ネコス22

お店の人間模様が主になっている短編SSです
後先考えずゆるい感じで進行しています。

ネコス22

 みなさまこんにちは。
 バイトTS娘を二人も手に入れることが出来て幸せ絶頂の「ネコス」の美人マスターです。
 なぜかバイト採用の度にフラグがパキパキ折れる音を聴いている気がしますが、おそらくそれは幻聴でしょう。

 バイトが二人もいることですし、これからはどんどん稼がねばなりません。じゃないと、バイト代も満足に出せませんから。
 正直な話、バイトは一人だけで十分だったのですが、アオちゃんは美少女ですからねー。
 美人マスターに美女ウエイトレスと来れば、次は美少女枠を入れたくなるのは当然の欲求です。
 美少女ウエイトレス……実に、いい響きです。アオちゃんにはそのうち「ネコスへようこそ!」という決まり文句言ってもらいましょう。きっと、ガッツリはまるはずです。
「……それにしても、今日は遅いですねー」
 アオちゃんは学生なので午前の出勤はできません。
 しかしフリーターのユカリちゃんは週五日勤務のフルタイムです。そして今日は休みではありません。
 勤務日はいつも三十分前に来ているのですが、今日はまだ姿を見せません。
 おかげで開店時間からずっと私は一人です。お客さんもいまだに入りません。
「マスター独りぼっちです。寂しいです」
 グラス磨きにも飽きました。誰か、ネコスにご来店してください。
 ──カラン──
 タイムリーです。ご都合主義とも言うかもしれませんが、この寂しさを紛らわせられるのならそんなこと気にしません。
「いらっしゃいませー」
 来客鈴を鳴らしたのは、ゲームに出てきそうな、見事な赤髪の男でした。
 バンドの方でしょうか。エレキギターでも背負っていれば一発でキャラが立ったのですが、残念ながら見た目に赤毛以外の特徴はありません。
「ふん、なんだこの店は」
「あ、初めてのご来店ですか? 「ネコス」はあなたの変身願望を叶える喫茶──」
「お前、いま何時だか知っているか? それとも、あそこの時計は飾りか」
 ……なんなんでしょう、このお客さん。もしかして、ケンカ売っているんですか?
「えーと、もうすぐお昼ですねー」
「なんだ、わかっているじゃないか。そう。飲食店にとってもっとも忙しく、もっとも稼げる時間帯だ」
「…………」
 ま、そこから先は言われないでもわかります。
 さっきも言ったとおり「ネコス」は現在、全ての席が空いています。
 いつもなら二、三人ぐらいお客さんもいるのですが、どうやら今日は人に恵まれない日のようです。
「目の前に喫茶店があるから、どんなものかと思ったが……ふん。これなら、気にする必要もなかったな」
「あははー、どういう意味ですか?」
「こんな店、すぐに潰れるって意味だ」
 はい、確定です。ケンカ売られました。もちろん買います。
 とりあえず有無を言わせず熱々のブレンドを口に放りこんでやりましょう。
「なんだ、その目は。客に文句があるのか?」
「お店の空気を積極的に悪くするバカヤロウは、お客さんとは認めていませんのでー」
「なるほど。流行らないはずだ」
 切れていいですよね? ね?
 ブレンド飲ませて、ネコスの地下で飼ってもいいタイプのお客さんですよね、コイツ。あ、でも地下室作っていませんでした。
「まあ、一応挨拶しておくよ。向かいに越してきた、カフェ『オレンジ』の者だ」
「……は?」
 彼の言葉は、私の怒りを吹き消すほどの威力がありました。
 向かいに、引っ越してきた? そういえば、春先に悩まされていたお向かいの騒音が最近静かになっています。
 窓の外を見れば、おしゃれっぽい書体で『orange』と書かれた看板が目に入りました。
 店の入り口には、『近日オープン』というのぼりもあります。
「まさか、ライバルの登場ですか!?」
「ライバル? ふん、それは力が拮抗している二人に使う言葉だ。私の「オレンジ」ととこの店とじゃ、勝負はやる前から見えているよ」
 まだ開店さえしていないお店の癖に、なんでこんなに自信満々なんでしょう。
 まさか、ネコスに負けるとも劣らないTS効果のあるメニューが!?
「ひょ、憑依効果は、ありますか?」
 もしそんな効果のあるドリンクをこの無頼漢が作れるのでしたら、私はためらわず弟子入りします! 小さなプライドなど、捨ててやりますです!
「何を言っているんだお前は。おいしい料理とくつろげる空間。カフェにそれ以上何が提供できる?」
 態度はアレですが、この男、立派です! お客様第一のその理念は、私も共感できます!
「くっ……あなたとはもっと、違う出会い方をしたかったですよ」
「なら私は、お前と出会った不幸を呪うよ」
 口の悪さはユカリちゃん以上です。態度の冷たさは青葉ちゃん以上です。
 そして私のムカつき具合は、なんと不動だったあのウザイ常連客を抜かしての一位です。
 男であるというのが、さらにいけません。
 せめて私のブレンドで女の子になってくれれば、もう少し違う評価が出来るのに。
「ふふふ、『オレンジ』ですね。覚えておきますよ、みかん野郎」
「ああ、その隙間だらけの脳にでも刻み込んでおけ野良猫。お前の店を潰す店の名前を、な」
「うふふふふふー」
「くくくくく」
 私とみかん野郎は、笑顔のまま睨み合います。当然、私の目は笑っていません。
 ──カラン──
 バッドタイミングです。いまの私は笑顔で接客できる自信がないのに、お客さんのご来店です。
「悪い、ちょっと遅くなった」
「こんにちは……って、黄花!」
 お店に来たのは、ユカリちゃんと、小柄な金髪の美少女でした。
 金髪少女は目の前の男をオウカと呼び、とてとてと可愛らしい足取りで駆け寄ってきます。
「セキナじゃないですか。いけませんね、このような汚らしいお店に来ては」
 どうやら、このみかん男と金髪少女は知り合いみたいです。
 というか、なんか言葉遣いががらりと変わってやがります。どういう関係なのでしょう。
「す、すいません。うちの従業員がとんだ失礼を!」
 小柄な少女は、私にぺこぺこと何度も頭を下げます。
 小さい子にこんな風に謝られたら、怒りを納めないわけには行かないじゃないですか。私、寛容な美人マスターですし。
「し、仕方ありませんね。今日のところは許してやりますです」
 というか、危うく聞き逃しましたが、この少女みかん野郎をうちの従業員って言いましたか?
「こいつ、向かいの店のマスターなんだってよ」
 何も言っていないのに、ユカリちゃんは私の疑問をするりと解決してくれます。さすが、美女ウエイトレスです。
「声に出しているっつーの」
「あはは、ユカリさんのお話どおり、楽しい方ですね」
「ただのバカ、という評価が適切だと思いますよ、セキナ」
「ああもうっ、いい加減にしろ黄花!」
「ぐがっ!」
 金髪少女はみかん野郎のアゴめがけて頭突きを食らわしました。
 身長差を活かした、すばらしい頭突きです。ぴょんっと跳ねてのアクションがまたとても可愛いです!
「うう~……」
 頭突き後に自分の頭を抱えているのもポイントが高いです! 従業員は最悪ですがマスターは萌えキャラじゃないですかー。
「うへへー、大丈夫ですかー? セキナさん。頭撫でますかー?」
「マスター。初対面相手にそのだらしない顔はやめろ」
「……近づくな」
「ほえ?」
 セキナさんは、うずくまっていた身体をゆっくりと起こし…………なんか、すっげぇ冷たい目で私を見やがります。
「あのー?」
「人間の言葉が理解できないのか野良猫。私に近づくなと言っているんだ。バカが感染る」
「うっわ、マジで口悪いのな、オウカ」
 普段から口の悪いユカリちゃんさえ引き気味です。
 というか、なんでしょう。この言葉遣いとか、さっきまでセキナと呼ばれていた少女がオウカと呼ばれているこの状況とか。
 ……ええまあ、この私がそこまで察しの悪い美人マスターのわけはないんですけど。
「じゃあな、野良猫ども」
 そういい、金髪少女はみかん野郎をほったらかしてお店を出て行きました。
「いつつ……あ、ああっ! どこ行く気だ黄花! まだネコスの人たちに謝ってないだろ!」
 目を覚ましたみかん野郎が、お店の外の少女を追いかけます。ですが、入り口のところでその足を止めると、くるりと私たちを振り返りました。
「あ、あの、今日は本当にすいませんでした。『オレンジ』店主の赤那。必ずまたお詫びに来ますから!」
 そんなことをいいぺこぺこと何度か頭を下げると、セキナと名乗ったみかん野郎はお店を飛び出しました。
「……ユカリちゃん。補完、お願いします」
「見ての通りだけど。あ、遅れたのは、途中で迷子になってたセキナの相手をしててだな」
「そんなことは聞いていませんよぉぉぉーーーーーーっ!」

 美人マスターのいる変身喫茶「ネコス」。
 お向かいには、マスターとウエイトレスが入れ替わる、カフェ「オレンジ」がもうすぐオープンします。
 これは……ますます、頑張らないといけないかもです! でも、お気楽な空気がお店のポリシーです。経営方針は変えません!
 変身をしたい方。脳みそをお休みさせたい方。そして、みかんが嫌いな方。
 ぜひとも「 ネ コ ス 」へお越しくださいませ。




登場人物増やしすぎた……そろそろ誰かが空気になる予感;

以下、拍手返信(反転処理)
>eta さん
いつもコメントありがとうございます。すべてありがたく頂戴しています
ろくに推敲もしていない代物ですが、楽しんでいただければ嬉しいです

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巫

Author:巫

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