ある日の俺と彼女 12/31

何かしらのイベントがある日に
自分の彼氏をあらゆる方法でTSさせる彼女
そんな二人のぐだぐだした会話が書いてあります

ある日の俺と彼女 12/31


「新刊、落としちゃった……」
 彼女は机に身体を預け、ピクリとも動かずに暗い調子でそうつぶやいた。
 縦線を背負っている背中は、年の暮れだというのにそこかしこにゴミの散らばる部屋を片付ける気などこれっぽっちもないといった空気をビシバシ出している。

 ……俺は何をしているんだろう。
 消しゴムやらトーンやらのカスを拾い集めながら、ふと空しくなった。
 年末に恋人と一緒の時間を過ごしているのに、かたや絶賛落ち込み中、かたや恋人の部屋掃除というこの状況。
 この調子で除夜の鐘を聞き、年明けを迎えるのかと思うと、ちょっと気が滅入ってくる。
「おーい、そろそろ片付け手伝えよ」
「……へんじがない。ただのしかばねのよーだ」
「自分で言うな」
「……へんじがない。ただのしかばねだと思いきや、なんとしかばねは無口なガイコツ剣士だった!」
「エンカウント!?」
「ガイコツ剣士の攻撃。ガイコツ剣士は炎の呪文を唱え」
「剣士の癖に魔法使うのかよ!」
「――ようとしたが、無口で恥ずかしがり屋なので呪文を唱えられなかった! ガイコツ剣士は目に涙を浮かべて逃げ出した!」
「萌えキャラか? 萌えキャラを狙っているのか骨の分際で!」
「……へんじがない。ただのしかばねのよーだ」
「無限ループ!? っていうか実はすげぇ元気だろお前!」
 ……まぁ、こんな感じでぎゃあぎゃあ騒いでいると、遠くからふいに重低音が聞こえてきた。

 ゴーン……

「あ」
 除夜の鐘だ。
「ふん。私の煩悩が、こんなつまらない音で消されると思ったら大間違いよ」
「威張るな威張るな」
 そうこうしている間にも、鐘はゴンゴンと一定のリズムを刻み、今年のカウントダウンをしている。
 はぁ……結局、ゴミだらけの部屋で年明けを迎えるのか。
「俺たちらしいって言えばらしい、か?」
「同人作家のカップルなんて、こんなものよ」
 彼女が机から身体を起こし、ちょっと達観したような苦笑いを向けてくる。
「俺は同人なんてやってないし、やるつもりもないけどな」
「えー? やろーよ。一緒にTS本作ろう? 体験レポート書くだけでいいからさ」
「それは、来年も俺を意味なく女の身体にするって言う予告か?」
「調査によると、男の多くは女になってみたいという願望を持っているそうよ」
「じゃあ俺は少数派だ」

 ゴーン……

「ゴーン、って表記すると、さくら先生の漫画みたいだよね」
「ちょっと意味がわからない」

 ゴーン……

「H×Hはいつ終わるんだろうね。作者が死ぬのが先かなぁ」
「いきなり少年マンガの揶揄!?」

 ゴーン……

「ま、今年もいろいろあったが……」
「あったねぇ」
 春に俺が告白し、付き合うようになって。
 夏に彼女の趣味を暴露され、妙な能力を使われ。
 秋も冬も多くの時間を一緒に過ごし、ときにからかわれた一年。
 正直、第一印象からはかなりかけ離れてしまった俺の彼女だが……。
「とりあえず、来年もよろしく」
「……それは、『いつでも俺を女体化していいぜ』ってことね!? じゃあさっそく……」
「いいわけないだろ! 身体変えるな、入れ替えるな、憑依させるな、意識コピーするなぁぁぁぁ!!!!」
「……じゃあ、部分交換したり、皮着てもらったり、脳移植してもらったり、転生してもらったりするから!!」
「俺、お前の彼氏! 彼氏ってのは男なの! わかる!?」
「女になる彼氏がいてもいい……そうは思いませんか」
「何を悟ったようにっ!」

 ゴーン……

 百八回目の鐘が鳴っても、十二時を回っても、彼女はこんな調子で何も変わらなかった。
 だがまぁ、これが、俺と彼女の日常だ。

 ……余談だが、翌朝、気がつくと俺はなぜか巫女装束を着ていたわけだが……いや、忘れてくれ。
 俺も忘れたい。






そんなわけで、みなさまよいお年を
来年もゆるーい感じでよろしくお願いします

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

巫

Author:巫

・TS好きのはしくれ
・小説モドキを主に不法投棄します
・えろいといえなくもない表現を時々するため、10代前半以下の方の閲覧はお勧めしません

・当ブログのリンクはご自由にどうぞ
・ぬるい目で見守っていただければ重畳
・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

・モドキとはいえ小説を公に無断転載してはいけません 常考
管理者の詳細

最新記事
カテゴリ
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
FC2投票
無料アクセス解析
応援バナー
ちぇ~んじ!~あの娘になってクンクンペロペロ~
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR