ある日の俺と彼女 2/3


何かしらのイベントがある日に
自分の彼氏をあらゆる方法でTSさせる彼女
そんな二人のぐだぐだした会話が書いてあります
ヤマなしオチなし意味なしの三拍子揃ったTS短編です


ある日の俺と彼女 2/3


「二月の日本人はずいぶんと強欲だよね」
 ビール片手におつまみの豆をぽりぽり食べていると、ふと、思い出したように彼女がつぶやいた。

「強欲?」
「鬼は外、福は内ってやつ。あれって鬼……つまり災厄を外に追いやって、『自分の家だけ幸福であればいい』って呪文じゃん?」
「いや、呪文て」
「どこの家でも似たようなことやってさ。じゃあ外は災厄だらけで、そりゃあ景気も悪化するわって思わない?」
「……酔ってるのか?」
 珍しく言ってることがまともだ。
 てっきり、恵方巻きにちなんで俺を女にするんだと思っていたが、まさかこんなテーマを持ち出してくるとは。
「誰だって災厄に遭いたくはないよね、うん。それはわかるんだよ。でもさぁ、幸せも不幸せも一緒に来ての人生でしょ」
「おお、深いな」
「ってわけで、私は『福は内、鬼は内』をやりたいと思います」
 そういい、彼女は皿に乗っていたピーナッツを握ると、けだるそうな感じでテーブルを挟んだ向かいの俺に豆をぶつけ始めた。
「福は内ー」
「……」
 びしびしびしびし
「鬼は内ー」
「……」
 びしびしびしびし
「なあ」
「ん?」
「歓迎されている気がまったくしない」
 こっちにおいでといいながら豆をぶつけられるのは、なんというか、だまし討ちされている気がする。
 いろいろと微妙な気分だ。
「だいたい、ぶつける必要あるか?」
「えー、だって、節分って気分しないじゃん」
「豆ぶつけるのがメインじゃないからな? 一応言っとくが」
「あそっか、鬼役するなら設定必要だよね」
「聞こうぜ彼氏の話。設定いらねえから。そもそも鬼役やるっていってないから!」
「例えば、食べ物恵んでほしくて民家に入りたい鬼っ娘に、家人は鬼は外といいながら豆をぶつけるの。鬼っ娘は痛い痛いと泣きながら、でも、空腹には勝てず、彼女は泣きながら地面に落ちた豆を拾って食べるのよ」
「人間サイドがものすげぇ極悪!」
「鬼っ娘は次の民家でも、その次も次も同じことをされるわ。そのうち、痛い思いを我慢すれば食べ物(ぶつけられて、地面に落ちた豆)にありつけることを学習するの。だから彼女は、何軒も何軒も回っては豆をぶつけられ、わずかな豆で空腹を満たしていくの」
「もうやめてくれ! 鬼っ娘がかわいそ過ぎる!」
「寒さと空腹と、どこに行っても『鬼は外』と拒絶される苦しみに、彼女の体力はもう限界。しかし、ある一つの民家だけは、違っていた。
 『鬼は内』 そう言われ――鬼っ娘は、顔中に豆を浴びせかけられたわ」
「微妙じゃすまない絶望感!」
「ううん。鬼っ娘は、最期は笑っていた。ああ、私、ここのうちの人に迎え入れてくれたんだなって、安心しながら……目を閉じたのよ」
「いい話っぽく言ってるけど、結局だまし討ちだよな! 鬼は内って言った奴がとどめさしたよ!」
「とまあ、そんな悲劇の鬼っ娘役。レッツプレイ♪」
「なんでYESが出てくると思う!」
「……ふ、所詮あなたも『鬼は外』派なのね。このエゴイスト」
「外道の『鬼は内』に言われたくない!」
 ああもう、深いテーマだと一瞬でも感心した俺がバカだった!
「ふんっだ。いいよ、じゃあ外に投げるから……そして後悔するがいい、愚かなるマイダーリンよ」
「ときどき本格的にイタイよな、お前の台詞」
 俺の声が聞こえているのかいないのか、彼女は何も言わず窓辺に立つと、
「そらー、食べ物を恵んでほしくて――中略――そして最期まで鬼は外といわれ続けて目を閉じた鬼っ娘は外ー!」
「救われねぇ!」
 鬼は内のくだりがなくなっているとただの鬱ストーリーだこれ!
「食べ物を恵んで以下略ー」
「面倒になったのか!」
「略して鬼は外ー」
「一週回った!」
「なお、この豆にぶつかった人間ははらぺこ鬼娘になる!」
「彼女ハザードが世間に広がった!?」
「災厄を自分で受け止めるか世間に捨てるか、その選択で、あなたは鬼は外を選んだのよ!」
「最初の意味深なテーマに戻ったな!」
「それー、誰かのストーカーもサラリーマンもヤンキーもみんな飢えた鬼っ娘になれー」
「ああもう、鬼は内でいいから! 世間様に迷惑かけんなマイ彼女!」

* * *

 ……確かに俺は、世間が鬼娘であふれるより、自分ひとりが犠牲になればいいと、そういう選択をした。
「けど、虎縞ビキニの鬼娘になるとはきいてないだっちゃー!」
 また言葉遣いも変わってるし!
「あんまりそわそわしないでー♪ はみでるから」
「何が!?」

 ……正直、彼女持ちの男が言う台詞じゃないが。
 バレンタインなんて来なければいいのにと。
 そう思ってしまった、二月の上旬だった。




2/3の話なのに一日遅れました。申し訳ない


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以下、拍手コメ返信


>eta さん
>セクスデス現る
彼女「わたしは ネオセクスデス
   すべての記憶――男の身体には女の記憶を、女の身体には男の記憶を植え込み
   すべてのそんざい――男を女、男を女に変え
   すべての性別を交換し、そしてわたしは消えよう!」
彼氏「やり逃げ!?」


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