう、一人は飽きました。寂しいとウサギは死ぬのです! 私は猫派ですがウサギも大好きです!
「というわけで、お目覚めですかー?」
 バイトの雇用を目前にし、私は浮かれていました。
 だからでしょうか。部屋のドアを開け、目にした光景に、対応が遅れてしまいました。
「おい、てめぇ! 俺に何しやがった!」
 かわいらしい声で口汚い言葉遣いをするのは、美しい少女でした。
 色素の薄い紫のかかったロングヘアを振り乱し、シュッとした顔立ちに怒りの表情を滲ませています。
 呼吸さえ忘れてしまいそうなほどの美少女――いえ、綺麗な女の子に、私の目は奪われました。
「…………」
「あ? 何ぼさっとしてんだよ! 早く俺を元に戻せ!」
「キ……」
「?」
「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!」
 私の甲高い声が室内に響き耳キーンでああもうそんなことより彼女をお持ち帰りというかなぜ見敵必殺で飛び掛らなかったのか悔やんでも悔やみきれない前にルプァンダイブで99%TS娘である彼女との蜜月を過ごすことに異論は――――。おや?
「ところで、なんで貴女はTSしているのでしょう?」
 この店はブレンドを飲む以外にも、TSする方法がいくつかあります。
 しかし発動のための条件は整えていませんし、それに第一、私のブレンドでは綺麗な少女への変身は私以外に前例がないのです。
「TSって、なんだよ? ゲーム?」
「そういう知識はあるのですね。ああ、確認しますけど、自分のことわかります?」
「………………なあ」
「はい?」
「ここはどこで、俺は誰だ?」

 ――こうして迎えた、お店のオープン日。
「兄さーん。調子はどう……」
 どこからどう見ても女の子である私をいまだに兄さん呼ばわりするKY妹が、お店に入るなり言葉を詰まらせました。
 彼女の視線は、白地のシャツに青のベストを着た、タイトスカートの女の子が釘付けになっていることでしょう。
「やあ、マスター。久しぶりだね……って、えぇっ!?」
 リニューアル前の常連客であり、私を元男と知っていて口説き続けるド変態が、長い紫髪をツインでまとめた少女に驚きます。
「うふ、うふふふふふふふふふふふ」
 私こと美人マスターは、綺麗な彼女のストッキングに包まれた細い足を視姦します。
「兄さん? か、彼女は?」
「マスター……ぼ、僕というものがありながら女に走るなんて!」
 見慣れない登場人物に、二人は動揺を隠せないようです。
「うるせーですねぇ。ほら、ユカリちゃん」
 エプロンのすそを握り締めてもじもじするその娘は、昨夜私が徹底的に教え込んだ接客術を初披露します。
「い、いらっしゃいませ。『ネコス』へようこそ」
 凛とした顔がふにゃりとゆるみ、極上の笑顔を浮かべました。
「~~~~~最っっっ高っっっです!!!」
 行く当てもない記憶喪失のTS娘が取れる選択肢など、ないも同然でした。
 そう。ついに、ついに私は、住み込みのバイトを雇ったのです!
 彼が女の子になった理由。記憶喪失になった理由。そしてその正体。
 疑問は山積みですが、そんなことは些細なことでしかありません。
「はぁ、なんで俺がこんな目に……」
「あーはーはーはーはー」
 私は今、幸せです。


 『喫茶店「ネコス」はリニューアルオープンしました。
  美人マスターと、ちょっと口が悪いけどとても綺麗な女の子。
  そして変身願望を叶える不思議なコーヒーが、あなたのご来店をお待ちしています』
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Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

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・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
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