ある日の俺と彼女 12/24


何かしらのイベントがある日に
自分の彼氏をあらゆる方法でTSさせる彼女
そんな二人のかなりいい加減な話です

ある日の俺と彼女 12/24


 ――これだ。これしかない。
 青やら赤やらのイルミネーションがギラギラ光る通りを眺めながら、俺は自分の彼女へ贈るキメ台詞に確信を持った。
 いいムードになんか一度もならず、ただおちょくられただけ思い出しかない夏と秋。
 だが今日この日、イブの夜こそ俺は彼女を改めて自分に惚れさせてやるという野望をひそかに抱いていた。

 俺の計画は、待ち合わせをしたこの場所に彼女が姿を現したその瞬間から始まる。
 先制攻撃としてキメ台詞を挨拶代わりに放ち、そのあとはこの美しいイルミネーション街道を二人並んで歩く。
 それから食事をして、プレゼントを渡し…………ほ、ホテルか? やっぱホテルに行くか?
 クリスマスの日に朝チュンを迎える。これは、彼女持ちの男なら誰もが通る道だ。
 必死だなwと笑われようとかまわない。とにかくこの日この夜は、彼女に俺が自分の彼氏だと再認識させてみせる!
「……つーか、遅ぇ」
 待ち合わせは午後の六時。
 時間前に到着した俺は、通算六十分ほどをこの寒空の下ですごしている。
 ついでに言うと、いままでのデートで彼女が遅れたことは一度もない。
 それから五分ほど待ちぼうけを食らわされた頃になって、一つの不安が頭によぎった。
 事故にあったのかもなんて、ドラマみたいな不安じゃないところが、なんともいえない気持ちになるわけだけど。
「ああもう、折角のデートをすっぽかす気か」
「ふぅん。デートねぇ」
 ふいに彼女の声が聞こえ、慌てて顔を上げる。
 変な言葉になるが、いつも通りの、女の、別人じゃない彼女だった。
 ただちょっと……いや、かなり不機嫌そうなのが、気にならないといえば嘘に嘘ですすいませんすっげぇ気になります。
 だって普通、恋人同士がデートの待ち合わせ場所に着いたのなら、「待った?」「今来たところ」がセオリーだろ!?
 なにその、いかにも『くだらない時間はとりたくない。一秒でケリをつけてやる』みたいな据わった目つき!
「こ、こここ、今夜……」
 開口一番に出そうと思っていた台詞が、うまく言えない。
「あなたねぇ。この時期、私のような人間がどれだけ忙しいかわかってる? ていうか、なんで手伝いに来てくれないのよ!」
 なんのことだ、とも思ったが、ここで開口一番の座は譲れない。
 彼女と出会い、一番初めに口にするのはあのキメ台詞でなければ。
「冬にもお祭りあるって言ったでしょ? こんなところいないで私の部屋来なさいよ。そして原稿を手伝いなさい! もしくはサンタコスで締め切り前の私を癒しなさい!」
 じじいの格好で癒されるのかよ、お前は!
「もちろん、女体化して防寒無視のサンタコスよ!」
 妙な条件が加わった!
「第二案! ご褒美が控えているのなら、原稿もより早く終わるわ! というわけで裸にリボンを巻いて『クリスマスプレゼントはあ・た・し』ってやりなさい!」
 俺、女なってるよな!? 仮に男のままだとしてもやりたかないけど!
「というわけで私の部屋連行! 白い原稿とみつめあうイブの夜を過ごすわよ!」
 だが断る!
「こ、今夜!」
「?」
「今夜、お前は俺色に染まる!」
 決死の思いで。いや、別に死にはしないが女体化ぐらいはされそうだなという覚悟を持って、俺はキメ台詞を叫んだ。
 あまりにも唐突だったためか、彼女はきょとんとし、それから急にそわそわとあたりを見渡し、最後に自分の身体を見下ろした。
「……はぁ~。やられた」
「ど、どうした?」
 くしゃり、と乱暴に自分の前髪を書き上げ、苦々しくつぶやくマイ彼女。
 よくわからんが、ヤナヨカンがする。
「彼女は、俺色に染まったぞ」
「は?」
 心なしか乱暴な口調で、彼女は答え合わせをしてくれた。
「つまり、いま目の前にいる俺は、俺色に染まった彼女。……わかりやすくいえば、俺が二人いて、片方の外見は俺の彼女だ」
「はぁ!?」
 なんで俺の台詞でそんなことになるんだよ! 俺はあいつみたいな能力なんて……。
「諦めろ。今日も、やっぱりおちょくられたわけだ」
「マジデ?」
 イブのデートは? 朝チュンは!?
「……デート、するか?」
 俺と同じ気持ちなのか、俺色彼女がそんなことを言ってきた。
「が、俺は俺とデートする趣味はないぞバカヤロウ!」
「俺も同じだボケナス! しかも俺の場合、見た目も俺とか誰得だよ!」
「見た目は彼女なんだから俺得だよ! でも俺は俺とデートしねぇよ!」
「俺俺うるせーぞ! オレオレ詐欺はもう時代遅れだぜ、俺!」
「お前も俺俺うるせぇぇぇぇぇっ!!」

 結局どうなったかというと、俺色のまま彼女を帰すわけにも行かず、俺の部屋で一夜を共にした。
 彼女の演技ではないことを確かめるために費やした一夜は、会話やゲームをしているうちに明け、外ではスズメが鳴いていた。
 ……こんな朝チュン、俺は望んでいない。

 ちなみに、一夜明けたら彼女はすっかり俺色を脱色し元通りに……というか鬼気迫る勢いで原稿を協力しろと言ってきた。
 白い紙をにらみつけ、消しゴムをかけ、墨を塗っているうちにクリスマスが終わり。
「おーい、あと何枚だー?」
「口より手を動かして! あーもー! あなたのギャグに付き合うんじゃなかったー!」
「俺のキメ台詞、ギャグ扱い!?」
 冬のお祭りは、まもなく始まる。


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