ネコス14

変身が主になっている短編SSです
後先考えずゆるい感じで進行していますが、
今回から記憶喪失編の締めに入るため前後編に分けました
……などといいつつ、終わりませんでした。
今回含め、あと一回お付き合いいただければ僥倖です


ネコス14 ~記憶喪失編の真相
 
 みなさまこんにちは。
 異性への変身願望を叶える喫茶店「ネコス」のマスターは美人ですか? はい、TSしています。
 そんなわけでやってまいりました2/14!
 空気の読めない妹から毎年のように義理チョコをもらっている私ですが、今年は一味違います。
 ついに、ついに贈る立場になれるわけですよ! それも、相手は絶世の美女!
 
 家主からの贈り物を断れるはずがありませんよね。
 ちょっとずるいような気もしますが、こうでもしないと受け取ってくれそうにないのがユカリちゃんです。
 媚薬なんて入っていませんよ? 淫欲におぼれさせて、この私なしでは生きていけないような身体に調教してやる気なんて、ありませんからね? ね?
「兄さん、ちょっといいですか」
「青葉ちゃん」
 きやがりましたか、KY妹! 私を兄さんと呼ぶなというのに、いつまでたっても直そうとしません。
 まったく困ったものです。
「兄さんは兄さんですし。それより、これを見てください」
 一応、私こと美人マスターは仕事中なのですが。
 しかしカウンターに座ったお客様には親しくが売りの「ネコス」。
 家族とはいえ、お客さんであることに違いはありませんし、ぞんざいな対応をするわけにもいきません。
「なんですかもう。……チラシ?」
「その写真。あの人じゃありませんか?」
 青葉ちゃんはチラリと、店の中を動き回るユカリちゃんに目線をやります。
 私もその視線を追い、それからまた、手元のチラシに載っていた写真に目を落としました。
「……ユカリちゃん、ですね。どう見ても」
「はい。駅前に貼られていたので、兄さんにも知らせておこうかと」
「……でも、ちょっとおかしいじゃないですか」
 そう。この写真にはおかしなところがあります。
 なぜならユカリちゃんは本当は男の子です。
 だから、家族か誰かがユカリちゃんを探すのなら、ここに載っている写真は男の姿のユカリちゃんでなければならないはずです。
「どうして、女の子の姿で捜索されているのでしょう」
「他人の空似、と言い切るにはちょっと似すぎですね」
「ええ。…………ありがとうございます、青葉ちゃん。後は私に任せてください」
「兄さん」
「はい?」
「顔」
 言葉足らずにもほどがあるぞと思ってても――その相手が家族だろうとも――あえて言いません。
 だって私は、愛に満ち溢れた美人マスター。
「どんなときもお気楽ハッピー。それが、今の兄さんですよね?」
「……ええ」
 そうです。
 難しい考えも、想像も、お別れフラグの予感がしていようとも、いつでも笑顔。
 それが「ネコス」の美人マスターである、この私です。
「というわけで、私は何があっても全力でユカリちゃんを愛することにします!」
「……好きにしてください」
「つきましては、例のワタシをタベテ作戦のお手伝いを改めてお願いします!」
「改めて断ります」
 うむむ。どうして私の身体にチョコを塗りつける作業を彼女はこんなに拒むのでしょう。
 合法的にこの美人マスターの柔肌に触れられるのですよ?
 百合好きの癖に、相変わらずよくわからない妹です。
「おいマスター。喋ってないで料理作れ」
 お客さんの注文を伺っていたユカリちゃんが戻ってくると、相変わらずゾクゾクするぞんざいな口調で私に伝票をよこします。
「そろそろピークだからな。気合入れろよ」
「気合いれるほど繁盛はしていませんが、わかりましたー」
 どうですか。この、どっちがマスターだかわからない会話。
 それもこれも、私とユカリちゃんとの間に、絶対の信頼関係が築かれているからこそでしょう。
「いーから料理作れっての。客が待ってる」
 ユカリちゃんの突っ込みが入ると同時に、店のドアに取り付けた来客鈴がカランと音を立てました。
 どうやらまたお客さんが来たようです。
「いらっしゃいませ。ネコスへようこそ」
 かなり板についてきたユカリちゃんの接客スマイルが、紳士っぽい白髪ひげのおじいさんに炸裂します。
 おじいさんはユカリちゃんの美女ぶりに驚いたのか、目を見開き、持っていた杖を落としました。
「探したぞ……!」
「ひゃっ!?」
「おおっと!?」
 これは、どうしたことでしょう。
 なんとあの爺、私ですら滅多に触れられないユカリちゃんの両手を握り締めやがりました!
「私が悪かった。……頼む、戻ってきてくれ」
「え、あ、その……」
「ちょっと待ったぁ! お客様? うちのバイトが何か?」
「バイトだと? こんな絶世の美女が、そうそういてたまるものかよ」
「まったく同感です!」
「ちょ、おまっ!」
 思わず同意してしまいました!
 せっかく他人の空似フラグを立たせたのに、自分でぽっきり折ってしまっては世話ないです!
「駅前のチラシを知らんのか? 私は、この子の身内だ」
「……!」
 爺の言葉を聞いた瞬間、ユカリちゃんははじけるように身体を動かし、握られていた手を振りほどきました。
「ユカリちゃん!」
 私の呼び止める声も聞かず、彼女はそのままお店を出て行きました。
 これは……ギャルゲなら選択肢が出るシーンですね!
 気持ち的には追いかけたいのですが、グッドエンドフラグ成立のためにはもう一つの選択肢を選ばなければいけません。
 つらいですね、美人主人公というのは。
「ってわけで、少し話し合いましょうか、おじいさん」
「……独り言の多い娘さんだな」
「それが兄クオリティ」

 * * *

「俺は……誰なんだよ」
 店を飛び出したユカリは、途方にくれていた。
 自分の記憶はいまだにあいまいで、本来なら、あの場に残って老人からすべての事情を聞くのが正しいはずだ。
 それをしなかったのは、どうしてだろう。決まっている。
 あの店にいる自分は「ユカリ」であり、元男でなければならないからだ。
 万が一にも、自分はもともと女だった……などと明かされて、あのお人よしのマスターをガッカリさせたくはなかった。
「本当は、元から女……か」
 仮にそうだとするなら、赤井に対する気持ちには何の問題もない。
 ただ、マスターを口説いているあたり、赤井は元男の女が好みなのだろう。
 そうすると、やはり自分は元男のユカリでなくてはならず……。
「あー、わかんねぇ」
「やあ、悩み事かい」
「ひゃっ!?」
 混乱の渦に飲み込まれ、狭まっていたユカリの視野が一気に明るくなる。
 ほんの数メートル先には、スーツケースを持ったサラリーマン風の男がいた。
「あ、赤井……?」
「はっはっは。マスターは元気かな。僕に渡すチョコを用意して、寝不足なんじゃないかい?」
 それはユカリ自身のことだが、マスターしか頭の中にない赤井にそれが気付けるはずもない。
「赤井は、マスターが本当に好きなんだな」
「運命さ」
「他にも、女ならたくさんいるだろ?」
「あいにく、僕はマスター以外に興味がないんだ」
「絶世の美女に、こんなことされても、か?」
 言葉の意味に赤井が気付くより先に、ユカリは、彼の首筋に腕を回した。
「俺は、お前のこと……」
「ユカリちゃん……」
 唇同士の距離は、数センチまで縮まっている。
 だが、それを止めたのは、他ならぬ赤井の手だった。
「それ以上はいけない」
「な、なんでだよ。俺だって、元男のはずだ! マスターと同じ属性持ちだぞ!」
「キミがあの店に染まっている発言は大変喜ばしいが、そうじゃないんだ」
「俺が……本当は女かもしれないから?」
 あのチラシが、一枚だけのはずがない。
 それこそあちこちに貼られ、赤井の目にも入ったはずだ。
「違う。男とか女とか、そんなのは関係無しに、僕はマスターが好きなのさ」
「マスターが男になっても、か?」
「ああ、愛せるね。愛そうとしたね。逃げられたけど」
 両手を振って、演説じみた台詞を言う赤井に、迷いは見られない。
 決して揺るがない自分というものを持っているからこそ、きっと、ユカリはこの男に惹かれたのだろう。
「…………変態」
「そんな変態を愛してくれるキミは何者だい?」
「……」
「なぁに、大丈夫。たとえキミが元男でもそうじゃなくても、そして僕をめぐる恋敵だろうとも、マスターはキミを受け入れてくれるさ」
「そう、思うか?」
「もちろん。そうあってこそ、僕の好きになった美人マスターさ」
 結局それは赤井の妄想でしかないわけだが。
 それでも、ユカリはきびすを返し。
 ネコスへ続く道へと、引き返していった。

 * * *

 おじいさんから聞いたネタバレは、こういったものでした。
 ユカリちゃんは実は……女の子でした。
 じゃあなんで男の子の姿になっていたのかというと、すべての原因がこのおじいさんだったみたいです。
「人格移植ですか。わくわくしますね!」
「おお、おまえさん。なかなか話がわかるな」
 そうです。このおじいさん。結構なマッドの方でして、自分の孫娘、つまりユカリちゃんの身体に、自分の人格をコピーしようとしていたわけです。
「ただ、人格にあわせて身体も変化させるっていうのは、私の主義にはあいません」
「女の身体になってたまるものか。私は、男として、永遠に行き続けたいのだよ」
 こういう爺には、私のTSブレンドをお見舞いしてやりたいのですが、危機察知能力でもあるのかどうもさっきからコーヒーに手をつけてくれません。
「それで結局、実験は失敗だったんですね?」
「まあ、そうだろうな。私の人格移植には成功したものの、身体は女に戻っている」
 それというのも、実験の途中でユカリちゃんが逃げ出したからなんだそうですが。
「とにかく、お話はわかりました。でも、ユカリちゃんを帰すわけには行きません」
「いや、私も反省はしているんだ。もう、こんなことはしない」
「たった八体の戦闘ロボで何度も世界制服をたくらむ悪の科学者のようなひげ面をしておいて、そんなこといわれても信用できません」
 きっとこの爺は、ドクロとか大好きに違いありません。
「私が間違っていたのだ。……息子夫婦からも、見つけるまでご飯抜きとか言われてしまっては……」
「犬猫ですかあなたは! ユカリちゃんの気持ちを第一に考えて反省してください!」
「兄さん。なんでもいいですけど、さっさと私を帰してください」
 うちのウエイトレス衣装を身に着けた青葉ちゃんが、私と爺の間に割り込んできました。
 ユカリちゃんの抜けた穴はを埋めてもらうために無理言って働かせているわけですが、思いのほかいい動きをしてくれています。
「いいじゃないですか。バイト代も出るし、似合ってますよー」
「はぁ……」
 青葉ちゃんは深々とため息をつくと、何も言わずテーブルのダスターがけに行きました。
 ですが、ふいにピタリと、その動きが止まります。
「兄さん、帰って来ました」
「ふぇ?」
 来客鈴が鳴り、店の中に入ってきたのは――。
「は、話……聞かせてくれ」
 決意を込めた瞳でこちらを見つめる。絶世の美女でした。
「さあ、勇気を出すんだ」
 ついでに、あのウザ常連客も来店しやがりました。
 ……なんでてめぇがユカリちゃんを励ましているんですかコノヤロウ。
 も、もしかして私、選択肢を間違えましたか!?
「なあ。これは、本当に独り言なのかい?」
「それも兄クオリティ」



<つづきます>





無駄に長い……
短編なら短編らしくスカッとまとめたいものです
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・……上記のように妙な言い回しをする悪癖あり

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