ぞっこん1-3

(独り言)
テキストのベタ移植だからか、短文のつもりでも長い長い
それに見にくいなぁ。試行錯誤の余地十分にありと見た


ぞっこんショット1-3


「んあ?」
 気がつくと、さっきまで夕暮れに染まっていた教室がやけに白くなっていた。
「起きたの? タカくん」
「藤?」
 机を挟んだ向かい側には、なぜかドライバーを握り締める藤がいた。周りを見ても夕香先輩の姿はない。あと目に入るものといえば、机の上に並んだカメラの部品ぐらいなものだ。
 窓の外にあったはずの夕日はいつのまにか消え、代わりに満月が顔を出している。
「俺、寝てたか?」
「バッチリ。センパイ、怒ってたよ」
 それは少し面倒なことになりそうだ。あの人、単純なくせに根に持つタイプだからな。
「ってか、起こしてくれればいいのに……」
「起きるまで放っておこう、だって。優しいよねー」
「いや、それ優しさと違うだろ」
 きっといまの台詞は、笑顔とアオスジのセットで言っていたはずだ。
 上手く機嫌を直す方法を考えておかないと、あれで子供っぽいところのある人だからしばらく口をきいてもらえなくなるかもしれない。
「戸締りとかあるし、あたしが居残りさせられたわけだけどさー」
「うぐっ」
 先輩の対処方法について考えていると、別方向からのイヤミが来た。
「あの時パーを出していればなー、観たかったテレビあったんだけど、センパイの頼みなら仕方ないよねー」
「わ、悪かったな」
「別に~? ビデオ予約してあるからいいんだけど、やっぱりリアルタイムで観たいじゃない? わかるよね、この気持ち」
 謝って損した。
「わからん。……それで、何してんだ?」
「うん? 見てわかんない?」
 言いながら外装パーツをはめ込み、カメラとしての形式が取り戻される。
 黒くて四角い、やたらゴツイ感じのする一眼カメラだった。夕香先輩ならばその機体の名前ぐらいすぐに出てくるだろうが、あいにく俺にそういった知識はない。
「カメラをバラしていた」
「う~ん、ま、そうなんだけど。せめてお手入れしていたって言って欲しいなぁ」
 苦笑を浮かべながら、一般的に良く見るフィルムよりも一回り小さい感じのする物をカメラに組み込む。
 フィルムの巻き上げもどうやら手動らしく、レバーをぐりぐりと回している。もしかしたら、これがさんざん先輩が語っていたクラシックカメラという物なのかもしれない。
「それ、お前のか?」
「ううん、プレゼントする予定。夕香センパイ、もうすぐ誕生日だから」
「なっ」
 衝撃的過ぎるその言葉に、イスを鳴らして立ち上がる。
「い、いつだ?」
「んー、何が?」
 ニマニマしながら、わかりきったことを聞き返してくる。
 こっちの気持ちなどお見通しだといわんばかりだ。
 しかし惚れている相手の誕生日に何もしないという選択肢は、俺にはない。それで藤に借りを作ることになってもだ。
「だから、先輩の……」
「知りたいんだ?」
「うっ」
 交換条件を出すつもりだと一目でわかりそうな笑みが浮かぶ。
 どんな無茶振りをさせられるのかわかったもんじゃない。何しろ相手はノリ重視のやかまし女、四ノ宮藤だ。
「んじゃ、写真取らせて」
「…………は?」
 思いもかけない頼みに、思わずマヌケな声を返す。
「だめ?」
「いや、いいけど、なんで?」
「べ、別にタカくんのことが好きってわけじゃないんだからね! って、言って欲しい?」
「全力で断る」
「あはは、タカくん冷たーい。ショックだなー」
 能天気な調子で心にもないことを言い、藤は持っていたクラシックカメラのレンズを俺に向けた。
「それ使うのか? 先輩の誕生日プレゼントなんだろ?」
「ま、気にしない気にしない。はい、変な顔しないでねー。撮るよー」
 あのまま先輩にプレゼントすると、現像するとき俺の写真も紛れ込んでしまうのだが……こっちの都合が悪いというわけでもないので放っておこう。なんだか腑に落ちないものを抱えながら、それでも素直に従う。
 ――カシャッ――
 乾いた音と、景色の明滅する強い光が襲い掛かる。
 ……ん? クラシックカメラなのにフラッシュが内蔵されているのか?
「なぁ、ふ……じ」
 前触れもなく、視界がぼやけた。
 フラッシュにあてられたのかとも思ったが、どうやら違うらしい。
「あ、れ?」
 力が抜けていく。
 立っていられないほどの疲労感が全身に降りかかり、よろめいてしまった。
 俺は踏ん張ることも出来ず、そのまま後ろに倒れてしまう。
「う」
 背中に壁がぶつかると同時、頭の上に何かが落ちてきた。
 足元を見ると、数時間前に夕香先輩が眺めていた分厚いカタログが、なぜか床に落ちている。
 ……そういえばこの部室、壁イコール無造作に詰まれた本だったよーな。
「た、タカくん……うし、ろ、あぶな……」
 さっきまで元気いっぱいだった藤の声も、つらそうな響きに変わっている。
 そういう彼女の後ろも、積まれた本らがまるで均衡を崩したジェンカのごとく、崩壊の序曲を奏でている──なんて、寒いフレーズ考えている場合か、俺っ。
「わっわっ、うきゃああああっ!」
「いでっ、あだっ、うおをををっっ!」
 この狭い部屋を取り囲んだ雑誌から逃れられるはずもなく、そもそも謎の疲労感で身体もまともに動かせなかった俺と藤は、そのまま本の高波に呑まれ、遠のく意識を手放した。
 ……なんで、こんな目に。


「い、ててて……」
 痛む頭を押さえながら、薄ぼんやりと目を覚ます。
 本を振り払い身体を起こすと、しばらく見ていなかった部室の壁がすっかり露わになっていた。
 足元には見事なまでに本が散乱し、床一面どころかパイプ椅子の脚部分すら埋め尽くしかねない状況になっている。まったくよくもまぁ、ここまで本を集めたものだ。
 時計を見上げると、気絶してからほんの五分程度しか経っていないことがわかった。
 辺りに藤の姿はない。生き埋めになっているのか、それともすでに目覚めていて先に帰ってしまったのか。
「ったく……」
 さすがに、このままの状態にして帰るわけにもいかない。元の状態にするのが無理でも、せめて人の通れる道ぐらいは作っておかなければ。
「うん?」
 部屋の中を映す窓ガラスに、きょとんとした顔の藤が映りこんでいた。
「なんだよお前。どこに行ってたんだ?」
 いいながら振り向くが、そこには誰もいない。
「は?」
 もう一度、窓を見る。やはり藤の姿が映っていた。と、そこで俺はようやく違和感に気がつく。
 窓ガラスには、〝俺〟の姿が映っていなかった。
「んー?」
 訝しげに思いながらガラスを凝視すると、鏡面世界の藤も目を細めた。
 さらにもう一つ、ドキリとすることに気がつく。声が、いつもと比べてずっと高いものになっていた。どうしていままで気がつかなかったのか不思議なぐらい、男の声としてはそうそう出ない音階を、俺は当たり前のように出している。
 声だけではない。下を向けば、なぜか突き出た胸が、着た記憶なんてあるはずのない女子の制服を持ち上げていた。
 胸が邪魔で見えづらいが、股下はやたらと風通しがいい。ほっそりとした健康的な脚も見える。心なしか、髪も少しばかり伸びているようだ。
「いや待てっ、いいから待て!」
 思考が恐ろしすぎる結論に到達してしまう前に、ギリギリで引き止める。
 何度か深呼吸をして、俺はもう一度、順を追って考えていった。このさい、息を吸い込むときに感じた胸の窮屈さは無視だ。
「いいか? 俺は男だ。鷹広なんつう、明らかに男の名前があるんだ!」
「しかぁしその見た目は女。男女に使えるリバーシブルネーム、四ノ宮藤だぁ!」
「それを言うなぁ! ってか、誰だぁっ!」
 人がせっかくあえて先延ばしにしようとした結論を、背後の声があっさりと導き出す。
 その聞き覚えのあるようなないような男の声に振り向くと、教室の入り口で笑顔を浮かべた〝俺〟の姿があった。
「あっははは、せわしないねぇ、タカくんは」
 〝俺〟が、覚えのあるお気楽な口調で、この世でたった一人しか使わないアダ名で俺を呼ぶ。もうほとんどわかっているはずなのに、それでも認めたくなくて、俺は震える指を自分の姿に向けた。
「お、お前まさか…………藤、か?」
「あはは~……はぁ。困ったねホント」
 ぜんぜん困っていないと言わんばかりの喋り方と表情のまま、〝俺〟はコクリと頷いたのだった。



該当シーン短っ!
とにもかくにもようやく次から話が動きます
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