ネコス20

お店の人間模様が主になっている短編SSです
後先考えずゆるい感じで進行していますが、
前回から妹編の〆に入っているため、連作となっています。
よろしければお付き合いください

ネコス20  青葉さんの憂鬱編・その2

 おいっす。
 たった一杯のコーヒーで性転換できるのを売りにしている妙な喫茶店「ネコス」のウエイトレスだ。
 ちょっと今、マスターはいろいろあって奥の居住区で寝ているから俺が代わりに挨拶してみた。
「ユカリさん……あなた、とうとうそこまで兄さんの影響を」
「いや、違っ、いまのなしいまのなし!」
 というわけで、ここから先は俺のやり方で話を進めていく……って、俺は誰に説明してんだよぉぉぉっ!!

 マスター不在の「ネコス」は、いつも以上にカオスだった。
「ユカリさん。とりあえず青田君を女の子にしますから、いつものブレンドを」
「俺、あんな変なもの淹れられねぇよ?」
「淹れる必要ないです! ボクは、彼氏なんです! 彼女じゃありません!」
「……青田君、実は私、『男と話していると死んでしまうかもしれない病』なのです」
「そ、そんなリスクを背負って、僕と話していてくれたの? すごいよ、青葉さん」
「いや、信じるなよ少年!」
 いつものユカリならこのボケ二人を目の前にしても冷静にいられたはずだが、マスター不在のせいか、事態を把握するより先にツッコミへ移ってしまい、なかなか状況を収めきれずにいる。
 話を進めるには、ボケとツッコミ以外の第三者が必要なんだなと、しみじみ思った。
「いい加減、説明してくれ」
「はぁ……説明、するんですか?」
「このまま帰るって選択肢があるほうが驚きだよ」
「あら、以心伝心。結婚しましょう」
「帰るな! しねぇよ!」
「……ふぅ、美女にはかないませんね」
 青葉は一つ息を吐き、それからゆっくりと口を開いた。
 ここのブレンドで女体化した青田と付き合うことにしたこと。
 男として青葉と付き合いたいと言う主張に嫌気が差し、ついに別れ話を持ち出したこと。
 猫耳をつけて、もう一度付き合いたいって迫ってきた。という青田の妄想が、今の状況を作り出していること。
 説明は要点要点をきっちり抑えてはいたものの、随所にツッコミ待ちとしか思えない台詞が飛び交っていたせいで、ユカリの胃は早くも限界に達しようとしていた。
「以上です。結論としましては「女の子にならない男はただの男」ということです」
「……青田とやら」
「は、はい?」
「女は、コイツだけじゃないぞ?」
「でも、ボクはそれでも青葉さんが好きなんです」
「…………」
 ユカリも、その気持ちはわからないでもなかった。
 いや、ともすれば青田よりも不毛な恋に生きている彼女にこそ、男はアレだけではない。と諭すべきだろう。
 そう気付いたら不思議なもので、同じく不毛な恋をする者同士の、一種の親近感がユカリの胸に息づいた。
「……しゃーねー。一肌脱ぐか」
 マスターや青葉が聞けば、むしろ全裸で、と声を揃えそうな台詞をつぶやき、視線を青田から他の人間へ移す。
「妹さん。あんたはこの前、俺に言ったよな。自分も、俺と同じ恋愛キャラだったって」
「ええ、確かに」
「なら、恋することの楽しさとか、そういうのは知っているだろ? 何でそれが、男相手だとだめなんだよ」
「何度も言わせないでください。私は、男が嫌いなんです」
「じゃあ最初から青田と付き合うなっ。こんな奴にだって、男としてのプライドってもんがあるんだよ。それを、お前の好き嫌いで踏みにじっていいはずがないだろ!」
「ユカリさん。美女のあなたにこんなことは言いたくありませんでしたが……」
「なんだよ」
「ウザイです」
 にーっこりと、それこそ、花が咲いたような笑顔で青葉は言葉を突きつけた。
「う、うざ……?」
「私の見誤りでしたよ。ユカリさんは恋愛キャラでなく、説教キャラでしたか。美女が説教キャラというのは新ジャンルかもしれませんが、ウザイことに何の違いもありませんねぇ」
「……うん?」
 ユカリは青葉の言い知れぬ迫力にいっとき挫けそうになったが、ぶつぶつと呟き始める彼女に誰かの姿がかぶり、気を取り直す。
「せっかくの美女なのに、年寄りくさいご趣味をお持ちのようでまったく残念です。ああ、そうだ。これからユカリさんには「残念な子」という称号を授けましょう。そして、ゆくゆくは「いらない子」にシフトチェンジです。ううっ、かわいそうなユカリさん」
 微笑んだまま、独り言のようにも聞こえる妙なテンションの説明口調は、やはり、どこかで見たことあった。
「というわけで、ユカリさんはレギュラーの座を私に譲るべきだと思います」
「何のレギュラーだよ!?」
 と、突っ込んでから、ピタリとパズルのピースが揃う。
「……そのノリ、マスターとそっくりだな」
 心の中の文と見せかけて本音をくっちゃべる謎の独り言といい、「というわけで」という台詞でいきなり相手を会話に巻き込むやり口といい。
 さすがは姉妹というべきか。
(うん? 姉妹?)
「そういえば、マスターはもともと男だったんだよな」
「兄さんは兄さんですが?」
「そこがおかしい。せっかくお前の好きな「女」になったのに、どうしてまだあいつを「兄さん」って呼ぶんだ?」
「………………なかなかの推理力。周瑜もびっくりですね」
「そいつはどうも」
「私が兄さんを兄さんと呼び続けるその理由。知りたいですか? ここは百合ゲーなら選択肢が出るところですね。聞きたくない、とユカリさんが言ってくれれば私の好感度が上がり、ハッピーエンドフラグの成立なのですが」
(後半は独り言か?)
「ぼ、ボクは、聞きたいです!」
「私は、ユカリさんに聞いています。でも、もしユカリさんも聞きたいという選択をしたらどうしましょうか。それはつまり、私とのハッピーエンドを望まない……ということは、まさかユカリさんは」
「おーい。理由、聞きたいから帰って来ーい」
「……はて、帰って来いとは何のことですか?」
「自覚ないのか」
「わかりませんが、わかりました。ユカリさんは私との幸せより、兄さんの好感度上げに腐心するのですね」
「なんでそうなる!?」
「もちろん、私が『あの頃の、かっこいい兄さんが好きだったから』という理由を聞いて、それを兄さんに伝えることで兄さんの好感度は」
「……は?」
「あ、青葉さん、いまの……」
「………………」
「マスターが、かっこいい?」
「お兄さんが、好き?」
「……………………孔明の罠ですっ!」
 そういって顔を背ける青葉の顔は、いつもの鉄面皮でなく。
 耳まで真っ赤にさせた、年相応の、ツンデレ少女の様相をしていた。





つづきます。次回で終了します


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